リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものを想定しています。
本項には、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において、当社グループが判断したものです。
(1)事業環境・経営戦略にかかわるリスク
① 国際情勢によるリスクについて
当社グループは、アジア・中国・米州・欧州の各地域に海外現地法人等の拠点を置き、グローバルな事業を展開していることが強みである一方、国際情勢に対して影響を受けやすい事業環境にあります。この環境下において、ウクライナ戦争の長期化や米中間の貿易摩擦、中国経済の減速など未だ先行きが不透明な状況が続いており、その影響として原材料やエネルギー価格の高騰・高止まりや、為替相場の変動等が生じ、製造業をはじめとする企業では調達国・生産国の変更などサプライチェーンの再構築を進める動きも出ています。このような国際情勢を起因とする変化に対して、当社グループが適切に対応できない場合、取り扱い貨物量の減少、ひいては売上高、利益の減少につながり、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、国際情勢の変化への対応として、グローバルネットワークの活用や各拠点の地場営業力の強化を通じ、顧客のサプライチェーンの構築・管理に貢献できるサービスの提供を行っています。
② 競合のリスク
当社グループの主要事業である国際物流事業は、国際複合一貫輸送として提供する海上輸送、航空輸送、鉄道・トラック輸送から、港湾・倉庫、引越、通関業務に至るまで、物流全般において幅広くサービス展開をしております。
しかしながら、国内外での他社の新規参入や同業他社間の競争激化に対して、当社グループのサービス優位性が低下した場合、事業規模の縮小や利益率の悪化につながり、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、産業別の営業体制を構築し、それぞれの分野で培った豊富な専門知識・スキル・ノウハウを活かした顧客のニーズに応える高いサービス品質を保つとともに、グローバルネットワーク等の当社の強みを活かした独自のサービスを提供することで、他社との差別化を図っております。
③ ビジネスモデルの変化によるリスク
a.顧客企業が属する業界の産業構造の変化について
当社グループは国際物流事業を軸として、多種多様な業界に属する企業を顧客としておりますが、自動車産業に関連する顧客の取り扱い貨物の割合が比較的高く、当社グループの業績は少なからず自動車の生産・販売動向の影響を受けます。今後、脱炭素社会の実現に向け、従来のガソリン車から電気自動車(EV)をはじめとする次世代環境対応車両等への転換による産業構造の変化が進んだ場合、自動車部品の種類の変更や品目数の減少により、取り扱い物量が減少し、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、EV等で使用される部品の輸送や保管専用施設の拡充、専用物流容器の開発等の新たな物流の提案を行い、産業構造の変化にも対応するサービスの優位性の確立に努めています。
b.テクノロジーの進化について
当社グループが事業を展開している物流業界では、AIやIoTを活用した倉庫の自動化や貨物のリアルタイムトラッキング、デジタルフォワーダーの出現等、ビジネスモデルの多様化や物流業務の電子化が進んでいます。このような業界構造の変化や新しいビジネスモデルの出現に対して、適切な対応を取れない場合、取り扱い物量が減少し、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、デジタルフォワーディングサービスの「Forward One」によるオンラインでのサービス提供等、輸出入手配の効率化を図っております。ほかにも物流容器に着目したサービス「ハコラボ」等のIoTを活用した革新的な物流サービスを提供することで、物流DX化に対応しております。
④ 人口減少のリスク
当社グループは最大の事業基盤である日本を中心にグローバルな事業を展開しておりますが、日本を始めとする世界の先進国では人口減少と少子高齢化が顕著になっており、今後も中長期に渡って進行していくことが予想されます。このような人口減少等による経済活動の縮小に対して、当社グループが適切に対応できない場合、取り扱い貨物量の減少、ひいては売上高、利益の減少につながり、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、人口増加国での取り扱い拡大・強化を進めるとともに、IT等の省人化、効率化により高い収益性の確保に努めています。
⑤ 人材確保のリスク
当社グループの主要事業である物流事業及び旅行事業は、質の高い人材の確保や適正な人員配置が重要であり、人材を継続的に採用し、労働環境の整備や教育体制の充実等を図っております。しかしながら、労働需給が逼迫し採用計画に基づく人材を複数年に渡り十分に確保できない場合、従業員の離職が著しく増加した場合、また2024年問題をはじめとする運転手不足に直面した場合、事業運営の遂行に困難が生じ、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、賃金制度や評価制度の拡充、採用計画に基づく新卒の定期採用、中途採用の適宜実施、2024年問題については労働環境の整備、輸送効率の見直しや省力化への対応などにより、必要な人材の確保と人手不足の解消に尽力し、事業運営が遅滞なく遂行できるように努めております。また、サステナビリティに関わる重要課題として「一人ひとりの尊重と個の能力を最大限に発揮できる環境の整備」を掲げており、従業員エンゲージメント向上のための教育・研修制度、適切な人材配置、育児・介護休業規則の拡充及びテレワーク勤務規程の導入等の労働環境の整備により、必要な人材確保に努めています。
⑥ 気候変動等によるリスク
当社グループは、世界24ヵ国/地域でグローバルな事業を展開しておりますが、地球温暖化対策の国際的な枠組みを定めた協定の採択や各国でのSDGs達成に向けた取り組み等により、気候変動対策のための様々な環境規制が実施された場合、それに伴う顧客の事業活動の変化による物流需要の減少・受注機会の逸失、及び新たな設備投資等による費用負担が増加し、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、サステナビリティに関わる重要課題として「脱炭素社会の実現と環境に配慮した循環型社会への貢献」を掲げており、具体的な施策として、温室効果ガス(GHG)排出量削減目標を設定し、再生可能エネルギーへの電力契約見直し、太陽光パネル設置、各施設におけるLED照明導入による省エネ対策の強化、環境負荷の少ない車両・機器設備の導入等により排出量の削減に取り組んでおります。
なお、気候変動に関するリスクについては、TCFDの提言に基づきリスク・機会をより詳細に特定しており、2.サステナビリティに関する考え方及び取組で詳細に記載しています。
⑦ 固定資産の減損リスク
当社グループでは、土地、建物等をはじめとする有形固定資産を保有し、また他社の買収や投資時にはのれん等の無形固定資産が発生することがあります。土地、建物等については時価の著しい下落や事業環境の悪化により収益性が低下した場合、のれんについては投資先の収益が買収時の想定を大幅に下回り、かつ将来の回復が見込めず投資額の回収可能性が低いと判断される場合には、固定資産の減損損失の計上が必要となり、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、金額的に重要性の高い新規投資の際には投資額の適正性や将来の収益性を十分に評価・検討した上で、経営会議、取締役会において厳正な投資判断を行っております。
(2)ハザードリスク
① 自然災害によるリスク
当社グループでは、世界24ヵ国/地域に事業を展開し、それぞれの地域において港湾施設や倉庫など、事業を行う上で必要な施設を保有しております。万が一、地震、津波、高潮、洪水、台風、集中豪雨等の大規模自然災害によりそれらの施設に甚大な被害が発生した場合、事業運営に大きな影響を及ぼすとともに、その機会喪失による売上高の減少や施設の損害額等により、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、自然災害保険の加入や高潮、台風などに対する施設の防災機能を強化、また災害発生時のシステム停止を想定したデータセンターの分散運用により、自然災害発生時の損失を最小限にとどめるように努めております。また、事業継続計画(BCP)の策定や定期的な机上訓練を実施しており、自然災害により指揮命令系統に支障が発生した場合でも事業継続やサービス提供が可能な体制を構築しております。
② 情報関連のリスク
当社グループでは、物流事業、旅行事業、不動産事業の業務受託に際し顧客情報をはじめとする重要情報を取り扱っております。万が一、情報の外部漏洩やデータ喪失などの事態が生じた場合や、コンピュータウイルスやサイバー攻撃等により長期間情報システムに重大な障害が発生するような事態が生じた場合、事業活動の停滞や顧客への損害を与えることとなり、当社グループの社会的信用の低下、それに伴う売上高の減少や損害賠償費用等により、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、情報保護に関してはその重要性を十分認識しており「コンプライアンス・マニュアル」、「情報システム管理規程」、「情報セキュリティ規程」等に基づく情報管理を徹底し、また最新セキュリティソフトの導入や定期的なデータバックアップ、標的型攻撃に対する訓練など従業員への教育・啓蒙を定期的に実施し、リスクの低減化に努めております。
③ 感染症・伝染病によるリスク
当社グループは、世界24ヵ国/地域でグローバルな事業を展開しておりますが、新型ウイルス等感染症の拡大や新たな伝染病が発生した場合、従業員の健康と安全の確保を最優先とした感染防止のための営業活動の制限、顧客の事業活動の縮小・停止などによる物流需要の減少や、出張などの旅客需要の落ち込みによる売上高の減少等により、当社グループの財政状態や経営成績、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、危機管理規程に基づく事業継続計画(BCP)の整備をはじめ、テレワークやWEB会議の実施、ペーパーレスの推進による業務効率化、医薬品衛生用品の備蓄、及び感染症対策マニュアルに基づく有効な感染予防策を講じ、事業継続とサービス提供が可能な体制を構築しております。
(3)業務運営に関わるリスク
① 法的規制等によるリスク
a.事業免許等について
当社グループでは、物流事業、旅行事業、不動産事業において国内外の各種法規制に基づく事業免許等を取得しております。万が一、法的要件不備のまま事業を行った場合、営業停止、免許の取消等の様々な行政罰や課徴金の発生等により、当社グループの社会的信用の低下、それに伴う売上高の減少や損害賠償費用等、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
b.輸出入業務関連法令について
当社グループでは、国内事業においては、通関業法をはじめ港湾運送事業法、貨物利用運送事業法等の物流及び輸出入業務に関係する様々な法規制の対象となっており、同様に海外事業においても進出先・輸出先国の法規制等の対象となっております。万が一、法令違反が発生した場合、営業停止等の制裁による日常業務の制限や課徴金の発生等により、当社グループの社会的信用の低下、それに伴う売上高の減少や損害賠償費用等、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
c.その他事業関連法令について
当社グループでは、前出の事業免許等や輸出入業務関連法令のみならず、国内外の各事業において様々な法規制を受けております。万が一、違反行為等による不祥事が発生した場合には、当社グループの社会的信用の低下、それに伴う売上高の減少や損害賠償費用等により、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、事業免許等の要件の維持、法令改正への対応、法令遵守のため、業務マニュアル・業務手順書等の作成・更新、報告管理体制の整備、企業倫理向上のための企業行動指針である「日新企業行動憲章」や「コンプライアンス・マニュアル」をはじめとする各種社内関連諸規程等を定め、研修等による定期的な教育を通じて従業員への周知徹底を図っております。また、コンプライアンス委員会によるコンプライアンス活動の実践に努めるとともに内部通報制度の整備等とあわせて、法令遵守を推進する体制を構築しております。
② 事故によるリスク
当社グループでは、日々の業務に対する「安全・安心への取り組み」への強い意識が事業の根幹を支えておりますが、それが遵守されず、労働災害、物損事故、火災等の不測の事故が発生した場合、当社グループの社会的信用の低下、それに伴う売上高の減少や損害賠償費用等により、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、未然に事故を防止するために、労働安全衛生法等に則った安全衛生管理体制の整備、安全パトロールの実施や従業員向けの安全啓発教育の実施及び事故情報の水平展開等を行い、事故発生ゼロを目指しております。更に、事故発生時の初期対応や迅速な報告体制の整備も進めるとともに、倉庫などの保有施設に対しては、各社が個別に付保する保険や、グループ会社を包括する包括賠償責任保険の付保を一部実施し、万が一事故が発生した場合においても、当社グループが被る影響が最小限になるように努めております。
③ コンプライアンス・内部統制のリスク
当社グループの従業員及び取締役は、企業理念に掲げる「高い倫理観を堅持しつつ、グローバルに、自由で公正な企業活動を遂行する」精神のもと、法令遵守はもとより社会規範に則した公明正大な企業活動に取り組んでおります。しかしながら、万が一、従業員及び取締役による重大な法令違反や不正行為等が発生した場合には、当社グループの社会的信用の低下、それに伴う売上高の減少や損害賠償費用等により、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、法令遵守や企業倫理向上のため、企業行動指針である「日新企業行動憲章」をはじめ、「コンプライアンス・マニュアル」等の整備や従業員向けのコンプライアンス教育・研修の充実を図るとともに、コンプライアンス委員会の開催、内部通報制度の導入や、内部統制システムの整備、及び内部統制評価委員会の設置等、実効性の高いコンプライアンス体制の構築と内部統制機能の強化を図っております。
④ 過重労働のリスク
当社グループにおいて、過重労働や不適切な労務管理、またそれらを主因とする労働災害等が発生した場合、当社グループの社会的信用の低下、それに伴う売上高の減少や損害賠償費用等により、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループにおいては、36協定をはじめとする労務管理関連法令の遵守のみならず、職場における労働時間の適正化、e-learning等を利用した従業員への労務管理教育を図り、安全安心な労働環境の整備に努めております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、将来の経営環境の変化や事業展開などを見据え、業績、財務状況、配当性向の水準などを総合的に勘案し、安定的配当の継続を利益配分に関する基本方針としております。
また、安定配当の指標として、株主資本配当率(DOE)2.0%以上を下限配当として定めております。
上記方針に基づき、当期の期末配当金につきましては、1株につき普通配当60円の配当といたしました。これにより、中間配当50円を合わせた当期の年間配当金は1株当たり110円となります。
なお、当社は2006年6月29日開催の定時株主総会において、取締役会決議により剰余金の配当等を行う旨の定款変更を決議しております。また、当社は中間配当を行うことが出来る旨を定款に定めております。
来期以降につきましては、より一層の株主還元充実の観点からDOEをこれまでの「2.0%以上」から「4.0%以上」を目安といたしました。内部留保資金につきましては、経営基盤の確立に向け、中長期的見地に立ったグローバルな事業展開をはじめ、物流施設やIT関連の整備・拡充及び財務体質の強化のために活用してまいります。
以上の方針のもと、来期につきましては1株当たり中間配当金、期末配当金とも100円とし、年間配当金は200円を予定しております。
今後も成長投資と既存事業の深耕、新規事業の拡大等により業績の一層の向上を図るとともに、株主の皆様への利益還元拡充に努めてまいります。
(注) 基準日が当事業年度に属する取締役会決議による剰余金の配当は、以下のとおりであります。
配当金の総額には、従業員持株会信託に対する配当金(2023年11月9日決議分9百万円、2024年5月20日決議分7百万円)を含めておりません。