2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。当社グループは、これらのリスクの存在を認識した上で、その回避及び顕在化した場合の対応に努める方針です。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクを網羅するものではありませんのでご留意下さい。

 

(1) メディア・コンテンツ事業

① メディア

(地上波テレビ放送の媒体価値と収益性)

当社グループの主たる事業であるメディア・コンテンツ事業は、地上波テレビ広告枠の販売による地上波テレビ広告収入に依存しており、当連結会計年度における地上波テレビ広告収入は総売上高の51.7%を占めています。一般に、広告市況は経済のマクロ動向と連動する傾向があり、日本国内においては、少子高齢化と人口減少により大きな市場の伸びが期待できない状況です。また、長引くロシアによるウクライナ侵攻や海外景気の下振れ等の外的環境の変化により広告市況が影響を受ける可能性があります。これらに加え、メディアの多様化やインターネット広告市場拡大等の変化により、地上波テレビ放送事業は厳しい状況に晒されています。2023年の日本の総広告費(暦年、㈱電通調べ)は、7兆3,167億円(前年比103.0%)となったものの、地上波テレビの広告費は1兆6,095億円(前年比96.0%)と前年割れの状況が継続しています。インターネット広告費はこのような状況下においてさらなる成長(前年比107.8%)を見せており、広告価値における地上波テレビ放送が有してきた絶対的優位性の維持・確保が課題であると認識しております。

当社グループとしましては、視聴者から支持される番組を作り続けることにより、視聴率・視聴質の維持・向上に努め、今後厳しさが増すと予想される市場環境の中でも、地上波テレビ広告市場におけるシェアを圧倒的に拡大することで地上波テレビ広告収入の確保に努めております。これに加え、SAS(スマート・アド・セールス)の活用や、新たなクライアントニーズを取り込むことで、地上波テレビ広告の高度化と価値の維持、広告体験の向上に努めております。近年高まっている、広告の効果分析に対するニーズに対しては、DMP(顧客情報システム)構築や獲得した大量のデータの有効な処理・活用のためのデータサイエンティストの確保などを推進し、視聴データの整備を進めると同時に、さらに広告価値を高める方法についても引き続き研究を行っております。これに加え、AIを活用した新セールス方法の開発を目指す㈱松尾研究所との共同研究や、地上波広告でインターネット広告と同様のリアルタイムなプログラマティック取引を実現するアドプラットフォーム(Ad REACH MAXプラットフォーム)の開発を進めるなど、広告商品の高度化を推進しています。

また、2022年5月に策定した中期経営計画において「テレビを超えろ、ボーダーを超えろ。」をスローガンに掲げており、コンテンツ戦略本部の設立、知的財産(IP)コンテンツの開発、新たな共創体制の構築などを実行し、コンテンツの価値最大化を目指してまいります。

しかしながら、今後の日本経済のマクロ動向や広告市場の動向により、地上波テレビ広告収入が大幅に縮小し、かつ、地上波テレビ広告収入の落ち込みを補う非放送広告収入を創出できなかった場合は、当社グループの存続に関わる、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(メディアの多様化)

通信環境の進化とともにスマートフォンやタブレット等の端末が広く普及する中、インターネットメディアをはじめ、視聴スタイルが多様化しております。当社グループは、地上波・BS・CSの3波協業を皮切りに、2014年4月にアメリカの動画配信会社 Hulu,LLC の日本市場向け事業(定額制動画配信サービス「Hulu」の運営)を承継し、SVOD(Subscription Video On Demand:定額動画配信)事業に参入し、現在ではTVOD(Transactional Video On Demand:都度課金型動画配信)事業も開始しております。また、「日テレ無料!(TADA)by日テレオンデマンド」において、2014年度より放送事業者として初めて、一部放送コンテンツで広告付き無料見逃し配信(キャッチアップ)のサービスを開始し、インターネット環境下での放送コンテンツ視聴のBtoB事業化に着手、2015年には民放公式テレビポータル「TVer」をスタートし、AVOD(Advertising Video On Demand:広告付き無料動画配信)事業も順調に成長しております。

SVOD事業及びTVOD事業は、今後の動画配信市場の拡大と、それに伴う会員数の拡大という目標に向け、連続ドラマからHuluオリジナルストーリーへの展開や、スポーツコンテンツについてテレビ放送との工夫のあるライブ配信を行うなど、当社グループが展開しているコンテンツ・サービスとの連携を強め、注目を集めています。AVOD事業はドラマの見逃し配信を中心に着実に利用者を拡大しております。さらに2021年10月より「日テレ系ライブ配信」として一部番組の無料ライブ配信を民放で初めて実施いたしました。2022年4月からは在京民放キー局全てが一部番組のリアルタイム配信を開始しております。当社グループといたしましては、今後も地上波テレビ放送にとどまらず多様化するメディアに積極的に参入してまいります

しかしながら、これらの事業は成長分野であるとともに、豊富な資金力を有する外資系企業が参入するほか、国内配信事業の統合など競争環境は年々厳しくなっております。事業が想定通りに伸長しない場合や、ネットワークインフラと端末の高機能化等により、市場を取り巻く環境が大きく変容する可能性もあります。このような場合には、投下資本の回収が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

映画・イベント等への展開に関しては、慎重にシミュレーションを行った上で、投資判断を行っております。しかしながら、実際の映画の興行収入や劇場公開後の二次利用収入・イベントチケット販売収入や関連グッズなどの物品販売収入等がシミュレーション通りの収益を確保する保証はなく、当初計画した収益を確保できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

② コンテンツ

(地上波テレビ放送の視聴動向)

テレビ広告収入に大きな影響を及ぼすのが視聴率動向です。当社グループは、国民の皆さまの視聴ニーズを的確に捉え、最も視聴され共感されるコンテンツの制作を目指しております。地上波での2023年の年間平均視聴率は、情報発信や経済活動が活発なコア(13歳~49歳男女)層において、全日帯、ゴールデン帯、プライム帯の3部門全てでトップとなり、11年連続で三冠を維持しました。

コンテンツ制作においては、新たなデジタルテクノロジーの導入を進めるなどして制作体制を強化するとともに効率化を進めております。当社グループが有するコンテンツ制作力を結集し、引き続き、視聴者の皆さまから支持される良質なコンテンツを開発してまいります。

しかしながら、日本国内の人口減少やコンテンツの視聴環境の多種多様化により、地上波のタイムテーブル全般で視聴率の大幅な低下があった場合には、地上波テレビ広告収入の大幅な減少等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

(放送権・配信許諾等ライセンスの高騰)

メディア・コンテンツ事業を主たる事業とする当社グループは、オリンピックやFIFAワールドカップ等、全国民が注目するスポーツイベントの放送をテレビ放送事業者の使命として行ってまいりました。しかしながら、近年これらのスポーツイベントの放映権料が高騰する一方で、高額なテレビ放映権料に見合う広告収入の確保は年々困難になっており、その採算性は悪化する傾向にあります。当社グループといたしましては、今後も、国民の皆さまに娯楽を提供するという放送事業者としての使命を全うすべく、スポーツイベントのテレビ放送に携わっていく所存ですが、テレビ放映権料のさらなる高騰は当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

動画配信事業においては豊富なコンテンツを安価で提供することが、サービスが顧客から選ばれる要因となっていることから、近年、コンテンツホルダーの交渉力が高まっており、配信許諾等ライセンスが高騰する傾向にあります。当社グループといたしましては、コンテンツの選別を精緻に行い、慎重に収支のシミュレーションを行った上で、ライセンスを購入しております。また、購入したライセンスは効果的に利用すべく、コンテンツ中心主義の下、当社グループが有する地上波テレビ放送をはじめとする各メディアとの連携を図り、収益の最大化を進めております。しかしながら、配信許諾ライセンスのさらなる高騰により、投下資本の回収が困難なケースが増えた場合は当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

 

(コンテンツ制作の取り組み)

当社グループでは、今後、多様化するメディアの中で、制作したコンテンツのテレビ放送での利用は、ゲーム・商品化・映画・舞台等様々な利用方法と並列と捉えてマネタイズを組み立てる必要があり、IP(知的財産)の構築及び確保が重要であると考えております。当初より様々な利用を前提とし、権利処理関係においてより上流に位置することになるIPの構築には、これまでのテレビ放送を前提としたコンテンツ制作とは異なるケースも多々発生し、構築までに時間と費用がかかる場合があります。今後、当社グループの収入源の多様化を図るためにもIPを構築し確保することは重要でありますが、想定した通りのIPの構築が進まない場合、あるいはIPの構築に想定以上のコストが必要となった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

番組制作においては、働き方改革の促進に伴い、クラウド上での編集システムの検討など効率化に取り組んでおります。しかしながら、現状の番組クオリティを維持するためには、スタッフの人員増や編集システムへの投資など、費用が増加する傾向にあります

また近年、SNS等のインターネットメディアの拡大に伴い、テレビ番組以外の制作物も増加しております。その対応のための人材確保や外部リソースの活用などを推進しておりますが、業種を問わずニーズが高い分野のため、優秀な人材を確保できない場合や確保できたとしても高コストになってしまうことも想定されます。計画的な設備投資、人材の採用を行い、コスト抑制に努めてまいりますが、想定を超える技術革新、人件費の高騰が進んだ場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

(著作権等の知的所有権)

当社グループの制作するテレビ番組は、原作者、脚本家、音楽の作詞・作曲者、レコード製作者、実演家等多くの人々(以下、「著作者等」という。)の知的・文化的な創作活動の成果としての著作権や著作隣接権(以下、「著作権等」という。)が密接に組み合わされた創作物です。著作権法は、その第1条においてこれらの創作活動を行う著作者等の権利を定め、その公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、文化の発展に寄与することを目的としています

当社グループは制作したテレビ番組を、地上波テレビ放送や動画配信、BS・CS等の衛星放送、ケーブルテレビへの配信、DVD / Blu-ray Disc等によるパッケージメディア化、海外への番組販売等によるグローバル展開、番組キャラクター等のマーチャンダイジングや出版化等によりマルチユース利用することで収益を獲得しております。この際、様々な著作者等が保有する著作権等に十分配慮しつつ展開することが求められます

しかしながら、当社グループの制作するテレビ番組は、原則として日本国内における地上波放送や衛星放送を前提として著作者等から著作権等の利用を許諾されており、これら以外への利用を目的とした権利取得が十分に行われていないテレビ番組が存在します。このため、テレビ番組をインターネット等の新たなメディアでマルチユース利用する場合や、海外展開をしていく上で、予め著作者等の許諾を得るか、放送と並行して、あるいは放送後に著作者等の許諾を再度取得することが必要不可欠となります。これらの権利処理には多くの時間と費用が必要となる可能性があります。当社グループでは、新たに番組を制作する際には予めマルチユース利用を前提とした著作権等の許諾を得て制作を進めていくほか、これまでに制作した番組については、必要に応じて適切に著作者等から著作権等の許諾を取得する作業を行い、コンテンツのマルチユースがスムーズに進められるよう心掛けております

万が一、当社グループが著作者等に対し、不適切な対応を行った場合には、放送等の差し止め要請や損害賠償請求を受ける可能性があります。このような場合には、収益の大幅な減少・訴訟等に伴う費用の大幅な増加等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

(2) 生活・健康関連事業

当社グループは、2014年12月に総合スポーツクラブ事業を営む㈱ティップネスを連結子会社化し、生活・健康関連事業を展開しています。生活・健康関連の市場規模は拡大傾向にあるものの、新規事業者の参入などにより事業の競争環境は厳しさを増しております。㈱ティップネスは従来の総合型スポーツクラブ「ティップネス」や24時間営業のトレーニングジム「FASTGYM24」を展開し、顧客層の獲得へ取り組んでおります。また、2020年3月には水泳スクールを営む㈱ジェイエスエスを関連会社とし、㈱ティップネスとのシナジーも含め、本セグメントにおけるスクール事業の強化に努めております

しかしながら、スポーツ施設の運営において、同業他社や他のスポーツ関連サービス等との競合により会員を計画通りに確保できない場合や、価格競争により平均単価が低下した場合、あるいは賃貸契約を更新できずに店舗を閉鎖せざるを得ない場合には、安定的な収益が得られない可能性があります。また、新規出店やリニューアルなどには、規模に応じた投資を要するため、会員の確保が計画通り進まない場合には投下資本の回収が困難になる可能性があります。特に昨今では、コロナ禍において減少した会員数の回復に時間を要しております。当社グループといたしましては、不採算店舗の閉鎖も実施しつつ、コスト構造の見直しを通じて収益性の回復を図るほか、デジタル化を通じた新規事業の創出やデータの活用を通じ、健康ニーズに迅速・的確に応えるコンテンツ・サービスの開発に取り組んでまいります。しかし、引き続き会員数の回復が見込めない場合や想定外の多額の費用投下が必要になった場合などには、収益の大幅な減少やさらなる不採算店舗の閉鎖コストの発生、固定資産のさらなる減損リスクが発生するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

(3) 不動産関連事業

① 番町再開発事業

当社グループは、汐留及び番町地区等において不動産賃貸事業を計画、実施しており、保有地の活用検討を進めております

当社グループといたしましては、建設費の高騰等を想定し、できる限りコストコントロールに努めた上で事業を進めてまいりますが、予期せぬ事情により今後の計画に何らかの影響が及んだ場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

② 太陽光発電事業

当社グループは、2014年に岩手県九戸発電所と胆沢発電所を稼働させ、2018年5月には、大規模営農型の熊本県小国発電所を稼働させました。当社グループではクリーンエネルギーの創生は、環境に配慮した発電事業として社会的に意義のあるものと考えており、電力会社と固定価格買取保証の契約を締結することなどにより、長期安定的に収益を計上できるよう取り組んでおります

しかしながら、合理的な理由を前提とした電力会社から事業者への出力抑制の要請等で、計画通りに買い取りが行われないような状況が発生した場合や、設備トラブルや天候不順・天変地異等により発電量が大幅に低下した場合、営農型発電所において営農の継続性に疑義が生じた場合、稼働済みの発電所から撤退する場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

(4) M&A

当社グループは、2022年度から2024年度を計画期間とする日本テレビグループの中期経営計画「日本テレビグループ 中期経営計画2022-2024」において投資枠を1,000億円とし、M&A等による事業セグメントの拡大をグループ全体で進めております。しかしながら、M&Aについては、適切な候補先が見つからない場合や、条件に合致しないなどの理由により、当社グループの想定通りに取引が進まない可能性があります

M&Aを行うにあたっては、事前に対象企業の財務内容や契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行い、十分にリスクを回避するように努めていますが、対象企業に偶発債務の発生や未認識債務の判明など事前の調査で把握できない問題が生じる可能性も否定できません

また、M&Aにおいては、対象企業とのシナジー効果を含んだ金額での合併・買収価額となることが通常であるため、事前段階から綿密な統合計画を作成し、合併・買収後において、速やかに統合計画を実行することにより、早期のシナジー発現を目指しております。しかしながら、合併・買収後に重要な役員・従業員の退職や取引先との関係悪化といった躓きが生じた場合や、事業環境の変化その他の理由により統合後の事業展開が計画通りに進まず、シナジー効果が発現できない場合には、のれん等の減損リスクが発生するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

(5) 人材・組織・制度

① 人材の確保及び人材の育成

当社グループが事業活動を行う上で、人材の確保は重要な課題と捉えています。様々なプラットフォーム・デバイスや海外に向けたコンテンツ制作等、現在の事業をさらに拡大するために、また、新たなビジネス・サービスを創出するためには、それぞれに必要なスキルを有した人材が不可欠です。しかしながら、昨今、労働需要がひっ迫し、労働力及び人材の確保が難しくなってきております。また、今後、DXやAIがますます重要になることから、デジタル技術を用いて新規サービス、業務改善につながるシステム等を開発するエンジニアや、獲得した大量のデータを適切に分析・活用できるデータサイエンティストに対するニーズが一段と高まってきております。当社グループにおきましても、このような「デジタル系人材」を獲得することが非常に重要と考えておりますが、様々な業界・企業が求める人材であるため、採用は容易ではありません。

当社グループでは、テレワークやコミュニケーションツールの活用をはじめとした働き方改革に全社を挙げて取り組み、社員や協力スタッフにとって働きやすい環境の整備に努めることで、人材の確保に注力しております。さらに、キャリア採用の強化等で多彩な人材を迎え入れ、当社グループの一番の強みであるコンテンツ制作力を強化するとともに、新規事業にも積極的に取り組んでおります。このほか、経理等の重要な管理部門においても、専門スキルを有する「コーポレート人材」を継続して採用するなどし、ガバナンス機能の強化に努めております。

これらに加え、優秀な人材の永続的な確保という観点では、社員の流出を防ぐことも重要であると考えております。より働きやすい環境を目指して絶えず制度を改善していることから、離職率は、日本テレビ放送網㈱が1%程度である等極めて低い水準を維持しております。特に女性が働きやすい環境作りに注力しており、出産後の女性の復職率は非常に高く、出産を経た女性もキャリアを積み上げていくことが可能な環境を整えております。

また、人材の確保のみならず、人材の育成も事業の成長において重要な要素であると考えております。当社グループでは、業務に必要なスキル・知識、マネジメント能力等の習得に向けて、OJT(On-the-Job Training)を軸とした育成に加え、Off-JT(Off-the-Job Training)の機会を増やしております。また、部署の横断プロジェクトの立上げや社内あるいはグループ内外の人事交流を深めること等を通じて、優秀な人材の育成に努めております。評価制度を充実させるとともに、報酬については成果・業績に基づく賃金体系を導入しており、社員のモチベーション及びパフォーマンス向上に取組んでおります。

しかしながら、労働力・人材を十分に確保できなかった場合、また労働関係の法令や制度の改正等により人材に関わる費用が増加する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

② 組織及び人材の活用

当社グループでは、人的資本を活かす上で、適切な組織の構築と適材適所の人材の配置が重要であると考えております。組織においては、当社グループが創り出すコンテンツの価値最大化とDXを実現するための組織改編や、生活・健康関連事業を強力に推進・統括する部署の創設、社内ベンチャーとして誕生したVTuber事業の分社化等、中期経営計画の達成に向けて、適切な組織の構築に努めております。また、会計システムにおける伝票の申請・承認・保管及び受取請求書の電子化、クラウドサービスの導入等ITテクノロジーの活用、社内横断プロジェクトを通じた業務のボトルネックの改善等、業務の効率化を図り、余裕が生じた労働力を新規事業に充当することにより、事業の拡大に努めております。

しかしながら、人的資本が有機的に機能しない事態に陥った場合、企業活動が停滞し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

なお、2[サステナビリティに関する考え方及び取組]において「(3) 人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標」に関する記載がありますので併せてご覧ください。

 

(6) 保有資産

① 保有不動産の価値低下

当社グループは、事業の用に供する様々な不動産を保有しております。このうち、汐留地区にある本社ビル「日本テレビタワー」及び番町地区に保有する不動産は、メディア・コンテンツ事業及び不動産関連事業に供している資産で、当連結会計年度末における汐留地区の「日本テレビタワー」及び番町地区の保有不動産の帳簿価額は合わせて、2,111億5千8百万円(建物及び構築物と土地の合計額)であり、当社グループの総資産の17.8%を占めております

当連結会計年度末現在、汐留地区の「日本テレビタワー」及び番町地区の保有不動産に関して減損の兆候は認識しておらず、将来における回収可能性はあるものと認識しており、当面、減損の兆候を認識するような事態にはならないと考えております。しかしながら、将来において、経営環境の著しい悪化等により当社グループの収益性や営業キャッシュ・フローの大幅な悪化が見込まれた場合や、地価が著しく下落した場合、保有する不動産に対して減損損失を計上する必要があるため、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります

 

② システムの開発・投資

当社グループは、放送事業における基幹システムの更新・改修に加え、動画配信事業におけるシステムの開発、さらにはクラウドを利用する番組制作システムやインカメラVFXといった新技術への対応を行うなど、次世代技術を含めた開発・新規投資を行っております。加えて、新規に事業を開始する際には新たに対応するシステムの構築が必要となる場合もあります。事業の効率性を高め、競争力のあるサービスを提供するためには、これら様々なシステムの重要性はますます高まっています

必要と認められるシステムは、初期費用、ランニング費用、その後の必要な改修費用等を慎重にシミュレーションし、外部ベンダーへの依頼やグループでの内製及びクラウドサービス等の利用により、システム開発及び改修の必要性を精査することでコストコントロールに努めて構築しております

しかしながら、近年の技術革新のスピードや消費者ニーズの変化はとても速く、当初の予想を超えて開発・投資した技術やシステムが陳腐化する等、当初計画値以上の再投資が必要になる場合、さらに投資額に見合った収入の確保あるいは業務の効率化が見込めない場合には、固定資産の減損及び減価償却費の増加等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

また、近年ではサイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化していることから、各種システムのセキュリティリスクは年々高まっています。当社グループとしても様々な高度なセキュリティ対策を講じていますが、これらを超える新たなセキュリティ上の脅威が発覚し、その対策として多額の投資が発生した場合、あるいは個人情報や営業上の機密の漏洩をはじめとするリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

③ 保有有価証券

当社グループは、事業上の結びつきまたは資金運用を目的とし、複数の会社・組合等に投資を行っています。一方で、当社グループは、保有有価証券等の評価に当たり、会計基準に則した社内ルールを設定し、減損処理等の必要な措置を適宜施し、投資先企業の業績や市場での取引価額が当社グループの業績に適切に反映されるよう厳格に運用しています

新規の投資案件に関しては、リスク及びリターンを充分に考慮し、投資判断を行っています。また、保有している有価証券等につきましても、投資先との関係、取引状況、協業機会、シナジー効果及び市場の動向や投資先企業の業績を定期的にチェックし、最大限の収益獲得に努めています。しかしながら、これらの投資先企業の業績や市場動向を確実に予想することは困難であり、将来的に当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

 

(7) 法的規制等

① 認定放送持株会社に対する法的規制

認定放送持株会社は、放送法による認定を受けることで、複数の地上波放送局とBS放送局及びCS放送局を子会社として保有することが認められています。当社は日本テレビ放送網㈱、㈱BS日本、㈱CS日本を子会社とする認定放送持株会社として認定を受けています。今後、認定放送持株会社の資産に関する基準等、放送法で定める基準を満たさなくなった場合には、認定の取り消し(放送法第166条)を受ける可能性があります。仮に認定の取り消しを受けた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります

また、放送法で定める外国人等が直接及び間接に占める議決権の割合が、当社の議決権の20%以上となる場合には、認定放送持株会社としての認定が取り消されることになります。このため、このような事態に至る場合は、放送法に基づき、外国人等が取得した当社株式につき、株主名簿への記載または記録を拒むことができ、その議決権は制限されることとなります

 

② テレビ放送事業者に対する法的規制

当社グループの主たる事業であるメディア・コンテンツ事業におけるテレビ放送は、「放送法」及び「電波法」等の法令による規制を受けています

このうち、放送法は放送の健全な発展を図ることを目的とし、番組編集の自由や放送番組審議機関の設置、BS・CS放送等の衛星基幹放送の業務の認定に関する基準等を定めています。また、電波法は電波の公平且つ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的としています。電波法第4条は電波を送信する「無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。」、電波法第13条では「免許の有効期間は、免許の日から起算して五年を超えない範囲内において総務省令で定める。」など、地上基幹放送の免許を定めています。当社グループのテレビ放送事業については、当社が1952年7月31日に我が国初のテレビ放送免許を取得し、それ以来、放送局の再免許を受けてきました。2012年10月1日には認定放送持株会社化した当社に代わって、子会社の日本テレビ放送網㈱が同日免許を承継し、現在に至っております。また、㈱BS日本、㈱CS日本につきましてはそれぞれ衛星基幹放送の業務の認定を受けており、放送法等の法令による規制を受けています

所定の事態が生じた場合における総務大臣の権限として、衛星基幹放送に関しては放送法の「業務の停止」(第174条)や「認定の取り消し等」(第103条、第104条)、地上基幹放送に関しては電波法の「電波の発射の停止」(第72条)や「無線局の免許の取り消し等」(第75条、第76条)を定めております。将来にわたるテレビ放送事業の継続は、当社グループの存立をも左右する問題であり、当社グループといたしましては、そのような事態が生じることのないよう常に公平・公正さを保ち、信頼される番組作りを心掛け、放送の社会的使命を果たしていく所存です。具体的には視聴者センターを設け、視聴者の皆様の声を伺い番組作りに役立てるほか、考査部や番組審議会を組織し、定期的に放送番組をチェックすることで放送倫理を保つことを心掛けます。しかしながら、仮に放送法や電波法に反するような状態が生じ、放送事業の免許や認定の取り消し等を受けた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります

 

③ 個人情報の取り扱い

当社グループは、動画配信サービスや通信販売事業、スポーツクラブ事業等のサービスを展開するにあたり、会員及びユーザーの氏名、住所、電話番号、口座情報などのほか、番組の観覧者や出演者などの個人情報も取り扱っております。当社グループは、これらの個人情報は当社グループの事業の運営に際し必要不可欠な資産であると認識しております。従って、当社グループは、全ての会員及びユーザー並びに番組関係者等が安心して当社グループのサービスの利用若しくは番組等と関係を築くことができることが重要であると捉え、個人情報保護の観点から、従業員等に対する研修を行い、社内ルールの徹底を図ることで情報セキュリティの確立に注力しております

しかしながら、昨今のサイバー攻撃の手口は高度化・巧妙化していると同時に個人情報の保護に関する法令等もますます複雑化しております。不正アクセス・不正利用などにより、当社グループの有する個人情報が漏洩した場合、あるいは複雑化する個人情報の保護に関する法令等に適切に対応できなかった場合、当社グループのデータ管理への信頼性の低下による各事業への影響並びに損害賠償等の発生により、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります

 

(8) 災害及び感染症等

① 自然災害・気候変動等

我が国は元来、地殻変動や火山活動が発生しやすい地理特性にあり、地震・津波や噴火及びそれに伴う事故といった大きな被害が度々発生しております。これに加え、近年、地球温暖化に伴う異常気象の影響もあり、大型台風や局所的な集中豪雨といった風水害の危険性も高まってきております

日本テレビ放送網㈱等は放送法により「暴風、豪雨、洪水、地震、大規模な火事その他による災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、その発生を予防し、又はその被害を軽減するために役立つ放送をするようにしなければならない」と災害時の放送を義務付けられております。当社グループは、報道機関としてこのような有事の際に、携わる社員・スタッフの安全を確保しつつ、国民の皆さまにいち早く正確な情報を伝達する使命を有しております。大規模災害が発生し、報道特別番組等を放送する場合には、事前に予定されていたCM放送を休止することがあるほか、被害状況によっては、当社グループの放送設備が被災し、テレビ放送自体に支障が生じる可能性があります

当社グループではこのような大規模災害時でもテレビ放送を続けられるよう、番町地区に耐震性が高くBCPに対応したスタジオ棟を建設する等の対策を講じております。また、首都圏が甚大な被害に見舞われ、東京地区からのテレビ放送が困難な事態に陥った場合には関西地区からの放送が実施できる仕組みを整えることで放送の継続を可能とする体制を築いております

このほか、テレビ放送以外の事業におきましても、保有または利用する設備等が被災した場合、あるいは携わる社員・スタッフが何らかの被害にあった場合でも事業への影響を最小限に抑えられるよう、様々なケースを想定してシミュレーションを行ない、対策を講じております

しかしながら、想定以上の事態が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります

なお、気候変動に関しましては、2[サステナビリティに関する考え方及び取組]「○ガバナンス及びリスク管理 ②リスク管理」及び「(1) 気候変動問題に関する重要な戦略並びに指標及び目標」に記載しております。

 

② 新型コロナウイルス感染症を含む感染症の拡大等

新型コロナウイルス感染症を含む感染症の拡大等により、テレビ広告収入への影響や公開映画・イベント等の延期・中止、スポーツクラブの時短営業やテーマパークの入場制限などの影響が広範囲に及ぶことが想定されます。これらにより、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

「第2[事業の状況]1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](3) 中期経営計画 2022-2024 ③財務方針」に記載しております。

また、当社は、取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当をすることができる旨を定款に定めております。

配当の支払回数につきましては、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本とし、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

当事業年度は、上記方針に基づき、1株当たり10円の中間配当を実施済みであり、期末配当は、2023年8月28日をもちまして日本テレビが開局70年を迎えたことから普通配当27円に開局70年記念配当3円を加えた1株当たり30円の配当を実施することに決定いたしました。なお、期末配当については、第91期定時株主総会での定款変更決議を経まして、株主名簿外の外国人等株式への配当支払を実施いたします。

当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月2日

取締役会決議

2,559

10

2024年6月27日

定時株主総会決議

7,773

30