2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、当行グループはこれらのリスクの発生可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であり、これらのリスク管理体制につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

下表に記載したリスクのうち、当行グループの将来の経営成績等に与える影響の程度や発生可能性に照らして、「信用リスク」「市場リスク」「流動性リスク」「気候変動に関するリスク(移行リスク・物理的リスク)」「巨大災害等のリスク」「感染症に関するリスク」「お客さま本位の業務運営に関するリスク」「システムリスク」を重要なリスクと認識しております。

 

(信用リスク、市場リスク)

「信用リスク」は、銀行業務の運営において顕在化する可能性が相対的に高く、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している重要なリスクであります。中小企業取引はその業績が景気等に左右されることを前提として支え続けていくビジネスモデルであり、当行は、伝統的営業方針である「永代取引」のプロセスを通じ取引先の経営実態を的確に把握することにより、信用リスクを有する資産の健全性の維持・向上を図っております。また、特定の業種や債務者等に対する過度の与信集中を避けることに努めており、当行の与信は概ね小口に分散されております。なお、与信先の中には与信額が一定額以上の大口与信先も含まれておりますが、大口与信先については、与信額が5億円以上の与信先を定期的にALM委員会等に報告するなどにより重点的に管理しております。さらに、中小企業は、昨今の物価高や人件費の上昇等が企業業績に与える影響が大きいことから、これを注意深くモニタリングして、与信先への経営改善支援をさらに強化するとともに、信用リスクの増加が懸念される一定の債務者については追加的な貸倒引当金を計上しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

「市場リスク」は、信用リスクと同様の理由により、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している重要なリスクであります。金融・為替市場は、日経平均株価が最高値圏で推移する一方、日本銀行による利上げを受けた「金利のある世界」の到来、ウクライナや中東情勢など地政学的リスクの高まりなどにより、先行きの不透明感は高まっています。このような状況の中、当行グループは、さまざまな事象を想定したストレステストを実施し、あらかじめ影響や損失を把握するなど、適切なリスク管理に努めております。

また、当行グループは、「信用リスク」及び「市場リスク」について、VaR(バリュー・アット・リスク)法を用いた統合管理を行っております。これらのリスクにより損失が発生した場合に、保有する自己資本で損失をカバーできるようリスクを限定する仕組みである資本配賦制度を用い、経営戦略と一体となったリスク管理を行っております。

 

(流動性リスク)

「流動性リスク」は、銀行業務の運営において顕在化した場合の影響度が大きく、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している重要なリスクであります。預金等による資金調達と貸出金や有価証券等による資金運用の期間のミスマッチや予期せぬ資金の流出により資金調達に支障をきたした場合は、必要な資金確保が困難になる、あるいは著しく高い金利での資金調達を余儀なくされる可能性があります。当行グループでは、資金の逼迫をもたらすことのないよう資産の健全性と信用の維持に努めるほか、常に余裕を持った資金繰りを行うことができるよう資金調達や運用状況の分析を行っております。 また、資金繰り逼迫時の対応をまとめた危機管理対策を予め策定し、流動性リスク管理に万全を期しております。

 

 

(気候変動に関するリスク(移行リスク・物理的リスク))

「気候変動に関するリスク」には、気候関連の規制強化や脱炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と、気候変動に伴う自然災害や異常気象の増加等による物理的な被害に伴うリスク(物理的リスク)の2つがあります。気候変動は、地域社会、お客さま及び当行に重大な影響を及ぼすと考えられるため、重要なリスクと認識しております。

〇移行リスク

当行は、移行リスクの把握にあたり、気候関連の規制強化や脱炭素社会への移行による影響及び当行の融資ポートフォリオにおける構成割合の2点を踏まえ、分析対象セクターとして「電力」、「海運」及び「陸運」を選定しております。分析対象の3セクターについて、IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)のNet Zero Emissions by 2050(1.5℃)シナリオ等を踏まえ、財務インパクトの影響(分析対象期間:2050年まで)について分析を行っております。この結果、信用コストの増加額を最大約40億円と算定しております。

〇物理的リスク

当行の事業活動に対する直接の物理的リスクとして、自然災害による本支店等の設備への被害、当行グループ役職員への人的被害が想定されます。これらに対し、「業務継続計画(BCP)」を含む対応マニュアルの整備及び災害対応訓練等を通じた災害対策の実効性向上や、本部建物が被災した場合に備えた2拠点化等を実施しております。また、洪水等で取引先の社屋や工場が被災することにより、担保不動産の毀損や休業による売上減少等が発生し、結果として当行の信用コストが増加することが想定されます。これらのリスクの把握については、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:国連気候変動に関する政府間パネル)のRCP(代表的濃度経路)8.5シナリオ(4℃シナリオ)等を踏まえ、洪水等の被害による財務への影響分析(分析対象期間:2050年まで)を行っております。この結果、信用コストの増加額を最大約67億円と算定しております。

 

(巨大災害等のリスク)

「巨大災害等のリスク」につきましては、当行グループが地盤とする徳島県は、南海トラフ巨大地震の発生が予想されております。当該地震が発生した場合、役職員、店舗等の施設及び取引先に甚大な被害が発生すると想定されることから、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性がある重要なリスクと認識しております。当該リスクについて、「業務継続計画」を含む対応マニュアルを整備し、行内及び地方公共団体等の行外と連携した災害対応訓練を実施することにより、その実効性を高めております。また、本部が被災した場合に備え本部機能を2拠点に分散するとともに、徳島県外にシステムのバックアップセンターを設置し、災害時の金融機能維持及び業務継続態勢を確保しております。

 

(感染症に関するリスク)

「感染症に関するリスク」につきましては、業務継続の観点から重要なリスクとして認識しております。新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ、その他の感染症などのお客さまや役職員への感染を防止し、業務継続態勢及び金融機能の維持に努めます。また、新たな感染症発生に伴うパンデミックにより経済活動が停滞し、景気が悪化した場合には、お客さまの資金繰り支援などについて最優先で対応します。

 

(お客さま本位の業務運営に関するリスク)

「お客さま本位の業務運営に関するリスク」につきましては、不適切な金融商品販売等を行うことは、お客さまに多大なご迷惑をおかけするとともに、一部業務停止等の行政処分や信用失墜を通じた当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性がある重要なリスクと認識しております。人生100年時代を見据えた安定的な資産形成への社会的関心が一段と高まる中、当行をはじめとする金融機関には、お客さまの資産形成に資する商品組成・販売・管理等を行う態勢構築が求められております。

このため、当行は「お客さま本位の業務運営に関する取組方針」を制定し、当行の伝統的営業方針「永代取引」の考え方を全役職員が共有し、お客さまにあわせた最善のサービスの提供により、「お客さま感動満足(CIS)」とお客さまの一生涯を通じた安定的な資産形成の実現をめざし、金融商品販売に関する業務において、「お客さま本位の業務運営」を実践しております。同方針内においては、①お客さまの最善の利益の追求、②利益相反の適切な管理、③手数料等の明確化、④重要な情報の分かりやすい提供、⑤お客さまにふさわしいサービスの提供、⑥従業員に対する適切な動機づけの枠組み等、の6つの取組方針を掲げており、それぞれの項目に対する取組状況をモニタリングすることで、「お客さま本位の業務運営」の実践に向けた態勢整備を図っております。

 

(システムリスク)

「システムリスク」につきましては、多様化・複雑化する業務にコンピュータ・システムは欠くことのできない存在となっており、コンピュータ・システムの停止や誤作動、サイバー攻撃等による情報の漏洩・改ざん等が発生した場合には、お客さまに多大なご迷惑をおかけするとともに当行グループの信用失墜につながるため、重要なリスクと認識しております。

このため、災害や障害等に備え、「緊急事態対応計画(コンティンジェンシー・プラン)」を策定するとともに、コンピュータ機器、通信回線等の二重化によるバックアップ体制の整備、さらに情報資産の保護に向けての安全対策に関するルールとして「情報資産管理基本規程(セキュリティポリシー)」、「情報資産安全対策基準(セキュリティスタンダード)」を制定するなど、種々のシステムリスク対策に取組んでおります。また、高度化、巧妙化しているサイバー攻撃等へ対応する会議体(AWA-CSIRT)を設置し、サイバーセキュリティ管理態勢の整備・強化を図っております。

 

リスク項目

主なリスク要因

経営成績に

及ぼす影響

主な対応策

○信用リスク(注)

・景気動向の変化

・不動産価格の変動

・融資先等の信用供与先の経営状況の悪化等

・不良債権額及び与信費用の増加

・保有有価証券の減損又は評価損の発生

・信用リスク管理方針の制定

・信用リスクを有する資産の健全性の維持・向上及び最適なポートフォリオの構築

・信用リスク管理手法の継続的な見直しによる高度化

○市場リスク(注)

・金利、為替レート及び株価の変動

・資金利益の縮小

・保有有価証券の減損又は評価損の発生

・ALM委員会等を通じた市場動向の変化に対応したきめ細かい市場リスク管理

・資産・負債の健全かつ効率的運営

〇流動性リスク(注)

・資金調達と資金運用の期間のミスマッチ

・予期せぬ資金の流出

・資金繰りの逼迫

・著しく高い金利での資金調達によるコストの上昇

・資産の健全性と信用の維持

・常に余裕を持った資金繰りを行うための資金調達や運用状況の分析

・資金繰り逼迫時の対応をまとめた危機管理対策を予め策定

○気候変動に関するリスク(移行リスク・物理的リスク)(注)

・気候関連の規制強化や脱炭素社会への移行に伴う影響(移行リスク)

・気候変動に伴う自然災害や異常気象の増加等による物理的な被害(物理的リスク)

・与信先の収益悪化や被災に伴う不良債権額及び与信費用の増加

・自然災害による本支店等の設備への被害、当行グループ役職員への人的被害

・シナリオに基づいた影響分析を行い、当行の財務への影響を推計

・上記信用リスクと同様の対策を実施

・下記巨大災害等のリスクと同様の対策を実施

○巨大災害等のリスク(注)

・南海トラフ巨大地震等の災害発生による当行グループ役職員や施設等への甚大な被害の発生

・取引先の被災

・地域経済の悪化

・当行グループ役職員や施設等への甚大な被害による一部業務の停止

・地域経済悪化に伴う不良債権額及び与信費用の増加

・「業務継続計画」を含む対応マニュアルの整備及び災害対応訓練等を通じたその実効性の向上

・本部が被災する場合に備え2拠点化を実施

・徳島県外でのバックアップセンターの構築

・四国アライアンス参加行(当行、百十四銀行、伊予銀行、四国銀行)による大規模災害発生時の相互支援体制の構築

○感染症に関するリスク(注)

・経済活動停滞による景気悪化

・不安定な金融市場

・不安定な金融市場や営業活動自粛等による収益の悪化

・景気悪化による与信費用の増加

・経営環境の変化を踏まえた経営計画の策定と遂行

・業務の見直し・働き方改革への取組みの継続等、構造改革による生産性の向上

・休日相談窓口の設置、各種制度融資を利用したきめ細やかで迅速な資金繰り支援の実施

・役職員の感染

・役職員の感染による人的被害

・体調不良時の出勤停止など、職員間での集団感染発生の防止

・感染状況を勘案した、感染予防ルール等の随時見直し

〇お客さま本位の業務運営に関するリスク(注)

・不適切な金融商品販売等

・一部業務停止等の行政処分や信用の失墜による経営成績等への悪影響

・「お客さま本位の業務運営」の実践に向けた態勢整備

・「お客さま本位の業務運営に関する取組方針」の遵守

 

 

オペレーショナル・リスク

 

〇システムリスク(注)

・災害や機器・回線障害等によるシステムの停止、誤作動

・コンピュータの不正使用、サイバー攻撃

・業務遂行への悪影響

・信用の失墜による経営成績等への悪影響

・災害や障害等に備え「緊急事態対応計画(コンティンジェンシー・プラン)」を策定

・コンピュータ機器・通信回線等の二重化によるバックアップ体制を構築

・情報資産の保護に関する「情報資産管理基本規程(セキュリティーポリシー)」等を制定

・サイバー攻撃等へ対応する会議体(AWA-CSIRT)を設置

 

事務リスク

・取扱商品の多様化、複雑化、事務取扱量の増大

・当行役職員による事故、不正、情報漏洩、情報の紛失、不適切な事務処理

・信用の失墜による経営成績等への悪影響

・当行資産の喪失や対応費用の発生等の経済的損失

・事務管理態勢の強化

・各種研修会及び勉強会等を通じた職員の意識や知識の向上

・事務リスクの高まりにつながる複数のリスク要因を数値化した「総合指標」を各営業店に還元し、事務リスクの管理及び改善のPDCAを実施

 

風評リスク

・当行グループに対する否定的な風評

・業務遂行への悪影響

・風評リスクの発生防止及び発生時におけるリスクの最小化のため「風評リスク管理規程」を制定

 

法的リスク

・法令違反等

・法令等の変更、廃止、新たな法令等の制定に対する不適切な対応

・信用の失墜、評価の悪化による経営成績等への影響

・法令に加え社会規範の遵守等、コンプライアンスの徹底

・コンプライアンス勉強会を通じた職員の意識や知識の向上

 

人的リスク

・役職員による人事運営上の不公平・不公正・差別的行為

・人事労務上の問題に関連する重大な訴訟の発生

・優秀な人材を確保できないなど、人的資産の損失・損害

・人材不足等による業務運営遂行の停滞・遅延

・コンプライアンスの研鑽

・適切な人事処遇や労務管理のため、労務関連法令諸規則を踏まえた人事関連諸制度を制定

・職員に対する公平・公正な評価、働き方改革の継続、処遇改善などを通じたES(従業員満足度)の向上

・エンゲージメントサーベイ、ダイアログ実施によるES(従業員満足度)の向上

 

有形資産リスク

・地震・台風等の自然災害や犯罪等の発生による店舗設備等への被害

・業務の一部停止等

・施設の耐震対策や災害対応訓練等の事前対策実施

・災害等発生時の態勢整備

自己資本比率に関するリスク

 

自己資本比率が悪化するリスク

・自己資本比率規制で求められる水準(国内基準4%)を下回る

・監督官庁からの命令による全部又は一部の業務停止等

・資産の健全性の維持

・経営計画の目標遂行等による自己資本の拡充

 

繰延税金資産に関するリスク

・将来の課税所得の見込額縮小による繰延税金資産の減額

・経営成績等への悪影響

・自己資本比率の低下

・経営計画の目標遂行等による課税所得水準の維持・向上

その他のリスク

 

地域経済動向に関するリスク

・主要営業基盤である徳島県の経済が悪化

・人口減少による地域経済縮小

・預貸金の減少に伴う収益の悪化

・人口減少に伴う預金の流出

・地域に密着した営業施策

・地域店舗ネットワークを活かした収益の向上

・地方創生への取組みによる収益の向上

 

ビジネス戦略が奏功しないリスク

・業態の垣根を越えた競争の激化

・市場環境の変化

・収益力の低下

・経営環境を踏まえた経営計画の策定と遂行

 

格付低下のリスク

・格付機関による格付の引下げ

・資金調達条件の悪化

・風評リスクの増大

・経営環境を踏まえた経営計画の策定と遂行

 

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与等対策に係るリスク

・犯罪収益の移転等に利用された取引等の看過

・経済制裁措置への違反

・当行グループの信用の失墜

・監督官庁による制裁金や制裁措置等の処分

・リスクベース・アプローチに基づく適切な管理

・システム導入等による管理態勢の高度化・効率化

・研修や勉強会の実施による職員の意識と知識の向上

 

紛争・テロ等に関するリスク

・資源価格の高騰

・為替レート・市場の混乱

・経済情勢の悪化による与信費用の増加

・資金利益の縮小

・保有有価証券の減損又は評価損の発生

・上記信用リスク、市場リスクと同様の対策を実施

 

(注)表中の「○」は、当行グループの将来の経営成績等に与える影響の程度や発生可能性に照らして、重要なリスクと認識しているリスクであります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当行は、株主への利益還元を重要な経営課題として認識しており、将来の収益基盤の強化に向けた内部留保の充実に努めるとともに、株主各位に対し安定的かつ積極的な利益還元を継続して行うことを基本方針としております。この方針のもと、配当と自己株式取得額を合わせた株主還元率を、親会社株主に帰属する当期純利益の40%以上とすることを目標としております。

当行の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本方針としております。配当の決定機関は、取締役会であります。

当事業年度の期末配当につきましては、業績等を総合的に勘案し、1株につき40円とさせていただきました。これにより、当事業年度の年間配当は中間配当35円と合わせて1株につき75円となりました。

内部留保金につきましては、自己資本の充実を図りつつ、お客さまのニーズの多様化にお応えするための有効投資や効率的資金運用による収益力の向上を通じて、経営基盤の一層の強化に役立ててまいります。

(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月10日

取締役会決議

1,433

35.00

2024年5月10日

取締役会決議

1,615

40.00