リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスク、リスク顕在化の可能性、顕在化の時期、連結業績への影響度及びリスクへの対応は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。
(1)マクロ経済環境
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループはグローバルに事業を展開しており、当社グループの業績は国内外の景気、経済動向、社会情勢及び地政学的リスク等に影響されます。例えば、半導体デバイスの急激な需要の増減や需給バランスの悪化によって、半導体デバイスメーカーの設備投資計画に大きな変更が生じれば、当社グループの調達、製造コスト、販売の計画に影響が生じる可能性があります。また、国際的な貿易紛争や製品の国産化施策に伴う関税、貿易障壁、国産メーカー支援強化等の政策により、当社グループにおける製造コストの上昇、国を跨いだ輸送の遅延、販売機会の変化等が生じる可能性があります。また、ロシア・ウクライナ問題の長期化、世界的なインフレの長期化、インフレ抑制のための金利上昇、新興国の成長鈍化、中台関係の悪化、中東及び北朝鮮での地政学的リスクの増大等により世界経済が低迷する場合、当社グループの主要な販売地域にも影響を及ぼす可能性があります。加えて、「(9)感染症の世界的流行」に記載のとおり、感染症の世界的な感染拡大等が再度発生した場合、消費者行動及び事業活動を含む世界全体の経済活動に影響が生じる可能性があります。
当社グループは、マクロ経済環境について注視しながら事業運営を進めていく方針ですが、上記のような影響が生じた場合、当社グループの事業や経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
2023年3月期には、2022年10月7日付米国輸出管理規則(EAR)(注1)の改正公布により、米国製半導体製造装置について中国の特定の先端半導体メーカーへの輸出が禁止され、さらに2022年12月16日付で複数の中国の半導体メーカーが米国政府の発行する制裁リスト(Entity List)に掲載されました。また、日本においても、全世界向けを対象とした先端半導体製造装置の輸出規制に関する改正法令が2023年5月23日に公布され、7月23日に施行されました。このような米中貿易紛争は日本や他国にも波及し、中国の半導体デバイスメーカーのみならず他の大手半導体デバイスメーカーの投資計画に影響を及ぼすなど、今後の半導体業界にとっての大きなリスクであると懸念されます。
(注1):EAR=Export Administration Regulations(輸出管理規則)
(リスクへの対応)
当社グループは、事業等のリスクについて、社長執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会において総合的に管理・検討する体制のもと、各部門が必要な対応を行い、定期的に、また必要に応じて取締役会へ報告、審議する管理体制を整備しております。
また、当該リスクを軽減するため、市場動向や競合状況の調査・分析を行い、お客様との対話を通じてニーズを把握し、そのニーズに応えることのできる付加価値の高い製品・サービスを提供し続けるべく研究開発をはじめとする事業活動を推進しております。加えて、半導体デバイス別および地域別の売上構成バランスをより適正化すべく努めてまいります。
(2)市場ニーズ
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
半導体業界は技術革新が激しく、技術の変化により市場が大幅に成長する反面、需要と供給のギャップが急激に広がり供給過剰となり、半導体製品の値崩れ及び設備投資の抑制が発生することがあります。
半導体デバイス市場は事業構造上、不安定な性質を有しているため、将来においても市況が低迷する可能性があります。半導体デバイス市場と連動する半導体製造装置市場もこの不安定な市況を避けることは難しく、半導体市況に連動し当社グループの事業や経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、幅広い用途で半導体の利用が進んでおり、半導体を利用した新しい製品や技術の導入時期、消費者の嗜好の変化、業界の動向等が、半導体の需要や半導体メーカーの設備投資、研究開発計画に与える影響は大きくなっていることから、半導体の市場動向の予測は複雑化しております。3か月に1回程度更新される民間調査機関(TechInsights等)にて、WFE(Wafer Fab Equipment:半導体製造装置市場)CY年度予測が発表されます。市場動向から下方修正、又はマイナス成長予測に転じる場合があり、その予測どおりに主要顧客投資計画の見直しからの後ろ倒しや縮小・中止などが発生した場合には、当社業績に影響を与える可能性が生じます。また、主要顧客における予測していない事故や事態、半導体デバイス市場の想定を超える需要の悪化により当社グループの事業が影響を受ける可能性があるだけではなく、予測を上回る半導体の需要増に応じた半導体製造装置の需要の増加に対応できず、当社グループが市場の好況の恩恵を十分に享受できず、主要顧客との取引関係にも影響を与える可能性があります。
また、半導体製造装置メーカーの変更は、一般的にコストが高く、顧客である半導体メーカーが一度特定の半導体製造装置メーカーの装置を選択すると、当該半導体メーカーは同じ半導体製造装置メーカーの製品を利用し続ける傾向にあります。他の半導体製造装置メーカーの製品を利用している顧客が当社グループ製品に乗り換えることは必ずしも容易ではないため、他の半導体製造装置メーカーの製品を使用している潜在的な顧客に当社グループ製品を販売することができない場合、当社グループの売上及び市場シェアの拡大に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(3)他社との競合等
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
他社との競合の観点では、当社の主力製品であるバッチ成膜装置は、他社の枚葉装置と部分的に競合し、また、同じバッチ成膜装置の競合メーカーと激しい競争が続いております。トリートメント(膜質改善)装置についても、複数の競合メーカーとの競争があります。当社グループでは、新製品の高品質成膜・高性能半導体製造装置(25~50枚少数枚数バッチ処理)で、枚葉装置よりも生産性における優位性を維持するとともに、当社のALD成膜技術、プリカーサ(成膜に使用するガス)開発や、排気技術の開発など、技術開発における優位性の維持に努めておりますが、技術革新、生産能力の拡充や生産性の改善等の実現が他社に遅れ、販売価格の前提となるコスト、性能、生産量が競合他社に劣る場合や、新たな競合メーカーが台頭した場合、受注高の減少及びシェアの低下により売上及び収益が悪化することにより、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(4)主要顧客への依存
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
半導体業界は、近年の激しい景気変動や技術競争から再編が進んでおり、プレイヤーが集約された市場環境となっております。当社グループにおいても、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ 生産、受注及び販売の実績」に記載のとおり、主要顧客に対する売上収益が連結売上収益の相当程度を占めております。当社グループは、リスクを軽減するため、主たる経営数値は当然のこととして、各種の経営指標についても継続的に管理するとともに、リスクをふまえた一定の目標に基づき適切な改善を行ってまいります。また、取引先に対し定期的な信用調査や信用リスクに応じた取引限度額を設定するなど、信用リスクの管理のための施策を講じておりますが、主要顧客各社の事業方針の変更、取引条件の変更、技術革新、業界動向、地政学的影響などの理由により取引量が縮小した場合や販売価格低下の圧力が強まった等の場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが売掛債権を有する主要顧客の財政状態が悪化し、期限どおりの支払いを得られない場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(5)中期経営計画
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社グループが策定した中期経営計画では、新規顧客開拓、新製品投入及び市場シェア拡大等による成長を通じた収益の拡大と収益性の向上をめざすとともに業務効率の向上等の追求をめざしております。
市場環境が、中期経営計画の前提と異なる場合、目標の達成が困難となる可能性があります。また、当社が認識又は評価できなかった要因により、計画を見直す必要が生じた場合、当社の競争力に影響を及ぼす可能性があります。さらに、想定以上の競争激化、新型コロナウイルス感染症の影響の期間及び程度、人材採用、当社製品の製造又は販売市場に関連する法律、規制又は税制の不利益な変更、技術や顧客の嗜好の変化への対応等の潜在的なリスクに対応できない場合、また、これらのリスクに関連する費用が想定を超えて発生した場合等、当社グループが定めた目標を達成できず、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(6)研究開発
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:大)
当社グループを取り巻く半導体デバイス市場は、従来の携帯電話やパソコンなどのコンシューマー向けからデータセンターや5G、AIなどの高成長産業向けへと需要がシフトしながら急速に拡大しております。これに伴い、半導体デバイスは複雑な構造へのシフトが進んでおり、半導体製造装置はより難易度の高い技術と高い生産性の両立が求められ、半導体の世代ごとの開発に追従する厳しい技術開発競争下にあります。
当社グループにとって研究開発は重要課題の一つであり、積極的な投資によって顧客ニーズに応えうる付加価値の高い技術及び製品を提供し続けることを基本としておりますが、市場環境の変化に対応できない場合や製品競争力を維持できない場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(7)海外事業
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、海外の各国において以下のようなリスクがあります。これらの事象が発生した場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの売上収益の比率が高い国においては、「(1)マクロ経済環境」に記載のとおり、今後、地政学的問題や貿易摩擦などによって各国の国産メーカーへの支援強化等が実施される可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。地域別の売上収益については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 21.売上収益」をご参照ください。
・投資、輸出入、関税、公正競争、腐敗防止、環境、労働、租税その他事業活動に係る法令その他の公的規制及びその変更
・社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動上の制約
・政治的要因、社会的要因及び経済情勢の変動
・テロ、戦争、自然災害、各種感染症等の発生による社会的混乱等
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
加えて、技術的、取引上の契約事項の明確な記載と相互確認を行うとともに、海外事業に係る取引先、輸出先政庁との情報共有、輸出管理運用基準の遵守、輸出管理教育の受講、輸出管理部門、法務部門と担当部門の連携強化を図っております。
(8)大規模災害等
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)
災害や人為的な原因等により電力、通信、交通等の社会的共通資本に関して重大な障害が発生した場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。特に、主要生産拠点である当社富山事業所において長期にわたり稼働が困難となった場合には、より重大な影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループの事業拠点は、国内及び海外に展開しており、生産及び販売活動に大きな影響を与える地震、津波、洪水、火災等の災害に備え、下記の対応を行っております。
・富山事業所における大規模災害発生を想定した、初期安全確保から生産稼働復旧に至る方針マニュアルの策定と運用
・安全衛生リスク評価による予防安全装置の拡充継続・適切配分、ビジネスリスクアセスメントの見直し
・社員の安全が確保できない場合は緊急対応として屋外避難の実施
・安全運転講習、ISO45001に基づく安全衛生管理、海外出張用安全衛生マニュアル等による継続的リスク指導
(9)感染症の世界的流行
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:小)
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、都市封鎖や外出の禁止、自粛による移動の制限、事業拠点の閉鎖、生産活動の制約、個人消費や設備投資等の減少、サプライチェーンの混乱、世界的な資本市場の散発的な乱高下や資金調達環境の悪化等を生じさせ、世界経済の悪化を招き、当社グループ及び当社グループの顧客やサプライヤーの業務等にも影響を生じさせました。
新型コロナウイルス感染症の世界的な再流行、又は同様の感染症の世界的な流行及びそれに伴う各国政府等の対応策は、当社グループの事業や経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを軽減するため、感染症流行時には感染防止対策を徹底するとともに、サプライチェーンの動向を注視し、支障が生じた際には対策本部を設置するなどして迅速な対応を行ってまいります。
(10)調達・生産
(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループの使用する購入品資材等は、マルチベンダー化や継続的な仕入供給先への先行情報提供等により安定的な供給の確保に努めておりますが、供給の遅延・中断、急激な需要の増加、経済環境の悪化等により、必要不可欠な購入品資材等の供給不足や市場価格の上昇が生じる可能性があります。また、グループ製品に使用する資材等の仕入先を変更する際には、顧客の事前承認が必要な場合がありますが、顧客からの要求仕様を満たすために必要な特定の仕入品は、顧客承認を得るまで特定の仕入先からしか入手できず、必要な購入品資材等が不足する可能性があります。また、特定の仕入先の被災、事故、倒産等による急な供給遅延・中断が発生し、顧客の事前承認を取得するまでの間に代替品に切替えることができない場合、当社グループの生産活動に影響が生じ、顧客への納期遅延や受注取り消し等により、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを回避するために下記の対応を行っており、例えば、仕入先から生産中止による供給停止を要望された場合でも、仕入先には通常1年前の申請を義務付けているため、仕入先からの供給を確保しつつ、代替品を選定するなど切り替えの準備を進め、顧客承認を取得した上で代替品に切替えております。
近年においては、マクロ経済環境における海外及び国内の経済動向、社会情勢及び地政学的リスク等の影響により、購入品資材等の仕入価格の上昇が継続しております。当社グループでは、価格上昇妥当性精査に加え商品の高付加価値化や製品への価格転嫁等により仕入価格上昇の影響を吸収していく方針です。
・ビジネスパートナーとの日常連携と仕入価格の適時妥当性評価
・ビジネスパートナーミーティングの定例・臨時開催による市場および生産情報共有と協議
・QCDE(Quality Cost Delivery Environment)定期評価の実施
・重点ビジネスパートナーの経営監視の実施
・取引先緊急対応MAPの作成(二次、三次取引先の把握)
・マルチベンダー化の継続的推進
・購入品の高付加価値化及び製品への価格転嫁努力
(11)製造物・品質
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:大)
大規模なリコールや製造物賠償責任につながるような製品の欠陥が発生し多額の追加費用が発生することになった場合や、品質に問題が生じたことにより受注取り消しが発生した場合、当社グループの製品・サービスに対する顧客からの信頼が低下した場合、その他当社グループの製品の製造過程で問題が生じた場合(災害等により事業継続に支障が生じた場合、及びサプライヤーからの供給に問題が生じた場合等を含みます。)には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、国際標準規格である品質マネジメントシステム(ISO9001)及び環境マネジメントシステム(ISO14001)により製品を製造しており、重大な品質問題を防ぐため以下の取り組みを行っております。また、当社グループの製品の製造過程で問題が生じた場合には対策本部を設置するなどして迅速な対応を行ってまいります。
・製品安全設計の推進
・継続的な製品品質向上策の推進
・不具合発生時の是正・予防処置基準に準拠した原因追及、対策、再発防止策等の是正処置
(12)為替
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)
当社グループにおける海外売上収益は高い水準で推移しております。また、当社グループの外貨建ての資産及び負債の評価は為替相場の変動により影響を受けております。為替相場の急激な変動によっては、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループでは、海外での製品販売を円建としており、また、為替予約等の措置を講じることで、為替変動によるリスクを一定程度軽減させるよう努めております。
(13)訴訟等
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期~長期、影響度:小)
当社グループは、法令及び契約等の遵守に努めておりますが、事業活動を進めていく上で取引先等から訴訟を受ける可能性や、訴訟に至らないまでも紛争に発展して請求等を受ける可能性があります。それらの訴訟等で当社グループが勝訴するという保証はなく、それらの訴訟等が当社グループの将来的な事業活動に影響を与える可能性があることは否定できません。また、さまざまな事情により、訴額の大きな訴訟等が提起された場合には、仮に損害賠償等の金銭の支払いが命じられる可能性が低いとしても、社会的な注目を集める結果、当社グループの社会的評価が低下する可能性があり、これにより当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当社グループの事業活動に関する法令等の遵守はもとより、社会規範と企業倫理に則った透明性の高い経営を行うための行動を実践することを目的として、コンプライアンスの基本方針や体制などを定める会社規則を制定し、国内外の主要拠点における事業活動状況について、主にコンプライアンスの観点から把握するための体制として、コンプライアンス担当役員のもと本社の経営サポート部門を中心に構成するコンプライアンス委員会を設置しております。また、法令や企業倫理上疑義のある事項等を早期に発見し、速やかな対策を講じるための仕組みとして、当社グループ統一のコンプライアンス通報制度を設けております。
(14)知的財産
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:中)
当社グループは、当社の技術及び製品の競争力強化の観点から事業運営において知的財産に関する取り組みが重要であると認識しており、当社グループの技術やノウハウを保護するため、知的財産権の確保に努めておりますが、第三者が当社グループの知的財産権を侵害する製品の販売等をすることにより当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、万が一、第三者が当社グループによって当該第三者の知的財産権を侵害しているとの見解を抱いた場合、当該第三者より、差止請求や損害賠償請求等の請求を受ける可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループでは、当該リスクにより、当社の健全な事業活動の継続に支障をきたすことのないよう、研究開発部門、設計部門、法務・知財戦略部門など関係部署が相互に連携し、より適切な知的財産権のポートフォリオを構築するよう努めております。また、当社グループでは、研究開発部門、設計部門、法務・知財戦略部門など関係部署が相互に連携し、技術及び製品の開発を進めており、必要に応じて、外部の専門家等の助言を得ております。
(15)環境対応
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期~長期、影響度:中)
当社グループは、法及び規制の遵守のために必要な経営資源を投入しておりますが、現在及び過去の生産活動に関わる環境責任に伴う費用負担や損害賠償が発生する可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、排水、排気、騒音、廃棄等における環境汚染に関するさまざまな環境法及び規制の適用を受けており、以下の対応を行っております。加えて、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に沿い、気候変動におけるリスクと機会を特定するとともに、それらが事業や財務に与える影響を分析し、対応策を設けております。
・ISO14001による環境管理、法規制・条例の把握
・使用エネルギーの適正管理
・排水・排気設備の日常点検
・廃棄物委託業者の現地確認実施
・化学物質の適切な管理(許可、登録、使用量管理、廃棄時WDS(Waste Data Sheet)の提供)
・顧客への製品の化学物質情報の提供
(16)借入金
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、LBOスキームにより株式取得を実施した際、金融機関等を貸付人とする多額の借入れを行っております。また、必要な運転資金について、営業活動より稼得した現預金を充当するほか、設備投資や急激な経済状況の悪化などで資金調達が必要になった場合には、金融機関からの借入れ等を行うことがあります。金融市場の混乱や景気低迷、金融機関の融資姿勢の変化により資金調達環境が悪化した場合や、市場金利の急速な上昇等により支払利息が急激に増加した場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。今後、当社の経営成績が著しく悪化するなどして財務制限条項に抵触した場合、借入先金融機関の請求により当該借入について期限の利益を喪失し、一括返済を求められるなどして、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 13.借入金」をご参照ください。
(リスクへの対応)
当社グループは、上記のLBOスキーム実施時の借入金について、金利負担の減少、財務制限条項の緩和や有利な返済計画とする観点から、2021年3月期に金利(配当)負担の重い優先株式の買戻しとメザニン借入の返済を含む1,250億円の借り換えを行っております。
(17)のれん及びその他の無形資産
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、2018年5月に当社が日立国際電気の全株式を取得した際にLBOを用いた出資を行っております。これにより、のれん及びその他の無形資産が2024年3月期においてそれぞれ59,065百万円、56,494百万円計上されており、合わせて連結資産合計の30.8%を占めております。当社が連結決算において採用する国際会計基準では、当該のれん及び一部の耐用年数を確定できない無形資産については、償却を行わず、事業年度ごと又は減損の兆候が確認される場合において、減損テストを実施し、当社グループの事業の収益やキャッシュ・フロー創出力が低下したと認められる場合に減損損失を計上することが必要となり、これにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計と異なり、前述のとおり、のれん及び耐用年数の確定ができない無形資産の償却を行わないため、当該のれん及びその他の無形資産について減損損失の計上が必要となる場合、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計での減損損失の計上に比して計上額が多額となる可能性があります。
2024年3月期においては、減損テストの結果、将来キャッシュ・フローによる使用価値(回収可能価額)は帳簿残高を上回っており、減損損失の計上は不要と判断しております。しかしながら、仮に税引前の割引率が一定の場合、将来キャッシュ・フローの見積額が71.2%減少すると回収可能価額と事業価値の帳簿価額が等しくなる可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループでは、上記リスクを逓減するため、事業の収益力強化に努めており、主に以下の取り組みを実施しております。
① 顧客関係性の向上による、利益の最大化とシェアの拡大
顧客エンゲージメントの最適化を推進するとともに、差別化技術開発を加速し、高付加価値製品の展開によるシェアの拡大、収益力強化に注力してまいります。
② プロダクト・ライフサイクル・ビジネスの持続的成長
顧客へ納入した装置のアフターサービスは、装置販売の拡大とともに、重要な事業として強化に取り組み順調に拡大してきました。今後も、プロダクト・ライフサイクル・ビジネスをさらに高度化して、拡大展開を推進してまいります。
③ 製品・アプリケーション別戦略によるPOR(注)獲得強化と収益拡大
アプリケーションごとの装置プラットフォームの最適化とターゲットの明確化によりPORの獲得を推進してまいります。顧客の要求に合致した技術開発と提案により、高収益である次世代新製品、新アプリケーションの拡販に取り組み、新PORの獲得とともに収益の拡大をめざしてまいります。
(注)Process Of Recordの略であり、「顧客の半導体製造プロセスにおける製造装置認定」のことを指します。
(18)コンプライアンス等
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
事業を展開する各国の法令、規則の適用を受けるため、コンプライアンス体制や内部統制システムに内在する限界、法規制、法解釈の変更等により法規制等の遵守が困難になる可能性があります。また、貿易紛争により輸出規制や関税等が強化される可能性もあります。これらの規制を遵守できなかった場合には、業務への障害、罰則や課徴金の適用、法令違反に係る損害賠償請求、業務停止等の行政処分、当社グループに対する社会的評価・信用の低下等により、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、規制の強化によってそれを遵守するためのコストが大幅に上昇する可能性や、各国の競争法によって当社グループの事業の拡大が妨げられる可能性があります。
また、当社グループは、財務報告の適正性と信頼性を確保するための内部統制システムを構築しておりますが、さまざまな要因により内部統制システムが機能しなくなる可能性があります。このような事象に適切に対処できない場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(13)訴訟等」におけるリスクへの対応と同様です。
加えて、コンプライアンス教育により法令、規則の周知徹底を行うとともに、澱み・癒着を防止するために、管理部門、担当ビジネスパートナーの定期ローテーションを強化するとともに、内部監査による定期的なモニタリングを実施しております。
(19)人材
(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期~中期、影響度:中)
当社グループがグローバルな事業展開を進めるなか、イノベーションを創出し成長を続けるためには、国内外で多様な人材を確保・育成すること、多様性を生かす組織文化が重要となります。
少子高齢化の加速に伴う人材不足に起因して、必要な人材を継続的に採用・維持することができない場合や重要人材を喪失した場合には、人材不足による製品開発力の低下や顧客サポートの質の低下を招き、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、国内外で必要な人材をタイムリーに確保するため、国内外で経験者採用を拡大するとともに、多様な人材が働きやすい職場づくりの推進、グループ・グローバル共通のラーニングマネジメントシステムの活用や社内教育プログラムの実践により戦略的に人材の確保・育成を図っております。
(20)情報セキュリティ
(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループは、事業活動を通じて、機密情報、顧客情報、個人情報等を取得・保有、利用しており、それらが意図せず流出した場合、社会的信用の低下や、損害賠償の発生、製品競争力の低下等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、情報システム及び情報ネットワークを駆使しながら事業活動を行っており、サイバー攻撃、不正アクセス、自然災害、停電、機器類の故障、人為的ミスなどにより障害等が発生した場合には、業務の停滞や信用の低下が生じ、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクへの対応として、情報セキュリティマネジメントに関する社内規程を定め、情報セキュリティ統括責任者を中心とした情報セキュリティ委員会を運営し、従業員対策とシステム対策の両面から継続的に改善しております。また、個人情報保護法への対応として、当社保有の情報資産保護のため、情報セキュリティ方針に基づく「情報セキュリティ事故発生時の連絡体制図」を定め、事故並びに事故の疑い時に迅速に対応できる連絡通報体制を構築しております。さらに、保護対象となる情報について、社内IDを使用したアクセス制限のほか、パスワードの設定・変更を定期的に見直すことにより管理を厳格化しております。
(21)Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.グループとの関係
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:小)
当社は、Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.によって運営されているケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)から出資を受けており、2023年9月末時点で総株主の議決権の73.2%を所有する大株主であり親会社に該当しておりましたが、2023年10月25日付で当社普通株式の東京証券取引所プライム市場への新規上場に伴う当該親会社の所有株式の売出し及びオーバーアロットメントによる売出しにより、所有する議決権数の割合が43.8%に減少したことを受けて、親会社からその他の関係会社に変更となりました。
これに伴い、2021年7月より取締役会の諮問機関として設置しておりました「支配株主との取引等の適正に関する委員会」は廃止いたしました。
当連結会計年度末時点において、当社の監査等委員でない取締役である中村正樹及び平野博文の2名がKohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.の日本法人である株式会社KKRジャパンから派遣されております。
なお、本書提出日現在において、ケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピーは、当社発行済株式総数の43.4%を保有しております。
ケイケイア ール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)は、中長期的には売却等により所有比率を低下させることが同社の方針と認識しておりますが、当社について他の一般株主と異なる利害関係を有しており、一般株主が期待する議決権の行使その他の行為を行わない可能性があります。
また、ケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)は、グローバル・オファリングに関連して、ジョイント・グローバル・コーディネーターに対し、ロックアップに関する書面を差し入れておりますが、ロックアップの除外事由として、一定の借入れに関する担保権の設定及び当該担保権の実行に伴う処分等を行うことができる旨が定められております。かかる将来の借入れに係る借入金額、貸出人その他の条件は現時点において未定であることから、その条件によっては、ロックアップ期間中に、同社が当社普通株式への担保権の設定等を行い、当該担保権の実行等に伴い当社普通株式の処分が行われる結果として、当社普通株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを軽減するため、当該株主との取引等について、取引の合理性及び取引条件の妥当性を確認し、取締役会の承認を得ることとしております。
なお、当社は、Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.とのMonitoring Agreementに基づき、同社より経営全般に関するコンサルティング、資金調達等に関する経営指導を受け、契約に基づくフィーを支払っておりましたが、2022年3月31日にMonitoring Agreementを解除いたしました。これにより、2023年3月期以降、当該契約に基づく対価の支払いは発生いたしません。
(22)当社株式の流動性
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:小)
東京証券取引所プライム市場の流通株式比率に係る上場維持基準は35%であるところ、当社の新規上場時における流通株式比率は41.7%程度となっております。上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを軽減するため、ケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)との間における流通株式を増加させるための施策に関する対話、従業員の所有する新株予約権の行使やパフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)及びリストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)に基づく株式交付による流通株式数の増加等により、流動性の向上を図ってまいります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、研究開発投資・設備投資の強化を最優先に、将来の事業展開のために必要な内部留保を確保しつつ、株主の皆様に対する安定的・継続的かつ積極的な利益還元を経営の重要課題と考え、連結配当性向20%から30%程度を目安に剰余金の配当を行っていくことを予定しております。加えて、ネットキャッシュ(注1)がプラスに転換した後は、さらなる株主利益と資本効率の向上に向け、有利子負債分割償還後フリー・キャッシュ・フロー(注2)の70%程度に相当する金額を配当及び自己株式取得に充当することをめざしてまいります。また自己株式については、保有する株式数の上限を設定し、上限を超過した株式は消却することを基本としております。
(注1)ネットキャッシュ=現金及び現金同等物-有利子負債
(注2)有利子負債分割償還後フリー・キャッシュ・フロー=営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー-有利子負債の分割償還額
当社は、毎年3月31日を基準日とした期末配当、毎年9月30日を基準日とした中間配当のほか、基準日を定め剰余金の配当をすることができる旨を定款に定めております。また、会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に特段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めており、剰余金の配当を行う場合は、期末配当及び中間配当の年2回を基本方針としております。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
2024年5月10日 |
2,562 |
11 |
臨時取締役会 |