リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
記載したリスクは全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
① 世界経済情勢・グローバル展開
当社グループは、日本・アジア・欧米に生産拠点を有して事業展開しており、海外売上高は連結売上高全体の約67%を占め、今後も増加が見込まれます。グローバルな事業展開を推進するにあたり、予期せぬ法令・税制・輸出入その他各種の規制の変更、戦争・テロ・感染症などの政治的・社会的混乱の発生により、当社グループにおいて生産・販売活動の縮小を余儀なくされるおそれがあります。こうした事態に適切に対処できない場合、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事業展開する国または地域の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国の環境関連規制、製品の安全性・品質関連規制、輸出入関連規制の情報をタイムリーに収集し、グローバルな視点でリスクマネジメントを強化する体制を構築し、適時適切な取り組みを行っています。また、グループ内資金を有効活用する資金マネジメント、地域社会・行政との連携などを実施し、有事に強い企業として顧客の信頼を得るべく取り組みを進めていきます。
② 得意先との関係
当社グループは、トヨタ自動車株式会社をはじめとする、自動車部品が連結売上高の大半を占め、特定得意先への依存度が高くなっています。これら主要得意先の生産動向・方針変更による受注の減少等により、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、新規顧客の獲得に注力するとともに、得意先との長年の信頼関係を礎に、得意先のニーズを先取りした製品や新工法の提案による新規製品の受注獲得に努めています。また、モビリティ分野以外の新事業の推進を図っています。
③ 価格競争
当社グループの主要製品である自動車部品は、国内外で競合他社との厳しい価格競争や、原材料の仕入れ価格高騰等により、価格競争力や製品の優位性が維持できない場合、製品に対する需要の低下により、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、高品質な製品の提供を前提とした原価低減活動を推進し、価格競争力の維持・向上、新技術・新工法を駆使した高付加価値製品の提供に努めるとともに、ニーズのある地域でグローバルに生産できる体制を整備することで、優位性の確保に努めています。
④ 新製品・新技術開発
当社グループでは、連結売上収益の大部分を自動車関連部品が占めています。国内外で再編・提携の動きが加速し、技術開発競争が激化する自動車関連業界において、技術の急速な進歩と市場ニーズの変化に十分に追従できず、継続して魅力ある新製品を開発できない場合、将来の成長性と収益性を低下させ、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「思いをこめて、あしたをつくる」をパーパスとして掲げ、将来の飛躍に向けた成長基盤の構築を進めています。プレス・樹脂製品事業では軽量化に寄与する超ハイテン製品やアルミ製品、電動化により求められる快適性能向上のための樹脂製品の開発を進めています。バルブ製品事業では、TPMSの事業領域拡大に向けた開発、センシング技術や流体制御技術などのコア技術を活かした電動車向けの製品開発を加速しています。
また、主力製品への開発投資に加え、長期的な事業領域の拡大を見据え、センシング技術などを活用し、モビリティ以外の分野を含め社会課題や顧客課題を先取りした新事業開発にも果敢に挑んでいます。
2025年7月には新東大垣工場にR&Dセンターを稼働させ、「共創空間」をテーマに、開発・生産技術の一体的な研究開発と、将来の新事業創出の実現を進めていきます。
⑤ 原材料の調達
当社グループは、鉄鋼をはじめ黄銅やアルミなどの金属材料や、ゴム材料、樹脂材料などを原材料として使用しており、これら原材料の価格が資源やエネルギー費などの高騰により上昇し、当社グループで吸収または、販売価格に転嫁できない場合や、需給の逼迫や物流停滞による納入遅延等、供給能力の制約により、生産に必要な量を確保することが困難になった場合、製造コストの増加や売上収益の減少により当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、原価低減等の改善により、価格上昇分を吸収するよう努めています。また、原材料の需要予測に基づく在庫管理、グローバル調達による調達先の多拠点化、物流ネットワークの強化などサプライチェーンの最適化に取り組み、原材料の需給逼迫に備えています。
⑥ 製品の品質管理
当社グループは、高度な加工技術や精度の高い品質を要求されるプレス・樹脂製品やバルブ製品を生産しており、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の品質不具合が発生した場合には、多額のコスト負担や売上の減少、当社グループの信用低下による失注などを招き、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、高品質な製品を提供するため、設計・生産準備の段階から品質の造り込みを行うとともに、各工程で徹底した品質チェックと製品データ管理を行い、グローバル基準での品質保証体制を構築しています。
⑦ コンプライアンス
当社グループは、グローバルに拠点を有し、各国の法規制の適用や当局による法的措置による賦課や事業活動の制約、訴訟提起や損害賠償請求など法的手続きの当事者となる可能性があります。また、製品データの改ざんや下請法違反等、重大なコンプライアンス違反が発覚した場合、規制当局・監督官庁からの操業停止命令や社会的信用の失墜による売上低迷など、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、社会から信頼・共感されるために、従業員が高い倫理観を持って公正・誠実に行動することが重要と考えています。「行動ガイドライン」を策定し、全従業員に周知して意識向上を図るとともに、従業員の誰もが前向きな意見を自由に発言できる雰囲気を醸成するなど、心理的安全性の向上に努めています。また、自動車業界全体で注視している取引の適正化についても、公正取引委員会のガイドラインに則り、取引条件の設定には取引先との十分な協議を心掛けることに努めています。海外では、各国・地域の法令・慣習を反映した自国の行動ガイドラインを運用し、各国・地域の実情に即したコンプライアンス活動を行っています。また、「贈収賄・腐敗防止の基本方針」、「仕入先サステナビリティガイドライン」を制定し、従業員への啓発・教育、サプライチェーンへの展開を実施し、コンプライアンスの徹底を図っています。
⑧ 安全と健康の確保
当社グループでは、大小様々な生産設備を有しており、重大な労働災害が発生するリスクを負っています。重大な労働災害が発生すれば、人的影響はもとより、社会や取引先からの信頼を失い、事業停止を余儀なくされるなど、当社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、重大災害につながるSTOP6災害(挟まれ・巻き込まれ、重量物、車両、墜落・転落、感電、高熱物による災害)の視点に基づき、設備・機械の設計・導入段階からリスクアセスメントを実施し、設備への安全装置の付設や危険エリアの見える化などリスク低減と安全な作業環境づくりを進めています。また、机上・体感教育を通じて、危険予知能力の向上やリスクアセスメント手法・安全な異常処置の体得など、危険感受性を高めるとともに、考えて行動できる高い意識と深い知識を有する人財の育成に取り組んでいます。なお、健康経営にも取り組んでおり、3年連続で「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されています。
⑨ 人財の確保・育成
当社グループでは、事業の持続的な成長には、人財の継続的な獲得・育成が不可欠であると認識しており、計画通りに人財の獲得・育成が進まない場合、競争力の低下を招き、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、海外拠点でローカル人財をリーダー層に積極的に登用するなど、国内外においてダイバーシティ&インクルージョンを積極的に進めています。
また、人的資本経営を推進するため、労働環境を改善するなど様々な施策により会社と従業員との信頼関係を構築することで、心理的安全性を高めるとともに、従業員エンゲージメントを向上させ、従業員自ら挑戦できる風土への変革を進めています。さらには日常業務の改善に全従業員が取り組む改善活動の実施、オンラインビジネスプログラムの導入など、自らがスキルアップを実感できる教育・育成を実施しています。
⑩ 情報セキュリティ
当社グループは、生産管理などの管理業務、会計システム、社内外の情報伝達などにITを活用しています。クラウドサービスの利用増加やデジタルトランスフォーメーションの進展によりIT活用の重要性が高まる中、悪意あるサイバー攻撃や過失によるシステムダウンなどの危険が増大しています。このようなリスクの完全な排除は困難であり、情報システムの障害発生による事業活動の一時的な中断や情報漏洩による信用低下が、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、セキュリティ監視機器の強化、従業員への啓発・教育によるITリテラシーの向上、バックアップ環境の強化、有事に備えた生産継続体制を構築し、仕入先とともにでセキュリティ対策を継続的に推進しています。
⑪ 知的財産管理
当社グループでは、独自性、先進性を有する技術を駆使した高付加価値製品の開発に取り組み、多くの知的財産権を有しています。これら知的財産権が侵害され、または第三者から思いがけない権利侵害の指摘を受けるなど、適切な知的財産管理が行われない場合、経済的損失や信頼失墜など、当社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当社製品に使用される独自性、先進性を有する技術を特許出願により確実に保護するとともに、他社による権利侵害が持続しないような対策を講じています。また、技術開発・製品設計プロセスの各段階で知的財産権に関する調査を行い、他社の権利を侵害しないよう努めています。
さらに、知的財産として新価値創造に資する効果的な知財を生み出すべく、知財分析・人財育成・体制整備を進め、グループ全体の知財マネジメント力強化を図っています。これらの取り組みが一体となり、高付加価値で社会に資する事業成長を推し進めていきます。
⑫ 為替・金利・有価証券
当社グループは、為替レートおよび金利の変動により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、保有する株式の価格が下落し、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に為替レート変動により、外貨建取引の売上高・原価、資産・負債およびキャッシュ・フローならびに連結財務諸表における売上高・原価、資産・負債の現地通貨の円換算額の二つの側面で影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、為替レート変動の影響を軽減するため、米ドル、ユーロ等の主要通貨では為替予約を中心としたリスクヘッジを行っています。また、グループ間決済の一部について、同一通貨で入金と支払いの相殺を行っています。
⑬ 災害などの影響
当社グループでは、過去の被災経験やハザードマップなどから、国内外の各拠点にて、大規模地震、集中豪雨・河川氾濫等の風水害、火災・爆発等の事故、感染症の蔓延など、人的・物的被害が生じることにより、国内外のサプライチェーンや当社グループの事業活動の停止・停滞などのおそれがあり、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、災害の発生に備え、人命第一・地域復興・早期復旧を柱とするBCPや従業員の行動ガイドラインを策定し、建屋・設備の耐震対策、社員安否確認システムの導入、定期的な防災訓練の実施、応急手当普及員の増員、感染症対策など有事を想定した対策を講じています。
また、一極生産のリスクを回避するため、生産拠点の分散化や各拠点間で設備・生産方法の互換性を担保し、代替生産が可能な体制を構築するなど安定的な供給の確保に取り組んでいます。
⑭ 気候変動による影響
当社グループは、気候変動によるリスクへの取り組みを最重要課題の一つとして認識し、グループ全体でCO2削減に取り組んでいます。脱炭素社会への移行リスクとして、カーボンプライシングの導入・再生可能エネルギーへの切替、原材料価格の高騰に伴う製造コストの増加や電動車へのシフトを始めとする市場・顧客ニーズの変化に適切に対処できないことで、競争力や企業価値の低下を招くおそれがあります。また、物理リスクとして、局地的豪雨や洪水、水不足や干ばつなど異常気象の深刻化により、工場の操業停止やサプライチェーンが分断されたり、熱中症の増加等により生産能力の低下や製品供給の遅延が発生する可能性があります。
当社グループは、「PACIFIC環境チャレンジ2050」を策定し、スコープ1、2のCO2排出量を2019年度比で、2050年にネットゼロに、2030年に50%削減する目標を掲げ、省エネ活動の推進、再生可能エネルギーの積極導入、設備投資判断へのICP(社内炭素価格)導入による設備の高効率化など、継続的にCO2削減活動に取り組んでいます。また、TCFD提言に沿ったシナリオ分析の実施により、リスクと機会を明確にし、活動内容の開示を行っています。
⑮ 人権
当社グループは、強制労働、児童労働、ハラスメント等の人権課題を重要なリスクとして認識しています。これらの人権課題に対し、バリューチェーンを通じて適切な行動がとられていないと、顧客との取引停止や行政罰、社会的信用の失墜につながり、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「国際人権章典」や「労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」などの国際規範に沿った「太平洋工業グループ人権方針」を策定・開示し、パーパスである「思いをこめて、あしたをつくる」に基づき、人権リスクの低減に取り組んでいます。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆さまへの利益還元を重要な経営課題のひとつと認識しています。
剰余金の配当につきましては、安定的な配当の継続を基本に、業績および配当性向等を総合的に勘案し、株主の皆さまのご期待にお応えしていきたいと考えています。
当社は中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、会社法第459条第1項の規定および当社定款に基づき、取締役会としています。
当期の年間配当につきましては、上記基本方針に基づき、当期の業績等を踏まえ、1株につき77円としています。これにより、期末配当は、1株につき55円(普通配当28円、特別配当27円)となります。
内部留保につきましては、企業価値の向上ならびに株主利益を確保するため、より一層の企業体質の強化・充実をはかるための投資に充当し、今後の事業展開に役立てていきます。
なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりであります。