リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループ(当行及び連結子会社)が判断したものであります。
当行グループでは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応につとめており、リスク管理体制を整備し、その業務やリスクの特性に応じた管理を行っております。中でも、当行グループの主要な収益源である貸出や有価証券運用に係る重要なリスクである (2) 信用リスク及び (3) 市場リスクについては、統計的手法であるVaRを用いて一定の確率で将来被る可能性のある最大損失額(リスク量)の計測※を行い、リスク量を自己資本の範囲内にコントロールすることで、経営体力に比してリスクが過大とならないように管理を行っております。また、定期的にストレステストを実施し、経済環境や市場環境の大幅な変化が当行グループに与える影響の把握と評価を行い、必要に応じて対応策を検討しております。
※信用リスク(信頼区間:99.9%、保有期間:1年)、市場リスク(信頼区間:99%、保有期間:120営業日)
日本銀行によるマイナス金利政策解除等により金融市場におけるボラティリティが上昇しており、当行グループが保有する資産の市場リスクが顕在化しております。また、長引くウクライナ情勢等の地政学リスクに加え、原材料及び資源価格の高騰等がお客さまの経営状況に悪影響を及ぼし、それが当行グループに財務上の影響を及ぼす可能性があります。このため、リスクへの感応度を一層高め、経営体力に比して過剰なリスクテイクを行わないよう慎重に投資等を行うとともに、お客さまに対しては資金繰り支援と低迷する事業の正常化に向けた経営改善及び事業再生の支援に最優先で取り組むことでリスクのコントロールにつとめております。
また、近年世界各地で発生する猛暑や豪雨、干ばつ等の異常気象は、温室効果ガス排出量の増加に伴う地球温暖化が原因のひとつと考えられております。当行グループの主要な営業地域である瀬戸内圏域においても集中豪雨が発生し、お客さまが被害に遭われ、当行グループへの直接的・間接的な影響も大きくなっていることから、政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組みを、お客さま・地域社会と一体となって進めております。
(1) 気候変動リスク
当行グループは、気候に起因するリスクには物理的リスクと移行リスクがあると認識しております。物理的リスクは、異常気象に伴うお客さまの資産の毀損による信用リスク及び当行の営業店舗等の損壊等によるオペレーショナルリスクを、移行リスクは、気候関連の規制強化や脱炭素に向けた技術革新の進展等の影響を受けるお客さまに対する信用リスクの増大等を想定しており、これらのリスクが当行の事業運営及び戦略、あるいは財務計画に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、気候変動リスクに対応するためのガバナンス及びリスク管理態勢の整備を進めております。また、自らの事業活動で生じるCO2の削減を図るとともに、脱炭素社会に向けたお客さまのトランジション(移行、変化)支援に取り組んでおります。なお、これらの取組みの詳細は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿って当行ホームページ(URL:https://www.114bank.co.jp/company/policy/tcfd.html )にて開示しております。
(2) 信用リスク
当行グループは、一般事業法人、地方公共団体、及び個人等に対して融資及び保証業務、市場性取引等を行っております。これらの業務については、信用リスク管理を適切に行っておりますが、国内外の景気動向に加え、原材料及び資源価格高騰による取引先の経営悪化、担保不動産価格や株価の変動等によって、不良債権及び与信関係費用が想定以上に増加し、その結果、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。なお、「第5 経理の状況」における「注記事項(重要な会計上の見積り)(貸倒引当金)」に記載の仮定を置き貸倒引当金を計上しておりますが、新型コロナウイルス感染症特別融資の返済開始の影響については、今後のお客さまの状況により当該リスクが顕在化するおそれがあります。
このため、当行グループでは、大口与信先の管理強化や小口化によるリスク分散を進めるとともに、本部と営業店が一体となり、お客さまの経営改善支援に取り組むことで、与信関係費用の抑制につとめております。
(3) 市場リスク
①価格変動リスク
当行グループは、お客さまとの関係強化等を目的として政策保有株式を、また、資金運用の一環として純投資目的株式、債券、投資信託及びJ-REIT等を保有しております。これら有価証券は、企業業績や景気・金利などの経済的要因、政治動向、需給動向等により価格が下落し、評価損が発生するおそれがあります。また、評価損を抱える銘柄を売却した場合や時価額が著しく下落し回復可能性が見込まれない銘柄を償却(減損処理)した場合、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、有価証券のリスクの状況や相関等を分析し、分散投資を進めることで有価証券ポートフォリオ全体での評価損発生の抑制や財務上の影響の軽減につとめております。また、政策保有株式については、お客さまと十分な対話を経た上で削減を進めております。
②金利リスク
当行グループの主な収益源は、預金で調達した資金を貸出金や有価証券で運用して得る資金利益であります。この資金利益は、景気動向や競合環境、規制当局の方針、日本及び海外の金融政策等により金利が変動することで減少するおそれがあります。金利が低下した場合は貸出金・有価証券の利回りが低下して資金利益が減少するほか、金利が上昇した場合でも預金利回りの上昇に比べ貸出や有価証券の利回りの上昇が緩やかとなれば資金利益が減少するおそれがあります。このような場合、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、金融の枠を超えた様々な課題解決を通じてお客さまの信頼を得るとともに、金利競争や市場環境に左右されない関係を構築することで、貸出金利回りの改善につとめております。また、手数料ビジネスや有価証券運用の強化、経費削減や事務効率化によるローコスト経営等の推進により利益水準の向上を図っております。
(4) 流動性リスク
当行グループは、資金の運用と調達の期間における大きなミスマッチの発生、風評リスクの発生等を起因とする資金流出、あるいは市場の混乱により外貨資金調達をはじめとした市場取引ができなくなった場合に、必要な資金を確保できなくなったり、通常よりも著しく不利な取引条件での資金調達を余儀なくされる場合があります。また、格付機関が当行の格付を引き下げた場合等においても、不利な取引条件での資金調達を余儀なくされる場合があり、その結果、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、日次・月次で資金繰り予想を行うとともに、資金調達先及び手法の多様化や潤沢な流動性準備を保有するなど安定的な資金繰りにつとめております。また、資金繰りに影響を及ぼすような不測の事態が発生した場合を想定し、「平常時」「警戒時」「流動性危機時」に分けた適切な対応がとれる態勢を整備しております。
(5) オペレーショナルリスク
①プロセスリスク
当行グループは主たる業務である、貸出、預金等の銀行業務に加えて、リース業務、信用保証業務、クレジットカード業務等幅広い金融サービスに係る業務を行っております。これらの多様な業務の遂行におきまして、不正確・不適切な事務が行われた場合、当行グループの信用・評価に影響を及ぼすとともに金融資産の喪失や損害賠償に係る費用が発生し、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、RCSA(Risk and Control Self-Assessment)を用いたリスクの洗い出し、リスク顕在化事象の分析、リスク顕在化の未然防止及び発生時の影響極小化策の実施等を行っております。
②システムリスク
当行グループでは、業務の多様化、高度化に対応するため、勘定系オンラインシステムをはじめとする各種システムを用いております。これらのシステムは、コンピュータ等のハードウェア、ソフトウェア及び通信回線等のネットワークから構成されており、システムのダウンや誤作動、通信回線の障害やコンピュータの不正使用が発生した場合は、業務の遂行や当行グループの信用・評価に影響を及ぼすとともに、金融資産の喪失や損害賠償に係る費用が発生し、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、データのバックアップの取得や通信回線の二重化等の措置を講じ、大規模災害等に備えた基幹システムのバックアップシステムを構築しております。また、「セキュリティスタンダード」を策定し、具体的安全対策基準を定めることにより、近年増加しているサイバー攻撃への対策も含めシステムの安全性確保につとめております。さらには、障害等が発生した場合に備えた行動計画を策定し、定期的に訓練を実施しており、障害時におけるお客さまへの対応力の強化に取り組んでおります。
③法務リスク(コンプライアンス)
当行グループは、業務を遂行する上で様々な法令諸規則の適用を受けており、これらの法令諸規則が遵守されなかった場合、又は法的に問題なくとも社会的な期待に応えることができなかった場合、当行グループの信用・評価に影響を及ぼすとともに財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、法令遵守だけでなく、高い倫理観に支えられた行動をとるため、研修の実施、内部通報制度の充実、反社会的勢力の排除、マネー・ローンダリング等の防止策等の態勢整備に取り組んでおります。
④人的リスク
当行グループは、多くの従業員等を雇用しており、多様な人材の確保や育成につとめております。しかし、十分な人材の確保・育成ができない場合、当行の競争力や効率性が低下する可能性があります。また、安全衛生上の問題、差別的行為、行員による不正行為等の発生により、当行グループの信用・評価に影響を及ぼすとともに、損害賠償などの損失発生により財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、安全衛生管理や不正防止の態勢整備を強化するとともに、人権尊重の企業風土醸成につとめております。また、人材育成の強化、従業員満足度の向上、多様な勤務形態の推進、人事制度の見直し等にも取り組んでおります。
⑤有形資産リスク
当行グループが、所有若しくは賃貸中である土地・建物、建物に付随する設備及び什器・備品、並びに車両等の動産・不動産について、災害、犯罪または資産管理の瑕疵などの結果、有形資産の毀損による損失が発生した場合、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、RCSAを用いたリスクの洗い出し、リスク顕在化事象の分析、リスク顕在化の未然防止及び発生時の影響極小化策の実施等を行っております。
(6) コンダクトリスク
当行グループや当行グループ役職員の行動や行為が、「顧客・取引相手」「従業員」「社会一般」「株主」などの正当かつ合理的な期待に応えられず、これらステークホルダーに損失を与える、もしくは利益を損ない、その結果として当行グループの信用・評価に影響を及ぼすとともに財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、リスク顕在化事象の分析、リスク顕在化の未然防止及びより良いコンダクトを行うために必要と考えられる施策実施等を行っております。
(7) 自己資本比率に係るリスク
当行グループは、海外営業拠点を有していないため「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(2006年金融庁告示第19号)」に定められた国内基準における所要水準(4%)以上の自己資本比率を維持することが求められております。所要自己資本比率を下回った場合は、金融庁長官から早期是正措置が発動され、銀行業務の健全かつ適切な運営を確保するために、業務の全部若しくは一部の停止などの命令を受けることとなります。
現時点での当行グループの自己資本比率は所要自己資本比率を大幅に上回っており、業務の停止などの命令を受ける可能性は低いと思われます。しかし、例え所要自己資本比率を上回っていたとしても、自己資本の毀損やリスクの増加により自己資本比率が大幅に低下した場合、早期是正措置の発動につながる可能性があります。
このため、当行グループは、信用リスクアセットの状況や損益予想に基づき、必要に応じリスクアセットのコントロールを行うなど、予期せぬ自己資本比率の低下を回避するための体制を整備しております。
(8) 災害及び感染症拡大に係るリスク
集中豪雨・南海トラフ地震等の自然災害の発生や感染症の拡大により、店舗等の施設や役職員が被害を受けること等で、業務継続に支障が生じたり、多額の損失が発生したりすることで、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
このため、当行グループでは、業務継続計画において緊急時は頭取を本部長とする総合対策本部を設置する等の役割や対応を定めるとともに、訓練の実施、施設の改修、備蓄品の確保等により、人的・物的被害の回避・軽減及び業務継続体制の実効性向上に取り組んでおります。
(9) その他のリスク
①年金債務に係るリスク
当行グループの年金資産の時価が下落した場合、年金資産の運用利回りが低下した場合、又は予定給付債務を計算する前提となる保険数理上の前提・仮定に変更があり退職給付債務が増加する場合、将来期間において認識される費用及び計上される債務が変動し、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
②繰延税金資産に係るリスク
当行グループは、会計基準に基づき、一定の条件の下で、将来解消すると見込まれる会計上の利益と税法上の課税所得との差異を繰延税金資産として連結貸借対照表に計上しております。しかし、将来の課税所得の予測に基づいて繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断される場合や会計基準等の変更により繰延税金資産の計上額が制限される場合には、繰延税金資産は減額され、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
③固定資産の減損に係るリスク
当行グループは、営業拠点等の固定資産を保有しておりますが、今後の経済環境や不動産価格、その他地域銀行を取り巻く環境の変動によって、当該固定資産の収益性の低下又は損失が発生した場合、多額の償却(減損処理)が発生し、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
④デリバティブ取引に係るリスク
当行グループは、金利や為替相場等の変動リスクのヘッジ目的やお客さまに対する各種リスクヘッジ手段の提供のほか、一定の限度額の範囲で収益獲得等を目的にデリバティブ取引を行っておりますが、相場環境や取引相手の信用状況が大きく変動した場合、又は契約不履行が発生した場合、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
⑤情報漏えい等リスク
当行グループは、業務の遂行上、顧客情報及び経営情報を大量に保有しておりますが、これらの情報の漏えい、紛失、改ざん、不正使用等が発生した場合、当行グループの信用・評価に影響を及ぼすとともに損害賠償に係る費用が発生し、当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当行の剰余金の配当の回数は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としており、配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。なお、当行は会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
また、当行は利益配分につきましては、株主の皆さまへの安定的な利益還元に配慮しつつ、内部留保の充実度合い、利益の状況及び経営環境等を総合的に考慮したうえで配当を実施する方針としております。
上記方針のもと、当事業年度(2024年3月期)の期末配当金は、1株当たり55円(年間配当金90円)としております。また、次期の年間配当金は、1株当たり100円(うち中間配当金50円)を予定しております。
なお、内部留保金の使途につきましては、営業基盤の拡充及び経営体質の強化並びにお客さまサービスの向上を図るための投資などに有効活用してまいります。
当行は、銀行法第18条の定めにより剰余金の配当に制限を受けております。剰余金の配当をする場合には会社法第445条第4項(資本金の額及び準備金の額)の規定にかかわらず、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に5分の1を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金として計上しております。
当事業年度における当該剰余金の配当に係る資本準備金又は利益準備金の計上額はありません。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
(注) 2023年11月10日取締役会決議の「配当金の総額」には、役員報酬BIP信託に対する配当金4百万円を
含めております。
また、2024年6月27日定時株主総会決議の「配当金の総額」には、役員報酬BIP信託に対する配当金
7百万円を含めております。