リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、本記載は、将来発生しうるすべてのリスクを必ずしも網羅したものではありません。
(1) 住宅着工の動向が業績に影響を及ぼすことについて
主力製品である窯業系外装材を始め、当社グループの製品はその多くが国内住宅産業向けであり、かつ国内窯業系外装材は業界内シェアが50%を超えていることから、当社グループの業績は住宅着工戸数の動向に影響を受けます。新設住宅着工戸数については、中長期的には、わが国の人口減少などの構造的要因により、減少が予想されています。当社グループとしては、従前より海外市場への進出や店舗・公共施設などの非住宅市場開拓にも注力しており、近年は新工法開発を武器として中高層建築物向けにも参入するなど市場開拓を図っておりますが、国内新築住宅向け市場規模の占める割合は大きく、その動向に影響を受けることになります。
特に窯業系外装材は、主に木造及び鉄骨造の建築物に使用されるため、戸建及び低層アパートの新設着工戸数と相関関係が認められます。従って、同着工戸数が窯業系外装材業界全体の出荷量の先行指標でもあり、当社グループの業績もその動向に大きく影響を受けることになります。
(2) 景気動向と競合等について
住宅関連業界では厳しい企業間競争が続く中、窯業系外装材業界は過去に提携・再編・統合などの動きがありましたが、最近はこれら業界再編の動きは落ち着いております。販売価格については、ここ数年は業界内で値上げ発表が相次いだことから上昇基調となっておりますが、先行きについては需要動向等によっては価格競争が再び激化するリスクがあります。
当社グループといたしましては、業界トップ企業として今後も商品力を背景に価格をリードする意向であり、高付加価値品を中心とする高級品化への移行を推進するとともに、一層のコストダウン・合理化に努め対応していく方針ですが、価格改定が計画通りに進まない場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 原材料・エネルギー価格等の変動と調達について
当社グループの製品製造における原材料・エネルギーは、その多くは塗料を始めとする原油からの生成品・セメント・パルプなどから構成されております。近時、これら諸資材の価格が短期間に大きく変動する傾向にあり、この傾向は今後も続くことが考えられ、従前のように比較的安価な材料等を安定的に調達できなくなるリスクがあります。また、特定の原材料について調達そのものが困難になるリスクもあります。
当社グループでは対策として、調達先の多様化や一括調達の検討、あるいは材料配合の見直しなど様々な調達方法の検討と合理化策を講じる一方で、次期の業績予想においても、一定の前提の下、資材価格の変動の影響を織り込むなどしておりますが、諸資材の価格が予想を上回ったり、販売価格への転嫁が不十分となった場合には当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(4) 製品の欠陥及び製造物責任について
当社グループは、従来より製造業の原点として製品の品質管理を徹底しておりますが、すべての製品について欠陥が無く、将来的にもクレームが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。
大規模なクレームや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が生じれば、多額の費用を要するのはもちろん、当社グループの製品に対する信頼性を損ない、それにより売上額が低下し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(5) 海外市場での事業展開について
当社グループは、海外事業を「次の成長エンジンの一つ」に位置付けております。米国については、日本国内及び米国で生産した窯業系外装材を住宅市場向け、及び商業施設などの非住宅市場向けに販売しております。人口増を背景に住宅市場は根強い需要があり、非住宅市場も経済成長の下、堅調に推移しております。今後はさらなる増産や高付加価値品の生産に取り組み、米国事業の拡大を図ります。
この方針の下、2021年10月に米国子会社にて高付加価値品を生産する第二工場を建設し、2022年6月から生産を開始いたしました。本工場は、日本で生産しているものと同等の高付加価値品を生産できる工場です。この第二工場により、高付加価値商品の現地での供給能力が増大することから、その拡販に一層注力してまいりますが、大きな生産トラブルや現地従業員の不足等によって第二工場が計画した通りに稼働せず、拡販のペースが遅れる可能性があります。
また、市場としての可能性を有する中国市場については、浙江省にある生産子会社2社が窯業系外装材を製造・加工しており、その大半を当社及び米国子会社に供給しているほか、一部は中国国内でも販売しております。
海外進出に際しては、海外市場での成長の機会に乗り遅れないために、収益の計上が見込まれる時期より早期に多額の投資を行う必要が生じます。このような立ち上がり期の投資額の増大によって、利益を上回る費用が必要となることがあります。さらに、海外における事業展開には、市場開放の問題、予期しない法律又は諸規制の変更、税務や政治的・経済的要因、あるいは戦争・テロなど様々なリスクが内在すると考えられ、それら要因が障壁となり、当社グループの事業成長が妨げられる可能性があります。
海外における事業活動の結果は、当社グループの業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(6) 為替変動の影響について
当社グループの業績及び財政状態は、為替相場の変動によって影響を受けます。為替の変動は、①当社及び在外子会社における外貨建取引や海外との間接的な輸出入取引に関わる資産・負債、収益・費用及びキャッシュ・フローに影響する場合、②連結財務諸表における在外連結子会社の資産・負債、収益・費用の円貨への換算額に影響する場合の二つの側面において影響を及ぼします。
現時点では営業利益段階での為替感応度は大きくありませんが、急激な為替変動によって資材調達額に大きな影響を受けたり、連結に占める米国事業の比率が変化することで為替変動の影響を受けやすくなる可能性があります。
(7) 大規模な自然災害の影響について
大規模な自然災害の影響につきましては、2011年3月11日に発生した東日本大震災後、国内では大地震に対するリスク認識が強まっております。かかる状況下、報道等によれば、東南海地震等の大地震が近い将来に発生する可能性が高いことが指摘されております。当社グループでは、東南海大地震が発生した際に「震度6弱」の揺れが予測される地域内に、当社名古屋工場、ニチハマテックス株式会社衣浦工場・大江工場等が存在します。
当社グループでは、将来予想される大地震の発生に備え、人的被害対応の訓練を実施するほか、建物の補強工事などの対策を講じておりますが、ひとたび大地震が発生すれば、当社グループの生産設備等に重大な影響を及ぼすことが想定されます。一方では、国内における経済活動の停滞に伴う消費動向の悪化により、当社グループの業績にマイナス影響が生じる可能性があります。
(8) 工場における火災・事故と設備トラブルについて
生産工場における火災・事故と重大な設備トラブルは、労働災害の発生や稼働停止による製品供給の中断に繋がります。特に、当社グループの一部工場においては、木質系材料の使用に伴う飛散ファイバー(木材ダスト)の発生と現場での高熱利用が相まって火災が発生するリスクがあります。
当社グループは、火災・事故を発生させないための体制や安全防火に係る各種マニュアル等の整備を進めるとともに、ダスト除去設備・モニター設置なども行い現場管理を強化しておりますが、火災・事故が発生した場合は当社グループの業績や財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
なお、不測の事態に備え、資産の保全や事業中断に伴う機会損失をカバーするために、損害保険によるリスクヘッジを併せて行っております。
(9) 知的財産について
当社グループでは、事業の優位性を確保するため、開発した製品や技術について知的財産権による保護に努めておりますが、出願する特許等に対して権利が付与されない場合や十分な保護が得られないことが起こり得る可能性があります。
また、知的財産権に関して、第三者の技術を使用したい場合に、その技術が使用できない、若しくは不利な条件で使用せざるを得ない、あるいは第三者から訴訟を提起されたり、第三者に対して訴訟を提起しなければならないことがあります。
当社グループでは、侵害警告等を受けることのないよう、体制・対応を整備して業務にあたっておりますが、万一、当社グループによる第三者の知的財産権侵害が認定された場合には、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
(10) 環境保全について
当社グループが製品を製造する過程で使用する材料等の中には、人の健康や自然体系に影響を与える物質等を含んでいるものがあります。
当社グループは、これらの有害物質を扱う社員の健康被害を防止するために作業環境の管理・改善を推進する一方で、大気・土壌汚染、水質汚濁等の環境汚染防止に係る各種環境関連法令を遵守するとともに、法令上使用が認められている材料等であっても、より環境に配慮した材料等の選択・利用にも取り組んでおりますが、万一、当社グループの事業活動に起因する環境汚染が発生した場合には、対応に多額の費用が生じたり、社会的信用が低下することにより、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
(11) 情報システムについて
当社グループは、生産・販売等の各種事業活動を行う上で、コンピュータシステム及び情報通信システムを利用しています。コンピュータシステム上のハードウェア・ソフトウェアの不具合や欠陥、通信ネットワークにおける障害等が生じた場合には当社グループの事業活動に支障が出る可能性があります。
また、これらの障害が生じた場合には、当社グループが保有する各種機密情報が外部に漏洩するリスクがあります。
当社グループでは、効率的で安定した事業活動の遂行と情報の秘密保持のため、適時・適切なシステムの更新やデータ処理能力の増強、障害発生時のバックアップ機能付加など体制を整備しておりますが、テロ、自然災害、ウイルス等による情報通信システムの不具合など、不測の事態が起きた場合には、当社の事業活動継続に影響が及ぶ可能性があります。
(12) 人材確保について
当社グループが継続的に事業を発展させるためには、専門技術に精通した人材、経営戦略や組織運営を企画推進できるマネジメント能力に優れた人材など、多種多様な能力を有する人材の確保・教育を継続的に行っていく必要があります。特に、工場などの現場においては、操業等に必要な有資格者を適切に配置し、運営を管理する必要があります。
当社グループでは、新卒採用のみならず経験者の通年採用を積極的に行うとともに、中長期を見据えた計画的な採用と育成に努めておりますが、これらが計画的に進まない場合には、長期的観点からの事業運営の有効性が損なわれ、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
(13) 納期管理・供給責任について
当社グループは、適切な納期を確保すべく事業活動を継続しておりますが、競合企業の価格施策や生産能力の変化などの影響に伴い、当社の供給能力を上回る受注により欠品や納期遅延等が発生するリスクがあります。
当社グループでは、このような状況を生じさせないためにも、販売・生産・調達などの各部門において情報の収集と共有を強化するとともに、前中期経営計画期間(2021年4月~2024年3月)には生産能力の大幅増強を実施し供給力を高めておりますが、深刻な欠品や納期遅延が長期間に亘って発生した場合は、顧客からの信用低下により当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
(14) 法的規制について
当社グループは、「(5) 海外市場での新規事業について」で前述した規制等の他にも、事業展開をする上で国内外の法令や許認可など様々な法的規制の適用を受けております。
また、これらの法的規制が従来よりも厳格になることも考えられます。
当社グループでは、これらの法規制に加えコンプライアンスを遵守すべく、行動指針を定め、研修等を通じて役職員への徹底を図っておりますが、法令の改変や規制強化に伴い当社グループの事業活動が制限されたり、法的規制に対応するための費用が増加することにより、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
(15) 気候変動について
気候変動に関しては、現状を上回る対策が採られなかった場合には、地球温暖化が進行することにより、自然災害の頻発化・激甚化が進み、当社グループの工場において浸水等による損害が発生するリスクのほか、調達先が被災することによってサプライチェーンが寸断され、当社グループの生産が一時的に停止するリスクがあります。
一方で地球温暖化阻止のための厳しい対策が採られた場合は、炭素税の導入によるコスト負担発生のほか、当社グループを含むサプライチェーン全体で温室効果ガスの排出抑制、カーボンニュートラルが求められることにより、資材・エネルギーコストや脱炭素に向けた設備投資が増加し、当社グループの業績が悪化するリスクがあります。
当社グループは、2022年6月に気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明いたしました。今後も、脱炭素化の推進や地球環境に配慮した商品の開発などを企業経営の重要課題と位置づけ、取組強化を加速していく方針ですが、想定を超えるような自然災害が発生した場合や当社グループの脱炭素化が計画どおりに進捗しなかった場合には、事業活動の継続や業績に影響を与える可能性があります。
(16) 人権及びコンプライアンスについて
サプライチェーンのグローバル化・複雑化が進む中、取引先において児童労働や強制労働等の人権問題の発生が判明した場合、取引先との取引停止を始め調達活動に大きな支障が生じるリスクがあります。
当社グループとしましては、調達基本方針の一つとして、「人権の尊重と労働安全衛生への配慮」を掲げており、取引先に対しても「基本的人権の尊重」と「安全で衛生的な職場環境の実現及び維持」をお願いしております。さらに新たに契約を行う取引先には人権の尊重に関する誓約をお願いするなどの取組を行っております。
また、当社グループにおいて、ハラスメントを始めとする労務関連のコンプライアンス違反が発生した場合、当社グループの企業イメージ低下や争訟の発生等、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループとしましては、ハラスメントは重大な人権の侵害に繋がる行為として、以前より発生防止に努めておりますが、パワハラをはじめとする各種ハラスメントのさらなる発生防止策として、従業員に対してeラーニングや定期的な動画視聴による教育活動を推進しております。
配当政策
3【配当政策】
当社グループの配当施策は、業績に応じた利益還元を基本としつつ、安定的な配当の維持に努めることを基本方針としております。
この基本方針の下、当期の期末配当金につきましては、従来の配当予想通り1株につき普通配当57円を実施することを決定いたしました。これにより当期の年間配当金は、既に実施済の中間配当金57円を加え合計で114円、連結配当性向は51.0%となりました。
また、当社は、当期において、連結配当性向を40%として運営してまいりましたが、株主還元をさらに充実させるべく、次期については連結配当性向を45%以上といたします。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年11月8日 |
2,060 |
57.0 |
取締役会決議 |
||
2024年6月25日 |
2,020 |
57.0 |
定時株主総会決議 |
なお、当社は中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本としておりますが、中間配当額は、年間配当指標を基礎として、中間期業績及び通期業績見通し等を踏まえ決定することとしております。
これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。