2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当連結会計年度末現在において、事業に重要な影響を及ぼす可能性がある主なリスクは、以下のとおりです。なお、ここに記載した事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが認識、判断したものであり、事業を遂行する上で発生しうるすべてのリスクを網羅しているものではありません。なお、将来に関する事項につきましては別段の記載のない限り、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1)事業及び産業に関するリスク

① 特定業種への依存について

 当社グループの売上収益の多くの部分は、システム導入後に機能改修や法制度変更への対応等で発生するリピートオーダーや、運用保守、共同利用型サービス等により発生する既存顧客企業からのものが占めており、中でも、国内金融取引業者、銀行業等の国内金融機関に対するものが多くを占めています。国内金融機関に対する売上収益比率が高いことは、当社グループの強みであり、特徴でもありますが、IT投資動向や事業環境が急変した場合には、当社グループの事業及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの主たる事業のうち、金融機関において利用されるシステムの開発については、金融機関の業務を取り巻く法令や規制の変更・強化等が実施された場合、基本的には顧客企業においてシステム変更等の費用を負担することになりますが、当社グループにおいても、ドキュメント作成等、顧客企業の法令遵守に対応するための顧客企業に転嫁できない追加的なコストが発生する可能性があります。また、将来的に金融機関の業務領域や業務方法を制限するような法令や規制、又は金融機関のシステム開発に関連するアウトソーシングを制限する法令や規制が実施された場合、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、当社グループは中長期的な事業戦略である国内金融機関に限定しない事業領域の拡大を推進してまいります。

 

② 顧客企業の維持・獲得について

 当社グループは、新規システム導入に係るコンサルティングや設計・構築作業等のフロービジネスを拡大させるだけでなく、共同利用型サービス等の追加的なサービス及びソリューションを提供するという既存顧客企業からの「リカーリングビジネス」を連鎖的に拡大していくビジネスモデルを採用しております。このように、既存顧客企業からの売上を維持・増加させることを戦略的に実施していますが、当社グループのサービス及びソリューションが顧客企業のニーズに合致しない場合、又は合致したとしても競争力のある価格でこれを提供できない場合には、当社グループは、既存顧客企業からの売上を維持・増加させることができない可能性があります。また、顧客企業は、財政状態の悪化や戦略の変更等の理由により、既存契約に関し、解除、更新拒絶又はプロジェクトの延期等を主張する可能性があり、その結果、顧客企業との契約が解除若しくは更新されなかった場合又は変更を余儀なくされた場合には、当社グループは想定していた売上を得ることができず、当社グループの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、金融領域で確立した当社のビジネスモデルとコンサルティングセールスのノウハウを軸に、顧客企業のビジネスの成功にテクノロジーが大きく貢献する領域である「クロスフロンティア領域」の事業において、生保・損保、エンタープライズDXといった新しい分野への拡大に取り組んでおりますが、これらの分野への拡大が成功する保証はなく、既に確立した顧客基盤を有する競合他社との間で効果的に差別化を図ることができなければ、当社グループの想定する収益成長を達成することができない可能性があります。加えて、当社グループは、Xspear Consulting株式会社を中核企業として、非金融系企業を対象とした戦略/DXコンサルティング案件や金融機関(既存顧客企業)におけるシステム開発に紐づかないコンサルティング案件の受注の拡大にも取り組んでおりますが、当社グループの計画どおりに顧客基盤を拡大することができる保証はありません。

 さらに、当社グループは、クロスフロンティア領域の中で、参入障壁の高い領域で高い収益性の実現を目指す戦略を採用しております。しかしながら、当社グループが取り組んだ領域が当社グループの想定どおりに発展しなかった場合や、かかる領域でトップポジションを確立することができなかった場合には、当社の期待どおりに顧客基盤を拡大することができず、当社グループの想定する収益成長を達成することができない可能性があります。

 加えて、当社グループの顧客基盤を拡大するために、人件費及び研究開発費を含む多額の営業費用を負担する必要がある場合もありますが、営業活動が奏功する保証はなく、営業費用の負担に応じた顧客基盤の拡大及び売上の増加に至らない場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

③ 技術革新への対応について

 当社グループは、コンサルティングからシステム開発・運用保守に至るすべての工程に責任を持つという一気通貫モデルを用いた事業戦略を有しており、金融フロンティア領域を包含したクロスフロンティア領域に焦点を当てて事業を展開しております。しかし、技術革新により変化していく顧客企業のニーズに当社グループが対応できる保証はなく、また、かかる技術革新により、既存のソリューションから新たなソリューションに需要が切り替わる可能性があることから、当社グループが、変化するニーズに対応した形で一気通貫モデルを提供することができなかった場合には、当社グループの優位性が低下し、事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの想定以上の技術革新等による著しい事業環境の変化が生じ、投資が目的を達しない場合には、投下した研究開発費の全てを回収できないほか、当社グループの事業、業績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、現時点での急激かつ大幅な研究開発費の増加は予定していませんが、事業計画の変更等があった場合には、研究開発費が想定よりも増加する可能性があり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、当社グループは新技術の獲得や研究開発に投資を行い、顧客企業の需要や事業環境の変化に対応できるよう努めてまいります。

 

④ 他社との競合について

 当社グループは、クロスフロンティア領域に焦点を当てて事業を展開しております。しかしながら、当社グループがソリューションを提供する市場の競争は激しく、当社グループより財務基盤等が優れている競合他社がいる場合、それらの競合他社は新たなソリューションを当社グループより早く提供できる等の可能性があり、また、新規参入者による新たなソリューションの提供により、当社グループのソリューションの優位性が低下する可能性もあります。そのため、当社グループが高い優位性を有する分野に関して、競合他社が同等又はより優れたソリューションを開発した場合には、当社グループの優位性が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、パッケージ製品の普及等の理由により、想定以上の価格競争が発生した場合にも、当社グループの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、当社グループは競合他社の状況を注意深く把握し、当社の競争優位性についての検証を継続的に実施してまいります。

 

⑤ 中期経営計画について

 当社グループは、今後予想される市場環境や顧客ニーズの変化に適切に対応し、更なる成長を実現するための施策の一環として、中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を策定し、2023年10月に公表しております。本中期経営計画では、前中期経営計画において注力テーマに掲げた事業領域の拡大、事業領域の深耕、人材の採用育成をさらに推進し、持続的な成長と収益性の実現を目指すこととしております。

 しかし、中期経営計画は、以下に掲げる要因をはじめとした本項に記載の様々なリスク要因や不確実性による影響を受けます。

・高いポテンシャルを持つ人材の採用や豊富なスキルを有する従業員の育成に関する当社グループの能力

・Xspear Consulting株式会社を通じた戦略/DXコンサルティングにおける顧客基盤の拡大に関する当社グループの能力

・プロジェクトの収益性の管理や不採算プロジェクトの回避に関する当社グループの能力

・新規又は既存の顧客企業からの需要を効率的に捉えるための新たな技術やソリューションの開発に関する当社グループの能力

・研究開発費、無形資産償却費、その他費用(人材関連費を含む。)等の販売費及び一般管理費の増加速度が、売上収益の増加速度を下回るようにコスト管理を行うことに関する当社グループの能力

 このため、これらのリスク要因や不確実性が現実化した場合には、中期経営計画に含まれる施策の実施が困難になる可能性や、当社グループにとって当該施策が有効でなくなる可能性があります。かかる場合には、中期経営計画における目標を達成できない可能性や、中期経営計画の修正を必要とする可能性があり、また、当社グループが適時に有効な施策を実施できない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 人材戦略について

 当社グループの事業において中心的な経営資源の一つは人材であり、顧客企業からの要求に応えるためにビジネスとテクノロジーの双方に精通した優秀な人材を確保・定着させることが最重要戦略の一つです。特に当社グループでは、新卒の優秀な人材を採用し、様々なスキルを習得させる人材の育成に力を入れていますが、技術や業界の急速かつ継続的な変化に対応できるような人材の育成ができない場合には、当社グループは顧客企業の要求を満たすソリューションの開発・提供ができない可能性があります。中途採用においても、高水準の報酬を用意することに加え、質の良い社内環境を確立することが競合他社との競争に勝つためには必要となりますが、そのための費用負担が過大になる場合には、当社グループは顧客企業の要求を満たす人材を確保することができない可能性があります。また、優秀な人材を顧客企業の要求に応じて適時に配置できない場合や、優秀な人材の能力を活かすことができない場合等には、当社グループの収益性や成果物の質を低下させ、又は人材市場における当社グループの評価や評判が低下する可能性があります。また、労務環境の悪化等の要因により、従業員の心身の健康に問題が生じ、労働生産性の低下や、人材の流出が発生する可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、当社グループは人材戦略を重要経営戦略のひとつに位置づけ、優秀な人材確保・育成の実現に努めてまいります。

 

⑦ マクロ経済・政治情勢について

 当社グループの業績は、当社グループの事業の大部分が営まれている日本における経済情勢及び政治情勢の影響を受けますが、その見通しは不確実性が高く、様々な要因によって悪影響を受ける可能性があります。また、経済の停滞が、顧客企業による当社グループとの既存契約に基づく支払に対する減少圧力となる結果、当社グループの事業もまた悪影響を受ける可能性があります。また、地政学的リスクの増大等により日本を含む世界経済が低迷する可能性があります。さらに、将来の日本の財政・金融政策の変化や消費税等の更なる増税により、日本の経済も悪影響を受ける可能性があります。

 これらの要因等により、日本を含む世界経済の情勢が悪化した場合、当社グループの提供するソリューションに対する需要が減少し、新規顧客企業の獲得及び既存顧客企業の維持に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ システム開発やソリューションに係るトラブルの発生について

 システム開発事業では、顧客企業との契約に基づいてサービスの提供が行われ、その契約中では、納品期限、性能要件、機能要件、サービスレベル等が定義されております。当社グループでは契約条項に基づいたサービスの提供に努めておりますが、何らかの理由によって、契約条項を遵守することができない場合には、当該契約に基づき顧客企業から支払われる報酬が減少する可能性や、当該契約条項を遵守するために追加的な費用の負担を余儀なくされる可能性があります。また、当社グループのソリューションが備えていた新たな技術が予定どおり機能しない場合や、何らかの理由によって、顧客企業の検収後に発生した不具合(いわゆるバグ)が発見された場合には、予算超過や案件の遅延等を引き起こす可能性があります。

 当社グループでは、顧客企業との契約に損害賠償の限度額を定めるほか、損害賠償保険に加入する等の方法でリスクヘッジを行っておりますが、これらの方法が適切に機能しない場合、損害賠償の発生や信用失墜等によって、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループのソリューションの基礎となる技術基盤は複雑であるため、重大な誤謬を含んでいる可能性があります。当社グループのソリューションに重大な誤謬が見つかった場合、当社グループの評判、事業及び業績に重大な悪影響が生じる可能性があります。

 また、当社グループが提供するソリューションは、インフラの変更、新機能の導入、人為的な若しくはソフトウェア上の誤謬又はその他のセキュリティ関連の事象を含む様々な要因によって、パフォーマンスの遅延、中断、停止その他の問題を引き起こす可能性があります。顧客企業が満足できる水準のサービスを受けられない場合、顧客企業は当社グループのソリューションの利用を中止する可能性があり、その結果、当社グループの事業及びソリューションは、評判の低下、市場からの敬遠、競争力の喪失、顧客企業からの損害賠償請求等の結果を招く可能性があります。

 

⑨ 第三者が提供するシステムについて

 当社グループのソリューションの一部は、第三者のソフトウェア・ハードウェア、第三者が運営するクラウドサービス及び第三者が運営するアプリケーションを使用しております。そのため、当社グループがこれらのサービスを利用するライセンスを失ったり、これらのサービスの機能が長期間停止したりした場合等には、同等の技術を当社グループが開発又は確保するまでは、当社グループのソリューションを使用できなくなる可能性があり、これにより当社グループは想定外の費用を負担し、又は事業に悪影響が生じる可能性があります。また、これらのサービスにバグ等があった場合、当社グループのソリューションにもバグ等を引き起こす可能性があり、当社グループは顧客企業に対して一定の免責条項を設けているものの、これにより当社グループの評判、事業、財政状態及び業績に重大な悪影響が生じる可能性があります。

 

⑩ ブランド、風評等について

 当社は、既存顧客企業の維持や新規顧客企業の獲得にとってブランド力が極めて重要であると考えています。もっとも、当社グループに対する否定的な評判が広がった場合や、当社グループの役社員による違法・不正行為や不適切な行動により当社グループのブランドや評判が損なわれた場合には、既存顧客企業の維持、新規顧客企業の獲得又は優秀な人材の確保・定着に悪影響が生じる可能性があり、その結果、当社の株価や当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

 また、ソーシャルメディアの急激な普及に伴い、当社グループに対する風評が、マスコミ報道やインターネットの掲示板への書き込み等により流布した場合に、当社グループの社会的信頼・信用が毀損される可能性や優秀な人材の確保・定着に悪影響が生じる可能性があります。

 加えて、当社グループは、競争の激しい分野や新たな分野への進出・拡大に伴い、ブランド力を維持・向上させるために追加の費用支出を必要とする可能性がありますが、かかる支出によっても当社グループのブランド力の維持・向上が達成できない場合には、競合他社との関係で価格競争力を失う等の結果、顧客企業の維持・獲得ができなくなる可能性や、費用支出に見合った売上収益の維持・向上に繋がらない可能性もあります。これらの結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

⑪ 将来の企業買収、戦略的投資等について

 当社グループは、将来、当社グループのソリューション等の補完又は拡大のために、事業等の買収や投資を行う可能性があります。もっとも、当社グループにとって望ましい候補先が将来見つからない可能性、これらの事業等の買収や投資により生じる従業員や事業運営等の統合が順調に進まない可能性や、これらの事業等の買収や投資が当初期待した成果をあげられない可能性等があり、これらによって当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ 自然災害等について

 当社グループの事業の遂行は、インターネットや第三者が提供するクラウドサーバー等に依存しています。地震、火山噴火、台風、大雨、大雪、火災、洪水等の自然災害、事故、サイバー攻撃、人為的なミス等が発生した場合には、インターネットやクラウドサーバー等のインフラが使用不能になり又はソリューションの開発及び改良の遅延や中断が生じること等により、事業を継続することができない等の支障が生じ、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、自然災害等に備えた危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、台風、地震、津波等の自然災害が想定を大きく上回る規模で発生し、物的、人的損害が甚大である場合には、結果として、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 加えて、自然災害等によって顧客企業の財政状態が悪化しIT投資が減少した場合等においては、当社グループのソリューションに対する需要に悪影響が生じ、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、当社グループでは、定期的なデータのバックアップ、システムの稼働状況の常時監視等により、自然災害等による事業への障害発生を事前に防止し又は回避し、影響を最小化するよう努めております。

 

(2)法規制に関するリスク

① 法的規制等について

 当社グループは、事業活動を行う上で、様々な国内外の法令及び規制の適用を受けています。当社グループが主として事業を行う金融システムの設計・提供等に関わる事業分野を個別直接的に規制する法令は現時点ではありませんが、当社グループにおいて運営する人材派遣業及び人材紹介業においては、労働者派遣法及び職業安定法に基づく許可を必要としており、これらの法律の規制に服しています。適用ある法令等に違反した場合、当社グループは、刑事罰、当社グループの事業を行うために必要な許認可の喪失、事業の停止、訴訟及びその他の法的手続に服する可能性があり、又は当社グループの評判に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの主たる顧客企業の大半は規制業種に属しており、これらの顧客企業においては金融商品取引法、銀行法、資金決済法、保険業法、個人情報保護法等の適用法令の遵守について特に厳格な遵守体制の構築が求められていることから、顧客企業の利用するシステムにも高度な安全性及び安定性が要求されています。このため、当社グループのソリューションを利用する顧客企業において、個人情報の流出やシステムダウン、誤操作といった何らかのトラブルが生じた場合には、かかるトラブルが大きく取り上げられる結果、当社グループのソリューションに不備があったか否かにかかわらず、当社グループの業績及び評判の悪化に繋がる可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、当社グループは外部専門家と適時適切なコミュニケーションを取り、規制動向の変化について注意深く把握をし、同状況発生時に適切な対応を取ることができるよう努めてまいります。

 

② 争訟について

 当社グループは、事業を展開する中で、知的財産権等に関して第三者との間に、又はシステム開発の不具合や遅延等に関して顧客企業との間に何らかの問題が生じた場合等には、これらに起因した損害賠償の請求等の争訟が生じる可能性があります。その場合、当該争訟に対する防御のために費用と時間を要する可能性があるほか、当社グループの社会的信用が毀損され、また結果等次第では、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、当社グループは顧問弁護士を始めとする外部専門家と適時適切なコミュニケーションを取り、争訟発生リスクを最小化するとともに、同状況発生時に適切な対応を取ることができるよう努めてまいります。

 

(3)情報保護及び知的財産に関するリスク

① 情報セキュリティについて

 当社グループの事業は、電磁的情報を安全に処理、移転及び保管し、顧客企業や提携先の企業等と通信するための情報技術ネットワーク及びシステムに依存しています。当社グループでは、情報管理を徹底すると共に、全社員に対し研修等においてその重要性を周知徹底しております。また、外部からの不正アクセス等についての対策を行い外部からの攻撃対策を講じると共に、社内からの情報流出についてもシステム的な対策を講じております。しかしながら、当社グループが取り扱う重要な機密情報について、漏洩、改ざん又は不正使用等が生じる可能性が完全に排除されているとはいえず、何らかの要因からこれらの問題が発生した場合、損害賠償責任の発生や信用の失墜等によって、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループのシステム及び外部サービスプロバイダのシステムは、コンピューター・ウイルスやサイバー攻撃のリスクにさらされており、当社グループの認知度や市場シェアが高まった場合、それらの標的となるリスクも増大する可能性があります。不正アクセスやサイバー攻撃の手法は日々変化し、高度化しており、当社グループ又は外部サービスプロバイダは全ての不正アクセスやサイバー攻撃を予測又は防止することができない可能性があります。

 また、セキュリティ侵害は、当社グループの従業員又は外部サービスプロバイダその他の当社グループのシステムやデータにアクセスすることのできる外部企業の従業員の故意又は不注意による違反等、技術以外に起因する問題によっても発生する可能性があります。当社グループは重要な機密情報の取扱いについて、機密情報の保護に関する社内規則や取扱いの方針及び手続き等の社内ルールを整備し、適切な運用を義務づけておりますが、このような対策にもかかわらず、当社グループの人為的なミスその他予期せぬ要因等により情報漏洩が発生した場合には、当社グループが損害賠償責任等を負う可能性や顧客企業からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、その結果、当社グループの事業及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 また、当社グループは、ソリューションの提供やデータの保管につき第三者やクラウドの基盤を利用しているため、不正アクセス、サイバー攻撃、顧客企業データの悪用の防止につき、第三者のセキュリティ対策に依存している部分があります。第三者が提供するサービスに関して、当社グループは顧客企業に対して一定の免責条項を設けており、また、一定の情報セキュリティに関連する損害賠償責任に対応する保険に加入しております。しかしながら、当該保険は当社グループに生じうる全ての責任を補償するには十分ではない可能性があり、セキュリティ侵害に関する事故が発生した場合、当社グループの評判、事業、業績、財政状態に悪影響が生じる可能性があります。

 

② 知的財産権について

 当社グループにおいて利用するシステムプログラム等について、原則として、当社グループが著作権等の知的財産権を取得する方針としておりますが、その場合でも、競合他社、元従業員又はその他の第三者が当社グループのソリューションと類似したソリューションを設計することは妨げられません。また、競合他社等による当社グループの知的財産権の侵害又は不正使用を妨げるために、当社グループが実施した対策が効果的ではない可能性があり、また、違法な知的財産権の利用を発見できず、適切かつ適時に知的財産権を主張することができない可能性があります。当社グループによる知的財産権の主張が認められるためには相応の時間及び費用を要し、かかる主張が認められるとは限らないため、当社グループが許諾を受けている又は保有している知的財産権の不正使用がなされた場合、当社グループの事業、財政状態及び業績に悪影響が生じる可能性があります。

 また、当社グループは、知的財産権を保護するために、訴訟の提起等に多大な費用と時間を要する可能性があり、かつ結果として知的財産権を守ることができないおそれがあるため、かかる場合には当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。

 さらに、当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しないための体制を整えておりますが、当社グループの認識の範囲外で、第三者の知的財産権を侵害する可能性があり、当社グループによる知的財産権の侵害を理由に第三者から訴訟の提起等を受けた場合、その対応に多大な費用と時間を要する可能性があります。加えて、そのような第三者の知的財産権侵害を回避するため、第三者からの当該権利の取得が必要となる可能性があります。これらの対応により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)財務リスク

① プロジェクトの採算悪化について

 当社グループでは、様々な料金体系及び条件を用いて顧客企業と交渉し、契約代金を決定しております。とりわけシステム開発においては、案件に必要な予想工数(コスト)を見積り、それを元にして利益を測定し、案件の採算性が目標のレベルを維持するよう十分留意しておりますが、当社グループ内の案件に対するコスト又は採算性に関する見通しが不正確であった場合、見積コストを超えた実績コストが発生し、プロジェクトの採算が悪化する場合があります。

 これらのリスクに対応するため、システム開発における予想工数(コスト)の見積り手法の高度化・レビュー体制の強化、品質管理部門の強化等、プロジェクトの採算悪化防止に向けた取り組みの強化に努めてまいります。

 また、他社との価格競争や特定の分野におけるシェア拡大を優先するマーケット戦略等により、案件の採算性のレベルよりも受注そのものを優先する場合があり、結果的にプロジェクトの採算が悪化する可能性があります。

 さらに、開発工程においても品質管理に十分な対策を講じておりますが、開発トラブル等によってプロジェクトの採算が悪化する可能性があります。

 これらのプロジェクトの採算悪化が生じた場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 内部統制について

 当社グループは、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、当社グループの内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは法令に基づき財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し運用していますが、当社グループの財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。更に、内部統制システムには本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

③ 多額の借入、金利の変動及び財務制限条項への抵触について

 当社グループは、今後も、当社グループの成長を支えるための投資資金や当社の事業を遂行するための運転資金の確保を必要とする可能性があります。しかし、金融・証券市場の環境、金利等の動向、資金需給の状況等の変化が、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループが必要とする資金の調達を適時かつ好条件で行うことができない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、金融機関を貸付人とするシンジケートローン契約を締結し多額の借入れを行っており、2024年3月31日現在でのIFRSに基づく総資産額に占める有利子負債比率は21.3%となっております。今後の金融市場等の動向により、金利が上昇局面となった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。当該シンジケートローン契約には、財務制限条項が課せられており、当該条項違反が発生した場合は、多数貸付人の同意により、期限の利益を喪失する可能性があります。また、直ちに借入金を返済しなければならない等、当社の財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 減損に関するリスクについて

 当社グループは、2024年3月31日現在、2016年12月1日のファンドイグジットに伴う吸収合併により生じたのれん36,476百万円を連結財政状態計算書に計上しているほか、その他の有形・無形の固定資産も有しています。今後、これらの固定資産に係る事業の収益性が低下する場合、当該固定資産の帳簿価額と公正価値の差を損失とする減損処理により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループが認識しているのれんは、単一セグメントを単一の資金生成単位としてすべて配分されており、毎期減損テストを実施し、回収可能価額が帳簿価額を上回っていることを確認しています。

 

(5)株式に関するリスク

 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社グループの事業は、高水準な技術・スキル・ビジネス感覚を持った人材をいかに多く獲得・維持するかということに大きく依存しております。そこで役員及び従業員に対するインセンティブとして新株予約権を付与しており、今後も継続的に実施していくことを検討しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。当連結会計年度末現在でこれらの新株予約権に係る潜在株式数は2,457,675株であり、発行済株式総数58,182,950株の 4.2%に相当します。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、高いキャッシュフロー創出力を礎として、財務健全性を維持した上で、事業基盤の強化に繋がる成長投資を優先的に実行することが、持続的な利益成長と企業価値の向上に資すると考えております。

 加えて、当社は、資本効率を意識した経営に取り組んでおり、重要な経営指標の1つとしてROE目標を掲げ、資本効率の向上に資する株主還元についても、キャピタルアロケーションにおける重要施策として認識しております。

 こうした認識に基づき、当社は、業績動向やROE水準、成長投資の機会等を総合的に勘案した上で、配当を基本として株主還元の充実に努めております。

 配当については、利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的・持続的な増加を基本方針とし、連結配当性向40%を目安として配当を行う方針です。

 上記の配当方針に基づき、2024年3月期の期末配当につきましては、1株当たり配当金を42円とすることに致しました。また、2025年3月期の1株当たり配当金は、年間50円の期末配当を予定しております。

 なお、当社は、中間配当を行うことができる旨を定款で定めております。また、当社は会社法第459条第1項の規定に基づき、法令に別段の定めがある場合を除き、剰余金の配当にかかる決定機関を取締役会とする旨を定款に定めております。

 当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年5月22日

2,444

42

取締役会