2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 災害・事故発生によるリスク

 ① 原料調達に関する不測の事態

LNGや天然ガス等の原料調達に関して不測の事態が生じ長期にわたり調達ができない場合には、都市ガスや電力の供給に支障を及ぼす可能性があります。

原料の大半を占めるLNGは海外からの輸入に頼っていますが、複数の長期契約で供給源を特定しないポートフォリオ契約による調達先の多様化を進めているため、供給プロジェクトのトラブルやLNG船のトラブル時にも代替調達が可能となっています。このほかにも、緊急融通調達体制を構築し、迅速なスポット調達を組み合わせることで、より安定的かつ柔軟なLNG調達を実現しています。

 

 ② 自然災害の発生

大規模な自然災害により、LNG基地等の製造設備やガス導管等の供給設備に被害が発生した場合、都市ガスの供給に支障を及ぼす可能性があります。また、不測の大規模な停電が発生した場合、都市ガスの製造・供給に支障を及ぼす可能性があります。さらに、当社発電設備に支障が発生した場合には、電力の市場調達が必要となり、その対応に伴う費用等により、電力収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは多様化、複雑化する「事業中断リスク」を最小限に止めるため、事業継続計画(BCP:Business  Continuity  Plan)を策定するとともに、製造・供給設備等の耐震性向上や津波対策、非常時の自家発電設備の整備による停電対応力強化を進めることで、災害による影響を最小限に止める対策を実施しております。

 

ガス製造・供給設備のトラブルの発生

 LNG基地等の都市ガス製造設備やガス導管等の供給設備に事故・故障等のトラブルが発生し、都市ガスの供給に支障を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、計画的な設備点検に加え、設備の稼働状況に応じた設備更新とメンテナンスを実施することで、トラブルの未然防止に努めております。また、大規模な供給支障に備えた事業継続計画(BCP)を策定するとともに、各種保安対策や教育・訓練の計画的実施、都市ガス製造設備のバックアップ対策、並びに設備電源の二重化等、不測の事態が発生した際の影響を最小化するための対策を進めております。

 

 ④ ガス事故の発生

ガス事故の発生によりお客さま被害が発生した場合、対応に要する直接的費用の発生に加え、社会的信用の低下等により、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、災害等においても事業継続性が高い供給防災センターに全社保安指令機能を集約し、専任要員を24時間配置することに加え、グループ会社と協同した保安処理体制構築や消防機関等との連携により、ガス事故の防止や二次災害防止に努めております。

 

 ⑤ ガス消費機器・設備に関するトラブルの発生

ガス消費機器・設備に関する重大な不具合が発生した場合、対応に要する直接的費用の発生に加え、社会的信用の低下等により、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、お客さまへのガス設備安全点検の品質向上、安全型機器への取替や警報器設置の促進、ガス機器の安全使用の周知等により、保安の強化に努めております。

 

 

 ⑥ 感染症の流行

 新型コロナウィルス等の感染症の蔓延により一時的に業務が停止し、事業活動や事業収支に影響を及ぼす可能性があります。また、影響が長期化した場合、都市ガスの製造・供給や保安体制の維持が困難となる可能性があるほか、ガスの販売量減少による財政状況の悪化、商材等のサプライチェーンの遅延、債権回収不能など複合的な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、新型コロナウィルスの取り扱いが感染症法上の5類に変更された2023年5月以降、基本的な考え方として感染時の取り扱いは、感染症法上および国が推奨する対策に準じること、日常の感染予防については、個人の判断を尊重しつつも、制限に対する効果を踏まえた感染対策(手指の消毒など)を継続することとしております。また、「新型インフルエンザ等対策に関する業務計画」を策定し、これに基づく対策を講じることで、感染症による事業中断リスクの最小化に努めております。

 

(2) 事業遂行に伴うリスク

 ① エネルギー・環境に関わる政策・制度等の変更リスク

エネルギーや環境に関わる国の政策・制度が変更された場合、市場競争の激化によるお客さまの離脱や規制対応に要する費用の発生等により、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。加えて、脱炭素に向けた社会の動向やお客さまニーズに適切に対応できなかった場合は、市場における競争力の低下により、事業収支に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループは、将来のカーボンニュートラル時代を見据え、国策や制度、業界動向などの環境変化に加え、お客さまのニーズを的確に把握するため、お客さまや関係機関との緊密な対話に努めるとともに、デジタル技術の高度利用やお客さまとの協働による省エネルギーの推進、太陽光・風力等の再生可能エネルギー電源の導入拡大、自治体との連携による地域資源の活用、水素・メタネーション等の次世代技術への取り組み等、社会の要請を踏まえた総合エネルギーサービス事業を展開することで、お客さまに選択されるよう努めております。

 

 ② 原材料調達価格の変動

原材料価格が、原油価格・為替・市場相場等の変動によって高下した場合、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。都市ガスの主要原料であるLNGの売買契約のうち、原油価格に連動するものについては、原油価格の変動により事業収支に影響を及ぼす可能性があります。また、外貨建てで売買契約を締結しているものについては、為替の変動が事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

ただし、原料価格が変動しても、変動分については、ガス料金に反映する「原料費調整制度」を適用しているため、中長期的には事業収支への影響は軽微であります。

また、電力事業においても同様に、電源調達価格が変動した場合に事業収支に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、自社電源の活用、電源調達先の分散等により調達リスクを回避し、電源調達コストの低減に努めております。

 

 ③ 気温影響によるガス需要の変動

当社グループの売上高の過半が都市ガスおよびLNG販売によるため、気温の推移が平年値から乖離する等によりガス需要が想定から変動した場合、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。特に、積雪寒冷地の北海道では、冬季から春先にかけて需要が大きくなるため、当該期間の気温推移が事業収支に与える影響は大きくなる傾向があります。

当社グループでは、気象の影響を受けづらい産業用やコージェネ用のガス販売強化や、総合エネルギーサービスによるエネルギーシェア拡大、付加価値の提供等により、気温による事業収支への影響の軽減に取組んでおります。

 

 

 ④ 商品・技術開発の遅延

積雪寒冷地に適し、省エネやCO2削減につながる商品や次世代のエネルギー技術などの開発を進めておりますが、開発に遅延が生じた場合、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、商品に対するお客さまの使用感や要望等についての定期的なアンケート調査や、機器の使用状況に関するデータ計測、市場環境の各種情報収集等により、お客さまのニーズや商品の課題、社会環境の変化等の的確な把握に努めております。そのうえで、新商品・技術を適切なタイミングに遅延なく市場投入できるよう、開発メーカーや地域の大学と密に連携をはかり、数年先までの工程を共有しながら商品・技術の企画・開発に取り組んでおります。

 

 ⑤ 設備投資による影響

インフラ事業の性質から、業容拡大や増産を目的とした大規模な設備投資の実施により、費用負担が増加し、一時的に事業収支に影響を及ぼす可能性があります。また係る設備投資が、その後の経済情勢の変化等により、所期の成果を出せないことで、有利子負債依存度が高まる可能性があります。

当社グループでは、投資の実施にあたっては、事前にリスクや事業性を検証した上で経営会議や常務会、取締役会に諮る等、総合的な経営判断の下に投資を決定しています。

 

 ⑥ 資金調達・資産運用による影響

市況や金融の混乱により資金調達・資産運用の環境が悪化が発生した場合、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、資金調達先や年金資産運用先については多様化を図っております。また、有利子負債は、長期で固定化した資金調達とすることで、借入期間中の金利変動リスクを限定的にするよう備えております。

 

 ⑦ コンプライアンス違反の発生

法令、定款に照らして不適切な行為、ならびに企業倫理、社会規範に反する行為が発生した場合、対応に要する直接的な費用にとどまらず、社会的信用の低下等、有形無形の損失が発生し、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、倫理・法令遵守の基本的な考え方として「北ガスグループ倫理方針」「北ガスグループ行動規範」を定めるとともに、コンプライアンス遵守に関する教育・啓発等により、グループ全体でコンプライアンス向上に取り組んでおります。また、法令改正情報を迅速に把握し、社内共有する仕組みや顧問弁護士との連携強化により、ガス事業法をはじめとした関係法令の遵守に努めております。さらに、内部監査により、業務が適正に遂行されているか確認を行っております。

 

 ⑧ 取引先の信用問題や事故の発生

取引先の倒産や事故等があった場合、債権未回収や業務支障を招き、事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、取引開始時における信用調査等、与信管理を徹底しております。

 

 

(3) 情報管理・システム運用に関するリスク

 ① ITシステム・通信回線の不具合の発生

ITシステムや通信回線の不具合により、業務処理の誤りや業務停滞を引き起こした場合、有形無形の損失が発生する可能性があります。特に、売上高の多くを占めているガスと電力の供給に係る契約や料金計算、債権等につきましてはITシステムで管理しており、これらのシステムの不具合等により当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

ITシステム構築にあたっては、システム開発標準を定め、これに則りシステム設計・プログラミング・テスト・評価等を行うことで、ITシステムの品質維持・向上を図っております。

また、ITシステムのサーバーは、津波の心配がなく耐震性に優れた施設が完備されているデータセンターに設置するとともに、データのバックアップを毎日実施し、万一の不具合発生時の早期復旧に備えております。

さらに、グループ会社を含めた主要拠点間の通信設備は、故障時にも通信が途切れることのないように冗長化しているほか、何らかの原因で通信設備が利用できない場合でも、インターネット回線を利用して外部から安全にアクセスすることができるルートを用意しております。

 

 ② 個人情報等の社内情報の流出

当社グループでは、お客さま情報をはじめ、多くの個人情報や営業機密情報を有しております。それらの社内情報が不適切な形で外部流出した場合、対応に要する直接的な費用にとどまらず、社会的信用の低下等、有形無形の損失が発生し、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、情報管理に関する各種規程を整備するとともに、グループ全体を対象とした情報セキュリティ推進体制を構築し、情報セキュリティに関する教育・啓発や自主点検を実施しております。また、誤操作等による情報漏えいを防止するための訓練並びにシステム的な対策の実施等、個人情報等の流出防止と事故発生時の影響の最小化に取り組んでおります。

 

 ③ サイバー攻撃

日々発生するサイバー攻撃は、巧妙化、高度化しており、その対策が十分ではない場合、基幹システムの停止・動作不良、社内情報の流出等が発生し、業務やお客さまへの対応が停滞するばかりではなく、当社グループの社会的信用の低下等、有形無形の損失が発生し、当社グループの事業収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、システム的な各種セキュリティ対策の実施やインシデント対応訓練を実施する他、適宜、情報セキュリティの脆弱性に関する確認を行い防御策の見直しを行う等、サイバー攻撃への対策に取り組んでおります。また、情報系システム・インフラを起因とする情報事故対応体制として「北ガスグループCSIRT(Computer Security Incident Response Team)」を設置し、万一情報漏洩事故が発生した際の被害を最小限に止めるための体制強化を図っております。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社グループは、総合エネルギーサービス事業の展開および安全高度化への取組みを前提に、一体となって営業力を強化し、収益の拡大を図るとともに、業務効率化とコストダウンを進めながらフリー・キャッシュ・フローの獲得に努め、企業価値の向上を図ってまいります。

剰余金の配当等につきましては、継続的かつ安定的に配当を行うことを基本としております。

その上で、将来への成長投資として、情報プラットフォーム基盤整備、再生可能エネルギーの導入拡大、技術開発等継続的な投資が求められ、加えて昨今の世界の政治経済の状況から、有利子負債の削減等も急がれることを踏まえ、連結配当性向につきましては、30%を目標水準とし、引き続き株主さまへの適切な利益還元に努めてまいります。

このような方針のもと、当事業年度の剰余金の配当につきましては、昨年10月31日開催の取締役会決議に基づき一株につき35円の中間配当を実施するとともに、期末配当につきましては、販売量の拡大等により利益が拡大したことを踏まえ、本年5月28日開催の取締役会において一株につき45円と決定いたしました。これにより、当事業年度の年間配当は、前事業年度と比べて10円増配の、一株につき80円となります。

 

この結果、当期の配当性向は12.1%(個別配当性向13.9%)、株主資本当期純利益率16.3%、株主資本配当率は2.0%となりました。

 

なお、当社は中間と期末の年2回配当を行うこととし、取締役会の決議によって、中間配当は毎年9月30日、期末配当は毎年3月31日を基準日として配当を行う旨を定款に定めております。

 

(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たりの配当金(円)

2023年10月31日

取締役会

616

35.0

2024年5月28日

取締役会

792

45.0