リスク
3【事業等のリスク】
当社グループは中長期に会社の業績に大きな影響を与える重要課題(マテリアリティ)を定めています。これらの重要課題については、確実で効率的な対応を心がけつつ、2022年スタートの長期経営計画「DIC Vision 2030」(注1)における事業の推進に役立てています。また、経営環境の変化やリスクの多様化に適切かつ柔軟に対応するとともに、潜在的なリスクが顕在化することによる事業への影響を速やかに最小限に抑えるため、当社グループのサステナビリティ経営の諮問機関であるサステナビリティ委員会の下部組織であるリスクマネジメント部会が中心となって、リスクマネジメント活動を進めています。広範なリスクから、リスクアセスメントによって発生可能性と影響度で評価し、当社グループにとっての主要なリスクを特定しています。特定されたリスクのうち、特に重要なリスクにはリスクオーナーを設置して対策を講じ、リスクマネジメント部会が進捗や成果を確認しています。これらの活動全般については、サステナビリティ委員会や取締役会で適宜報告するとともに、適切なモニタリングを行っています。
後述する主要なリスクについては、当社グループのマテリアリティ(注2)をベースにリスクマネジメント部会で実施する調査結果を踏まえて、各リスクが顕在化した場合に、当社グループのビジネス及びステークホルダーに与え得る影響度合いを大、中、小に分類しています(注3)。
なお、将来に関する事項についての記載は、当連結会計年度末現在における判断に基づくものであり、また当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。
(注1)長期経営計画「DIC Vision 2030」の詳細は、https://www.dic-global.com/ja/ir/management/plan.htmlをご覧ください。
(注2)マテリアリティの詳細は、DICレポート(統合報告書)
https://www.dic-global.com/ja/csr/annual/をご覧ください。
(注3)各リスクが顕在化する可能性や時期など表中における項目の詳細は以下のとおりです。
可能性 (当連結会計年度末現在における各リスクが将来的に顕在化する可能性)
高: 可能性が高い
中: 可能性が中程度
低: 可能性が低い
時期 (当連結会計年度末現在における各リスクが顕在化し得る時期やタイミング)
長期: 5年超
中期: 3、4年程度
短期: 2年以内
不明: 顕在化するタイミングが予想できない
区分 (発生要因別の当社グループにおける管理上のリスク区分)
①: 発生防止を自社でコントロールできない外部環境リスク
②: 会社のマネジメントで発生防止対策を取り得るコーポレートリスク
③: 事業の中で認識すべきビジネスリスク
関連 (長期経営計画「DIC Vision 2030」で定めた事業戦略との関連)
A: 成長実現に向けた事業ポートフォリオの変革
B: グローバル経営、ESG経営及び安全経営を下支えする経営基盤の強化
C: キャッシュ・フローマネジメント
他: 事業戦略の関係なし
(1)顕在化した場合の影響が大きいリスク
リスク及び業績に与える影響の内容 |
可能性 |
時期 |
区分 |
関連 |
当社グループの取り組み |
ポートフォリオ転換に関するリスク 長期経営計画「DIC Vision 2030」では、社会課題を解決し、社会の持続的繁栄に貢献する5つの重点事業領域を定め、経営資源を集中させることで事業ポートフォリオの変革に取り組んでいます。 事業ポートフォリオの変革に遅れが生じた場合、硬直化により成長が鈍化した場合、及び製品ライフサイクルに伴い成熟事業の収益性が徐々に低下した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
|
中 |
短~長期 |
②③ |
A |
当社グループは、長期経営計画「DIC Vision 2030」において、サステナブルエネルギー領域、ヘルスケア領域、スマートリビング領域、カラーサイエンス領域、サステナブルパッケージ領域を5つの重点事業領域として定め、各事業部門と新事業統括本部との協働による成果創出に注力しています。また、当社グループの事業戦略にそぐわない低収益事業の縮小・撤退の基準を設けて定期レビューを行うとともに、取締役会及び執行会議では長期経営計画で定めた事業戦略の進捗を定期的に確認し、事業環境に応じた施策の更新・追加を講じています。長期的計画を確実に実現させるため、2025年までの前半の4年間は「DIC Vision 2030」の目指す姿を実現するための基盤づくりの期間、2030年までの後半の5年間を目指す姿を実現して展開する期間と位置づけています。 これまでの成果と課題を踏まえ、2024-2025年は早期かつ確実に収益化が見込まれるテーマに経営資源を集中投入すること、効率的なリソース配分を実行することにより、引き続き「DIC Vision 2030」の目指す姿の実現に取り組んでいきます。
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企業買収・資本提携が想定どおり進まないことに起因するリスク 当社グループは、事業ポートフォリオ変革のため、企業買収や資本提携を積極的に実施しています。当社グループが実施する統合・協業が不十分又は想定どおり進まない場合、当初計画していた効果が得られないため、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 |
中 |
中~長期 |
②③ |
AC |
当社グループでは、設定した投資指標に基づいて投資判断を行うとともに、自社による調査の他、外部機関も活用して徹底したデューデリジェンスを行い、リスク事項を事前に洗い出し、対策を講じています。買収後はグループ一体となったPMI(統合活動)の推進やシナジーの実現に向けたアクションを実施することにより、リスク低減に取り組んでいます。 また、買収後に業績不振に陥る場合は、グループ一体となって構造改革・効率化をスピードアップし収支構造の改善に取り組みます。
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政治・地政学変動に関するリスク 政治・社会情勢の著しい変化や各種法規制・国際条約の変更等の予期せぬ事態が生じた場合、これらに起因して生じるコスト増、製品・原料の輸出入制限、送金停止、サプライチェーン分断等が、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。例えば、米中対立による製品・原料等の輸出入停止及び関税率アップに伴うコスト急増、渡航規制強化による適時適切な現地対応や人材配置の制限、あるいは中東における紛争・政治不安、ロシアによるウクライナ侵攻に起因する混乱、台湾有事が顕在化した場合等によるエネルギーや天然資源の価格高騰、物流の混乱等が挙げられます。 |
中 |
不明 |
①② |
他 |
当社グループでは、本社による全体的な管理に加え、地域統括会社による日常的な管理により、事業面及び機能面の双方で事業を展開する各国における様々なリスクをモニタリングしています。 生産・販売面においては、事業部門を主体としたBCP(事業継続計画)の確立や原料の複数調達体制の構築を通じてカントリーリスクへの対応に取り組んでいます。 サプライチェーンの分断には、世界中にまたがるネットワークを有効活用することでリスクを低減しています。 加えて、人命・信用・資産等、各種経営資源の保全に向け、必要に応じて現地拠点とも協力しながらグループ全体での情報共有・対策立案・教育訓練にも取り組んでいます。
|
災害、事故の発生に伴うリスク 大規模自然災害や事業活動に伴う災害・事故により、人的・物的損害が発生した結果、工場操業や事業活動の停止が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、事故災害の発生により、事業所周辺の地域社会等に対するレピュテーションの毀損に伴い、当社グループの事業活動への影響が発生する可能性があります。 |
高 |
短~長期 |
①②③ |
他 |
当社グループでは、重大災害等発生時の危機管理規則や個別のリスク別(大規模地震・台風・水害等の自然災害、パンデミック、工場における爆発・火災・漏洩等)の対策マニュアルを全社マニュアルとして整備するとともに、製品本部ごとにBCPを策定しています。 事業所の事故災害防止活動を推進するため、経営層の安全活動への意思表明、方針策定と周知徹底、定期的な監査の実施、積極的かつ継続的な教育・訓練を実施しています。 事故災害が発生した場合は要因分析・対策を行い、全社で情報共有を行うことで、グループ全体の事故災害防止を図っています。 急増する自然災害への対策としては、耐震・耐水等への継続投資、他社・外注先との連携強化を進めています。 なお、緊急事態には専用のコミュニケーションツール等を活用し、事業所と本社で効率的な情報共有や対策を講じています。
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イノベーションの停滞に関するリスク 当社グループは、環境面における社会変革への対応が非常に重要と捉え、「グリーン社会、デジタル社会、QOL社会」に貢献する製品開発をグループ一丸となって取り組んでいます。同時に、急速に進展するデジタルテクノロジーの活用、DX推進に遅れを取らないように対策を進めています。しかしながら、当社グループのイノベーションが停滞して社会要請に応える製品を開発・上市できない場合、成長が鈍化する可能性があります。 |
中 |
中~長期 |
②③ |
ABC |
当社グループは、保有する既存の基盤技術に加え、無機材料やバイオに関する新しい基盤技術を活用して、グリーン社会に貢献する次世代向けパッケージ、デジタル社会に貢献する高速通信関連材料、QOL社会に貢献する高機能ニュートリション等、様々な市場やニーズに応じたサステナブル製品の開発を進めています。 技術部門では、製品開発の成功率アップと開発期間短縮のためにMI(マテリアルインフォマティックス)を積極的に活用するとともに、量子コンピュータのコンソーシアムへの参加等、オープンイノベーション活用による最先端デジタルテクノロジーの導入を積極的に進めています。 さらに生産技術部門では、工場のスマート化に向けた生産技術のDX推進に精力的に取り組んでいます。
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気候変動に伴う環境変化や社会変革への対応に関するリスク 当社グループは2021年6月より「DIC NET ZERO 2050」として、「2030年CO2排出量の50%削減(2013年度比)」と「2050年カーボンネットゼロの実現」を長期目標に掲げています。この目標を達成するための活動において、以下をリスクと捉えています。 1)日本国内では2026年度の排出量取引(GX-ETS)の本格稼働、2028年度の化石燃料賦課金の導入が決定されています。これにより原燃料価格や電力価格の上昇が懸念されます。 2)CO2排出量削減の社会的要求や顧客ニーズが極端に大きくなる場合には、排出量の大きい既存事業からの縮小・撤退の可能性があります。 3)脱炭素社会に向け、サーキュラーエコノミー等による急激な需要の変化が起きた場合、対応できなければ大幅な事業収益の低下をもたらす要因となります。 4)異常気象による気象災害の深刻化・頻発化により事業所の稼働停止、原料調達の不安定化等を誘発し事業収益の低下と事業継続の可否に関わるリスクがあります。 5)国際的に情報開示に対する要求が厳しくなっているなか、開示しないことによるレピュテーションの毀損、グリーンウォッシュによる訴訟のリスクがあります。
|
中 |
中~長期 |
①②③ |
AB |
当社グループは、積極的な環境投資と省エネ施策の推進を通じてCO2排出削減に取り組んでいます。また、「DIC NET ZERO 2050」の実現に向けたロードマップの策定を進めています。 ・SBTiの認定を2023年1月に取得しました。CO2削減目標達成に向け、各地域で環境投資を立案、実施していきます。日本では経済産業省の主導するGXリーグに2023年9月より参画しました。2026年度の本格稼働に備え、社内体制の整備やScope1排出量削減を検討しています。 ・製品カーボンフットプリントの提供は、欧米では2022年から日本では2023年から開始しています。これにより当社グループの製品のCO2排出量を明らかにし、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。 ・気候変動による需要の変化に的確に対応すべくサーキュラーエコノミーを含めた脱炭素社会に向けた製品・サービスの開発を進めるため、5R(Reuse, Reduce, Renew, Recycle, Redesign)のグループ定義を策定しました。 ・物理的リスクに対して重要原料の供給対策も含むBCPの策定を進めています。また、沿岸立地事業所の気象災害リスクへの対策強化にも努めています。 ・確度の高い情報収集とグループ内での情報共有により、高度な情報開示要求に対し、グリーンウォッシュのような実態に陥ることなく、グループ全体の情報を適時適切に開示していきます。
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環境負荷低減の要請に起因するリスク 当社グループは、生産活動を通じて様々な環境負荷が発生するリスクがあります。具体的には、大気汚染物質や水質汚濁物質、産業廃棄物、プラスチック廃棄物等が挙げられます。通常、環境負荷の排出は一定レベルに抑えていますが、トラブルにより環境負荷物質が想定以上に排出されてしまった場合、その回収コスト負担や賠償責任の可能性があります。また、環境負荷に対する環境規制の強化や、業界基準の変更、さらには社会的要請に適切に対応できなければ、生産を継続できなくなるリスクがあります。また、社会情勢の変化に伴う製品要求性能の急変に対応できなければ、事業収益の低下と事業継続の可否に関わるリスクが顕在化する可能性があります。
|
中 |
短~長期 |
①②③ |
AB |
当社グループは、生産と事業の両面から環境負荷の低減に努めています。生産面においては、生産拠点所在地における環境負荷低減に関連する様々な法令や規制の遵守はもとより、具体的な削減目標を定めた上で定期的に環境負荷データをモニタリングして、環境負荷物質の削減に努めています。また、トラブルに対しては、緊急事態に対応したマニュアルを整備し、環境負荷物質の排出を最小限に抑える体制をとっています。同時に、社会的変化に対応すべく環境保護設備の積極的な投資や導入期間短縮を図っています。事業活動においても、製品の環境負荷低減を図りながら、地球環境と社会課題に貢献する製品の拡大に取り組んでいます。具体的にはバイオベース材料を使用した製品等、製品の再利用や再商品化等、ケミカルリサイクルあるいはマテリアルリサイクルを含めたサーキュラーエコノミーに取り組んでいます。 また、環境負荷を低減し、健全でバランスの取れた生態系を保全・維持するため、生物多様性への取り組みとして「生物多様に関する方針」を策定しました。
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(2)顕在化した場合の影響が中程度のリスク
リスク及び業績に与える影響の内容 |
可能性 |
時期 |
区分 |
関連 |
当社グループの取り組み |
コンプライアンス違反に関するリスク 当社グループは、世界各国で事業活動を行っており、商取引、安全、環境や化学物質等に関する様々な法規制の適用を受けています。法規制等に違反した場合、事業の停止命令や罰金が課され、又は損害賠償責任が発生し、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。 |
低 |
不明 |
② |
AB他 |
当社グループでは、法規制の他、ビジネスを実践する上で遵守すべきコンプライアンスに関する基準として「DICグループ行動規範」を定めています。 社長は、役員を含む全社員に向けて、コンプライアンスの重要性や、ビジネスよりもコンプライアンスが優先すべき価値であることを折に触れて自らの言葉で発信しています。 全社員は、具体的事例を取り上げたeラーニングや研修によって、その認識を深めています。 さらに、コンプライアンス上の疑問を持った場合に相談できる体制を整備し、内部通報制度の活用や担当部署から独立した部署による監査・調査等を通じ、コンプライアンス違反があった場合の早期発見、早期是正を図っています。 また、法規制変更時の周知徹底、化学物質情報管理システムの運用徹底・DX(デジタルトランスフォーメーション)化/効率化、デザインレビューの運用徹底等、あらゆる段階でコンプライアンスリスクの低減に必要な対策を講じています。
|
人材確保に関するリスク 当社グループの成長を維持するためには、事業運営や業務遂行に必要となる多彩な人材を採用し、確保し続ける必要があります。労働市場全体で、グローバルに活躍できる人材や高い専門性を有する人材の必要性が高まっている中、このような人材の確保は競争が激化しているため、より実効性のある採用・育成・定着に向けた各種施策の立案と遂行が急務の課題となっています。当社グループがグループワイドに活躍できる多彩な人材を採用し、継続的に雇用し、育成することができない場合、当社グループの事業運営や組織設計に影響を与える可能性があります。 |
高 |
短~長期 |
②③ |
AB |
当社グループでは、必要な人材をタイムリーに採用するために、新卒採用においてはインターンシップ、先輩社員との座談会イベント、研究室単位での説明会等、きめ細かく接点を設けるような対応を実施しています。キャリア採用においては、人材会社やスカウトサービスの活用等、多様な手段を通じ、多彩な人材の採用を推進しています。また、DICレポート(統合報告書)の充実化や採用ホームページの刷新等、ブランディング活動の推進にも取り組みながら、労働市場への有効なアピールにも努めています。さらに、社員が一体感を持ちながら協働していくことを推進するため、ダイバーシティの推進、複線的な人事制度の導入、キャリア支援制度の拡充、タレントマネジメントの強化、人材育成制度の拡充、メンタルヘルスの向上、グローバルでの後継者計画・配置転換計画の策定、柔軟な働き方に向けたワークスタイル改革等、エンゲージメント向上や人材育成につながる各種施策を積極的に展開しています。
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金利変動に起因するリスク 当社グループは、有利子負債による資金調達を実施しており、金融市場に急激な変動が起こった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
|
中 |
短~中期 |
① |
C |
当社グループは、財務の健全性の評価指標として、ネットD/Eレシオを採用し、財務体質の維持・強化と有利子負債の削減に努めています。また、各国の金利動向を注視しながら、固定金利調達を増やすなど、将来の金利変動リスク、金利負担の低減を図る措置を講じています。
|
為替変動に起因するリスク 当社グループは、世界各国で事業活動を行っており、在外子会社等の財務諸表項目の円換算額には為替相場の変動による影響があります。そのため、為替相場に大幅な変動が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 また、輸出入等の外貨建取引についても、為替相場変動による換算上の影響があるため、同様に業績に影響を及ぼす可能性があります。
|
中 |
短期 |
①③ |
C他 |
当社グループは、本社のリーダーシップのもと、各地域で為替リスク管理体制を整備し、為替相場の変動に伴う業績影響や在外子会社の換算影響の把握に努めています。また、先物為替予約等の為替変動ヘッジ取引や資金調達・投資の複数通貨対応等を通じて、そのリスクを軽減する措置を講じています。 |
品質問題の発生に伴うリスク 製品やプロセスに欠陥・不正・偽装が疑われた場合、重大なクレームや製造物責任が問われるなどの事象が発生した場合、あるいは製品回収や損害賠償責任が生じた場合、出荷や生産の停止が生じるだけでなく、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。さらに、これらの事象が発生したことにより、社会的信用の失墜につながる可能性があります。 |
高 |
不明 |
②③ |
AB |
当社グループは、「常に信頼される製品を提供して顧客と社会の繁栄に貢献する」を「品質に関する方針」とし、毎年社長が社員に向けて品質保証の重要性を喚起しています。また、「全ての基本は安全操業と品質保証である」との生産担当役員のメッセージを強く発信しながら啓発や教育を繰り返すとともに、全社員が品質に関わる当事者意識を持ってQMS(品質管理システム)の正しい運用を徹底し、品質の改善に取り組んでいます。 また、社長直轄の品質委員会は、これら品質に係る全社の活動を監視監督している他、本社品質保証部長を実施責任者とする品質監査を毎年行うなど、品質管理体制の構築・増強を図っています。 出荷済みの製品において欠陥等が発覚した場合に社会的責任を果たすため、2021年に「品質管理規程」を廃止して「品質に関する規程」に変更し、組織体制と活動の実行体制を見直しました。 2024年1月から品質保証組織は、グループ全体の品質に関する活動の明確化を目的に、従来の一本化された組織から、製品品質を担う工場品質保証グループと、その品質ガバナンスを担う本社品質保証部、品質管理部に組織を改編し、役割を分担しました。
|
持続可能なサプライチェーンの構築(原料)に関するリスク 当社グループは、短期及び中長期的な視点で原料の安価・安定調達に加え、持続可能なサプライチェーンの構築、原料調達の実現に向けた取り組みを推進しています。 本件に関するリスクとして、国際商品市況の影響による原料価格上昇、原料サプライヤーの事故・トラブル・自然災害等を起因とした需給バランスの変動、その他の事情に伴う物流混乱、化学物質に関する法規制・業界規制の強化等によって原料の調達が困難になる場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 また中長期的観点では、サステナビリティ活動への取り組みが不十分なサプライヤーからの原料調達は、供給の不安定化に加え、サプライチェーン全体の価値低下やそれに伴う顧客等からの信用失墜につながり、当社グループの事業継続に支障を来たす可能性があります。
|
中 |
短~長期 |
①②③ |
AB |
当社グループは、複数購買・契約購買・代替原料の導入等を通じ、原料コストの削減や調達リスクの低減を図り、安価で安定した調達を目指しています。 また、中長期的観点では、環境負荷低減や人権尊重を始めとしたサステナビリティ活動全般への取り組みをサプライヤーに要請するとともに、外部評価機関や自社製アンケートを使用した活動状況の調査及び改善啓発を行い、持続可能な原料調達の実現を目指しています。 これらの取り組みを通じた製品の供給安定化や品質安定化、健全化により顧客からの信頼確保を図るとともに、収益性を確保するための適切かつ計画的な価格設定等にも努めています。 |
情報セキュリティに起因するリスク サイバー攻撃等によるデータ逸失や改竄、情報漏洩、災害や障害等による業務システム・設備・機器等の停止や誤動作、グローバルネットワークの国家間遮断等が発生した場合、それらが引き起こす事業の停滞及び事業機会ロスにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 |
中 |
不明 |
② |
B |
当社グループは、情報系及び制御系インフラのサイバーセキュリティ機能の継続的強化、BCP整備(災害時復旧・バックアップ・体制等)、サイバー攻撃や情報漏洩等を想定したセキュリティ教育・訓練の継続的な更新・実施等を、第三者機関によるサイバーセキュリティリスクアセスメントに基づく対策ロードマップのもとで計画・実行し、リスク低減・影響最小化に取り組んでいます。
|
コーポレート・ガバナンスの不備に起因するリスク 日本のみならず、中国、アジア・パシフィック、北米、中南米、欧州、中東、アフリカ等、グローバルに展開する当社グループ会社において、コーポレート・ガバナンスの不備・無効化・対策未実施等に起因して、不正行為、粉飾決算、法令違反が発生して会社が損害を受ける、又は当社グループの社会的信用の失墜につながる可能性があります。 |
中 |
不明 |
② |
B他 |
コンプライアンスに関する「DICグループ行動規範」を主要な所在地言語に翻訳して、全ての地域において従業員がこの規範に準拠した正しい判断と行動を行うよう、統制環境を整備しています。また、全ての当社グループ会社において、コーポレート・ガバナンスに必要な権限承認規程等の規程類を具備しています。 当社グループは、日本、中国、アジア・パシフィック、北米、中南米、欧州、中東、アフリカの各地域をカバーする内部統制組織を有しており、ほぼ全ての事業拠点をカバーするように定期的な内部監査によるモニタリングを実施するとともに、内部監査部門と監査役と会計監査人が十分に連携しながら、グループ会社の法令順守、コーポレート・ガバナンスが適切に機能していることを確認しています。内部監査の結果は取締役会、監査役会に報告されます。 また、不正行為等に対しては、内部通報制度を当社グループの全ての社員に周知し、不正が起きにくい環境の整備・維持に努めています。 加えて、経営ビジョンの刷新や行動指針実践事例の表彰制度等を通じ、経営の基本的な考え方である「The DIC Way」のグローバルでの周知・浸透を図っています。
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(3)顕在化した場合の影響が小さいリスク
リスク及び業績に与える影響の内容 |
可能性 |
時期 |
区分 |
関連 |
当社グループの取り組み |
知的財産に関するリスク 当社グループは、事業活動の中で生み出される新たな技術やノウハウを保護するため、知的財産権の取得に努めています。一方、他社の権利を侵害しないよう適切な対応を講じ、第三者の正当な知的財産権を尊重した事業活動を行っています。しかしながら、権利の解釈や見解の相違等により、知的財産に関する紛争が発生した場合、製品開発や販売の停止や、損害賠償金の発生により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 また、当社グループが保有する技術情報やノウハウが不測の事態により外部に流出した場合、当社グループ製品の模倣品や類似品が流通し、製品の競争力が失われ、事業収益に影響を与える可能性があります。 その他、第三者が当社グループのロゴや商標を不当に使用して類似品や劣化品を市場に流通させることで、当社グループの業績への影響やブランド毀損が生じる可能性があります。
|
低 |
不明 |
②③ |
A他 |
当社グループでは、製品開発の各ステージにおいて、第三者の知的財産権の侵害調査を実施し、知的財産部門に在籍する弁理士や、国内外の特許事務所及び法律事務所の弁理士、弁護士による判断のもと、第三者の正当な知的財産権を尊重した製品化を行っています。万一、知的財産に関する紛争が発生した場合にも、事案に応じて社内外の弁理士、弁護士が適切に連携して対応できる体制をとっています。 また、当社グループでは、「情報セキュリティに関する方針」のもと、「機密情報管理規程」を制定し、技術情報等を厳格に管理しています。外部への技術情報の開示に際しては、学会発表や展示会への出展等、開示形態に応じた監視体制を整え、機密情報の漏洩を防止しています。 当社グループのロゴや商標の不当使用に対しては、電子商取引サイトの監視や商標DB調査により、当社グループのロゴや商標の不正使用、悪質な類似商標出願を確認した場合には、電子商取引サイトの出店差し止め請求や、類似商標の登録防止措置を講じています。
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水資源に関するリスク 当社グループは、事業活動を通じて水資源の有効活用に努めています。しかし、取水源において想定以上の水不足や水質低下が起きた場合、生産活動に制約が生じる可能性や、水価格上昇により収益性が低下する可能性があります。 |
中 |
長期 |
②③ |
AB |
当社グループでは、各事業所における取水、排水の実績をモニタリングして、水資源の利用状況を把握しています。さらに、各生産拠点においては、所在地域における水資源の情報と工場の操業状況を評価したリスクアセスメントを実施し、対策状況を管理しています。また、水を再利用(リユース・リサイクル)することにより、水使用量の低減に取り組んでいます。
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税務に関するリスク 当社グループは、世界各国で販売や生産等の事業活動を行っており、グループ内でも相互に取引があります。各国の移転価格税制等の国際税務リスクについて細心の注意を払っていますが、各国税務当局との見解の相違によって予期しない課税を受けた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
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中 |
不明 |
①② |
他 |
当社グループは、本社のリーダーシップのもと、各国の税法に準拠した適正な納税を行っており、定められた移転価格文書を整備しています。また、「税務に関する方針」を策定・公表しており、透明性の高い税務管理に取り組んでいます。 |
パンデミックに関するリスク 感染症が世界的規模で拡大(パンデミック)した場合、それに起因する経済活動の停滞や需要減によって出荷が落ち込む可能性があります。また、政府の要請等による事業への制約あるいは当社グループ社員への感染の広がりで、営業拠点や研究所の閉鎖や工場の操業停止によって一時的に事業の継続が困難となる可能性があります。これらの結果として、当社グループの業績や財政状態に影響する可能性があります。 |
低 |
短期 |
①③ |
B |
当社グループにおける生産及び研究・開発等の事業拠点はグローバルに立地しており、複数工場によるバックアップ生産策を推進することで、拠点閉鎖や操業停止等によるリスクを低減しています。 また、当社グループでは、ITインフラの整備・増強を推進するとともに、テレワーク制度の普及・浸透により、情報のデジタル化、社内手続の電子承認によるペーパーレス化等の対応と併せ、パンデミック発生時にテレワークを活用した、円滑な事業継続を行うための環境を整えています。 長期経営計画におけるマクロ環境に影響されにくい強靭な事業体質への変換を目指し、事業ポートフォリオの転換を図ることで、更なる事業リスクの分散を進めています。
|
配当政策
3【配当政策】
当社は、安定した経営基盤の確立を目指すとともに、株主への利益還元をより充実させていくことを基本方針と考えています。また内部留保資金については、その充実に努めるとともに、企業体質を一層強化することで株主の将来的な利益拡大に寄与すべく、より有効に使用していきます。なお、第127期から第129期までの3事業年度においては、1株当たりの年間配当額の下限を100円に設定しています。
当社は中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であり、「取締役会の決議によって、毎年6月30日を基準日として中間配当をすることができる。」旨を定款に定めています。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年8月9日 |
4,739 |
50 |
取締役会決議 |
||
2024年3月28日 |
2,849 |
30 |
定時株主総会決議 |
(注)1.2023年8月9日取締役会決議に基づく配当金の総額には、株式給付信託(BBT)が所有する当社株式に対する配当金6百万円が含まれています。
2.2024年3月28日定時株主総会決議に基づく配当金の総額には、株式給付信託(BBT)が所有する当社株式に対する配当金9百万円が含まれています。