リスク
3【事業等のリスク】
当社は、経済・市場の状況等を含む経営の遂行状況に係るリスクについては、経営会議等の執行会議および取締役会においてモニタリングしております。加えて、直接的または間接的に当社グループの経営あるいは事業運営に支障をきたす可能性のあるリスクに迅速かつ的確に対処することを目的に危機管理基本規程を定め、この規程に従い社長が指名した危機管理委員長が運営する危機管理委員会とその傘下に各専門委員会を設置しております。危機管理委員会では、リスク管理体制の整備に関する事項やリスク管理教育の企画・推進およびリスクの評価と、発生した場合のレベルに応じた対策本部の設置など適切な対応を実施しております。また、これらのリスク管理状況は経営会議等の執行会議、取締役会およびサステナビリティ委員会に定期的に報告することで全社の危機管理について監督およびモニタリングを実施し、リスク管理の強化を図っております。
当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のある重要なリスクおよびそれらの対策については下表のとおりです。その他、コンプライアンス、品質問題、自然災害(地震・水害等)、テロ・紛争および法規制についてもリスクとして認識のうえ、対策を講じていきます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営環境に関する項目
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地政学リスク(国際関係変化) |
リスクの説明 |
当社グループは日本・中国を中心に7カ国に生産拠点を持ち、グローバル30カ国に展開している営業拠点を通じ、日々お客さまに製品・サービスを提供しています。このことから、米中やロシア・ウクライナ情勢などの国際関係の変化やそれに起因する社会・環境の変化、法規制の変更などは事業活動に影響を及ぼす可能性があります。 特に、各国の輸出規制、技術移転の制限、関税の引き上げ等により、開発、生産、物流や営業活動が制限を受け、お客さまへの製品供給に支障をきたす場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 |
リスクへの対策 |
このようなリスクに対して、各地域の政治・経済情勢や法規制の動向などについて、各拠点を通じて定期的にモニタリングし、事業への影響を迅速に把握できる体制を整えています。 地政学リスクに起因する多岐に渡る事業活動リスクが顕在化した際には、本社の危機管理委員会を通じ迅速な初動対応を講じるとともに、各専門委員会および経営会議等の執行会議との連携を図りながら、グローバルにおける効果的なインシデント対応体制を構築することで被害や損害を最小限とすることに努めています。 特に、近年では変化による事業への影響が大きいグローバルにおける法制変化などのモニタリングを強化するため、国内における各事業・本社部門に加え、海外子会社を始めとしたグローバル拠点にコンプライアンス担当者を設置することで、本社の法務部門を中心としたグローバルでの統制体制を整備しています。 |
(2) 事業環境に関する項目
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部材調達・物流に係るリスク |
リスクの説明 |
当社グループは鋼材等の原材料や各種部品を多数の取引先から調達していますが、価格の高騰や業界の需要増によっては、継続的な必要量の確保が困難となる可能性があります。また、取引先において、自然災害、感染症の拡大、事故、経営状況の悪化等により、当社グループに対する部品や原材料等の安定的な提供が困難になる可能性があります。 |
リスクへの対策 |
このようなリスクに対して、当社グループは取引先との対話を通じた信頼関係の構築、グローバルでの調達先の分散を図るとともに、適正な在庫水準の確保と現地生産・現地調達の推進を通じた需要変動への対応、国内および主要海外拠点における事業継続計画(BCP)策定による災害リスク等への対応を強化するなど調達機能の強化に努めています。 また、リスク部品の早期発見と全社対策の強化を図るとともに、入荷困難な状況が継続する部品に関しては、入手可能な部品への設計変更を行う等、対応を強化しています。 |
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為替相場の変動に係るリスク |
リスクの説明 |
当社グループはグローバルで事業展開し、その取引先は世界各地にわたるため、為替相場の変動リスクにさらされています。当社グループは、米ドル、ユーロ、中国人民元等の現地通貨建てで製品・サービスの販売・提供および原材料・部品の購入を行っていることに加え、現地通貨建ての製品輸出を行っており、想定以上の為替相場の変動は製品の競争力を弱めるなど、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは現地通貨で表示された資産および負債を保有していることから、為替相場の変動は円建てで報告される当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 なお、2024年2月29日に終了した連結会計年度の為替感応度(実績為替平均レート(米ドル:143.2円、ユーロ:155.1円、中国人民元:20.02円、韓国ウォン:0.109円)から1%変動した場合の業績影響額)は、売上収益については、米ドル:約13.9億円、ユーロ:約9.0億円、中国人民元:約12.5億円、韓国ウォン:約3.6億円となり、営業利益については、米ドル:約3.4億円、ユーロ:約1.7億円、中国人民元:約2.8億円、韓国ウォン:約1.8億円となります。 |
リスクへの対策 |
このようなリスクに対して、当社グループでは、先物為替予約契約や為替ヘッジを実行することに加え、現地生産や現地調達の推進などを通じ、為替変動に強い収益構造の構築に取り組んでいます。 |
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競争の激化に係るリスク |
リスクの説明 |
当社グループの事業分野においては、それぞれの分野で強力な競合相手が存在します。当社グループ製品のシェアの高い分野においても、将来にわたり競争優位性を保てるという保証はありません。このため競合企業との価格面における激しい競争が発生した場合は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの製品等に対しては、技術および品質等における競争力を確保するため、適時・適切な製品投入を行う必要があります。当社グループが提供する製品等の競争力が相対的に脆弱である場合や、製品投入時期が適切でない場合等に、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
リスクへの対策 |
このようなリスクに対して、当社グループはi3-Mechatronicsを通じて、最適なソリューションをお客さまに提供することにより、製品・サービスの差別化および高付加価値化に努めています。安川テクノロジーセンタを中心として部門横断的な研究開発の継続的な強化を図り、世界初・世界一にこだわった画期的な製品開発を進めるとともに、徹底した効率化を図ることで開発期間の短縮を図り、コスト競争力の高い製品のタイムリーな市場投入に努めています。 |
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サステナビリティ課題に係るリスク(気候変動・人権) |
リスクの説明 |
気候変動について、政策や規制など気候変動対策や社会的要求の変化等によって生じる“移行”リスクが考えられます。例えば、炭素価格・各国政府による炭素税の導入による燃料調達コストや材料調達コストの増加、各国の炭素排出政策・排出権取引の導入や排出規制の強化に伴うグリーン電力購入等のコスト増加が挙げられます。 また、人権については強制労働、児童労働などの問題に対し、自社だけではなく取引先も含めた対応が社会的な要請として求められています。 これらのリスクについて、対応が適切でない場合、企業価値に影響を及ぼす可能性があります。 |
リスクへの対策 |
このようなリスクに対して、当社グループは気候変動についてTCFD提言への賛同を表明し、環境省のTCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業へ参加をするなど様々な活動を進め、TCFD提言に基づく気候変動関連の情報を開示しました。今後も引き続き気候変動関連の情報開示を充実させ、より一層環境に配慮した事業活動を継続していくことにより、持続可能な社会の実現への貢献と企業価値のさらなる向上を図ります。また、体制として、社長を委員長とするサステナビリティ委員会にてモニタリングを図るとともに、リスク評価とマテリアリティ分析の整合性を確認し、それ以外の施策を含む全体遂行については、社長が任命した環境推進統括者が運営する環境推進体制においてPDCAを回しながら活動の質の向上を図っています。 人権については、「世界人権宣言」、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などに基づき、人権の尊重を安川グループ企業行動規準に定め、すべての人々の人権を尊重する対応を推進しています。推進体制として、サステナビリティ担当部門、総務担当部門および調達担当部門が中心となり、当社グループおよびサプライチェーンにおける人権の尊重に取り組んでいます。これらの取組みについて、サステナビリティ委員会において施策の審議やモニタリングを定期的に行っています。これらの取組みを通じて、常に変化する人権に関する社会的要請や課題に継続的に対応していきます。 |
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情報セキュリティに係るリスク |
リスクの説明 |
当社グループ事業の活動において、お客さま・取引先の個人情報あるいは機密情報を入手・保有することがあります。これらの情報は厳重に扱っておりますが、サイバー攻撃などの不測の事態により不正アクセスやデータ破壊、搾取、紛失等が発生する可能性があります。重大セキュリティリスクとしてサイバー攻撃、ランサムウェア・ウイルス感染、不正アクセスなどを起因とするサーバ・システムダウンやネットワーク障害により事業継続への支障や生産力低下などを引き起こす可能性があります。また、当社が保有・管理する情報が社外に漏洩した場合や当社に関わる虚偽の風説をSNSなどで流布された場合、お客さまを含む市場との信頼が失われ、当社の事業継続に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
リスクへの対策 |
当社は情報セキュリティリスクを重要経営課題と捉え、経営トップダウンによる体制・運用に取り組んでいます。平時では情報セキュリティ基盤の強化活動を推進しており、高度化・巧妙化する最新サイバー攻撃や日々発生する脆弱性情報の動向、ブランド調査をグローバルで監視・情報収集しています。当社に関わる情報セキュリティリスクが予見・発見された場合は、速やかにリスク管理体制が適切な対応を指示し、CSIRT体制(Computer Security Incident Response Team)と連携してインシデント対応を行い、リスク被害の最小化と早期対策・回復できるレジリエントな情報システムの維持・強化を進めています。近年では生成AI技術の台頭やOSS(Open Source Software)を活用した開発業務が増え、情報漏洩や間違った情報の利用、権利侵害などのリスク管理にも十分配慮した仕組みを取り入れています。これらの活動により当社の情報セキュリティに関するリスクを最小限に抑え、お客さまに信頼性の高い製品・サービスを提供していきます。 |
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人材確保に係るリスク |
リスクの説明 |
労働力不足がグローバルで進行する中で、高度な専門性を持った人材を含め、その獲得の競争が激化しています。 また、従業員一人ひとりが主体性を持って能力を発揮し続けるためには、文化・慣習・言葉等の壁を越えてグローバルにビジネスの拡大に寄与できる人材の育成と心身ともに健康に過ごせる労働環境の整備がより重要となっています。 このような状況の中、人材の採用・育成が遅れたり、優秀な人材が流出したりする場合、当社グループの競争力が低下する可能性があります。 |
リスクへの対策 |
「2025年ビジョン」の実現に向けた人的資本経営の取組みの中で、従業員との対話を重視しつつ、併せて事業戦略遂行に必要な人材要件の策定と人材データの可視化に基づいた人的投資や多様な人材の活躍を促す人材マネジメントを強化することで、経営戦略に連動した人材戦略を実行していきます。また、持続的な経営戦略を策定し、高い成果を創出していくために、安川グループの将来を担う次世代の経営幹部候補者を早期に選抜し、研修プログラムなどを通じて育成・登用しています。 具体的には、特に「経営理念の理解深化」、「ダイバーシティとインクルージョンの進化」、「働きやすい職場環境の実現」を重点項目として取り組みます。これらの取組みをESアンケートや経営層との直接対話といった従業員との積極的なコミュニケーションを通じて常時モニタリングすることにより、素早く人事施策の改善に反映し、生産性と働きがいの向上を加速させます。このように、人的資本である「人(従業員)」の求心力をグローバルに向上させ、ブランド力(選ばれる・信頼される)を強化することで人材の獲得・確保につなげていきます。 |
配当政策
3【配当政策】
当社は、長期経営計画「2025年ビジョン」において、株主のみなさまへ、より積極的かつ安定的な利益還元を行うことを目的とし、連結配当性向を2025年度において30%+αとすることを基本方針に掲げております。
当社は、中間配当および期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本としております。定款に基づき、これらの剰余金の配当の基準日は毎年8月31日および毎年2月末日とし、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会で決議できるものとしております。
上記の基本方針を踏まえて、当連結会計年度の剰余金の期末配当は、2024年4月5日開催の取締役会決議により、1株当たり普通配当32円とさせていただきました。これにより、中間配当32円と合わせた当連結会計年度の年間配当金は1株当たり64円、連結配当性向は33.0%となりました。
内部留保資金については、将来を見据えた成長投資にあてることを基本とし、状況等を勘案して決定することとしております。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
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2023年10月6日 |
取締役会決議 |
8,402 |
32.00 |
2024年4月5日 |
取締役会決議 |
8,402 |
32.00 |
(注)2023年10月6日取締役会決議および2024年4月5日取締役会決議による配当金の総額には、「株式給付信託(BBT)」および「株式給付信託(J-ESOP)」の信託財産として信託が保有する当社株式に対する配当金20百万円および24百万円がそれぞれ含まれております。