2024年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

(単一セグメント)
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 40,708 100.0 8,850 100.0 21.7

事業内容

3【事業の内容】

 当社グループは、1997年の創業以来、日本を代表する銀行、総合証券、インターネット証券等、大手金融機関のテクノロジーパートナーとしてビジネスを展開し、金融フロンティア領域における国内トップブランドとしてのポジション獲得に向けて力強い成長を続けてまいりました。

 金融フロンティア領域とは、金融機関のフロントオフィスにおけるトレーディング等の収益業務及びリスク管理業務等をテクノロジーの側面から支援する領域を指す、当社グループの造語であります。

 現在では、クロスフロンティア領域へと事業領域を拡大し、金融フロンティア領域で獲得したAI・UI/UX・クラウド・web3に代表される最先端テクノロジーを発展させることにより、対象顧客を金融機関に限定しない高付加価値サービスを広く提供するに至っております。

 クロスフロンティア領域とは、顧客企業のビジネスの成功にテクノロジーが大きく貢献する領域を指す、当社グループの造語であります。金融フロンティア領域は、まさにテクノロジーが主導する形でビジネスが推進されてきた領域であることから、クロスフロンティア領域の主要な領域のひとつであると認識しております。

 当社グループは、主要な事業会社であるシンプレクス株式会社及びXspear Consulting株式会社が事業戦略を遂行すると同時に、当社が持株会社としての機能の集中と強化を図り、戦略の策定と推進、適切なガバナンスやモニタリングの実行により、さらなる企業価値の向上を図ることを目指しております。当連結会計年度末において、当社の連結子会社は6社、持分法適用関連会社は2社であります。

 

① ビジネス領域

 当社グループは、顧客企業のビジネスの成功に貢献するITソリューションの提供を中心に事業活動を展開する単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりませんが、主な顧客・マーケットを勘案して区分したビジネス領域は、以下のとおりであります。

 

ⅰ)戦略/DXコンサルティング

 幅広い業種の経営層や経営企画部門に対し、AI・UI/UX・クラウド・web3に代表される最先端テクノロジーに立脚した、DX特化型の戦略立案と実行支援を行っております。

 2021年4月から始動したコンサルティングファームであるXspear Consulting株式会社が主要な提供会社となって、戦略コンサルティング、ITコンサルティング、プロジェクト実行支援及びDX人材育成からなる各種コンサルティングサービスを提供しております。

 Xspear Consulting株式会社では、コンサルティング経験者の積極的な中途採用に加えて、テクノロジー知見と実績を有したシンプレクス株式会社からのグループ内出向も同時に推進しており、コンサルティングとテクノロジーの両面においてDXを推進するための実地スキルを有する人材を配しており、この点が他のコンサルティングファームとの差別化ポイントとなっております。

 

ⅱ)キャピタルマーケット

 主に大手銀行や大手総合証券等の金融機関向けに、ディーラー・トレーダー等の機関投資家をユーザーとするトレーディング・リスク管理プラットフォーム等のITソリューションを提供しております。

 創業以来のコアビジネスとして、対応機能(取引管理・時価評価・リスク評価・ストレステスト・シナリオ分析・各種規制対応等)の拡充に加えて、対応商品(金利デリバティブ・為替デリバティブ・クレジットデリバティブ・債券・上場商品等)の拡充を図ることにより、金融機関におけるクロスセルを推進しております。

 現在は、金融商品毎にシステムが乱立していたことにより、リーマンショック以降の高度なポジション管理やリスク管理に課題を抱えていた金融機関に対して、金融商品横断的に市場取引を一元管理できるワンプラットフォームを提供しております。

 

ⅲ)金融リテール

 主にネット証券やネットFX会社、暗号資産交換業者等の金融機関向けに、個人投資家向け金融商品取引プラットフォーム等のITソリューションを提供しております。プラットフォームには、株式・先物オプション取引のSPRINT、FX取引のSimplexFX、暗号資産取引のSimplex Crypto Assets、資産運用のSimplex Personal Assets等があり、いずれも共同利用型サービスとして提供しております。

 デジタル技術を活用した金融サービスの拡充が重要なテーマとなるなか、2005年の参入以降、国内トップブランドとしての豊富な導入実績に裏打ちされた信頼性の高いプラットフォームの提供や、マーケットトレンドに合わせた細やかなコンサルティングを通じて、金融機関の収益最大化を支援しております。

 現在は、プラットフォームを自社開発する方針を長らく貫いてきた内製志向の金融機関との取引も拡大傾向にあります。従来は開拓できずにいた内製志向の金融機関に対する支援範囲を着実に広げることにより、金融リテール領域の深耕を推進しております。

 

ⅳ)保険

 主に生命保険会社や損害保険会社等の保険会社向けに、保険設計・申込から契約管理に至る一連の保険業務を支援するITソリューションを提供しております。

 証券業に遅れること10年、保険業におけるデジタル化が喫緊の課題となるなか、2013年にネット生保の草分け的存在であるライフネット生命保険株式会社のフロントシステム構築をきっかけに参入して以降、保険会社におけるクロスセルとレピュテーションの向上を推進しております。

 現在は、対応商品(死亡保険・医療保険・火災保険・新種保険・傷害保険・自動車保険等)の拡充に加えて、対応機能(フロントシステム・新契約・契約保全・請求・支払等)の拡充を図ることにより、保険プラットフォームのSimplex xInsuranceのライブラリ化を推進しております。

 

ⅴ)エンタープライズDX

 主に官公庁、通信、製造、エンターテイメント等の非金融機関向けに、DX支援に特化したITソリューションを提供しております。

 エンタープライズDXとは、当社グループ内の造語であり、非金融機関のうち、当社グループにおける売上収益が業種単位で一定の規模に満たない業種群の総称であります。

 DXに特化したコンサルティングファームであるXspear Consulting株式会社とのシナジーの最大化を図ると共に、金融領域で培ってきたUI/UX、クラウド、web3等のキーテクノロジーを活かした案件の獲得を推進しております。

 

② サービス形態

 当社グループは、顧客企業のビジネスの成功に貢献するITソリューションの提供を中心に事業活動を展開する単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりませんが、主なサービスの内容は以下のとおりであります。

 

ⅰ)戦略/DXコンサルティング

 上記「① ビジネス領域 ⅰ)戦略/DXコンサルティング」の記載をご参照ください。

 

ⅱ)システムインテグレーション

 幅広い業種のユーザー部門やシステム部門に対し、設計・開発・テスト工程のすべての工程を対象としたシステム開発支援を行っております。1997年の創業以来、当社グループの中核企業であるテックファームのシンプレクス株式会社が主要な提供会社となって、顧客企業のビジネスの成功に貢献するITソリューションを提供しております。

 

ⅲ)運用サービス

 一定規模のシステム開発支援を行った概ねすべての顧客企業を対象として、システム導入後の運用保守や共同利用型サービスの提供を行っております。上流のシステム開発支援を担当したシンプレクス株式会社が主要な提供会社となって、DX成功の鍵をにぎるシステム改善提案を行うと共に、24時間365日体制のシステム運用監視やトラブル発生時の復旧活動を支援しております。

 

 

 

 

③ 事業系統図

 

 

(注) 矢印は、サービスの主な流れを示しております。

 

用語の説明

UI/UX

User Interface/ User Experienceの略。前者はユーザーがPCやスマートフォン等のデバイスとやり取りをする際の入力や表示方法等の仕組みを意味し、後者はサービス等によって得られるユーザー体験のことを指します。

web3

ブロックチェーン技術を用いることで実現された、インターネット上における分散型ネットワークを指します。代表的なものに、暗号資産、メタバース(インターネット上の三次元の仮想空間)、NFT(Non-Fungible Tokenの略。ブロックチェーン技術を利用してインターネット上のアイテムやコンテンツを識別し、所有者を管理するためのトークン)があります。

 

(当社グループのビジネスモデルの特徴)

 当社グループは、豊富なビジネスノウハウと高度なテクノロジーの両方が求められる、参入障壁が高い領域に特化した事業を展開しており、創業来育んできた独自のビジネスモデルであるSimplex Wayが当社グループの競争優位の源泉であります。当社グループのビジネスモデルの特徴については以下のとおりです。

 

① 顧客企業のビジネスを成功に導くSimplex Wayの基本コンセプト

 当社グループは、幅広い業種の顧客企業の課題に対し、ビジネスとテクノロジー双方に精通したハイブリッド人材で編成されたプロジェクトチームが、最上流のコンサルティングからシステム開発、運用保守に至るすべての工程に責任を持ち、一気通貫かつ自社完結でのトータルソリューションを提供することを基本としております。

 元請けから下請けに作業を段階的に委託していく多重下請け構造が一般的な国内IT業界において、発注元である顧客企業と直接取引を行うプライム受注を徹底しつつ、下請けへの丸投げも行わない自社完結モデルを維持している当社グループのような企業は少ない現状にあります。Simplex Wayの基本コンセプトは以下のとおりです。

 

ⅰ)一気通貫モデル:コンサルティングから運用保守に至る全フェーズを支援

 ビジネスとテクノロジー双方に精通したハイブリッド人材で編成されたプロジェクトチームが、最上流のコンサルティングからシステム開発、運用保守に至るすべての工程に責任を持つことで、システム導入後における改善ニーズを汲み取り、次のコンサルティングやリピートオーダー・リカーリングビジネス(顧客企業に継続利用されることで安定的な収益を得ることを目指すビジネス)の獲得につなげるという循環型モデルであります。

 

ⅱ)自社完結モデル:プライム受注の徹底/下請けに丸投げしない開発体制

 多重下請け構造が一般的な国内IT業界において、顧客企業と直接取引を行うプライム受注を徹底しつつ、下請けにも丸投げしないというビジネスモデルであります。国内IT業界特有の構造的な中間マージンを排除すると共に、ハイブリッド人材によるソースコード開発・運用支援により、業界屈指の利益率の獲得に成功しております。

 

ⅲ)ハイブリッド人材の育成:ビジネス/テクノロジー双方に精通したプロ人材を育成

 当社グループのビジネスモデルにおいては、ビジネスとテクノロジー双方に精通した業界最高水準のハイブリッド人材の採用と育成が必須の要素です。このため、ビジネスパーソンとしてトップ層となりうる高いポテンシャルを持つ新卒人材を採用し、入社後数年間は集中的にシステム開発業務を割り振り、テクノロジーを徹底的に教育した上で、顧客企業における最前線のビジネスに直接対峙するOJTを通じて、高度なビジネスノウハウを獲得させる戦略を採用しております。

 

② ノウハウ標準化による生産性向上

 通常の受託開発プロジェクトでは、発注元である顧客企業にシステムの著作権が引き渡されるのが一般的な国内IT業界において、当社グループは、受託開発の事業形態でありながら、システム開発後、概ねすべてのシステムの著作権を当社グループに留保しております。これは、当社グループのシステム開発では、顧客企業と直接取引を行うプライム受注が基本形態であることから、上流工程にあたるコンサルティングの段階でハイブリッド人材による当社グループのノウハウやアイデアを顧客企業に提供することにより、顧客企業との交渉が可能となっているためであります。

 かかる著作権留保の結果、汎用性の高い複数のプログラムを当社グループによる再利用が可能な形でSimplex Libraryとして蓄積することに成功しております。Simplex Libraryの活用パターンは以下のとおりです。

 

ⅰ)受託開発プロジェクトにおけるライブラリとしての再利用

 当社グループの金融フロンティア領域における受託開発プロジェクトでは、全体の構築作業の約50~70%においてSimplex Libraryが活用されております。これにより、顧客企業にとっては、開発期間の短縮やシステムの安定性の確保が可能となり、さらには顧客企業に競争優位をもたらす機能に資源を集中できることから、多くの顧客企業からご支持をいただいております。当社グループにとっても、Simplex Libraryでノウハウを標準化することで、当社グループに競争優位をもたらす機能に資源を集中することができ、当社ビジネスのさらなる拡充に繋げることができると考えております。

 

ⅱ)共同利用型サービスとして提供

 当社グループは、Simplex Libraryとして長期にわたり蓄積してきたノウハウを駆使して自ら企画・開発したシステムを、複数の顧客企業に対して共同利用型サービスとして広く提供しております。サービス利用料を月ごとにチャージするビジネスモデルであることから、低リスクの安定的な収益源であるリカーリングビジネスの一部となっています。

 

③ Simplex Wayのメリット

 当社グループは、創業来育んできた独自のビジネスモデルであるSimplex Wayにより、参入障壁の高い領域で事業を展開することを実現し、効率的な案件推進と業界屈指の利益率を実現しております。Simplex Wayのメリットについては以下のとおりであります。

 

ⅰ)業界屈指の利益率

 Simplex Wayの自社完結モデルにより、国内IT業界特有の構造的な中間マージンを排除することで、当社グループでは、効率的な案件推進ができ、高い利益率を達成しております。ソフトウェア業界の平均売上総利益率が28.0%(注1)である中、当社グループの2024年3月期の売上総利益率は42.9%であり、これは、業界屈指の水準であると考えております。

(注1)ソフトウェア業界における平均売上総利益率は、2023年6月29日に発表された経済産業省企業活動基本

調査「2022年企業活動基本調査確報-2021年度実績」の2021年度の「ソフトウェア業」の売上総利益率の数値であります。

 

ⅱ)安定した収益基盤

 Simplex Wayの一気通貫モデルにより、ハイブリッド人材で編成されたプロジェクトチームが、最上流のコンサルティングからシステム開発、運用保守に至るすべての工程に責任を持ち、システム導入後における改善ニーズを汲み取ることで、次のコンサルティングやリピートオーダーを安定的に獲得することに成功しております。

 結果として、新規システム導入に係るコンサルティングや設計・構築作業等のフロービジネス(注2)の拡大に連動して、システム導入後に機能改修や法制度の変更への対応等で発生するリピートオーダーや、運用保守、共同利用型サービス等のリカーリングビジネスが連鎖的に拡大していく収益モデルを構築しております。なおこれらの分類のうち、リピートオーダーとリカーリングビジネスは当社グループの低リスクの安定的な収益源であり、2024年3月期には売上収益全体の約63%を占めております。

(注2)フロービジネスとは、顧客企業と都度関係を築き、都度収益をあげるビジネスを指します。

 

ⅲ)実プロジェクトを通じたビジネスノウハウの習得

 ハイブリッド人材の育成に欠かせないビジネスノウハウの習得においては、顧客企業における最前線のビジネスに直接対峙する一気通貫モデルの徹底により、顧客企業と同等の豊富なノウハウを実プロジェクトの中で習得できる環境が整っております。こうした環境下において、ビジネス/マネジメント/テクノロジー等、個々の得意分野において、あくまでもプレイヤーとして能力を最大限伸ばしていくという、国内では稀な育成方法を採用しております。

 

 なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

 近年、デジタル技術の進展・普及に伴い、あらゆる産業において、テクノロジーを駆使してビジネスモデルそのものを改革していく、DXへの対応が急務となっております。こうした流れに連動する形で、当社グループがサービス提供を手掛ける対象領域も急速に拡大しております。

 こうした経営環境の下、当社グループにおいては、創設3年目のXspear Consulting株式会社が確実に立ち上がり、当社グループのテックファームであるシンプレクス株式会社とのシナジーを創出した結果、戦略/DXコンサルティング及びシステムインテグレーションの売上が大きく増加しました。

 当連結会計年度の経営成績は以下のとおりであります。

(売上収益)

 売上収益は、システムインテグレーション、運用サービスともに売上が好調に推移したこと及び戦略/DXコンサルティングの新規案件獲得により、40,708百万円(前期34,946百万円、前期比16.5%増)と、過去最高を更新しました。

 

(売上総利益)

 売上総利益は17,450百万円(前期14,597百万円、前期比19.5%増)と、前期を大きく上回り、売上総利益率は、42.9%(前期41.8%)と、前期を上回りました。

 

(営業利益)

 販売費及び一般管理費は、主に新卒社員数の増加による人件費の増加や採用・研修の強化などにより、6,354百万円(前期5,374百万円、前期比18.2%増)と、前期より増加しました。研究開発費は1,858百万円(前期1,438百万円、前期比29.2%増)と、前期より増加しました。

 また、識別可能資産償却費は356百万円(前期446百万円)となり、その他の収益に60百万円、その他の費用に93百万円を計上しています。

 この結果、営業利益は8,850百万円(前期7,451百万円、前期比18.8%増)、営業利益率は21.7%(前期21.3%)となりました。

 

(税引前当期利益)

 金融収益34百万円、金融費用162百万円、持分法による投資利益22百万円を計上して、税引前当期利益は8,744百万円(前期7,298百万円、前期比19.8%増)となりました。

 

(当期利益)

 法人所得税費用は2,551百万円(前期1,866百万円)となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は6,194百万円(前期5,432百万円、前期比14.0%増)となりました。

 

② 財政状態の状況

 当連結会計年度末の財政状態は以下のとおりであります。

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は、79,248百万円(対前連結会計年度末比8,981百万円増加)となりました。これは主に、オフィス拡充に関連して、使用権資産が2,406百万円、敷金及び保証金の差入等によりその他の金融資産が895百万円増加した他、株式会社サーキュレーションの株式を取得し、持分法適用会社としたこと等により、持分法で会計処理されている投資が1,761百万円増加したこと、受注案件の規模拡大に伴い、営業債権及びその他の債権が1,273百万円増加したことによるものです。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は、32,159百万円(対前連結会計年度末比3,876百万円増加)となりました。これは主に、使用権資産の増加に伴いリース負債が2,457百万円増加した他、未払法人所得税等が1,332百万円増加したことによるものです。

 

(資本)

 当連結会計年度末における資本合計は47,089百万円(対前連結会計年度末比5,105百万円増加)となり、親会社所有者帰属持分比率は59.4%(前連結会計年度末は59.7%)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は13,731百万円(対前連結会計年度末比898百万円増加)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、8,329百万円の資金取得(前期3,733百万円の資金取得)となりました。これは主に、税引前当期利益8,744百万円の計上、使用権資産償却費1,594百万円によるキャッシュ・フローの増加と、法人所得税の支払1,963百万円、営業債権及びその他の債権の増加1,273百万円によるキャッシュ・フローの減少によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、3,673百万円の資金使用(前期1,441百万円の資金使用)となりました。これは主に、持分法で会計処理されている投資の取得による支出1,739百万円、オフィス拡充に伴う有形固定資産の取得等による支出907百万円、敷金及び保証金の差入による支出596百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、3,772百万円の資金使用(前期3,435百万円の資金使用)となりました。これは主に、リース負債の支払による支出1,551百万円、配当金の支払による支出1,431百万円と、長期借入金の返済による支出1,140百万円によるものです。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループは、ITソリューションの提供を中心に事業活動を展開する単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりませんが、当連結会計年度の生産実績、受注実績、販売実績をサービス区分ごとに示すと、以下のとおりであります。

a 生産実績

サービス形態

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

戦略/DXコンサルティング(百万円)

2,154

200.8

システムインテグレーション(百万円)

13,732

109.8

運用サービス(百万円)

7,371

108.8

その他(百万円)

合計(百万円)

23,257

114.3

 (注)金額は製造原価によっております。

 

b 受注実績

サービス形態

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

戦略/DXコンサルティング

4,519

162.6

1,206

135.1

システムインテグレーション

25,055

113.3

6,538

110.8

運用サービス

13,457

111.3

11,313

113.9

その他

7

65.0

5

94.9

合計

43,037

116.3

19,063

113.9

 (注)受注残高は、向こう1年間の売上収益の計上予定額によっております。

 

c 販売実績

サービス形態

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

戦略/DXコンサルティング(百万円)

4,206

193.7

システムインテグレーション(百万円)

24,417

112.5

運用サービス(百万円)

12,078

109.2

その他(百万円)

7

102.4

合計(百万円)

40,708

116.5

 (注)1.金額は販売価格によっております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績については、連結売上収益10%以上に該当する販売先がないため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を行うことが要求されております。実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。

 見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直されます。会計上の見積りの見直しによる影響は、見積りを見直した会計期間及びそれ以降の将来の会計期間において認識されます。

 経営者が行った連結財務諸表の金額に重要な影響を与える判断及び見積りは以下のとおりであります。

 

1.のれんの評価及び減損テスト

 当社グループは、のれんについて、毎期一定の時期又は減損の兆候がある場合には随時、減損テストを実施しております。減損テストの回収可能価額は、使用価値に基づき算定しております。

 使用価値は、過去の実績及び外的環境を反映し、経営者が承認した事業計画と事業計画経過後の永久成長率0.7%を基礎としたキャッシュ・フロー見積額を、資金生成単位の税引前加重平均資本コストを基礎とした割引率8.4%により現在価値に割り引いて算定しております。なお、事業計画における主要な仮定は、リカーリング率、リピートオーダー率等であります。

 減損テストに使用した主要な仮定が変更された場合には減損が発生するリスクがありますが、使用価値は資金生成単位の帳簿価額を十分に上回っており、減損テストに使用した主要な仮定が合理的に予想可能な範囲で変化したとしても、使用価値が帳簿価額を下回る可能性は低いと判断しております。

 

2.収益認識に関する総原価の見積り

 当社グループは、連結財務諸表注記「3.重要性がある会計方針 (15) 収益」に記載のとおり、売上収益のうち、戦略/DXコンサルティング及びシステムインテグレーションにかかる収益については、一定期間にわたって履行義務が充足されるものであることから、当該履行義務の完全な充足に向けての進捗度に基づいて収益を認識しております。

 当連結会計年度において計上された売上収益のうち、進捗度に基づいて認識した売上収益は連結財務諸表注記「23.売上収益 (1) 収益の分解」の「戦略/DXコンサルティング」「システムインテグレーション」にそれぞれ区分して記載しております。

 進捗度は、案件別に発生したコストに基づくインプット法(原価比例法)によって測定されており、インプット法の基礎となる総原価の見積りには、外注費を含む作業工数の見積りが含まれます。

 また、顧客ごとのニーズに応じた設計開発やコンサルティング等を行うため、個別性が強く、作業の進捗状況によって想定外の作業工数が必要になる可能性があります。このため、インプット法の基礎となる総原価の見積りのうち、特に作業工数の見積りには一定程度の不確実性を伴い、当該不確実性に対する当社グループの判断が、進捗度に基づく収益認識額に重要な影響を及ぼします。

 

② 目標とする客観的な指標等の推移

 当社グループは、売上収益、売上総利益率及び営業利益を重視し、これらの向上を目指しております。特に、サービスの付加価値を測る客観的な経営指標として、売上総利益率の安定的な確保を目指しております。

 売上収益、売上総利益率及び営業利益の近時の推移は以下のとおりです。

 

2020年3月期

連結会計年度

2021年3月期

連結会計年度

2022年3月期

連結会計年度

2023年3月期

連結会計年度

2024年3月期

連結会計年度

売上収益 (百万円)

25,508

27,532

30,579

34,946

40,708

売上総利益率 (%)

34.9

39.1

42.6

41.8

42.9

営業利益 (百万円)

1,222

4,510

6,362

7,451

8,850

 

③ 経営成績の分析

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。主な資金使途は、運転資金と借入金の返済であり、当面は着実に事業計画を遂行することで営業キャッシュ・フローを蓄積し、安定的な借入金の返済によって有利子負債比率を低減することで、財務体質の更なる強化を図ります。また、持続的な成長を図るため事業領域の拡大と事業領域の深耕を推進しておりますが、これらの要因により、一時的に必要な資金の増加が見込まれる場合は、金融機関計5行と締結済のコミットメントライン契約又は当座貸越契約(総額100億円)を利用して流動性の高い資金調達を実施する方針としております。なお、当連結会計年度末における有利子負債(借入金)残高は16,906百万円であり、現金及び現金同等物の残高は13,731百万円であります。なお、現時点で重要な資本的支出の予定はございません。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社グループは、「日本発のイノベーションを世界へ向けて発信する」という経営理念のもと、全社員が一丸となり、顧客企業のビジネスの成功に貢献する「高付加価値サービスの創造」を追求しております。

 また、事業領域の拡大と事業領域の深耕に向けた各種施策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載をしております。

 

セグメント情報

6.事業セグメント

(1)報告セグメントの概要

 当社グループの事業内容は、顧客企業のビジネスの成功に貢献するシステムの提案、構築、運用保守に係るITソリューションの提供であり、区分すべき事業セグメントが存在しないため、報告セグメントは単一となっております。

 

(2)サービス形態別の売上収益及び売上総利益に関する情報

 サービス形態別には、戦略/DXコンサルティング、システムインテグレーション、運用サービスがあり、売上収益、売上総利益は以下のとおりであります。

 

前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)

(単位:百万円)

 

 

サービス形態

その他

合計

戦略/DXコンサルティング

システムインテグレーション

運用サービス

売上収益

2,172

21,712

11,056

34,940

7

34,946

売上総利益

1,099

9,208

4,284

14,590

7

14,597

 

当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(単位:百万円)

 

 

サービス形態

その他

合計

戦略/DXコンサルティング

システムインテグレーション

運用サービス

売上収益

4,206

24,417

12,078

40,701

7

40,708

売上総利益

2,051

10,685

4,707

17,444

7

17,450

※システムインテグレーションには、システム・エンジニアリング・サービス等が含まれております。

運用サービスには、運用・保守、共同利用型サービスの他、ライセンス等が含まれております。

その他は、主としてハードウェア・ミドルウェアなどの物品販売であります。

 

(3)主要な顧客に関する情報

 外部顧客への売上収益のうち、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先は以下のとおりであります。

 

 

 

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

 

 

 

百万円

SBIグループ

 

 

4,628

※上記企業グループに対する売上収益は以下で構成しております。

・SBIホールディングス株式会社及び同社を親会社とする子会社、関連会社から構成される企業グループ

 のうち、同社が提出している直近の有価証券報告書の「第一部 企業情報 第1 企業の概況 4 関係

 会社の状況」に名称が記載されている連結子会社に対する売上収益。

・当社と株式会社SBI証券が資本業務提携契約に基づき設立した合弁会社SBIシンプレクス・ソリュー

 ションズ株式会社に対する売上収益。