2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 市場環境等について

① 成熟した日本経済の環境下で、長期的視点から、国内の公共事業・民間建設需要が大きく伸長することは考えにくく、需要減少に伴い他社との販売競争が激化して当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、需要見合いの生産を実行し、再生産可能な販売価格の維持に努めつつ、生産余力を活用して鋼片・鋼材の輸出に注力するなどにより収益基盤の強化を図っております。

② 主原料である鉄スクラップ価格が地政学リスクや、東アジア地域内の需要拡大、国内高炉メーカーの購入増加などの影響を受け、短期的かつ大幅に変動した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、操業に応じた最適な在庫水準の維持に努めております。

③ 東アジア地域を中心に全世界で鉄鋼生産能力の増強が進行し、過剰な生産設備による供給過剰問題が顕在化することにより世界的な鉄鋼需給バランスが大きく崩れた場合、海外市場から日本市場への輸出が増加する可能性があります。この場合、当社グループ製品の販売量減少、販売価格下落などにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、複数の製造拠点をもつ事業所体制を構築し、グループ全体の業務の効率化、営業力強化並びに資産の有効活用を進めることなどにより、安定した収益基盤の確立に努めております。

④ 経営環境の変化などに伴う収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、その回収可能性を踏まえて固定資産の帳簿価額を減額し減損損失を計上するため、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、需要見合いの生産を実行し、再生産可能な販売価格の維持に努めつつ、生産余力を活用して鋼片・鋼材の輸出に注力するなどにより収益基盤の強化を図っております。

⑤ 当社グループは有利子負債を保有しているため、金利情勢やその他金融市場の変動により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、金利を固定化すること等により、リスク低減を図っております。

 

(2) 特定の取引先・製品・技術等への依存に係るもの

① 電力供給の影響に関して、現在、国内の原子力発電所の多くが運転を停止するなか、カーボンニュートラル促進の観点から、原子力発電の代替として活用されてきた火力発電に代わって、自然エネルギーを活用した発電への移行が進んでいることなどから、東京電力や関西電力などが電力単価を引上げ、電力費の負担は年々増大しており、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、こうした電源構造の変化に応じた最適な生産体制を整えるとともに、製造時に使用する電力・燃料の軽減につながる省エネルギー投資や、太陽光パネル等の自然エネルギーの活用など、省電力対策投資に積極的に取り組んでおります。

② 電気炉製造の主要資材である電極について、東アジア地域における電気炉での製造拡大や電気自動車の普及に伴う電極の主原料であるニードルコークスの需給逼迫などにより、今後、短期的かつ大幅に変動した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、主要資材の耐火物や合金鉄についても、その製造における原料の原産地が限定されるものがあり、今後、調達数量の制約や価格上昇により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、複数の資材調達先を確保し、適切な在庫水準の維持に努めております。

 

(3) 特有の法的規制・取引慣行・経営方針に係るもの

今後、当社グループが事業活動を行うにあたり、環境規制など、将来における法律、規則、政策等の変更や強化・導入された場合には、製鉄事業を中心に事業活動が制約を受けることにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、業界団体への加盟等により必要な情報を的確に収集し、グループリスクマネジメント委員会を通じてグループ各社との情報共有を図っており、事前の対処により受ける影響を最小限に留めるように努めております。

 

 

(4) 重要な訴訟事件等の発生に係るもの

現時点において、製造物責任に関する損害賠償請求等、当社グループが関係する重要な係争中の訴訟はありません。しかしながら、将来において、当社グループの事業活動に関連する訴訟事件が発生する可能性は否定できません。将来、起こり得る訴訟事件等に関する裁判所等の最終判断は、現時点で予測不可能でありますが、場合によっては当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、弁護士事務所と顧問契約を締結し、専門家による適切な助言を受けられる体制を構築しております。

 

(5) 人材確保・育成、省力化対策

当社グループの更なる成長について、有能な人材の確保や育成に大きく依存しております。当社グループは、今後の少子化・労働者人口の減少などによる人手不足に対応するべく、女性や外国人、中途採用者等、多様な価値観や経験をもつ人材の採用や人材教育、省力化対策への設備投資などに取り組んでおりますが、人員バランスの計画が少子化等による外部環境の悪化により達成できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、女性活躍の推進等による優秀な人材の確保や福利厚生施設の充実化など、従業員が働きやすい職場づくりに努めるとともに、在宅勤務制度の整備や、新入社員研修等で実施している人権研修の拡充等、D&Iへの意識改革を目的とした全社教育環境の整備や、今後の女性及び高齢者等の活用を鑑みた育児・介護と仕事の両立支援に向け、更なる施策を検討してまいります。

 

(6) 自然災害、異常気象等

① 当社グループの各事業所及び需要家をはじめとする取引先が、大規模な台風、地震等の自然災害や新型インフルエンザ等の感染症の流行の発生に見舞われた場合には、事業活動が制約を受けることにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、重大な労働災害、設備事故、環境事故、品質問題等が発生した場合、又は重要な訴訟において当社グループに不利な判断がなされた場合には、事業活動の停止・制約、補償等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、各事業所間において鋼片等を相互に供給できる体制の構築に努めております。

② 新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザ相当の「5類」に移行されましたが、同感染症が再び拡大した場合には、海外及び国内の経済活動の停滞に伴い、売上が減少する等、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当該状況への対応策として、従業員、顧客及び取引先などの安全を第一に考え、また、感染症拡大を防止する観点から、国、地方自治体などの要請に即した勤務体制を構築すべく、リモート環境の整備によるテレワーク制度の導入やWeb会議システムの利用環境を整えております。

 

(7) 組織再編、海外投資等

当社グループは、2019年3月に子会社化した朝日工業㈱の組織再編・投資等によって成長を持続させ、今後も組織再編や投資を継続する可能性があります。当社グループは、慎重な事業評価、契約交渉、社内審議等のプロセスを経たうえで投資等の実行を判断し遂行しておりますが、連結貸借対照表に計上したのれんに減損が生じるような場合は、当社グループの業績等に悪影響が生じる可能性があります。

 

(8) 朝日工業㈱とのシナジー効果

当社グループは、2019年3月に各項目における事業シナジーの効果を期待して朝日工業㈱を子会社化し、その実現に向けた具体的な諸施策を推進しております。これら計画は、策定当時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定されていますが、こうした情報や分析等には不確定な要素が含まれており、今後、事業環境の悪化や、その他の要因により、期待される成果の一定程度が実現に至らない可能性があります。

 

(9) その他

現時点では予測できない、政治・経済状況の変化をはじめとする、上記以外の事業リスクの発生により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つと考えており、業績に応じた利益配分を基本として、中間及び期末の剰余金の配当を実施する方針といたしております。

当面の間は、財務体質の改善、必要な投資資金の確保等を勘案しつつ、業績連動利益配分の指標として、連結配当性向年間30%程度を目安といたします。

内部留保資金の使途については、企業体質の強化及び設備投資等、将来の事業展開に役立てる所存であります。

なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

 

当期の剰余金の配当につきましては、上記方針に従い、中間配当は、2023年11月2日開催の取締役会において、1株につき140円とすることを決議いたしました。期末配当も同方針に従い、2024年4月26日開催の取締役会において、1株につき140円とすることを決議いたしました。

 

(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年11月2日

取締役会決議

2,047

140.00

2024年4月26日

取締役会決議

2,047

140.00