リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループは2023年4月、新たなグループビジョン「次世代循環型社会をリードするSolution Company」を策定いたしました。これまで掲げてきたCSV経営(Creating Shared Value=共通価値の創造)は継続しながら、気候変動対応をはじめとする社会課題の多様化、先端技術の発展、将来の産業や社会生活の大きな変化に対応するべく、CSV経営と親和性の高いSDGsに同期する2030年を新たなグループビジョンのゴールとしました。
これまで私たちはリース事業を通して、環境に配慮した製品の導入、高度な3R処理による資源循環により循環型社会の実現に向けた取り組みを推進してきました。一方で、2030年以降を見据えた「次世代循環型社会」は、資源効率の向上による環境負荷の低減のみならず、資源を循環利用し続ける世界、そこから発展し、新たな付加価値を生み出し続ける循環型の経済社会となることを想定しています。
この想定する社会において、当社グループはキャピタルソリューションの革新により、モノの循環利用に繋がるサービス、地域経済・社会の好循環に繋がるサービス、企業成長の好循環に繋がるサービスを提供し、環境と成長の好循環を実現すると共に、多様化するお客様と社会の課題解決を通して、「次世代循環型社会」の実現を目指してまいります。
こうした取り組みの中、リスクマネジメント(管理)とリスクコントロール(制御)は事業展開を決定する重要な要素のひとつであると捉え、収益の源泉として管理すべきリスクと収益の源泉とはならない削減すべきリスクに分けて考えております。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。
(1) 新型コロナウイルス感染症に係る事業等のリスク
2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行し、経済活動の正常化に向けた動きは継続しており、新型コロナウイルス感染症に関するリスクについては低減傾向にあると考えています。
一方で、ニューノーマルなど新型コロナウイルスがもたらした社会の変化は今後も継続すると想定され、このような変化に応じた対応が必要になるものと思われます。新しい社会の枠組みが業界や個社ごとにどのような影響を及ぼすかを見極めるなど、事業活動においてこれまでにはない価値判断や基準が必要になるものと想定されます。
なお、経営基盤強化として進めてきた新型コロナウイルス感染症対策により、持続的な企業活動を維持できるICTインフラの整備や社内体制の構築が完了し、今後同様の事態が生じた場合や当社社員が感染した場合においても、当社グループの経営成績に及ぼす影響は限定的であると考えています。
(2) ウクライナ・中東情勢に係るリスク
2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は長期化の様相を呈し、欧米諸国の経済制裁と相俟って世界経済に大きな影響を与えています。原油をはじめとした資源価格の高騰や食料品価格の高騰を引き起こすと共に、当該地域ビジネスの信用不安が高まっています。また、2023年10月に勃発したイスラエルとパレスチナの紛争も混迷の度を深めており、国際情勢に大きな影響を与えています。
このような状況において、当社事業に影響を及ぼす可能性のあるものとして、与信コストの増加、資金調達コストの増加、為替変動幅の拡大などが懸念されますが、当社においては、当該地域ビジネスの債権は有しておらず、与信コストの増加についての直接的なリスクは限定的であると考えています。一方で資金調達コストの増加、為替変動幅の拡大については引き続き注視してまいります。
(3) 気候変動に係るリスク
地球規模の気候変動に係るリスクが、中長期的な将来のものではなく、今そこにある危機として認識されるようになってきました。昨今の異常気象がもたらすビジネス上の損失は、個別企業によっては事業継続上無視できないレベルに達しており、日々の経営判断においても気候変動に係るリスクを意識することが必要になってきたと認識しております。
こうした状況を踏まえ、当社はTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures :気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同すると共に、その枠組みに準拠したPDCA体制を構築し、気候変動に係るリスクへの対応を開始しております。
(4) 信用リスク
当社グループでは、リース事業やファイナンス事業等の与信を伴う各種事業を営んでおります。新規取引時は、顧客の信用状況のほか、リース取引についてはリース物件の将来中古価値等も勘案し、海外取引についてはカントリーリスクも含めて、厳格に審査を行っております。また、取引開始後は定期的に顧客の業況をチェックし、財務状況や市場動向の変化を把握できるように管理をするとともに、信用リスクの程度に応じて、担保・物件処分等による回収見込額及び貸倒実績率等を勘案した貸倒引当金の計上を行っております。
さらに、既存顧客ごとの信用状況や業界毎の市場動向を定期的に検証し、特定の企業や業種に与信残高が集中しないように、ポートフォリオ管理を行っております。
しかしながら、リース事業やファイナンス事業は回収期間が中長期にわたることから、景気変動やその他の事由により延滞・倒産等不測の事態を蒙り、貸倒損失又は貸倒引当金繰入の負担が増加して当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性はありますが、その場合においてもリース物件や担保資産の売却等で債権保全・回収の極大化に努めております。
(5) 流動性リスク
当社グループは金融情勢の変動に対して柔軟に対処していくため、特定の資金調達先や調達方法に依存しないよう留意しております。直接調達においては、社債、コマーシャル・ペーパーの発行等調達方法の多様化を図りつつ安定調達に注力し、間接調達においては、主要金融機関との良好な関係を維持しつつ幅広く多くの金融機関と取引を行っております。
直接調達については格付機関より短期債及び長期債の格付けを取得しておりますが、今後の業績の変動等により当社グループの格付けが見直された場合や、市場の混乱等により、市場において資金調達が困難となり、通常よりも著しく不利な金利水準での資金調達を余儀なくされる場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
なお、金融環境の変化に対応した財務戦略を実施した結果、当連結会計年度末の現金及び預金は538億44百万円となりました。また、複数の金融機関との間で締結しているコミットメントライン等契約の当連結会計年度末時点における未使用総額は3,220億18百万円となっております。
(6) 金利変動リスク
一般的にリース会社は、リース事業やファイナンス事業等の成約に伴い、対象物件の購入資金や貸付資金のため、必要資金の多くを金融機関等から調達しております。このため、当社においても長・短借入金等を中心とする有利子負債比率が高くなっております。2024年3月の日銀金融政策決定会合においてマイナス金利の解除及びイールドカーブコントロール政策の撤廃が決定され、以降、長短金利は上昇傾向にあります。市場金利が急激に上昇した場合は、調達コストの増加につながり、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性がありますが、営業資産・負債の総合管理(ALM)を実施することにより金利変動リスクの低減に努めております。
(7) 為替変動リスク
当社グループでは、外貨建の案件を一部取り扱っており、為替相場の急激な変動により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性がありますが、基本方針である外貨建営業資産とバランスさせた外貨建調達を実行することで為替変動リスクの低減に努めております。
(8) 残価変動リスク
当社グループでは、中古価値が見込めるリース物件を対象にリース満了時の残存価値(以下、「残価」という。)を設定したオペレーティング・リースを展開しております。この取引では、リース満了時に返還された物件を、当初設定した残価を上回る価格で売却することにより利益を得る可能性を有する半面、売却価格が残価を下回る場合には損失が発生するリスクを有しております。
そのため予想を上回る市場環境の変化や技術革新等によって、当該物件の処分価格が残価を下回った場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性がありますが、定期的なモニタリングの実施とリスク量の計測を行うと共に、物件の種類や満了時期を分散させることで残価変動リスクの低減に努めております。
(9) 株価及び有価証券価格変動リスク
当社グループでは、上場・非上場の株式及び債券を保有しております。これらの資産の価格は変動するものであり、その価値は将来著しく下落する可能性があります。価格が著しく下落した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性がありますが、これらの変動リスクの対処としては、当社グループが許容する範囲内に当該リスク量を収めるべくリスク管理を行っており、当社グループのリスクの管理低減に努めております。
(10) 不動産価格変動リスク
当社グループでは、販売用不動産を保有しております。販売用不動産は、不動産時価が下落した場合、評価損が発生し、また売却時に売却損が発生する可能性があります。不動産担保ローンや建物リース、また不動産からのキャッシュ・フローを返済原資とするノンリコースローンにおいては、取引の対象となる不動産の価値が目減りし、当該取引の債権の与信が悪化する可能性があります。不動産価格の変動が当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性がありますが、当社グループでは、不動産関連与信の集中状況を確認しながら取引審査を厳格に行うと共に、その後の与信管理にも万全を期し、担保として設定されている不動産の再評価に注力し、健全な債権内容の維持に努めております。
(11) 海外投資のリスク
当社グループでは、海外の企業に対する投融資を行なっております。これら投資先の経営状況の悪化、株式・債券市場の市況の悪化及び海外投資における国・地域固有の政治・経済・社会情勢の変動によるカントリーリスクの顕在化等による事業環境の変化が、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクの対処として、海外営業取引に関するカントリーリスクの管理制度を定めており、特定の国へのリスクへの集中や過大なリスクの管理低減に努めております。
(12) NECグループとの関係
当社グループは、日本電気株式会社(以下「NEC」といい、当連結会計年度末現在、当社株式のうち37.65%を直接保有する大株主)の持分法適用関連会社としてNECグループに属しており、当社グループにおけるNEC製品・サービスの取扱比率の高さから、NECの業績動向が当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
一方で当社グループは、NECグループ国内唯一の金融サービス会社として、官公庁や大企業、中小企業等の幅広い顧客層に対して、リース事業を中心とした各種ファイナンスサービスを提供することを主たる事業としております。「NECとの戦略的な連携」「幅広い金融ソリューション」「ICTに関する豊富な知見」をグループの「コアバリュー」と位置付けており、従来のリース・ファイナンス事業を強化拡大すると共に、様々な商材を組み合わせるアレンジ力の活用や社内外とのシナジー創出による顧客課題の解決提案など、「コアバリュー」の3つの強みを活かした当社ならではの「サービス」の確立に取り組んでおります。
(13) 設備投資の動向及びリース業界における競合
当社グループが基軸として事業展開しているリース事業は、顧客が設備投資を行う際の資金調達手段の一つとなっております。従いまして、経済環境の急激な変化や顧客の経営状況の悪化等で設備投資需要が大幅に減少した場合、当社のリース事業の取扱高が減少し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、リース業界では依然として多くのリース業を営む会社が存在しており、金融緩和による料率競争も激しく、厳しい競合状態にあります。こうした市場環境の下で、当社グループは中長期的な経営戦略に基づき、メーカー系リース会社としての特色を生かしつつ収益体質を一層強化し競合に対処する方針であります。
(14) 自然災害によるリスク
当社グループは、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性がある地震及び台風等の自然災害や感染症の流行等に対し、費用対効果を検討の上、事業活動への影響を最小化するための対策を実施しております。
(15) 制度変更リスク
当社グループは、現行の法律・税務・会計等の制度や基準に基づき、リース取引等の各種事業を行っております。現行の制度や基準が将来大幅に変更された場合には、商品・サービスのメリット喪失や、規制対応へのコスト増加等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクに対し、当社は既存の顧客基盤を深耕すると共に新規顧客の開拓を行いながら、顧客の経営資源に関わるさまざまな課題に対して解決策を提供することで、収益性向上とリスクの低減に取り組んでまいります。
(16) 重要情報漏えいリスク
当社グループは、業務に関連して多数の機密情報や個人情報を保有しており、機密情報の漏えいが生じた場合には、罰則・損害賠償による損失、業務停止処分、信用の低下及び風評の悪化等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクへの対処として、当社グループでは情報セキュリティ教育やアクセス制御等の情報セキュリティ管理体制の整備を通じ、人的・物理的・技術的対策を講じております。
(17) システムリスク
当社グループでは、様々な情報システムを使用し業務を行っております。従業員の不適正な事務・事故・不正等、自然災害及びシステム障害等により情報漏えいや業務が中断するリスク等が想定されます。
情報システムに重大な障害が発生した場合には、営業関係業務を中心に支障をきたすとともに当社グループへの信頼が損なわれ、当社グループの業績等に影響が及ぶ可能性がありますが、こうしたリスクへの対処として、これまでに情報システム機器のコンピュータ専用ビルへの移転、高速専用回線用バックアップ回線装備、外部不正アクセス防止強化及びシステム障害に即座に対応するための専門要員配置等を行っており、今後とも一層の情報システム管理の整備・強化に努めてまいります。
(18) 人材の育成・確保に関するリスク
当社グループの事業を展開する上で必要な人材を育成または雇用できない場合や雇用している人材が退職した場合等、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしては、事業展開上必要なノウハウの承継や新たな事業への取り組みの鍵は従業員であり、従業員の能力こそが会社にとっての大きな財産であると考え、採用活動の強化や計画的な教育・研修活動の強化に努めております。
(19) 内部統制の構築等に係るリスク
当社グループにおいて、財務報告にかかる内部統制が有効に機能しなかった場合、或いは想定外の問題が発生した場合等の要因により、当社の内部統制部門または当社の会計監査人が当社の財務報告にかかる内部統制について重大な欠陥を指摘し、財務報告にかかる内部統制が有効でないと報告する可能性があります。
このような事態が発生した場合、当社の財務報告に関する投資家の信頼低下等に基づく、当社株価の下落等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性がありますが、当社グループでは、財務報告にかかる内部統制を構築し内部統制の有効性の確保と評価に努めております。
(20) コンプライアンスリスク
当社グループは、業務を行うに際して、会社法、貸金業法、金融商品取引法、宅地建物取引業法、個人情報保護法及び独占禁止法等の法令等の適用及び規制当局の監督を受けております。また、海外においては現地の法令等の適用や規制当局の監督を受けております。
これらについて違反が生じた場合には、罰則・契約解除・損害賠償による損失や、業務停止処分、登録・届出資格抹消、信用の低下、風評の悪化等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、「NECキャピタルソリューショングループ行動規範」を定め、コンプライアンス教育や内部通報制度を通じて、法令等のみならず広く社会ルールの遵守徹底に努めております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、「会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によって行うことができる。」こと、また「剰余金の配当としての期末配当は毎年3月31日、中間配当は毎年9月30日の株主名簿に記録された株主または登録株式質権者に対し、これを行うことができる。」旨を定款に定めております。
配当は安定配当の維持を基本方針とし、事業の見通し、配当性向などを勘案して決定します。
当事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき1株当たり年間130円の配当(うち中間配当65円)を実施することに決定しました。
内部留保資金につきましては、今後の当社成長戦略に資することで企業価値向上を第一の目的として有効に活用してまいります。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。