リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が判断する連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であり、これらのリスク管理体制等については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。
(1)市場に関するリスク
① 他社との競合について
当社グループが主に事業展開するパワートレイン製品、自動車外装製品、ゴム、樹脂製品等の業界では、世界の自動車メーカー等の開発競争の激化から、品質、技術並びに価格に対する顧客の要請はより厳しいものになっております。開発段階から品質、技術、価格の面で顧客ニーズに沿い優位性を保つため、世界市場において、知財戦略や性能優位な製品開発力で、シェアの維持、拡大を図り市場機会を失うことがないように努めておりますが、安定的に保証されているわけではありません。市場機会を失った場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
② 経済環境、自動車市場の需要動向
当社グループが主に事業展開するパワートレイン製品、自動車外装製品、ゴム、樹脂製品等は、世界の各自動車メーカー等の拠点に納入されております。当連結会計年度における世界経済は、労務費の高騰や物価上昇、インフレ抑制の為の各国金融引き締め、不安定な為替相場に加え、中国経済の減速による不透明感が続きました。国内では雇用や所得環境の改善、インバウンド需要などにより景気回復の動きが見られましたものの、円安がさらに進行しました。自動車業界においても、半導体不足解消による自動車メーカーの生産が回復しましたが、原材料・エネルギー価格の高止まりに加え、労務費高騰の影響も受けており、今後金利上昇や景気後退のリスクもあり、先行き不透明感が継続しております。今後どのように推移するかによって当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
(2)事業に関するリスク
① 技術革新及び顧客ニーズへの対応について
当社グループが主に事業展開するパワートレイン製品については、自動車用をはじめとした内燃機関への供給が主であり、電動化、シェアリング等の進展により内燃機関搭載車等の自動車販売台数が減少した場合には、連結業績に大きな影響を与える可能性があります。自動車業界は、『100年一度の大変革』はさらに加速しており、EV車の増加、燃料の多様化、CASE/Maasの進展などの変革への対応が求められております。このような動きに対応するために、当社の新26中計ではパワートレイン分野とフロンティア分野の両輪経営の進化を骨太方針として掲げ、多燃料対応、HEV・PHEVに注目した開発をさらに進めると同時に、開発リソースをゴム樹脂製品、CASE対応製品、既存技術応用、ナノ素材事業化、未来予測にもとづいたベンチャービジネス、自動車外装・関連機器事業など新製品・新規事業の展開にシフトし、将来の経営基盤の多角化を図っております。しかし、当社が有する技術、知的財産、原材料や部品調達などを含む製造能力の状況により、価格競争力のある新商品を適時・適切に開発・製造できないリスクがあります。その場合は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
② 関係会社への投資について
当社グループは、既存事業の拡大や新規事業への参入等を目的として、関係会社への投資活動や企業買収を行っております。関係会社への投資につきましては、投資に見合う将来の収益性を検討した上で意思決定をしておりますが、内部・外部の不確定要因により、想定した収益を獲得できない場合があります。また企業買収に伴い発生したのれんについては、将来の収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、期待する成果が得られない場合は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
③ 他社との業務提携
当社グループは、海外事業に関して国内外の他企業と戦略的業務提携を結んでおります。多くの海外拠点については、事業リスクの分散を図るため、主に他企業との提携による合弁会社の形で進出しております。提携先とは、定期ミーティング等を開催し、方針・戦略の意思統一を図っておりますが、提携先が戦略上の目標を変更した場合や提携関係を望まなくなった場合等、海外事業戦略に支障が出る可能性があり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
④ 原材料や部品の調達
当社グループは、製品の製造に必要な原材料、部品を複数のサプライヤーから調達する方針を取っていますが、調達部品によって、特定のサプライヤーに依存しているものがあります。その特定のサプライヤーからの調達ができない場合、生産面への影響を受ける可能性があります。サプライヤーとは基本取引契約を締結し、安定的な調達を前提としておりますが、需要の急激な変化、サプライヤーの災害の被災等による供給能力の低下、自然災害での物流の寸断等により、必要調達量を確保できない場合は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
⑤ 製品の品質不具合
当社グループは「最高品質を追求し、世界一よいものを、世界一多く、早く、安くつくる事により、TPRグループの信頼とお客様満足度を継続的に向上します」を品質方針に据え、お客様クレームゼロの実現に向けて日々取り組んでいます。その結果、多くのお客様から品質表彰を毎年受賞しています。今後も将来にわたって全ての製品について品質不具合がなく、お客様への流出もないように努めてまいりますが、重大な品質不具合が発生し、お客様に損害を与えるような場合は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を及ぼすことが考えられ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
(3)金融・経済・市況のリスク
① 為替相場の変動
当社グループは、グローバルで自動車関連部品をはじめとした事業を展開しているため、多通貨の外貨取引があり、連結子会社及び持分法適用会社の連結財務諸表の作成には円換算をしておりますので為替変動の影響を受けております。現地生産を促進し先物為替予約取引等の利用も実施しておりますが、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローが影響を受ける可能性があります。
② 投資有価証券について
当社グループは、市場性のある投資有価証券を保有しており、株式の市場価格の変動により、保有する株式の評価損を計上しております。定期的に時価や発行元企業の経営状態を把握しておりますが、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローが影響を受ける可能性があります。
③ 退職給付債務
当社グループにおける退職給付費用及び債務は、割引率、期待収益率等の条件に基づいて算出されておりますが、市場の変化等により運用収益の低下など条件の変更が生じた場合や退職給付信託に拠出した株式の市場価格の変動により、退職給付債務の積立不足の増加等、費用処理される債務金額が増加する可能性があります。年金資産については、当社では資産管理を委託する資産運用機関での運用目標の達成状況及び必要に応じた資産構成の見直しについて、定期的な監視を行い、退職給付信託株式についても、定期的に株価や発行元企業の経営状態を把握しておりますが、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
④ 原材料価格変動の影響について
当社グループの主力製品であるピストンリング、シリンダライナ、焼結、ゴム、樹脂製品等の原材料であるステンレス鋼、銑鉄、希少金属、ナフサ等の価格は、需給バランス、為替の変動等に起因して市況価格が変動します。市況価格が高騰し、生産性向上などの内部努力や、販売価格への転嫁等により影響を吸収できない場合は、当社グループの将来の収益性に悪影響を与える可能性があります。
⑤ 物流価格変動の影響について
当社グループは、グローバルで事業を展開しているため、原油価格高騰による軽油等燃料価格の上昇等に起因する輸送費用、海上運賃の高騰が物流コストの増加につながります。生産性向上など製造原価の低減に努めておりますが、これらのコスト上昇分を吸収しきれない場合、また販売価格への転嫁ができない場合は、当社グループの利益率の低下を引き起こすリスクがあります。
(4)政治・規制・法的手続・災害等に関するリスク
① 法的規制等について
当社グループは、事業を展開する各国において、規制の変更、法令の適用及び行政上の運用の変更など様々なリスクにさらされています。当社グループは、グループ・ガバナンス統轄室及び海外事業部を中心に各拠点と連携を図り、法的規制に対して、グループ全体を統轄管理しておりますが、これらを遵守できなかった場合、事業の活動が制限され、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
② 地震、火災等について
当社グループが事業を展開する各国において、地震等の自然災害リスク、労災・火災等の安全リスク等に対し事業継続計画(BCP)を策定しております。地震等の自然災害リスク発生時に備え、安全在庫の確保、安否確認システムの導入、初動対応・早期復旧マニュアルを策定し訓練を実施しております。火災等の安全リスクに対しては、発生源対策、初期消火訓練等を実施しております。これらのリスク等発生時には、当社グループの事業活動の停滞に加えて、サプライチェーン寸断により取引先の生産において遅延・停止する事態が発生する等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
③ 感染症の蔓延について
当社グループが事業を展開する各国において、感染症等の衛生リスクに対しては、各国政府・自治体の行政指針に基づき、勤務体制の構築の実施、感染防止策の奨励により感染リスクの低減を図っております。また、事業継続計画(BCP)を策定し、事業活動への影響を最小限とする対応を実施しておりますが、これらのリスク等発生時には、当社グループの事業活動の停滞に加えて、サプライチェーン寸断により取引先の生産において遅延・停止する事態が発生する等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
④ 環境規制について
当社グループは、各国の環境規制情報等を入手し、環境負荷物質等の管理・撤廃、環境汚染の防止へ万全を期しておりますが、生産の過程において環境に影響を及ぼす物質等の使用があり、不測の事態により排出量が規制の基準値を超える可能性があります。また環境規制強化により主要部材が利用できないリスク等もあります。これらに対する環境規制及び基準に対する義務の遵守による負担は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
⑤ 情報セキュリティについて
当社グループは、事業活動において、顧客情報・個人情報等、また営業上・技術上の機密情報を保有しており、これらの各種情報の取り扱い、機密保持には細心の注意を払っております。サイバー攻撃、改ざん、破壊、漏洩、消失等を防止するために機密性・安全性を確保し、各種規程に則り、適切な管理体制と安全措置を講じております。
特に近年、企業に対するサイバーテロなどの犯罪は日々巧妙さ、苛烈さを増しているため、当社グループはウイルス対策、従業員への教育訓練を強化しております。万が一、情報漏洩等の事故が発生した場合には、生産活動の停止、社会的信用の低下及び訴訟等のリスクがあり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
⑥ 知的財産権について
当社グループの知的財産権については知的財産管理担当部署を中心に、秘密情報の厳重管理、海外を含めた体制強化、特許情報の精査等の対応を図っておりますが、第三者からの侵害や、過失による当社の不正使用等により、当社グループに対する訴訟等のリスクがあります。特に海外においては、類似製品の製造を完全に防止できない場合、当社が損害を被る可能性があります。これらの権利侵害による費用負担となる場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
(5)人材確保に関するリスク
① 従業員高齢化のリスク
当社グループは、日本国内において、定年退職者の増加により従業員の減少が見込まれております。その対策として、定年延長、再雇用制度を充実させる等、長く従業員が勤め続けることができるよう人事制度の検討、浸透させるとともに、DX、デジタルの推進などによる技術伝承や、生産性を高める取組みも並行して進めてまいります。
また、海外の人材を含めた多様な人材の活用など、人的資本投資を拡充して対応してまいります。このような対策を講じたとしても想定通りの効果が得られない場合は、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響が生じる可能性があります。
② 人材採用・離職のリスク
当社グループは、両輪経営を進めるにあたり、若手や専門性を有する人材を継続的に確保、定着することが求められています。その対策として、当社グループは、社内外の種々の広報活動によりコーポレートブランド力を高めるとともに、グループ一体感の醸成、社員のエンゲージメントを高めることにより社員の定着を図っております。
また、国内の各大学等に積極的に訪問するなど、新卒採用活動を強化するとともに、キャリア採用も積極的に行っており、優秀な人材・多様なスキルの充足に向けた環境整備を進めております。人材の継続的な確保、定着ができない場合は、当社グループの事業、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、配当につきましては、毎期の業績、継続的成長のための投資等を勘案しながら、企業価値の増加に応じて株主様のご期待に応えるよう、安定的に行うこと及び、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。
また、これらの剰余金の配当の決定機関は、当社定款において会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨を定めております。
上記方針に基づき、当事業年度の配当につきましては、1株当たり70円の配当(うち中間配当30円)を実施することを決議いたしました。この結果、当事業年度の配当性向は50.6%(連結配当性向は28.8%)となりました。
内部留保資金につきましては、研究開発投資、海外拠点拡充投資、合理化投資など将来のための資金に充当する予定であります。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年11月13日 |
1,018 |
30 |
取締役会決議 |
||
2024年5月24日 |
1,357 |
40 |
取締役会決議 |