2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社グループは、以下のリスクに対応するため「リスク管理規程」を整備するとともに、代表取締役社長執行役員が委員長を務める「リスク管理委員会」を設置することにより業務遂行上のリスクの適切な管理や未然防止を図っております。リスク管理委員会は、リスク管理基本方針の立案やリスク情報の収集、抽出されたリスクの分析・評価(重要性の判断)、各部門における業務遂行上のリスク管理の監督等を行っております。複数の部門に係る重要度の高いリスクについては、各種委員会や事務局とも連携し、全社横断的なリスク対策を推進しております。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)特定取引先や業界への依存について

①特定の顧客への依存

 テストソリューション事業における主力製品である半導体メモリー向け自社製テストシステムの販売事業の顧客は、特定の半導体メモリー製造企業であり、当該セグメントの売上高に占める主要顧客への依存度が高い水準となっております。

 当社グループが2024年3月に公表した2024年度から2026年度までの新たな中期経営計画(以下「新中計」という。)では、事業戦略の1つとして「業績の安定性向上」を掲げておりますが、同事業における特定顧客への依存が課題となっております。

 同事業は、技術の進歩等により大きく成長する反面、当社グループが管理不能な事由で半導体市場の需給バランスが崩れ、一時的な市場収縮による顧客の設備投資の抑制、生産活動の停滞や、業界再編等に伴う顧客の事業撤退や事業売却により、当社グループの事業計画遂行や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに対処するため、製品ラインナップの拡充や多様なアプリケーションの開拓による市場の拡大、顧客との密なコミュニケーション、最適なビジネスモデルの構築、新規顧客開拓(顧客ベースの拡大)等に努めております。

②特定の業界への依存

 システム・サービス事業や半導体設計関連事業において取り扱う製商品・サービスの主要取引先には、国内の自動車メーカー及びその関連企業が含まれます。

 当社グループは、新中計における「業績の安定性向上」実現のため、自動車関連市場向け事業のさらなる成長を目指しておりますが、パリ協定の合意以降、世界的に脱炭素化の流れが加速しており、ガソリン車の販売規制や世界的な自動車のEV化が進行するなか、急速なEV化への対応の遅れによる国内自動車メーカーの競争力低下や業界再編による市場の縮小などにより、当社グループの事業計画遂行や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに対処するため、EV向け製商品・サービスの強化や海外自動車メーカー等への販路拡大、新規事業開発や新規市場開拓(他業界への進出)などに努めております。

③特定の仕入先及び製造委託先への依存

 当社グループは、取扱製商品や部材等を様々な企業から調達(仕入)しておりますが、半導体設計関連事業における主力商品である半導体設計用(EDA)ソフトウェアやテストソリューション事業における半導体メモリー向け自社製テストシステムの販売事業は、特定の仕入先及び製造委託先に依存しており、当該仕入先や製造委託先の予期せぬ企業再編行為や代理店契約の解消等により、当社グループの事業展開や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに対処するため、仕入先及び製造委託先との良好な関係の維持や定期的な情報交換に努めるとともに、取り扱いベンダーの拡充や複数社購買を推進しております。

 

(2)人財確保に関するリスクについて

 当社グループが参画する事業領域は、技術革新が激しく、顧客ニーズを汲み取り最適なソリューションを提供するためには高度な技術力を必要とします。

 また、当社グループは「営業利益率の向上」を新中計における事業戦略の1つとして掲げ、自社製品売上の拡大及びメーカー機能の強化を推進中であり、特に製品の研究開発に必要な能力を満たす人財の採用や育成がますます重要になっておりますが、技術者の獲得競争は激しいものとなっており、仮に充分な技術者を採用できない場合や優秀な技術者が流出した場合には、事業計画の遂行や将来の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに対処するため、海外の技術者を含めた積極的な採用活動を実施するとともに、報酬水準の向上や福利厚生、教育制度の充実、働きやすい就労環境の整備により人財に対する訴求力の強化と流出の防止を図り、スキルや知見の継承と長期的な人財育成を推進しているほか、外部の協力会社及び派遣社員を活用した効率的なリソース配分に努めております。

 

(3)自然災害や地政学的リスク等について

 当社グループは、日本国内のみならず、アジアや北米を中心とした海外において事業活動を展開しており、さらなる拡大を目指しておりますが、それらの地域において地震、台風、水害等の自然災害や重大な感染症の世界的流行、地政学的リスクの顕在化等が発生した場合には、販売活動の停滞や商材・部材の調達困難、従業員の人命に係る事態等により、事業計画の遂行や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに対処するため、事業継続計画(BCP)の見直しや管理体制の整備、サプライチェーンの強化、安否確認システムの導入、防災訓練の実施、産業医と連携した感染予防・拡大防止策の策定等の対策を講じております。

 

(4)自社製品等の品質に関するリスクについて

 当社グループは、自社製品売上の拡大及びメーカー機能の強化を推進しており、テストシステムや組込み関連などにおいて自社製品やサービス事業を展開しておりますが、製品等の不良による顧客生産ラインへの支障や顧客開発計画の遅延、クラウドサービスに係るサーバー障害等によるサービスの停止や情報の喪失などの損害が発生する可能性があります。特に半導体製造企業や自動車関連企業に対する損害賠償は甚大なものとなることも想定されます。また、全世界的に脱炭素への取組みが活発化しており、当社製品の製造過程やサプライチェーンにおいても脱炭素が求められることが想定されますが、対応の遅れ等により顧客との取引が継続できなくなった場合、事業計画や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに対処するため、製造物賠償責任保険等への加入のほか、品質保証委員会や担当部門の設置による品質保証体制の強化、製造委託先の複数化等を推進しております。

 

(5)コーポレート・ガバナンス、内部統制について

 当社グループは、国際的なビジネスや外部環境に対応するため、コーポレート・ガバナンスや内部統制が適切に機能することが重要であると認識しておりますが、M&Aの推進に伴う事業の急速な拡大等により、十分なガバナンスや内部統制構築の整備が追い付かない状況が生じ、従業員等の故意又は過失による法令違反行為の結果、当社グループの社会的信用の失墜により、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに対処するため、新たに買収した子会社等に対しては、規程の整備や会計方針の統一などに親会社が積極的に関与し、早期のガバナンス強化や内部統制構築を図っております。また、当社グループとして「内部統制基本方針」や「イノテックグループ倫理行動基準」を策定し、「イノテックグループ外部通報窓口」を設置するなど、内部統制システムを充実させ適切に運用するとともに、内部統制の啓もう活動や教育の強化にも取り組んでいるほか、当社の役員や従業員を子会社の役員として出向又は兼務させて子会社の経営に関与し、不正等の早期発見と適切な対応を図ることなどにより、法令遵守や財務報告の適正性の確保に努めております。

配当政策

3【配当政策】

当社グループの株主還元につきましては、2024年3月に公表した「新中期経営計画」において、「資本政策に関する基本方針」(2018年2月公表)を踏襲することとし、連結配当性向に一定の目安を設け、安定的な配当を行っていくこととしております。具体的には連結配当性向30%を下回らないことを基本としつつ、急激な業績変化等が無ければ同50%程度を目安としております。

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

当連結会計年度の配当につきましては、上記方針に基づき1株当たり70円の配当(うち中間配当35円)を実施することとしております。この結果、当連結会計年度の連結配当性向は63.3%となりました。

内部留保資金につきましては、財務体質の強化と事業拡大のための原資として活用することとし、企業競争力の強化に取り組んでまいりたいと考えております。

当社は、「取締役会の決議により、毎年9月30日の株主名簿に記録された株主又は登録株式質権者に対して、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

なお、当連結会計年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(千円)

1株当たり配当額(円)

2023年11月9日

471,522

35

取締役会決議

2024年6月25日

472,513

35

定時株主総会決議

(注)1.2023年11月9日取締役会決議による配当金の総額には、株式給付信託(J-ESOP)の信託財産として、信託E口が保有する当社株式に対する配当金1,470千円が含まれております。

2.2024年6月25日定時株主総会決議による配当金の総額には、株式給付信託(J-ESOP)の信託財産として、信託E口が保有する当社株式に対する配当金1,470千円が含まれております。