リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断において重要であると考えられる事項については積極的に開示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
1.事業内容に関わるリスク
(1) 「著作権管理事業」の市場構造に関するリスクについて
当社グループの中核をなす音楽著作権管理事業の市場規模は、過去10年以上、年間の「著作権使用料徴収額」が1,200億円前後で推移していたところ、コロナ禍には一時落ち込んだものの、2023年3月期に初めて1,300億円を超え、拡大基調がみられております。当該市場は、2001年10月に「著作権等管理事業法」が施行され、広く民間に著作権管理業務に関する門戸が開放されましたが、現在に至るまでJASRACの寡占状態が続いております。
当社グループといたしましては、同事業領域において、デジタルコンテンツディストリビューション(DD)事業等の利用促進事業を推進し、さらなる差別化戦略の遂行を通じて、著作権の管理のみならず、利用者への訴求強化による利用促進を図ることで市場シェアを高めてまいります。
しかしながら、エンタテインメント業界の構造の変化等により、当社グループが属する市場の規模が想定したほど拡大しない場合、あるいは、当社グループの差別化戦略が奏功せず、業界ポジションの向上につながらなかった場合には、当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 法的規制について
当社グループが事業を展開するにあたり、主に「著作権等管理事業法」、「著作権法」、「著作権法施行令」、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」及び「個人情報の保護に関する法律」等の規制対象となります。
特に当社グループの主要事業である「著作権管理事業」を展開するにあたり、その前提となるのは「著作権等管理事業法」であり、著作権等管理事業者としての届出を文化庁長官に対して行っております(2001年10月11日登録・登録番号01005)。当該登録は、「著作権等管理事業法」に定める民間管理事業者として著作権の管理等を行うためのものであり、満了日に関する定めはありませんが、以下のとおり登録者としての義務が定められております。
①対委託者 管理委託契約約款の説明、管理委託契約約款の公示、財務諸表等の備え付け等
②対利用者 使用料規程の公示、利用の許諾の拒否の制限、情報の提供
③対文化庁長官 各種届出(事業の変更・廃業等、管理委託契約約款、使用料規程)
当社グループでは、これらの法令を遵守して業務を行っており、事業の継続に支障を来たす要因は発生しておりません。しかしながら、これらの法令等が改正され規制が強化された場合、新たに当社の事業活動を規制する法令等が制定された場合、あるいは今後何らかの理由により、「著作権等管理事業法」第21条(登録の取消し等)に抵触し、著作権等管理事業者の登録が取り消しになった場合には、事業への制約や追加的な対応が生じることにより、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 音楽配信市場に関するリスクについて
当社グループが事業を展開する音楽配信市場は、通信会社の方針やサービスへの依存度が高く、技術革新や配信プラットフォームによる消費行動の変化、国内外有力企業によるストリーミング市場の競争激化等、様々な要因により市場規模が想定通り推移しない可能性があります。それら外部環境の変化による悪影響を受けた場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 投資に関するリスクについて
当社グループは今後も成長を続けるために、新規事業への挑戦や、人材の採用、システム投資、M&A等の戦略的な投資が重要であると認識しております。
出資や買収等の投資においては、対象となる企業の財務や税務、法務等の契約関係及び事業の状況等について事前に社内外の専門家と精査し、価値評価に関しては第三者評価機関の見解等も踏まえ、可能な限りリスクの低減に努めてまいります。しかしながら、投資後に、事業環境に急激な変化が生じた場合やその他予期し得ない理由により当初の計画通りに事業が進展しない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
2.事業体制に関わるリスク
(1) システムリスクについて
当社グループの事業は、コンピュータシステム及びインターネットを活用しており、何らかの原因による当社サーバー等への一時的な過負荷や、役職員の過誤等によるシステム障害が発生する可能性があります。
また、ユーザーにより良いサービスを提供するため、データベースの稼働率を高水準で維持しつつ、一方で、サービスのシステム監視体制やバックアップ等の対応策をとっておりますが、急激なアクセスの増大によりサーバーが一時的に作動不能となった場合及びサーバーハードウェアに不具合が発生した場合には、安定したサービスが提供できなくなる可能性があります。
これらの場合、一定期間の収益低下、ユーザーからの信用低下及びブランドイメージの毀損等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(2) 情報セキュリティについて
当社は、第三者による当社サーバー等への侵入に対して、ファイアウォールや対策機器等によるシステム的な対応を行うとともに、従業員等への定期的な情報セキュリティ教育も行っております。その他にも、子会社である株式会社NexToneシステムズにおいては、ISMS(ISO27001)認証を取得し、専門のエンジニアによる情報セキュリティ対策を強化する他、株式会社レコチョクにおいても、対応状況に応じて外部の情報セキュリティベンダーによるチェック体制を確立し、より強固な情報セキュリティ環境を整備しております。
しかしながら、悪意をもった第三者の攻撃等により顧客情報及び顧客の有する重要な情報を不正に入手されるといった機密性が脅かされる可能性や、顧客が利用するサービスの改ざん等のデータの完全性が脅かされる可能性及びサービス自体が提供できなくなる等のシステムの可用性が脅かされる可能性は否定できません。
また、当社グループでは、各種事業を行う上で、著作権者及び音楽利用者、音楽配信サービス利用者、インディーズアーティスト等の個人情報を取り扱う場合があります。そのため、株式会社レコチョクにおいてプライバシーマークを取得している他、当社グループでは、個人情報の取扱いを社内規程に定めるとともに、社員研修の実施等により、セキュリティへの意識や情報リテラシーの向上に努めております。しかしながら、個人情報の流出が発生する可能性は否定できません。
このような事態が生じた場合には、当社に対する法的責任の発生、企業イメージの悪化等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 大規模災害や事故等の発生に伴う影響について
大地震等の自然災害や事故の発生により、当社の各種サービスの提供が困難になったり、システム障害等が発生する可能性があります。
当社グループでは、自然災害や事故等に備えた業務マニュアルの整備、システムの定期的バックアップ、稼働状況の常時監視等によりトラブルの事前防止を図るとともに、複数のデータセンターでのデータ管理による可用性の強化に努めておりますが、当社所在地近辺において、大地震等の自然災害や事故等が発生した場合、当社グループの設備損壊や電力供給の制限等、事業継続に支障をきたす事象が発生し、当社グループの経営成績及び収益性に影響が生じる可能性があります。
(4) 知的財産権に関するリスクについて
現時点において当社は、第三者の知的財産権の侵害は存在していないと認識しておりますが、今後も知的財産権の侵害を理由とする訴訟やクレームが提起されないという保証はなく、そのような事態が発生した場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(5) 訴訟及び損害賠償リスクについて
システム障害等により当社のサービスが適切に提供できなかった場合、あるいは、情報漏洩などの各種の法令違反が発生した場合、新たに訴訟を提起されたり、損害賠償責任が発生し、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに大きな影響を及ぼす可能性があります。
(6) 減損に関するリスクについて
当社グループは各事業においてシステムへの投資を継続的に行っております。また、のれんに関しては、イーライセンスとJRCが合併・事業統合し当社が発足した際及び株式会社レコチョクの株式を取得し連結子会社とした際に計上しております。
これらのソフトウェア及びのれんは、無形固定資産に計上しておりますが、これらの資産が生み出す将来キャッシュ・フローの状況等によっては、減損損失の認識の必要性が生じる可能性があり、その場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題と認識しており、企業体質の強化と将来の事業展開のために内部留保を確保しつつ、安定的かつ継続的に業績の成長に見合った成果を配当することを基本方針としております。従って、各期の経営成績及び財政状態等を勘案しながら、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、利益還元の実施について検討する所存ですが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。
なお当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当ができる旨を定款に定めており、剰余金の配当を行う場合には、中間配当、期末配当の年2回を基本的な方針とする予定です。配当の決定機関については期末配当は株主総会、中間配当は取締役会であります。