リスク
3【事業等のリスク】
タムラグループは、持続的な成長と企業価値の向上を目指し、経営成績、財務状況などに影響を及ぼす可能性のあるリスクに適切に対応すべく、グループリスクマネジメント(ERM)体制を整備しています。また、その一環として、リスク管理・危機管理規程の制定に加え、取締役会の監督のもと執行役員会を中心にリスクへの対応方針を決定し、さらに執行役員会をサポートし、そのマネジメント活動を推進するために、リスク管理委員会を設置しています。リスク管理委員会は、代表取締役社長を委員長とし、事業担当執行役員などで構成されています。リスクマネジメントのプロセスは以下の表に示すとおりです。
グループリスクマネジメント(ERM)プロセス
ステップ |
担当 |
内容 |
リスクアセスメント(年1回) |
リスク管理委員会 |
タムラグループを取り巻く潜在リスクを抽出し、発生可能性と影響度、現状対応度の3つの視点で評価し、優先して取り組むべきリスク、部門横断的に対応が必要なリスクを、重要リスク案として特定する。リスクオーナーを決定し、対策案を策定する。 |
重要リスク案と対策案の検討 |
執行役員会 |
リスク管理委員会で特定した重要リスク案とその対策案を審議し、取締役会に上程する。 |
承認 |
取締役会 |
重要リスクとその対策を承認する。 |
対策実施 |
執行役員会 執行部門 |
執行役員会から執行部門に対し、対策実行を指示し、執行部門で実行する。 |
進捗確認(年2回) |
リスク管理委員会 |
執行部門の対策進捗状況を確認し、執行役員会に報告する。 |
進捗確認・是正 |
執行役員会 |
執行部門の対策進捗を確認し、必要に応じ是正対策を指示する。結果を取締役会に報告する。 |
進捗確認 |
取締役会 |
リスクマネジメントの進捗を監督する。 |
また、リスクが顕在化した場合またはその恐れがある場合に、経営陣に対し迅速に情報を伝達し、対応する仕組みとして、アラームエスカレーションシステムをグループで運用しています。特に、重大な危機が発生した場合には、危機管理対策本部を設置し、代表取締役社長が直接指揮を執るなど、グループに対する損失などを最小限にとどめる体制を構築しています。
タムラグループのリスクには以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末において、当社が判断したものです。事業などのリスクはこれらに限られるものではありません。関連する記述は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 a.会社の機関の内容および内部統制システムの整備の状況」をご参照ください。
(1) 事業環境に関するリスク
タムラグループは、カーボンニュートラルに貢献する成長戦略を進めており、パワーエレクトロニクス、モビリティ、IoTの3分野に注力しています。特にモビリティ分野は、電子部品・電子化学材料・実装装置という幅広い製品が関わり、タムラグループでは中長期的な成長を期待して開発投資や設備投資を進めてきました。しかし、当該分野は各国の景況、補助金政策の変動に加え、最終顧客である自動車メーカーの販売戦略や競争力の影響を受けます。また、当社が事業を展開するそれ以外の分野においても経済環境や各国政策などの動向が事業に影響します。このような事業環境の変動は、タムラグループ製品の需要に変化をもたらす可能性があり、その結果タムラグループ製品の需要拡大が進まない場合には、設備投資の回収が遅れるなど、タムラグループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。タムラグループでは、市場のニーズを常に見極め、時代の変化を先取りした製品・サービスを提供することで、リスクの回避と成長戦略の推進に努めています。
(2) 素材価格に関するリスク
電子部品関連事業における銅や鉄、電子化学実装関連事業における錫や石油化学製品などの素材価格の変動は、利益に対して影響を与えるリスクがあります。主要な素材については、定期的な相場連動による価格改定により価格変動の影響を吸収できるように対策していますが、素材価格が急激に変動し価格改定が追い付かないような場合は、企業収益を圧迫する可能性があります。タムラグループでは、価格改定に加えて、設計変更による材料比率の低減や代替部材の開発、予約購入によるリスクヘッジなどの手段なども講じて、素材価格の変動による影響の低減を総合的に進めています。
(3) 海外展開におけるリスク
タムラグループは、中国に多くの生産・販売拠点を有しています。競争力のある製品の製造と中国市場の展開のためにその重要性は変わりませんが、世界の経済圏の分断が進む中、各国の政策動向によっては事業活動に困難が生じる可能性があります。タムラグループは中国の他にも、欧米やアジアにも拠点を配しており、地産地消をより強化して、地域毎の対応力を高める取組みを進めています。
(4) 自然災害をはじめとする緊急事態に対するリスク
タムラグループの本社所在地は東京にあり、日本国内では埼玉県および東北地方に製造拠点を有しています。日本の生産高はグループ全体の3割程度ですが、電子化学事業では、日本の製造事業所が生産した材料を用いて生産活動を行う海外拠点もあり、当該地域で大地震などの自然災害が発生した場合には、建物や機械設備、棚卸資産の被害に加え、日本のみならず海外拠点の生産活動に影響を及ぼす可能性があります。また、タムラグループは、日本の他にも、中国を含むアジアや欧米などの世界各地で事業活動を行っており、各地域で生じる可能性のある様々な自然災害や感染症のほか、政治的要因や経済的要因による社会的混乱などにより、事業活動の停止や遅延が生じる可能性があります。タムラグループでは、このようなリスクを想定し、緊急事態対策構築ガイドラインを整備して、グローバルに販売・生産体制を連携し、事業継続できるように対策しています。また、緊急事態に備えた事前準備計画の策定、緊急事態発生時の出張者を含めた社員安否確認システムの構築と初動対応計画の策定、事業復旧計画の策定などの取組みを行っています。
(5) 製品補償に関するリスク
大規模な製品補償や製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、会社の評価に重大な影響を与え、業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、製造物責任賠償保険に加入していますが、保険で賠償額を十分にカバーできる保証はありません。これに対して、タムラグループでは、品質方針の周知徹底による意識の改革、製品不具合再発防止策の強化、工場監査チェックシートの改訂、タムラグループ内における品質指標の標準化、国際的な品質マネジメント規格の技法を活用した品質保証プロセスの改善などにより、品質を強化する取組みを進めています。
(6) 知的財産権に関するリスク
タムラグループは、独自に開発した設計・製造工程に関する技術および製品などの特許権やその他の知的財産権を所有しています。これら知的財産保護のための様々な取組みを行っていますが、完全な保護は難しく、想定している効果を得られない可能性があります。また、タムラグループは、第三者の知的財産権を侵害しないよう留意し、調査を行っていますが、全ての知的財産権を完全に調査完了することは時間・コスト・技術的観点を考慮すると困難であり、さらに、特許権利者が自己の知的財産権をどのように解釈し、どの範囲まで権利行使手続きを行うかを予想することは極めて困難です。万一、タムラグループの製品が第三者の知的財産権に近似する場合には、当該第三者より損害賠償請求、使用差し止めなどの訴えを起こされる可能性があり、その結果、和解やライセンス契約の締結、または多額の損害賠償金の支払いが必要となる可能性や、タムラグループの製品やサービスの一部の製造販売などができなくなる可能性があります。
(7) 情報セキュリティに関するリスク
タムラグループに対し、サイバー攻撃やコンピュータウイルスの侵入などがあった場合には、機密情報の外部流出、身代金目的でのデータ暗号化などのリスクが顕在化し、その対応費用の増加や、信用低下による売上減少などにより、タムラグループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対して、タムラグループは、機密情報の適切な保護および管理のために、情報管理に関する規程を定め、情報に関するリスクマネジメントに取り組んでいます。サイバー攻撃や情報漏洩などに備えたネットワークへのセキュリティ対策、データへのアクセス制御や外部記憶装置の使用制限などの技術的安全管理措置、不正な侵入の防止を目的としたIDカード認証システムの導入などの物理的安全管理措置および、従業員に対する適正な情報の取扱に関する教育などの対策を情報セキュリティにおける重点施策として取り組んでいます。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主への適正な利益還元を経営の最重要課題の一つと認識し、配当水準の安定と向上に努め、年間配当が前期の水準を下回らないことを目指しています。また、中長期的な経営計画を通じた企業価値の増大を図りつつ、事業収益の拡大と内部留保の確保による財務体質の強化に取り組んでいます。
なお、利益還元の機動性を確保するために、当社は2023年6月28日開催の第100期定時株主総会において、定款の一部変更を行い、取締役会決議による剰余金の配当が実施できる旨を、当社定款第34条に規定しています。
当社は年2回(中間配当・期末配当)の剰余金配当実施を基本方針とし、当事業年度においては、中間配当では1株当たり5円とし、期末配当では1株当たり5円、年間としては1株当たり10円とすることに決定しました。
内部留保資金は、高付加価値製品の開発や成長事業への投資、借入金の返済などの資金需要に備えるものとし、これは将来の利益に貢献し、株主の支援に報いる配当に寄与していくものと考えます。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年11月7日 |
411 |
5 |
取締役会決議 |
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2024年5月10日 |
411 |
5 |
取締役会決議 |