リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 業績の変動の外的要因について
当社グループは、アセットマネジメント事業およびファイナンシャル・サービス事業の二つの分野において、それぞれ商品やサービスの多様化を進め、事業リスクの分散による安定的な収益基盤の構築を図っておりますが、株式市況、為替、市場金利等の金融情勢や景気動静、金融機関の動向等の外部要因は、常に変動し、当社グループの業績に常に影響を与えています。特に、わが国の投資信託に関する状況は、当社グループが営む二つの事業分野に直接大きな影響を及ぼす可能性があります。これらの外部要因は、当社グループでコントロールができず、大きな変動が生じた場合には、当社グループの業績に影響がでる可能性がありますが、その時期や影響を予想することは困難であります。
① 株式市況および株価
当社グループのアセットマネジメント事業の中心である当社子会社のSBIアセットマネジメント株式会社は、投資信託の設定・運用が主業であり、その運用残高に応じた信託報酬を主な収益源としております。その中でも大きな柱の一つである公募投資信託では、国内外の株式等に投資する追加型株式投資信託が中心であり、そのため、わが国や世界各国の株式市況、並びに投資している個別株式の株価および投資対象とするインデックスの値動き等により、運用する投資信託の残高が変動し、信託報酬が変動する性格を持っております。また、もう一つの柱である私募投資信託については、株式に比べ比較的値動きに小さいアセットクラスである債券に投資するタイプが大きな割合を占める一方で、私募投資信託への投資家は地方銀行をはじめとする地域金融機関が多く、大ロットでの投資が多いため、これら投資家の投資行動により残高が大きく変動するという特徴を有しております。
このため、当社グループのアセットマネジメント事業においては、投資信託分野における商品ラインアップの多様化を図り、それによるリスクの分散を積極的に進めてまいりました。具体的には、従来はSBIアセットマネジメントにおける公募追加型株式投資信託、中でもインデックスファンドが事業の中心でありましたが、2019年2月に米国において私募の債券型ファンドを中心に運用しているCarret Asset Management LLCを子会社とし、2019年12月には主として、私募の債券型投資信託を運用するSBIボンド・インベストメント・マネジメント株式会社およびSBI地方創生アセットマネジメント株式会社を子会社といたしました。これらの株価変動による影響が小さい私募の債券型投資信託に係る事業規模の拡大により、運用する投資信託の種類や範囲を広げ、グローバル・アセット・アロケーションの再構築をおこない、収益の安定を図っております。更に、2022年10月には新生インベストメント・マネジメント株式会社を合併し、アクティブ型のファンド・オブ・ファンド等をラインナップに加えることで、特定の市況・指標等に左右されにくい事業ポートフォリオの整備にも注力してまいりました。なお、SBIボンド・インベストメント・マネジメントおよびSBI地方創生アセットマネジメントは2022年8月に、新生インベストメント・マネジメントは2023年4月に、それぞれがSBIアセットマネジメントを存続会社とする吸収合併を実施しております。
ファイナンシャル・サービス事業につきましては、株式市況及び株価等の変動が業績に及ぼす影響は相対的に小さいものと想定しております。
② 為替、市場金利
当社グループは、前述のとおり2019年2月に米国において私募の債券型ファンドを中心に運用しているCarret Asset Management LLCを、2019年12月には国内外の債券に投資するタイプの投資信託が主力であったSBIボンド・インベストメント・マネジメント株式会社およびSBI地方創生アセットマネジメント株式会社を、2022年10月には海外の運用会社の運用手法をファンド・オブ・ファンドの形態で国内の投資信託として運用していた新生インベストメント・マネジメント株式会社をそれぞれ子会社といたしました。これにより、当社グループのアセットマネジメント事業が運用する投資信託・ファンドの投資対象に、国内および米国を中心とする海外の債券や、新興国を含む世界各国の株式等が追加されました。そのため、当社グループの業績は、国内の他、米国を中心とする海外の債券市場、国内外の金利、為替の変動の影響を受けることとなりました。
当社グループとしては、このリスク要因に対しては、適切な金利、為替のヘッジ取引や、親会社であるSBIホールディングス株式会社およびその傘下のグループ各社の金融情報や手法等を活用して、債券市場、国内外の金利、為替の変動の影響を低減しております。また、一方では投資対象地域や対象商品が多様化することは、それ自体が当該リスクへの備えともなるため、当社グループとしては、引き続き事業対象の拡大や適切なリスクヘッジ手段を用いて、顧投資家の皆様への安定的な運用結果を提供し、ひいては当社グループの収益の安定を図ってまいります。
なお、ファイナンシャル・サービス事業においては、為替や市場金利等の変動についても、業績に及ぼす影響は相対的に小さいものと想定しております。
③ 金融機関の動向
アセットマネジメント事業の中心である当社子会社のSBIアセットマネジメント株式会社においては、公募追加型株式投資信託を中心とする商品群を、SBI証券を中心にその他の証券会社や地方銀行等も含めた金融機関に対して、一般投資家への販売を委託している他、地域金融機関の自己資金を受託して私募の投資信託を設定・運用するなど、金融機関とは密接な関係を有しております。
また、ファイナンシャル・サービス事業は、投資信託を中心に各種金融商品のインターネット広告を受注している他、資産運用フェアや各種セミナー等において、運用会社等の金融機関からスポンサー収入を得ております。また、
金融機関の販売員が投資信託を中心とする金融商品の販売説明に利用する「ウエルスアドバイザー」端末においては、ファンドデータや金融機関のウェブサイト上のデータを、当該販売金融機関に提供しています。
このように、当社グループ各社において金融機関は主要な顧客であり、金融機関の動向は当社グループの業績に影響を与えます。
当社グループは、各金融機関と良好な関係を構築しておりますが、金融機関が株式市況および株価、債券市場、為替、市場金利などの変動により業績に影響を受けた場合、アセットマネジメント事業においては当社の運用する投資信託への投資金額が大きく変動する可能性があり、また、ファイナンシャル・サービス事業においては、金融機関からの当社グループへの広告、セミナーの発注等が変動する可能性があります。
このリスクに対しては、アセットマネジメント事業では、投資家への適切な関連情報や、運用状況の結果とその分析を丁寧に提供することで、投資家からの信頼を獲得することで対処しております。また、ファイナンシャル・サービス事業においても、フィデューシャリー・デューティーに注力する販売金融機関への時宜に適ったプロダクトの提供や、丁寧なサポートを行うことで、その低減を図っております。
(2) アセットマネジメント事業で運営するファンドの募集および運営成績について
当社グループのアセットマネジメント事業は、公募追加型株式投資信託や私募の債券型投資信託、投資助言を行っておりますが、新規ファンドの募集が困難となる場合や、当初予定していたとおりにファンドを運用できなくなる可能性があります。また、当社グループの運用するファンドが期待どおりの運用成績を達成出来なかった場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(3) アセットマネジメント事業に影響を与える法的規制について
当社グループのアセットマネジメント事業は、投資信託運用会社として金融商品取引法に基づき投資運用業及び投資助言業の登録を行っております。また、米国において、同国の金融商品取引法に基づき投資運用業及び投資助言業の登録を行っております。今後、日米両国で、これら金融商品取引法及びその関連法令等に関し改正が行われた場合、当該事業の業務遂行に影響を及ぼす可能性があります。また、何らかの理由により法令等への違反をし、これらの登録の取消処分等を受けた場合には、当該事業の業務遂行に支障をきたすと共に当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(4) 「のれん」の減損の可能性について
当社グループのこれまでの買収等の企業結合の結果、2024年3月31日現在の連結貸借対照表に「のれん」が1,633,229千円計上されています。
「のれん」の内訳は以下のとおりです。
「のれん」の発生要因 |
「のれん」が帰属する 事業・サービス |
企業結合年月 |
「のれん」 の残高 |
Carret Holdings Inc.と Carret Asset Management LLC の買収、子会社化 |
米国における私募の債券型ファンドの運用 |
2019年2月 |
916,815千円 |
SBIアセットマネジメント株式会社に 係る買収、子会社化(注1) |
私募の債券型投資信託の運用、公募ならびに私募の投資信託のアクティブ運用(注2) |
2019年12月~ 2022年10月 (注1) |
716,414千円 |
|
1,633,229千円 |
(注1) SBIアセットマネジメント株式会社を存続会社とする吸収合併により消滅会社となった旧新生インベストメント・マネジメント株式会社(企業結合年月 2022年10月)、旧SBIボンド・インベストメント・マネジメント株式会社及び旧SBI地方創生アセットマネジメント株式会社(企業結合年月 2019年12月)の買収・子会社化によるものであります。
(注2) 上記の合併消滅会社3社が行っていた主要な事業であります。当該事業は、現SBIアセットマネジメント株式会社が承継し、営んでおります。
「固定資産の減損に係る会計基準」および「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」に従い、各「のれん」が帰属する事業・サービスに「営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナス」などの減損の兆候の有無を把握し、減損の兆候がある場合には、減損損失の認識と測定を行います。その結果、「のれん」の減損損失が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度末において、上記の「のれん」が帰属する事業・サービスの営業活動から生ずる損益はプラスであり、減損の兆候はありません。
現時点においては、「のれん」の減損損失の計上を要する可能性は小さいものと考えております。
(5) コンピュータシステム等のトラブルについて
当社グループは、インターネットを通じて各種評価情報を提供するとともに、ホームページへの広告の掲載や金融情報の配信を行っております。当社グループは、コンピュータシステムの拡充と安定性の確保には多大な努力をしておりますが、システムへの予想を超えるアクセス数の増加による過負荷、機器やソフトウェアの不具合、人為的ミス、回線障害、コンピュータウィルス、ハッカー等の悪意の妨害行為のほか、停電、自然災害によってもシステム障害が起こる可能性があります。
当社グループでは、さまざまなシステム障害対策を講じてはおりますが、何らかの理由により障害が発生した場合、サービス停止による収益機会の喪失、顧客やユーザーからの信頼性低下などにより、当社グループの業績に影響が出る可能性があります。
(6) 個人情報の管理について
当社グループは、事業に必要な個人情報を収集し活用しております。これらの個人情報の流出や外部による不正取得による被害の防止は、当社グループの事業にとってきわめて重要であり、当社グループではこれらの動向に注意し、顧客の利害が侵害されることのないようセキュリティ対策を講じております。過去に顧客情報の漏えいや破壊等が起こったことは認識しておらず、また、情報漏えい等により損害賠償を請求されたこともありません。しかし、今後個人情報の漏えい等があった場合、当社グループに対する信頼性低下の可能性があるほか、法的責任を問われる可能性もあり、その結果として当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
(7) 当社グループの公正な中立機関としてのイメージについて
当社グループは、SBIグループの日本における総合金融サービスの一翼を担っております。その一方で、当社グループのファイナンシャル・サービス事業の営業基盤には、評価の客観性と中立性が求められる部分も大きいと考えております。したがって、投資家その他のユーザーからの当社グループの事業に対する信頼性が損なわれないように、SBIグループとの協力関係は維持しながらも、当社グループの独立性を重視して、客観的かつ公正な比較・評価情報を提供していく必要があると考えております。
そのため、当該ユーザーが当社グループの提供する情報に関して客観性や中立性が欠如していると判断した場合や、当社グループの提供するデータや記事の信頼性が、データの間違いや不適切な引用記事等によって損なわれ、評価機関としてのイメージが低下した場合には、当社グループの業績や株価に悪影響を与える可能性があるものと認識しております。
(8) SBIグループとの関係について
SBIホールディングス株式会社は、当社の議決権の所有割合の52.7%(当連結会計年度末現在)に相当する株式を間接保有しております。また、連結総売上高においてSBIグループに対する売上高が一定の割合で存在しており、SBIグループの業績変動によって当社グループの業績に影響が出る可能性があります。また、SBIグループの金融サービス事業戦略、当社グループと取引を行っているSBIグループの会社の経営方針等によっては、当社グループの事業運営等に影響を与える可能性があります。特に、SBIグループの新たな事業構想等に当社グループが参画することとなる局面においては、想定外の事業リスク等が発生する可能性もあります。当社グループとしては、上場会社としてのガバナンス体制と独立した判断に基づき、これらのリスクに対しても適切に対処することができるものと考えております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題と認識しており、株主の皆様に対する安定的かつ適正な利益還元を目指すとともに、内部留保による競争力・収益力の向上に向けた事業投資を行うため、連結業績を総合的に勘案した上で配当を実施することを基本方針としております。この基本方針のもと、米国モーニングスター・インクへの「モーニングスター」ブランドの返還対価8,000百万円が計上された2023年3月期を除くと、親会社株主に帰属する当期純利益が過去最高となったことを勘案し、中間配当(8円50銭)と合わせた年間配当額が前事業年度の特別・記念配当を含めた年間配当額と比べ、1株当たり50銭増配の21円50銭となるように、当期(2024年3月期)の期末普通配当を13円00銭といたしました。
なお、このたびの増配により、当社は15期連続での増配となります。
当該剰余金の配当の内容は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当の原資 |
配当金の総額 |
1株当たり 配当額 |
基準日 |
効力発生日 |
2023年9月19日 |
利益剰余金 |
762,224千円 |
8.50円 |
2023年9月30日 |
2023年12月1日 |
取締役会 |
|||||
2024年4月26日 |
利益剰余金 |
1,165,755千円 |
13.00円 |
2024年3月31日 |
2024年6月1日 |
取締役会 |
内部留保資金につきましては、今後の経営環境の変化に対応すべく、また、より的確・迅速な金融情報を提供できるように、金融情報のデータベースを主としたコンピュータシステムの開発・改善に有効投資していきたいと考えております。
なお、毎事業年度における配当の回数についての基本方針は機関決定しておりませんが、第6期(2002年1月1日から2002年12月31日まで)以降の毎事業年度に1回の期末配当を実施し、第22期(2018年4月1日から2019年3月31日まで)からは中間配当も実施しております。次事業年度の配当は未定でありますが、今後も経営成績、収益力向上に向けた事業投資のための内部留保及び経営環境などを勘案しつつ、安定的かつ継続的な配当その他の株主還元策を検討してまいる所存であります。
なお、当社は、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議により行うことができる旨、定款に規定しております。