リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境についてのリスク
① ソフトウェアテスト業務のアウトソーシングについて
当社グループは、メーカーやソフトウェアベンダーの顧客に対して、ソフトウェアテストの実施サービスや、その他ソフトウェアに関する品質向上支援サービスを提供しております。
従来、ソフトウェアテスト業務は顧客企業内で行われておりましたが、ソフトウェアテストに関する専門的知識を有しない一般の開発エンジニアによるテスト実行は効率が悪いため、テスト専門事業者に委託することが工数の短期化及び品質面の向上につながるとの認識が広がっていることや、国内IT産業におけるエンジニア不足によって貴重なリソースをテストではなく開発に集中させたいというソフトウェアベンダーが増えていること、またDXの拡大によって一般ユーザー企業の負担が増加し、受入テストや品質管理を、第三者機関としてテスト専門事業者に委託するケースが増えていることなどから、今後もソフトウェアテスト業務をアウトソーシングするニーズは拡大するものと認識しております。
当社グループは、品質向上のための情報サイトや、書籍、冊子の刊行を通して、品質の重要性や専門知識の必要性を発信し、アウトソーシングのメリットが認知されるように努力しておりますが、今後経済状況や顧客の経営方針の変化にて社内リソースでテストを行う内製化へ進んだ場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 法的規制に関するリスク
当社グループの事業収益には顧客企業内に当社グループの人員を常駐させる人材派遣業務によるものが含まれており、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下「労働者派遣法」という。)に基づき、厚生労働大臣の「労働者派遣事業」の許可を取得し、人材派遣を行っております。
労働者派遣法では、労働者派遣事業主としての欠格事由を同法第6条において、また、当該事業許可の取消事由を同法第14条において定めており、該当した場合には、厚生労働大臣が事業許可の取消、業務の停止を命じることができる旨を定めております。
現在、当社グループはこれらの法令に定める欠格事由及び取消事由に該当する事実はないものと認識しておりますが、労働者派遣法及び関係諸法令については、労働市場をとりまく状況の変化等に応じて今後も適宜改正されることが予想され、その改正内容によっては当社グループの事業が制約され、あるいは経済的負担が増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 海外事業展開について
当社グループは、ソフトウェアテストサービス及びWeb/モバイルアプリ開発サービスにおいて国内企業の海外展開のサポートと英語圏への事業範囲拡大を目的として積極的に展開する経営方針のもと、フィリピンに連結子会社VALTES Advanced Technology,Inc.を設立しております。
しかしながら、海外での事業活動においては、政治経済の変化における法律、規制の変更、雇用制度や労使慣行の相違、自然災害や為替変動など、予期せぬ影響を受ける可能性があり、このような場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 新規事業展開及びM&Aによる事業拡大について
当社グループは、「品質向上のトータルサポート企業」を目標としており、ソフトウェアテスト以外の領域においても積極的な事業展開を行い、新しい価値を創造する企業としてのブランドを醸成していくことが重要な課題であると認識しております。こうした課題に対応するため、収益の柱としてのソフトウェアテストサービス事業を拡大させる一方で、既存事業との関連性、収益性、社会性、従業員の士気向上への影響等を考慮した上で、新規事業への投資やM&Aによる事業拡大を進めております。現在、子会社のバルテス・モバイルテクノロジー株式会社においてはWeb/モバイルアプリ開発サービス事業を、子会社VALTES Advanced Tecnology,Inc.においてはソフトウェアのオフショアサービス事業をそれぞれ新規事業として展開しております。さらに近年は株式会社アール・エス・アール、株式会社ミント、株式会社シンフォーおよびフェアネスコンサルティング株式会社をグループインするなど、M&Aによる水平的事業拡大にも注力しております。
今後も新規事業展開およびM&Aによる事業拡大を積極的に進めてまいりますが、状況によっては設備投資や人的投資等の追加施策の実施によって、利益率が低下する可能性があります。また、当初計画目標を達成できなかった場合は、それまでの投資が回収できず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 価格競争について
当社グループは、ソフトウェアテスト業界において、これまで蓄積したソフトウェアテストに関するノウハウや特定業界におけるナレッジを活用して各種テストを行うことにより、他社との差別化を進めております。一方で、金銭などの決済を行う機能や個人情報管理などの機能を持たない、比較的シンプルなモバイルアプリケーションのソフトウェアテストにおいては、低価格提示を優位とする競合他社が発注先に選定されることがあります。
当社グループは、引き続き潜在市場が大きくかつ高い技術を必要とするエンタープライズ領域の拡大に注力することで競合他社との差別化と参入障壁の構築を進め、競合他社との価格競争回避を図ってまいりますが、顧客が発注先選定をする際の判断基準がコストである場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 他社との競合について
当社グループのソフトウェアテストサービス事業では、ソフトウェアテストに特化した専門会社として独自のノウハウを蓄積し、各テストを通じて、ソフトウェアの品質向上、開発プロセスの改善に努めております。
しかしながら、当社グループの競合他社が資本力、知名度、人材調達力などにおいて、当社グループより優れている場合があります。競合他社がその優位性を現状以上に活用してサービス提供に取り組んだ場合、当社グループが計画通りにサービス提供が出来ない、顧客企業の獲得・維持が出来ないことも考えられます。
当社グループは競合他社に先駆けてサービス提供を行い、ノウハウを蓄積して品質の高いソフトウェアテスト等を顧客企業へ提供する事を取り組んでおりますが、競合他社と比較して優位性を保てなくなった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 大規模自然災害等の異常事態について
当社グループは、国内で複数の事業拠点、海外ではフィリピンにおいて事業を運営しております。大規模な自然災害や新型コロナウイルス感染症拡大のようなパンデミック等の異常事態が当社の想定を超える規模で発生し、事業運営が困難になった場合、当社グループの財政状態や経営成績等に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループでは、事業復旧の早期化・省力化を図るため、オフィスの分散化や在宅勤務が可能なテレワークを導入しております。また、有事の際にはすでに定めている事業継続計画に基づき、事業リスクの最小化に向けた施策を推進してまいります。
⑧ 技術の進化や革新に対する適応
当社グループは主にソフトウェアテスト事業において、長年蓄えた専門的ノウハウによって顧客の信頼を得、事業の拡大成長を続けております。一方でIT業界は急速に変化しており、新しい技術やビジネスモデルが常に現れ、既存のビジネスモデルや業界に革命的な変化をもたらすディスラプションが発生する場合があります。当社グループがこれら急激な環境変化に適応できない場合、競争力の低下によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これら変化への対応のために、積極的なM&A展開とそれに適した体制整備によって、多角化型の事業ポートフォリオを拡大し、これらディスラプションリスクに対するレジリエンス(耐性)とダイナミックケイパビリティ(自己変革能力)を向上させてまいります。
(2) 事業内容についてのリスク
① 人材の確保について
当社グループでは、事業拡大に伴って優秀な人材の確保とその育成が重要な課題となっております。特にソフトウェアテストサービス事業及びWeb/モバイルアプリ開発サービス事業においては、旺盛な顧客需要にこたえるべく恒常的に多数の従業員を確保する必要があり、外部リソースを活用した募集活動に留まらず、人事担当の増員によるアプローチ強化や、M&Aによる人材の確保にも努めております。またバルゼミを始めとした人材育成コンテンツ・メソッドを充実させ、人材の早期教育にも注力しております。
一方で、当社グループの属するソフトウェアテスト市場およびIT市場の拡大によって、競合他社との人材獲得競争が激化した場合は、当社グループの人材が外部に流出することや、人材確保に支障をきたすことも想定されます。このような事態が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 不採算プロジェクトについて
当社グループのソフトウェアテストサービス事業及びWeb/モバイルアプリ開発サービス事業においては、顧客からソフトウェアテスト及びモバイルアプリ開発を受託するにあたり、あらかじめサービスの対価や納期を定めた請負契約を締結する場合があります。当該契約を締結したプロジェクトについては、原則として受注金額が契約時に確定し、定められた納期までにプロジェクトを完成して納品する責任が当社グループに発生します。
当社グループは、ソフトウェアテスト及びWeb/モバイルアプリ開発の受注にあたっては、発生が見込まれるコストと適正な利益を乗せたものを見積り金額として提示しております。また、受注後は進捗状況を監督する案件管理者を選任し、原則として社内関係者に週次で進捗状況及びプロジェクト終了までの見込み工数を報告することとしております。大規模プロジェクト等、リスクの高いプロジェクトについては、ソフトウェアテスト部・開発部会議において、受注前の見積り金額の妥当性や受注後の進捗状況をモニタリングし、プロジェクトに係る適正な利益を確保するよう努めております。
しかしながら、全てのプロジェクトに対して正確に必要コストを見積もることは困難であり、仕様変更や追加作業に起因する作業工数の増大等が発生する可能性があります。また、当社グループの提供するサービスにおいて、予期せぬ不具合等が発生し、手直し等の追加コストの発生や損害賠償が発生する可能性があります。この場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ サービスの契約不適合について
当社グループが提供するソフトウェアテストサービス事業及びWeb/モバイルアプリ開発サービス事業には、顧客企業から受託するテスト業務及び開発業務があります。
顧客企業は、当社グループによるサービス提供の完了後に、委託業務における検収確認を実施した上で製品の発売、リリース等をしておりますが、発売、リリース後に不具合が発生する場合があります。
当社グループは受託案件においての契約不適合責任は、品質を保証するものではない旨、また受託規模の範囲において契約不適合責任を行う旨を契約書に記載し免責条項等を規定しております。しかしながら、何らかの事情により契約不適合責任あるいは損害賠償責任等を追及される可能性は否定できず、このような場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 主要顧客との取引について
当社グループは、主要顧客とは継続的で良好な関係を築いております。しかしながら、主要顧客の製品開発や社会環境の変化等の要因により、主要顧客との取引に著しい変動があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ システムダウンや障害について
当社グループは、顧客へのサービス提供をインターネット環境に依存しております。自社設備や第三者が所有し運営する通信設備等のインターネット接続環境が良好に稼働するようにサーバーの二重化、冗長化、また脆弱性をついた攻撃への対策等を行っておりますが、災害や事故、ハッカー攻撃により、通信ネットワーク障害や、コンピューターウィルス被害があった場合には、受託業務が継続できなくなる可能性があります。このような場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 情報管理について
当社グループの事業活動において、個人情報、顧客情報の取得及び顧客企業の機密情報を保有しております。これらの各種情報の取り扱い及び機密保持には細心の注意を払っており、不正なアクセス、改ざん、破壊、漏洩及び紛失などから守るための管理体制を構築するとともに、ファイルの持ち出しを禁止する情報漏洩防止ソフトウェア導入や脆弱性診断、アクセス管理などの技術的対策を実施、従業員への定期セキュリティ教育とセキュリティチェックの実施など、適切と考える安全処置を講じております。
しかしながら、万が一、情報漏洩等の事故が起きた場合には、顧客企業をはじめとするステークホルダーからの信頼を著しく低下させ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 顧客との紛争の可能性について
当社グループのサービスは製品・システムそのものの品質を保証しているわけではなく、当社グループが行ったサービスの範囲の中で責任を負う形態となっております。受託する契約においては、作業範囲、作業項目等を明確にした見積仕様書を作成し、当社グループの責任範囲の明示を行い、また顧客先でサービス提供する契約においては、契約書での作業概要明記などを行い管理しております。更にISMS(※)の取得やセキュリティ教育、当社グループ独自のマニュアル運用など顧客との意思疎通の円滑化、問題の早期発見などに努め、顧客との紛争が生じないように指導、管理しております。
しかしながら、当社グループが提供したサービスを経て販売する製品、システムの中に不具合があった場合や、当社グループ従業員による機密情報の漏えいや、器物破損等、顧客に多大な損害を与える様な事象が発生した場合において契約の解約、損害賠償請求等、顧客との紛争が発生する可能性があります。
※ISMSとは「情報セキュリティマネジメントシステム」の略です。当社はISMSの規格である「ISO/IEC 27001:2013」及び「JIS Q 27001:2014」への適合について証明を受けております。
⑧ 業績の下半期偏重について
当社グループが提供するソフトウェアテストサービスは、その提供対象となる顧客のサービス・製品などのリリースが下半期となることが多いため、当社グループの売上高及び利益についても下半期に偏重する傾向にあります。特に第1四半期においては、採用や教育、研修に力を入れることもあり、営業赤字となる可能性があります。
(3) 事業体制に関するリスク
① 代表者への依存について
代表取締役田中真史は、当社設立の中心人物であり、当社グループの事業活動全般において重要な役割を果たしており、同氏に対する当社グループの依存度は高くなっております。
当社グループは、同氏への過度な依存を回避すべく、経営管理体制の強化、経営幹部への教育、採用を進めておりますが、何らかの理由により同氏が当社グループの業務を継続することが困難となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様方に対する利益還元は重要な経営課題の一つと認識しており、安定的な経営基盤の確保並びに事業展開のための内部留保を勘案しながら、利益還元を実施していくことを基本方針としております。このような基本方針のもと、当社は今後も成長を継続させ企業価値向上に努めていく一方、当社株式を保有しておられる株主の皆様への利益還元として、業績に応じた配当を実施していく考えです。
内部留保資金につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、一層の事業拡大を目指すため、中長期的な事業原資として利用していく予定であります。
なお、当社は剰余金の配当の基準日として、期末配当の基準日(3月31日)及び中間配当の基準日(9月30日)の年2回のほか、基準日を定めて剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めております。
また、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨を定款に定めております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (千円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年5月23日 |
81,023 |
4 |
取締役会決議 |