2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    1,284名(単体) 1,366名(連結)
  • 平均年齢
    40.1歳(単体)
  • 平均勤続年数
    16.9年(単体)
  • 平均年収
    6,606,000円(単体)

従業員の状況

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社における従業員数

2024年3月31日現在

セグメントの名称

銀行業

リース業

クレジットカード業・信用保証業

その他

合計

 従業員数(人)

1,284

〔430〕

14

〔1〕

28

〔3〕

40

〔-〕

1,366

〔434〕

 

(注) 1 従業員数は、嘱託及び臨時従業員628人を含んでおりません。

2 従業員数は、執行役員9人を含んでおりません。

3 臨時従業員数は、〔 〕内に年間の平均人員を外書きで記載しております。

 

(2) 当行の従業員数

2024年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

1,284

40.1

16.9

6,606

〔430〕

 

(注) 1 従業員数は、嘱託及び臨時従業員605人を含んでおりません。

2 従業員数は、執行役員9人を含んでおりません。

3 当行の従業員はすべて銀行業のセグメントに属しております。

4 臨時従業員数は、〔 〕内に年間の平均人員を外書きで記載しております。

5 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

6 当行の従業員組合は、岩手銀行労働組合と称し、組合員数は869人であります。労使間においては特記すべき事項はありません。

 

(3) 当行の管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

当事業年度

管理職に占める

女性労働者の割合(%)

(注1、注3)

男性労働者の

育児休業取得率(%)

(注2、注4)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注1、注5)

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

8.6

108.7

43.8

58.5

55.4

 

(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号、以下「女性活躍推進法」という)の規定に基づき算出したものであります。

2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号、以下「育児・介護休業法」という)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号、以下「育児・介護休業法施行規則」という)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3 連結子会社の当事業年度における管理職に占める女性労働者の割合について、連結子会社が「女性活躍推進法」の規定による公表を行わないことから記載を省略しております。

4 連結子会社の当事業年度における男性労働者の育児休業取得率について、連結子会社が「女性活躍推進法」の規定による労働者の男女別の育児休業取得率の公表を行わないこと、「育児・介護休業法」の規定による労働者の育児休業の取得の状況の公表を行わないことから記載を省略しております。

5 連結子会社の当事業年度における労働者の男女の賃金の差異について、連結子会社が「女性活躍推進法」の規定による公表を行わないことから記載を省略しております。

 

① 管理職に占める女性労働者の割合

管理職数(人)

うち女性(人)

女性割合(%)

441

38

8.6

 

(注) 1 管理職数は、女性活躍推進法における「管理職」の定義に従い、次長級以上の役職にあたる行員を記載しております。

2 管理職数は、2024年3月31日現在の在籍者とし休職者は含めておりません。

 

② 役席者に占める女性労働者の割合

役席者数(人)

うち女性(人)

女性割合(%)

673

108

16.0

 

(注) 1 役席者数は、役職を有する行員を記載しております。

2 役席者数は、2024年3月31日現在の在籍者とし休職者は含めておりません。

 

③ 男性労働者の育児休業取得率

配偶者が出産した男性労働者数(人)

育児休業等を取得した男性労働者数(人)

育児休業取得率(%)

23

25

108.7

 

(注) 1 育児休業等を取得した男性労働者数には、産後パートナー休暇(子の出生後8週間以内における28日間を限度とした有給の休暇制度)取得者を含めております。

 

④ 労働者の男女の賃金の差異

 

男性平均賃金(円)

女性平均賃金(円)

差異(%)

正規雇用労働者

7,757,322

4,536,141

58.5

パート・有期労働者

2,596,686

1,438,696

55.4

全労働者

7,202,534

3,158,150

43.8

 

(注) 1 正規雇用労働者は、行員、無期の嘱託(フルタイム労働者)としております。

2 パート・有期労働者は、有期の嘱託(フルタイム労働者)、パートタイマー(無期・有期)としております。

3 平均賃金は、退職金及び通勤手当を含めておりません。

4 正規雇用労働者の男女別賃金差異が生じている要因

平均賃金の高い役職者割合の差異が要因となっており、具体的には当年度の支給対象延べ人数における支店長及び役職者クラスの割合は、男性69.3%((3,010人+4,225人)/10,444人)に対して女性22.0%((96人+1,233人)/6,045人)となっております。

・役職者クラス(支店長クラス除き)及び一般クラス(世帯形成層)の差異が84~85%程度となっておりますが、その要因は「世帯主であること」が支給要件のひとつとなっております家族手当の支給対象が結果として男性に多くなっている点にあります。なお、家族手当支給対象外である支店長および支給対象者が少数である一般クラス(独身層)の差異は95%以上と大きな差異はございません

 

※<参考>正規雇用労働者におけるクラス別の月額平均賃金

 

男性

女性

差異(%)

(②/①)

備考

 

延べ人数(人)

①平均賃金(円)

延べ人数(人)

②平均賃金(円)

支店長クラス

3,010

625,702

96

595,080

95.1

家族手当支給

対象外

役職者クラス

(支店長クラス除き)

4,225

474,572

1,233

407,227

85.8

家族手当支給

対象

一般クラス

(世帯形成層)

2,079

307,882

3,245

260,415

84.6

家族手当支給

対象

一般クラス

(独身層)

1,130

249,081

1,471

236,691

95.0

家族手当支給

少数

合計

10,444

460,549

6,045

289,902

62.9

 

 

5 パート・有期労働者の男女別賃金差異が生じている要因

パート・有期労働者の約60%が女性のパートタイマー(60歳以上のシニアパート除き)となっており、配偶者の扶養の範囲内(月平均9万円程度)で就労していることが要因となっております。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当行グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。

(1)サステナビリティ方針

当行グループでは、「地域社会の発展に貢献する」の経営理念のもと、社会や環境に配慮した企業活動の展開により、持続可能な地域社会の実現に取り組んでまいりました。

2023年4月に掲げた向こう10年の長期ビジョン「お客さまの課題解決と地域社会の持続的成長を牽引する価値共創カンパニー」においては、サステナビリティ方針に則り、特有の地域資源の強みとさらなる可能性を引き出し、新たな価値を生み出していくことで、サステナブルな地域社会の実現を目指しております。

当行グループは、長期ビジョンの達成に向け、引き続き地域のリーディングカンパニーとして内外のサステナビリティを巡る諸課題に積極的かつ組織的に取り組むとともに、「ESG(環境・社会・企業統治)経営」と「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)経営」の実践を通じた企業価値の向上に取り組んでまいります。

サステナビリティ方針

岩手銀行グループ(以下、当行グループという)は、持続的な地域社会の実現に向けて、地域、お客さま、株主・投資家のみなさま、当行グループ職員をはじめとするすべてのステークホルダーの権利や立場を尊重しながら、事業活動を通じてみなさまとともに環境、社会、経済のそれぞれの共通価値を創造してまいります。

1.地域やお取引先における多様な課題の解決に資する事業活動を通じて、「地域経済の発展」と「当行グループの企業価値の向上」の好循環を創出します。

2.お客さまや地域のニーズに合った良質な金融機能の開発、提供に努め、当行グループの使命である地域経済の活性化や豊かな暮らしの実現を目指します。

3.豊かな自然環境を有する岩手県を主たる営業地盤とする企業グループとして環境に配慮した経営を実践し、経済成長と環境保全の両立を目指します。

4.経営の透明性の向上や監督機能の強化など、より高い水準のコーポレート・ガバナンス体制の確立を目指し、全ての職員が高い倫理観をもって職務を遂行します。

5.人材はあらゆる価値の源泉であるとの認識のもと、職員一人ひとりの能力を最大限に発揮できる環境を整え、多様性、人格、個性を尊重する働き方を実現します。

6.経営情報の積極的かつ公正な開示に努め、あらゆるステークホルダーとの継続的かつ建設的な対話を通じて、当行グループに対する期待と信頼に応えていきます。

 

 

<サステナビリティに関連する当行のこれまでの主な指針・表明事項>

制定・表明時期

内  容

2013年7月

CSRの基本方針

(コンセプトワード「みどりの銀行のイーハトーヴ宣言」を制定)

2017年1月

岩手銀行イクボス宣言

2019年9月

いわぎんグループSDGs宣言

2021年8月

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同

2021年8月

いわぎん健康経営宣言

2022年4月

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進

2023年3月

サステナビリティ方針

2023年4月

人事ポリシー

2023年6月

パートナーシップ構築宣言

2024年3月

マルチステークホルダー方針

 

 

 

(2)マテリアリティ(重点分野)

長期ビジョンを実現していくにあたり、当行グループのサステナビリティ方針を踏まえ、成長分野と経営基盤という観点から5つのマテリアリティを特定しております。特定したマテリアリティは、中期経営計画に落し込み、基本方針および重点戦略として設定しています。

今後は重点戦略の進捗状況を管理し、PDCAサイクルを実践のうえ、ESG&SX経営を推進してまいります。


 

(3)2023年度の主な取組み等

① 「地方創生に資する金融機関等の特徴的な取組事例」としての表彰

「地域の脱炭素社会の実現に向けた面的支援の取組み」について、内閣府特命担当大臣(地方創生担当)より表彰を受けました。

自治体の保有施設を対象に温室効果ガス(GHG)排出量の「見える化」から、課題の認識や解決に向けたサービスの導入・運用に至るまでのプロセスを本部直轄で一元管理したことや、域内企業による地産地消型のカーボンオフセット実現に向け、地域全体を「面」と捉え、地方公共団体のJ-クレジット・J-ブルークレジット®の販売仲介業務の受託やカーボンクレジットの創出・販売支援を行うなど、脱炭素に資する総合的な取組みを展開したことが評価されました。

 

  ② 「東北地方における森林産業の現状と今後の方向性」報告書の発行

株式会社秋田銀行、株式会社日本政策投資銀行、株式会社日本経済研究所と共同し「東北地方における森林産業の現状と今後の方向性」と題した調査レポートを発行しました。

国内外で森林・林業を取り巻く環境が変化する中、豊富な森林資源を持ち、木材加工業の集積が見られる東北地方でも、林業の活性化や持続可能な森林管理が重要な課題となっています。そこで、日本有数の森林資源を有し林業が盛んな岩手県・秋田県の2県を対象として現状と課題を分析し、当地域が有する非常に高いポテンシャルを活かすための成長戦略、および近年注目される制度(J-クレジット制度、森林経営管理制度)を踏まえた持続性向上への方策を検討・提言しました。

 

③ 「生物多様性のための30by30アライアンス」への参加

2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させるというゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全することを目標として、環境省が主導する「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しました。

 

④  岩手県の「食とエネルギーの総合産地化」プロジェクトの共同推進

東日本電信電話株式会社およびAIスタートアップの株式会社JDSCと共同で、ICT・IoTを活用したスマート農業システムとAI・データサイエンスを活用した岩手県の一次産業およびエネルギーの流通と循環を実現することを目的として、「食とエネルギーの総合産地化プロジェクト」を開始しました。

具体的には、飼料用米の稲作農地近隣または耕作放棄地等に太陽光発電パネルを設置し、営農とエネルギー生産を両立させたうえで、収穫米を県内の畜産、水産施設で飼料として使用する等を検討しています。畜産、水産施設にも太陽光発電パネルを設置し、クリーンエネルギーの創出と農作物の循環を通じ、輸送コストおよびCO排出量の削減および自給率の向上を目指します。

 

⑤ 子会社の再生可能エネルギー関連事業への参入

当行100%子会社であるmanordaいわて株式会社を運営主体として、発電・供給業務を含む再生可能エネルギー関連事業に参入しました。

地域の脱炭素化を取り巻く課題に対して、再生可能エネルギー分野に対するコンサルティング業務にさらに積極的に取り組むことに加え、発電・供給にかかる主体的役割を当行グループが担うことにより、地域の再エネや関連するコスト等の地域内循環や脱炭素化を垂範していくとともに、関連ビジネスの創出や資金需要の掘り起こしなど地域経済の活性化に寄与してまいります。

 

このほか、岩手県内の女性起業家を支援するため経済産業省が運営する「わたしの起業応援団」への入会、環境省の「デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)」への賛同、フードロス削減への取組みとして当行本店の食堂で規格外野菜を使用したメニュー提供の開始など、サステナビリティへの取組みを推進しております。

 

(4)ガバナンス

① サステナビリティ推進委員会の設置

当行は、気候変動がお客さまや当行に及ぼすリスクおよび機会を分析・評価し、地域社会のカーボンニュートラルを実現するため、2021年8月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しました。2022年8月には、TCFD提言への対応を促進するとともに、ESG経営に関する基本方針や施策を協議・進捗管理することにより持続的な地域社会の実現に資することを目的に、「サステナビリティ推進委員会」(以下、委員会)を設置しています。

委員会は頭取を委員長、取締役専務執行役員を副委員長、その他の常勤取締役や本部各部室長、グループ会社代表者を委員として構成しています。また、施策の企画・立案・研究を行う機関として、本部職員、営業店職員、グループ会社職員で構成する分科会を設置しており、随時開催する分科会において策定した具体的な推進施策等を委員会に対して提言しています。

委員会は原則として年2回開催しており、委員会での協議の内容、進捗状況およびその他必要な事項については取締役会に対し適時・適切に報告していますが、報告を受けた取締役会ではその内容について意見交換のうえ、適宜委員会に対して指示・提言・助言などを行っています。取締役会からの指示等を委員会や分科会の活動はもとより経営全般に反映させていくことで、サステナビリティ全般への取組みの質の向上に努めています。


 

② サステナビリティに係る委員会・取締役会等開催状況(2023年4月~2024年3月)

日 付

会 議

主な協議事項・報告事項等

8月2日

第3回委員会

サステナビリティに関する考え方・取組みの開示内容、GHG排出量算定結果、日本銀行が行う気候変動対応を支援するための資金供給オペレーションに関する事項、SDGs債への投資に際しての投資表明の実施

10月25日

第4回委員会

スコープ1、2のネットゼロ実現に向けての具体策、物理的リスク・移行リスクのシナリオ分析、気候変動対応オペにかかる対象投融資に関する基準および適合性の判断のための具体的な手続きの開示、サステナビリティ・リンク・ローンの創設、人的資本の開示における課題と今後の方向性

11月13日

取締役会

GHG排出量ネットゼロ実現に向けての具体策、物理的リスク・移行のシナリオ分析、日本銀行が行う気候変動対応オペレーションに関する事項、人的資本の開示における今後の方向性

1月24日

第5回委員会

当行グループのGHG排出量削減に向けた具体的対応、気候変動シナリオに基づく財務影響の計測、人材育成方針、社内環境整備方針

分科会

集合形式の分科会を延べ25回開催しています。

随時、電子会議室を用いて書面等での連携も図っています。

 

 

(5)環境課題・社会課題関連

① 戦略

a.リスクと機会

リスクの種類

事業へのインパクト

機  会

移行リスク

・炭素税などの対価の発生・増加

・設備投資や新しい技術への対応

・消費行動の変化

・政策や規制、技術、市場、評判の観点から、当行および企業の財務面に影響を及ぼす短期的、中長期的なリスク

・環境課題や社会課題の解決ならびに持続可能な社会の実現に資する融資等のファイナンス

・気候変動に関する課題の解決に向けたコンサルティングやソリューションの提供

・当行グループのGHG排出量削減を含む脱炭素社会実現に向けた先導的・革新的対応

物理的リスク

・洪水、強風、熱波、雪害など極端な事象の発生頻度の高まり

・平均気温の上昇や海水面の上昇

・不動産担保物件の毀損や事業の停止に伴い当行および企業の財務面への影響を及ぼす急性・慢性の物理的なリスク

 

 

b.特定セクターに対する融資方針

サステナビリティ方針やGHGに関連する指標等の算定を踏まえ、環境・社会に対して負の影響を助長する可能性の高い特定セクターへの融資を制限することについて、次のとおり明確化しています。

特定セクターに対する融資方針

1.石炭火力発電事業

石炭火力発電所の新設案件への融資は、原則としていたしません。

ただし、エネルギー安定供給に必要不可欠で温室効果ガスの削減を実現する案件(※)については、慎重に対応を検討します。

※超々臨界圧などの環境へ配慮した技術を有する案件

2.パーム油農園等開発事業

パーム油農園等の開発事業において、違法な森林伐採や生物多様性を毀損する案件への融資はいたしません。

3.非人道兵器製造関連事業

クラスター弾等の非人道兵器の開発・製造に関与する事業者に対しては、資金使途を問わず融資いたしません。

4.人権侵害に関与する事業

人身売買、児童労働または強制労働に関与する事業者に対しては、資金使途を問わず融資いたしません。

 

 

② リスク管理

a.移行リスク

当行は、一般的に直接的または間接的なGHG排出量が比較的高いとされる炭素関連資産のセクターに限定されることなく、あらゆるセクターにおいて脱炭素社会への移行に関するリスクがあることを認識しています。

例えば、GHG排出量の削減がなされずに炭素税などの対価が発生・増加していくこと、脱炭素化に向けた設備投資や新しい技術が必要となること、消費者がこれまで以上に環境や社会への影響を重視するようになり従来の商品やサービスが利用されなくなることなど、政策や規制、技術、市場、評判の観点から、当行および企業の財務面に影響を及ぼす短期的、中長期的なリスクがあると考えています。

こうしたなか、当行における与信の状況を踏まえ、脱炭素化の影響が最も大きいと考えられるエネルギーセクターを対象としてリスク量を算定しています。なお、算定にあたっては、「2050年IEA(国際エネルギー機関)ネットゼロシナリオ(NZE)1.5℃」を使用しています。

今回の分析の結果、移行リスクによる与信コストの増加は累計16億円を見込んでいます。

b.物理的リスク

当行は、地球温暖化に伴い、洪水、強風、熱波、雪害など極端な事象の発生頻度の高まり、平均気温の上昇や海水面の上昇など、急性・慢性の物理的なリスクがあることを認識していますが、こうしたリスクが顕在化することにより、不動産担保物件の毀損や事業の停止に伴う当行および企業の財務面への影響が懸念されます。

そこで、岩手県内所在の担保取得建物が毀損するケースおよび岩手県内の法人が事業の停止を余儀なくされるケース、当行が保有する店舗への被害を想定し、百年に一度の洪水が今後25年以内に発生するIPCC4℃シナリオにて、リスク量を算定しています。

今回の分析の結果、物理的リスクによる与信コスト等の増加は最大16億円を見込んでいます。

c.対応

当行は、再生可能エネルギー(太陽光・風力・バイオマス・水力が対象、地熱は除く)および火力発電向けのプロジェクトファイナンスについて総与信額や個別案件の取組基準を設定しています。また、「石炭火力発電所の新設案件への融資は行わない。ただし、エネルギー安定供給に必要不可欠で温室効果ガスの削減を実現する超々臨界圧などの環境へ配慮した技術を有する案件については、慎重に対応を検討する」との方針を定めていますが、取組基準や方針の運用状況等について、資金の運用、調達両面にわたる基本方針等を協議することにより収益の向上とリスク管理に資すること等を目的に設置しているALM委員会で協議しています。

今後、炭素関連資産、GHG排出量(特にスコープ3カテゴリー15「投融資」)、移行リスク、物理的リスクの状況を踏まえ、サステナビリティ推進委員会やALM委員会における協議テーマに設定するなどして、気候関連リスクを統合的に管理する予定としています。

 

③ GHGに関連する指標等の算定

a.炭素関連資産

炭素関連資産は、一般的に直接的または間接的なGHG排出量が比較的高い資産または組織とされており、当行では次のセクターに関連する資産を炭素関連資産としています。

〈金額単位:百万円)

セクター

項  目

2022年度

2023年度

 エネルギー

金  額

57,655 

59,393 

貸出金に占める割合

2.85%

2.82%

 運輸

金  額

62,327 

60,895 

貸出金に占める割合

3.08%

2.90%

素材・建築物・資本財

金  額

277,099 

289,957 

貸出金に占める割合

13.73%

13.81%

農業・食料・林産物

金  額

67,382 

68,551 

貸出金に占める割合

3.33%

3.26%

炭素関連資産合計

464,465 

478,797 

貸出金に占める割合

23.01%

22.80%

 

 
<炭素関連資産の算定プロセス>

●  セクターと主な業種

取引先ごとに主たる業種に基づき設定している業種コードおよび業種の名称について、GICS(世界産業分類基準)も参考にして「エネルギー」、「運輸」、「素材・建築物・資本財」、「農業・食料・林産物」、「その他」の5つのセクターに当てはめてから、「その他」を除くセクターごとに複数の主な業種に分類しています。

主な業種について、エネルギーセクターは「石油、ガス」「石炭」「電力事業」、運輸セクターは「航空貨物輸送」「航空旅客輸送」「海運」「鉄道輸送」「トラックサービス」「自動車、部品」、素材・建築物・資本財セクターは「金属、鉱業」「化学品」「建材」「資本財(建物等)」「不動産管理、開発」、農業・食料・林産物セクターは「飲料」「農業」「包装食品、肉」「紙、林産物」としています。

なお、石油卸売業、運輸に附帯するサービス業、産業用機械器具関連事業は炭素関連資産に含めており、再生可能エネルギー関連、上下・工業用水道事業、内陸水運業は炭素関連資産に含めていません

●  金額

各年度末時点で主たる業種が上記のセクター・主な業種に該当する法人および個人事業主向けの事業性貸出金(割引手形、手形貸付、証書貸付、当座貸越)の残高としています。

 

b.GHG排出量

当行は、サステナビリティ推進委員会における温室効果ガス対策分科会と、GHG排出量算定・可視化クラウドサービスを提供する株式会社ゼロボードとの協働により、GHG排出量の算定対象範囲、算定方法等についてGHGプロトコルに則り検討を重ねてきましたが、今回算定・推定したGHG排出量は次のとおりです。なお、温室効果ガスはすべてCO(二酸化炭素)に換算しています。

ア.スコープ1、2(連結子会社を含む、単位:t-CO

区  分

2022年度

2023年度

スコープ1

1,113

1,051

スコープ2

3,547

1,774

合 計

4,660

2,825

 

<スコープ1、2の算定プロセス>

スコープ1は直接排出(ガソリン、灯油、重油、ガス)、スコープ2は間接排出(電気)であり、それぞれの使用量に対して最も適切と考えられる排出原単位を乗じて算定しています。

排出原単位は、環境省が公表している「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」ならびに「電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)」を利用しています。

 

イ.スコープ3(カテゴリー3は連結子会社を含む、それ以外は当行単体、単位:t-CO

カテゴリー

2022年度

2023年度

1.購入した製品・サービス

7,909

8,261

2.資本財

1,502

1,829

3.スコープ1、2に含まれない燃料およびエネルギー活動

710

683

4.輸送、配送(上流)

218

248

5.事業から出る廃棄物

43

30

6.出張

135

167

7.雇用者の通勤

535

557

15.投融資

1,504,455

1,310,629

合 計

1,515,511

1,322,406

 

 

<スコープ3の算定対象範囲、基礎データ、算定方法>

●  カテゴリー2、3、7、15以外の基本的事項

当行で利用している経費管理システムから得られるデータについて、勘定科目と摘要コードの組み合わせをもって、経費支出項目(以下、支出項目)と算定要否を判定したうえで、カテゴリーごとに算定しています。

●  カテゴリー3、15以外の排出原単位

環境省が公開している「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」を利用しています。また、排出原単位については、各支出項目に照らして最も適切と考えられるものを選定しています。

● 消費税の取り扱い

消費税は控除せずに算定しています。

● カテゴリー1「購入した製品・サービス」

当行の経費管理システムにおいて管理されている支出項目のうち、何らかの形でGHG排出を伴う活動かつ他のカテゴリーに属さないと考えられるものを抽出し、その支出金額に排出原単位を乗じています。

●  カテゴリー2「資本財」

各年度において取得した有形固定資産・無形固定資産の金額に、資本形成部門「金融・保険」の排出原単位を乗じています。

●  カテゴリー3「スコープ1、2に含まれない燃料およびエネルギー活動」

ガソリン、ガス、灯油、重油の使用量に対して、「LCIデータベースIDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)」の排出原単位を乗じています。なお、電気の使用量に対しては、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」の排出原単位を乗じています。

●  カテゴリー4「輸送、配送(上流)」

支出項目のうち、通信費(郵便料)、運送費(メール負担金)に排出原単位を乗じています。

●  カテゴリー5「事業から出る廃棄物」

支出項目のうち、廃棄物の収集料・処理料に対し廃棄物処理に係る排出原単位を乗じています。

● カテゴリー6「出張」

出張、研修、会議出席等に係る支出項目(日当を含む)に対して、公共交通機関の利用を優先していることや排出原単位の交通区分および実態面を考慮し、旅客鉄道の排出原単位を乗じています。

●  カテゴリー7「雇用者の通勤」

人事給与情報システムにて管理されている「通勤手当」「嘱託等通勤費」「その他の通勤費」の金額に基づき算定しています。公共交通機関の利用を優先していますが、2022年度に距離範囲の拡大を含む自家用車通勤の要件の見直しを行ったこと、排出原単位の交通区分および実態面を考慮し、支出項目(通勤手当額)に対して自動車・バス(営業用乗合)の排出原単位を乗じています。

 

 

 

●  カテゴリー8「リース資産(上流)」、カテゴリー9「輸送、配送(下流)」、カテゴリー10「販売した製品の加工」、カテゴリー11「販売した製品の使用」、カテゴリー13「リース資産(下流)」、カテゴリー14「フランチャイズ」

該当ございません。

●  カテゴリー12「販売した製品の廃棄」

使用済預金通帳の廃棄などが考えられますが、算定シナリオを組成していないため算定していません。

●  カテゴリー15「投融資」

今回は、事業法人向け融資ならびに住宅ローンを対象に、PCAF(※)スタンダードの方法論に準拠して算定しています。

 ※「Partnership for Carbon Accounting Financials」金融機関の投融資ポートフォリオにおけるGHG排出量を計測・開示する方法を開発する国際的なイニシアティブ

具体的には次の手順のとおりです。

<事業法人向け融資>

炭素関連資産に関連付け、そのセクターや主な業種ごとに、当行に融資取引がある代表的な事業法人が開示している売上高とそれに対するGHG排出量(スコープ1、2)の割合を算出し、その割合を排出係数(炭素強度)として各事業法人の直近決算時点の売上高に乗じる方法を基本に各事業法人における総排出量を推定しています。そして、その推定結果をアトリビューション・ファクター(各事業法人の負債と純資産の合計に占める当行融資残高)に乗じて算定しています。

事業法人ごとの排出量=炭素関連資産に基づくセクターや主な業種ごとの排出係数(炭素強度)×事業法人ごとの売上高×アトリビューション・ファクター(事業法人ごとの当行融資の寄与度)

したがって、データクオリティはスコア4(企業の売上高とセクターの売上高あたりの排出係数より推計)相当となっています。

<住宅ローン>

住宅ローン1件ごとに、各年度末時点の残高を分子、当行の住宅ローン関連システムから得られる購入時評価額を分母として当行寄与分を算出し、その結果に対して世帯当たりの年間CO排出量を乗じて算定しています。

なお、購入時評価額を管理の対象としていない住宅ローンなど、住宅ローン関連システムから購入時評価額が抽出されないものについては、それを当初貸出額で代替しています。

また、世帯当たりの年間CO排出量は、環境省が公表している「令和4年度 家庭部門のCO排出実態統計調査結果について(確報値)」(東北地方、算定対象年度末において把握できる直近の排出量、2023年度分については2022年度の3.59t-CO/世帯・年)を引用しています。

過去に公表した2022年度の結果と異なっていますが、2021年度の4.02t-CO/世帯・年を引用して算出していたものを、公表にあわせて2022年度の3.59t-CO/世帯・年を適用し算出し直したためです。

 

 

 

また、カテゴリー15「投融資」の詳細は次のとおりです。(単位:t-CO

セクター

主な業種

2022年度

2023年度

エネルギー

・石油、ガス

・石炭

・電力事業

15,421 

780

378,274

14,818

719

342,489

小計

394,476

358,027

運輸

・航空貨物輸送

・航空旅客輸送

・海運

・鉄道輸送

・トラックサービス

・自動車、部品

18,447

1,420

3,617

10,267

8,596

18,326

1,568

4,420

11,770

7,447

小計

42,349

43,533

素材・建築物・資本財

・金属、鉱業

・化学品

・建材

・資本財(建物等)

・不動産管理、開発

200,557

21,735

54,239

39,526

4,399

228,098

22,882

35,881

7,616

5,099

小計

320,457

299,579

農業・食料・林産物

・飲料

・農業

・包装食品、肉

・紙、林産物

3,369

13,086

46,230

86,053

2,738

16,216

43,160

75,935

小計

148,740

138,051

その他の事業法人向け融資

525,607

397,322

住宅ローン

72,824

74,113

合計

1,504,455

1,310,629

 

 

今後は、GHG排出量の大部分を占めるスコープ3カテゴリー15におけるデータクオリティ(スコア)とともに、その他のカテゴリーについても精度・粒度の向上を図っていく予定としています。

<ご留意いただきたい事項>

上述の指標やリスク量の算定結果は、一定の仮定や前提を置いて導き出したものです。また、独立した第三者による保証・検証を取得しているものではありません。

今後、算定や分析対象セクターの範囲の拡大、精度や粒度の向上、リスクシナリオ分析の高度化、適用する排出係数・排出原単位の変更、算定方法に係る国際的な基準の明確化に対する議論の動向等により、当行で把握・公表する数値についても将来的に変更となる可能性があります。

 

 

④ 指標と目標

a.当行グループのGHG排出量の削減

当行グループが地域の脱炭素社会の実現に向けて先導的役割を果たす姿勢を示すため、GHG排出量の削減について次のとおり目標を定めています。

時 期

内   容

2030年度

スコープ1、2 ネットゼロ

2050年度

スコープ1~3 ネットゼロ

 

2023年度においては、再生可能エネルギー由来の電力である「いわて復興パワー水力プレミアム」を当行グループに導入することで、スコープ1、2において基準年(2013年度)対比で▲63%まで削減が図られました。

 

<GHG排出量の推移>


引き続き、豊かな森林・海洋資源の保全や、地域の再生可能エネルギー由来電源開発、CO貯留などへの取組み・関与を通じて、GHG排出量の削減に貢献し、将来的に社会全体のGHG排出量が吸収量を下回る状態「カーボンネガティブ」の実現を目指していきます。

さらに、当行はスコープ3を含むGHG排出量ネットゼロやカーボンネガティブを目指すにあたり、自治体との脱炭素社会の実現に向けた基本合意の推進等、面的企業支援および関係者間の連携強化に向けて積極的に取り組むとともに、事業性理解や本業支援、エンゲージメントを通じて、いわぎんSDGs評価・宣言サポートサービス、GHG排出量算定・可視化サービス、J-クレジット、自家消費型太陽光発電など、取引先の気候変動に関する課題の解決に向けたコンサルティングやソリューションを幅広く提供していきます。

b.サステナブルファイナンス

脱炭素社会への移行にあたって必要となり得る設備投資、技術革新、消費行動の変化については、事業活動における機会にもつながるものであると考えます。

当行では、前述のとおり特定セクターに対する融資を制限する一方で、脱炭素社会実現に向けた先導的・革新的対応をマテリアリティの一つとし、グリーントランスフォーメーションを掲げていることや、地域金融機関にはSDGsやESGに対する地域の取組みを促す役割が期待されており、融資等のファイナンスを通じて環境・社会課題の解決に貢献していくため、ファイナンスの実行目標を設定し積極的に推進しています。

項 目

内   容

サステナブル

ファイナンス

環境課題や社会課題の解決ならびに持続可能な社会の実現に資する投融資・リース取引

目標額

実行等累計額 5,000億円

期間

2021年度~2030年度

 

 

2023年度は、グリーン・ローンへの取組みのほか、環境・社会課題に対応した「いわぎんサステナビリティ・リンク・ローン」の創設、脱炭素関連リフォーム資金の金利優遇など、お客さまのサステナブルな事業や生活を支援するメニューの充実を図りました。

この結果、2023年度のサステナブルファイナンスの実績は775億円(うち再生可能エネルギー関連の融資・リース取引85億円)となり、2021年度からの累計実績は1,740億円となりました。

<サステナブルファイナンスの補足>

●  サステナブルファイナンスは、農林漁業、社会保険・社会福祉、医療・保健衛生、教育・学習支援業ならびに再生可能エネルギー関連に対する融資とリース取引、事業承継・M&A資金、政府・自治体・民間企業などが発行するSDGs債(グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンド)への投資、いわぎん脱炭素応援ローン等としています。

● 期間は、当行がTCFD提言に賛同した2021年度からSDGs達成期限の2030年度までの10年間としています。

 

 

 

(6)人的資本

① 人事ポリシー

当行では、当行における人と組織に対する基本的な考え方として、「人事ポリシー」を制定しており、「目指す組織像」や「求める人材像」を実現するための人事制度や各種人事施策の根幹と位置づけています。

<人事ポリシー>

・当行にとって「人」こそが最も重要な財産であり、あらゆる価値の源泉です

・お客さまの信頼と期待に応え、地域の未来を切り拓くために、職員一人ひとりと銀行がともに成長し続けます

 

このポリシーに基づき、当行では次の観点から個人としての成長や組織としての成長を促進するとともに、個人と組織の成長を支える環境・風土の醸成に取り組んでいます。

●  自律と挑戦(個人としての成長)

・自ら考え、自ら行動することを求め、挑戦の機会を提供します

・能力や専門性の向上と発揮を求め、その環境を提供します

●  人材総活躍(組織としての成長)

・対話の重視によりエンゲージメントを高め、一人ひとりの実力を最大限引き出します

・仕事の成果と行動、挑戦と創意の発揮に対し適正に報います

●  多様な個性・価値観の尊重(成長を支える環境・風土)

・多様な個性や価値観を尊重しあい、新たな発想を生み出します

・個人の希望や事情に合わせた、柔軟な働き方を可能とします

 

② 目指す組織像と求める人材像

目指す組織像

求める人材像

・地域・お客さまのために考え、行動する

・一人ひとりの力を掛け合わせる

・職員の頑張りを後押しする

・働きがいがあり、信頼で結びつく

・自ら考え、実践し、成長する

・失敗を恐れずに挑み、やり遂げる

・プロフェッショナルとして成長する

・認め合い、協働する

 

③ 2023年度を始期とする中期経営計画における人的資本に係る基本方針ならびに重点戦略

<人的資本に係る基本方針>

 多様な人材が働きがいを持ち続ける組織づくり

<重点戦略>

・地域課題を解決できる人材の育成

研修プログラムの拡充、グループ内留学制度の実施、マーケティング人材などの育成

・チャレンジ性にあふれた企業風土への変革

社内公募制度の新設、チャレンジを後押しする企業風土変革に向けた管理職育成

・働きがいを持ち続け、安心して活躍できる組織の実現~ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進~

キャリア支援体制の構築、人材育成を主眼とした評価制度の導入、職員のライフプランや価値観などに応じた柔軟な働き方の実現

 

④ 新人事制度の導入(2024年4月)

a.導入の目的

・全職員がプロフェッショナルとして成長し活躍するための土台となる「仕事基準」の仕組みを導入するとともに、より公平で納得性の高い評価や処遇を実現します。

・それにより、職員一人ひとりの意欲と実力を最大限引き出し、当行グループの長期ビジョンである「お客さまの課題解決と地域社会の持続的成長を牽引する価値共創カンパニー」を目指すものです。

 

 

b.新制度の特徴点

・旧人事制度では、全員がマネジメント職を目指す単線型となっていましたが、新人事制度では上位等級について「プロフェッショナル職群」と「マネジメント職群」に複線化し、さらに若年層向けの「アソシエイト職群」を設けています。

・プロフェッショナル職群は、担当業務領域の専門家を目指すものと位置づけ、異動によってマネジメント職群との転換を行います。

・職群と等級ごとに「目指す組織像」と「求める人材像」から定義した「等級定義書」を設けるとともに、等級別に「伸ばす意識や行動」「抑える意識や行動」を例示しました。

 ●マネジメント職(管理監督者)の行動例

伸ばす意識・行動

• メンバーの動きやお客さまの状況に目を配り、物事のプロセスをつかむ

• メンバーが自分で考えて動けるように、気付きを与えていく

• 嫌われることを厭わずメンバーに向き合い、要望する

• 組織の目標計画・方針を認識し、自分の言葉で部下に伝える

• 専門知識・スキルを磨き続け、自分の強みとする

抑える意識・行動

• 自分で手を下すプレイヤーでありつづけようとする

• 部下に対して細かい所まで全て指示・命令を出す

• 自分の経験や前例に固執する

• 上司や年上のメンバーに遠慮・過剰配慮し、意見具申をしない

• 日々の業務を回す事だけに関心が向き、部下に向き合わない

 

 

 

⑤ 人材育成方針および社内環境整備方針

当行創立100周年に向けての長期ビジョンを実現するために、前記した人事ポリシーを踏まえながら「人材育成」と「社内環境整備」に取り組んでいます。また、両方針に対する「機会」と「リスク」は次のとおりです。

機会

リスク

・多様な考え方や発想を持つ人材の活躍推進による新たな価値の創造

・積極的な人材育成投資による生産性の向上

・能力発揮機会の提供による働きがいの向上

・従業員の健康保持増進による生産性の維持向上

・企業競争力の低下、組織における柔軟性の喪失

 

・採用競争力の低下、人材の流出

・エンゲージメントの低下

・労働意欲の低下、職場離脱

 

a.人材育成

 価値共創カンパニーを目指すうえで「人」こそが最も重要な財産であるとの認識のもと、従業員の価値観と職場の多様性を重視しながら、地域課題を解決できるプロフェッショナル人材の育成と個人の成長を促す投資を積極的に行います。

〔指標〕

・年間の人材育成投資額:100百万円(2023年度実績 80百万円)

 

 

ア.経験成長サイクルの促進

2024年度からスタートした新人事制度では、個々の業務経験を学びに変えて、次の業務に生かし成長につなげるという「経験成長サイクルの促進」を人材育成の根幹に据え、このサイクルをまわすために必要となる施策を実施する予定です。また、その実現に向けた中心的な取組みとして2024年度より「1on1ミーティング」を導入しています。


イ.プロフェッショナル人材育成の取組実績

当行ではコンサル人材、高度専門人材などの戦略的人材を計画的に育成すべく、専門機関等への長期トレーニー派遣に加え、若手行員を主体として中小企業診断士等の公的資格の取得を支援する「いわぎんエキスパートパス(IEP)」の制度を設けており、地域課題を解決できるプロフェッショナル人材の育成と個人の成長を促す人材投資を行っております。

また、人的資本を効果的・効率的に活用することを通じて、組織が目指す目的の実現に貢献するためには、組織とメンバーをつなぐ「管理職」は、事業成果を出しつつ高い従業員エンゲージメント状態を創出するための非常に重要な役割であると考えております。そのため、チャレンジを後押しする企業風土変革に向けた管理職育成に向けた人材投資を行っております。

 

2021年度

2022年度

2023年度

中小企業診断士資格取得者数

3名

4名

7名

年間人材育成投資額

55百万円

61百万円

80百万円

管理職研修受講者数

 349

 

b.社内環境整備

チャレンジ性にあふれた企業風土を組織全体に浸透させ、全ての従業員が誇りと働きがいを持ち続け、自由闊達に意見を述べ、安心して活躍できる組織づくりに取り組みます。

〔指標〕

・役席者の新規登用女性割合30%以上(2023年度実績 31.1%)

・健康診断等の結果を踏まえた再検査受診率90%以上(2023年度実績 94.7%)

・習慣的な運動実施率20%以上(2023年度実績 20.2%)

 

 

 

⑥ D&Iの推進

当行では、多様な価値観を受け入れ柔軟な発想を創出することや、行員の経営参画意識と生産性の向上により企業価値を高めることなどを目的としてD&Iに取り組んできていますが、2022年度より「目指す姿」ならびに「指標と目標」を次のとおり設定し、取組みのさらなる充実に向けて推進しています。

1.目指す姿

  行員一人ひとりが安心して成長と活躍ができる組織づくり

2.推進キーワード

(1)対話機会の創出

(2)キャリア開発の支援

(3)人材の積極的登用

3.2030年度までに向けた指標と目標

(1)女性行員の役席者登用

   役席者の新規登用女性割合   30%以上

※2025年度以降は40%以上としています

(2)男性行員の育児休業等取得

   男性行員の育児休業等取得率  100%以上

 

⑦ いわぎん健康経営宣言

2021年8月、「健康経営」への取組みの基本方針として、「いわぎん健康経営宣言」を制定しています。内容は次のとおりです。

1.「いわぎん健康経営宣言」

岩手銀行は「従業員の心身の健康」が「地域社会の発展に対する貢献」と「当行の持続的な成長」に不可欠であるとの考えに立ち、「健康経営」を推進してまいります。

また、健康経営の推進のため、従業員一人ひとりの健康意識の向上と働きやすい環境や体制整備に取り組んでまいります。

2.主な取組み

(1)からだ

  ・定期健康診断の完全実施

  ・各種検診、再検査等の受診率向上

  ・禁煙の推進による喫煙率減少と敷地内全面禁煙の継続

  ・運動習慣の定着支援および情報提供

(2)こころ

  ・ストレスチェックの継続実施によるメンタルヘルス不調の予防

  ・ストレスチェック結果を活用した職場巡回の強化

  ・メンタルヘルス不調者の職場復帰支援(組織的体制の構築)

  ・職場内コミュニケーションの促進による働きやすい職場環境の整備

 

⑧ 岩手銀行イクボス宣言

2017年1月、育児や介護へのさらなる理解、ワーク・ライフ・バランスの充実、多様な人材の活躍をとおした地域貢献について積極的に取り組んでいくため、そして全ての役職員が仕事と生活の両立ならびに充実を促す「イクボス」の理念を実現させていくために「岩手銀行イクボス宣言」を次のとおり策定し宣言しています。

一、 私たちは、「イクボス」の精神に則り、育児や介護と仕事を両立しやすい環境づくりに努めます。

一、 私たちは、共に働く職員のワーク・ライフ・バランスを尊重し、自らもその充実に向けて率先して取り組みます。

一、 私たちは、男女ともに多様な人材の活躍をとおして、地域社会の発展に貢献します。

(ご参考)イクボスについて

 職場で共に働く部下・スタッフのワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、仕事でも結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことをいいます。

 

⑨ 働き方改革(休暇・休職制度など)への取組み

導入・新設時期

内 容

備 考

2020年4月

フレックスタイム制度の新設

 

2021年4月

時間単位年休の導入

 

就業時における服装の多様化導入

同時に女子行員事務服を廃止

2022年10月

産後パートナー休暇の新設

出生後8週間以内における28日間を限度とした休暇制度

あんしん積立休暇制度の新設

時効消滅する年休積立制度の使用目的を拡大

ライフデザイン休職制度の新設

キャリア形成、家族の介護等のイベント発生時における休職選択制度

テレワーク制度の新設

新型コロナウイルス感染症対策として運用していた仕組みを制度化

2024年4月

エリア選択制度の新設

育児・介護など所定の事由に該当する場合には一時的に転居転勤の有無を選択可能

単身赴任手当の新設

転居を伴う異動となり単身により赴任する場合の経済的負担を緩和

 

⑩ エンゲージメントサーベイの実施

人事ポリシーで掲げる「職員一人ひとりと銀行がともに成長し続ける」姿を実現するためには、「エンゲージメント」(職員の仕事に関連するポジティブで充実した心理状態、企業に対する共感度合)の向上により、一人ひとりが実力を最大限発揮することが必要不可欠となります。

当行の現状を可視化することで様々な課題を洗い出し、エンゲージメントの向上に向けて必要な施策を実施していくため、2024年2月に非正規を含めた全職員を対象に実施しました。

⑪ 資産形成支援(ファイナンシャル・ウェルネス)

当行の従業員持株会を活性化し、従業員の安定的な財産形成を促進するとともに、従業員のエンゲージメントを高め、経営参画意識の向上と業績向上へのインセンティブを付与することにより、当行の中長期的な企業価値の向上を図ることを目的として、2023年度に「従業員持株会信託型ESOP」を導入しております。

⑫ 賃上げへの取組み

当行における最も重要な経営資本は「人」であるとの認識のもと、昨今の物価上昇により多大な影響を受けている従業員の生活を守るとともに、従業員が働きがいを持ち、安心して活躍できる環境を整えること、および優秀な人材確保を目的として、2024年7月1日付で定例給与対比約4%のベースアップ(初任給の引き上げを含む)を行う旨を労働組合に対し回答しております。なお、ベースアップと初任給の引き上げは2023年4月に引き続き2年連続となります。