2024年6月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業等に係るリスク要因になる可能性のある重要事項は以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものでありますが、以下の記載は当社グループの事業等及び当社株式への投資に係るリスクを全て網羅するものではありません。

 

① 主要顧客への売上依存度について(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:大)

当社グループの主要顧客は、日産自動車株式会社であり、同社向けの売上実績は下表のとおりとなっています。日産自動車株式会社への売上依存度は、継続的に高い率となっているため、同社との取引状況に何らかの変更があった場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

相手先

2023年6月

2024年6月

金額
(百万円)

総売上に
占める割合

金額
(百万円)

総売上に
占める割合

日産自動車株式会社

12,652

9.5

12,351

8.8

日産自動車グループ(注)

19,769

14.9

20,292

14.4

 

(注) 日産自動車グループの販売実績は、日産自動車株式会社、日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社、及び国内の日産自動車販売会社への売上実績と、陸友物流(北京)有限公司における、中国の東風汽車有限公司及び中国のその他日産自動車関係会社等への売上実績を合計したものであります。

 

日産自動車株式会社とは、車両輸送作業や新車点検整備作業等の個別の業務ごとに締結された「車両運送委託契約書」や「請負基本契約書」等の契約を締結していることに加えて、日産自動車株式会社より「Nomination Letter」に署名をいただいており、2027年3月末まで継続されることが基本合意されております。また、それ以降も継続に向けた協議をしております。これまで日産自動車株式会社が提示した目標を達成しており、今後も業務品質の維持向上に努めることによって契約の更新を続けてまいる所存です。

しかし、諸事情により日産自動車株式会社との取引が継続できなくなった場合は、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

当事業リスクに対する対応策としては、輸送システムの連携などを推進することで、日産自動車株式会社との関係強化に努めてまいります。

 

② 特有の法的規制に係るもの

a.貨物自動車運送事業法等の規制について(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:大)

当社グループの主要な事業活動である車両輸送サービスの前提は、一般貨物運送事業者としての貨物自動車運送事業法第3条に基づく一般貨物自動車運送事業認可(関東運輸局長(関自貨2)第1992号ほか)と、貨物運送利用事業者としての貨物利用運送事業法第20条に基づく第二種貨物利用運送事業許可(総合政策局複合貨物流通課長(国総貨複第6号の4-25))であり、当社グループの有している許認可の有効期限は無期限であります。

これらの法律では、事業経営者に対する許可、事業許可の基準、禁止行為、運送約款の作成と認可、過労運転防止を中心とする輸送の安全、事業用自動車の運行と安全確保のための運行管理者選任と資格試験、監督官庁の事業改善命令、さらに名義利用の禁止・事業譲渡及び譲受け並びに事業休止廃止などの許認可等について細目にわたり規定されており、貨物自動車運送事業法第33条及び貨物利用運送事業法第33条には、許認可の取消事由が定められています。現時点において、当社グループはこれらの許認可の取消の事由に該当する事実はないと認識しています。

当社グループの主要な事業活動の継続には前述のとおり一般貨物自動車運送事業認可及び第二種貨物利用運送事業許可が必要ですが、今後、法令違反等によりこれらの許認可が剥奪された場合には、主たる事業の一部あるいは全部を行うことができず、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

また、今後、貨物自動車運送事業法や貨物利用運送事業法の内容変更等が行われた場合には、新たなコストが発生し、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

 

b.排気ガスの抑制に関する諸規制について(リスク顕在化の可能性:中、経営成績等の状況に与える影響:小)

当社グループの営む事業のうち国内自動車関連事業及び一般貨物事業につきまして、2002年10月1日から「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(自動車NOx・PM法)が施行され、また、2003年10月1日から東京都の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」をはじめとするディーゼル車の走行規制条例が、首都圏で施行されたのを皮切りに、全国へ拡大されております。当社グループといたしましては、各種規制に対して、新車代替又は排ガス対策装置を装着することを進めておりますが、今後、規制の内容の強化等が行われた場合には、更なるコストが発生し、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

c.道路交通法の規制について(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:中)

当社グループの輸送業務については、道路交通法を遵守し、人命を尊重し交通安全に最善を尽くしております。しかし、重大な交通事故等を起こしてしまった場合には、当社グループの信頼が失われ、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

d.道路法の車両制限令の規制について(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:中)

当社グループの車両運搬用のセミトレーラにつきましては、道路法の車両制限令により全長の制限及び積載車両の長さや高さや重量等の制限が定められております。車両運搬用セミトレーラは、本来商品車(輸送依頼を受けた車両)を6~7台積載できることを前提に製造されておりますが、最近は商品車のサイズが大型化したことに伴い、積載時にセミトレーラのサイズに収まらず、はみ出してしまう可能性があります。また、自動車の電動化にともない重量が増しており、セミトレーラの重量制限を超過してしまう可能性があります。

当社グループでは、各物流拠点での配車時において、制限値を超えないように小型車を混載させ、積載時に調整を行っております。しかし、小型車の混載が困難な新車輸送に関しましては、積載台数を減らさざるをえない場合もあります。今後も、適正な輸送料金への改定の交渉に取り組みますが、規制の内容の変更等が行われ、輸送効率の低下に伴うコスト増分を輸送料金に反映できない場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

e.労働基準法等の規制について(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:中)

乗務員の時間外勤務や連続運転については、「労働基準法」、「自動車運転者の労働時間等の改善の基準」等に基づいた労務管理が必要となります。昨今の労働行政の動きをみると、長時間労働に対する監督官庁による指導・監督の強化、施行が決定している労働安全衛生法改正による従業員のメンタルヘルスチェックの義務化など従業員へのよりきめ細やかな労務管理と安全配慮を企業側に求めるものとなっています。現在、法令等に抵触する事実はないものと認識しておりますが、今後の規制強化や法適応の動向によっては、コストの増加が懸念され、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。さらに、働き方改革関連法の施行にともない、残業時間の規制が強化されており、自動車運転業務においても2024年4月1日から施行されたことにともない、自動車輸送の繁忙期となる3月に従来どおりの売上収益を維持できなくなる可能性があります。

f.派遣法等の改正について(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:小)

「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、労働者派遣法)」は2012年の改正に続き、改正時の附帯決議等により2015年にも一部改正されました。改正においては、雇用安定措置の義務化、個人単位及び事業所単位の期間制限等が織り込まれています。派遣先企業では、アウトソーシングや直接雇用への切り替えなどの動きも見られ、派遣業界の競争は更に厳しさを増すものと考えられます。これまでも労働・雇用環境の変化に応じて労働者派遣法は改正されており、今後の改正などにより事業環境が変化した場合には、ヒューマンリソース事業において派遣事業を展開している当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

当法的規制に係る事業リスクの対応策につきましては、関係部署に対する、貨物自動車運送事業法や労働基準法などの法令順守指導・教育に努めると同時に、その他の法的規制につきましては、情報の早期収集と迅速な対応並びに情報開示に努めてまいります。また、監査部による特別監査などを通じてコンプライアンス遵守意識を高めてまいります。

 

③ 人材の確保について(リスク顕在化の可能性:中、経営成績等の状況に与える影響:小)

人材確保・育成を経営上の重要項目として取り組んでおりますが、少子高齢化の進行に伴う人材不足及び景気回復に伴う人件費の高騰などにより必要な人材の確保ができない場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。特に国内自動車関連事業における車両輸送事業やヒューマンリソース事業における送迎事業や派遣事業を担っている「自動車運転の職業」は有効求人倍率が高止まりしていることから、人件費高騰のリスクを抱えております。当事業リスクに対する対応策としては、数年前から乗務職の新卒を採用し始めるなど、乗務職確保と高齢化に歯止めをかける施策を行っております。

 

④ 自然災害等の大規模災害による被害(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:大)

地震、噴火、津波、台風等の自然災害や火災等の事故及び通信ネットワークを含む情報システムの停止等により、当社グループの事業活動が停止するような被害を受けた場合には、当社グループの業績に重要な悪影響を与える可能性があります。当事業リスクに対する対応策としては、車両輸送における物流拠点(CSセンター)においては、日本全国36箇所に亘って展開しているため、どこか特定のエリアや拠点が壊滅的な打撃を受けたとしても、近隣の拠点でバックアップができる体制を構築しております。

 

⑤ 保有資産の価格下落に関するリスク(リスク顕在化の可能性:中、経営成績等の状況に与える影響:中)

当社グループが保有している営業債権及びその他の債権(17,326百万円)、棚卸資産(2,979百万円)、有形固定資産(24,845百万円)、のれん及び無形資産(5,328百万円)について、収益性の低下などによって、評価損の計上や減損処理を行うこととなった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当事業リスクに対する対応策としては、営業債権については、顧客ごとの与信管理の徹底と情報管理の迅速性を重視すること、棚卸資産に関しては、見込み発注の縮小化と在庫管理を徹底すること、有形固定資産及びのれん・無形資産に関しては、投資前より事業収益性の見極め精度を向上させ、投資後は損益管理を徹底し、収益性低下が認められた場合は、早急にリカバリープランを導入することでリスクの顕在を縮小化してまいります。

当連結会計年度において、海外関連事業におけるCKD事業に関して、CKD部品の向け先である顧客がASEAN事業の方針を転換したことに伴い、CKD事業にかかる非金融資産に減損の兆候を識別したことから、使用価値により回収可能価額を見積もり、使用権資産等746百万円の減損損失を認識しております。

 

⑥ 中古車輸出事業に関するリスク

子会社である株式会社ワールドウインドウズにおけるマレーシア向けの中古車輸出事業におきまして、為替レートの変動、法的規制の変化、債権の回収、自動車運搬専用船の船枠確保に関するリスクがあります。

a.   為替レートの変動について(リスク顕在化の可能性:大、経営成績等の状況に与える影響:小)

 当社グループは、マレーシアの中古車輸入業者との取引に関しては円建てを基本としており、為替ヘッジは行っておりません。しかしながら、急激に円高になった場合、日本から輸出する中古車の価格競争力がなくなり、当社グループの輸出台数が減少することによって、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

b.   法的規制の変化について(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:中)

 マレーシアにおきましては、自動車産業保護政策やマレー系民族優遇政策を基にして中古車の輸入関税や輸入条件が定められておりますが、その政策が変更された場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

c.   債権の回収について(リスク顕在化の可能性:大、経営成績等の状況に与える影響:小)

 当社グループでは、取引を開始するにあたって信用調査を実施し、会社毎に与信枠を設定して継続的に販売状況をモニタリングすることなどによって与信管理に努めておりますが、取引先の倒産や支払い遅延などが発生した場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

d.   自動車運搬専用船の船枠確保(リスク顕在化の可能性:大、経営成績等の状況に与える影響:小)

 当社グループは、日本からマレーシアへ中古車を輸出するにあたって、主に自動車運搬専用船を利用しておりますが、その船枠が空いているかどうかは新車の輸出動向に左右されます。新車の輸出が旺盛で自動車運搬専用船の船枠の確保ができない場合、在庫車の滞留により資金繰りに影響を及ぼす可能性や、輸出台数を制限することにより売上収益に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

利益配分の方針は、内部留保に留意し事業領域の拡大と企業体質の強化を図りつつ、株主に対する利益還元と利益処分の公明性を持たせるため、配当可能利益の範囲において、第78期(2024年6月期)まで以下を基本としております。

 

基本的1株当たり当期利益

40円以下

40円超80円以下

80円超

年間配当金

8円

基本的1株当たり当期利益
×20%

基本的1株当たり当期利益
×25%

 

(注) ただし、通常の営業活動により得たものではない特殊な利益や損失については、上記の考え方から除外して算出する場合があります。

なお、第79期(2025年6月期)以降の配当につきましては、株主還元の一層の充実を念頭に、配当性向を33%へ変更いたしました。親会社所有者に帰属する当期利益を「株主還元」「成長投資」「財務安定化」に三分割してバランスを取っていく方針であります。

 

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会(当社は定款において「取締役会の決議によって、毎年12月31日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対し、中間配当を行うことができる」旨を定款に定めております。)であります。

当事業年度の配当につきましては、基本的1株当たり当期利益が80円を超えたため、上記方針に基づき配当性向が25.0%となる1株当たり61.4円の配当(うち中間配当15円)を実施することを決定いたしました。

内部留保資金につきましては、さらなる事業拡大、成長戦略の実現のために有効投資してまいりたいと考えております。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年2月8日

取締役会決議

256

15.00

2024年9月26日

定時株主総会決議

793

46.40