2024年2月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社が判断したものであります。また、以下の記載は、当社の事業等のリスクをすべて網羅することを意図したものではないことにご留意ください。

なお、以下に記載したリスクのうち、新たな成長領域への事業拡大に関する法令違反や情報漏洩、お客様が損失を被るような事故等により、レピュテーションが低下するリスクは全ての項目において常に内在しています。当社は「コンプライアンスの徹底」を何よりも優先すべく、経営トップが強い意志を持って、グループ全体のリスクマネジメント体制の強化、内部統制システムの充実、取締役会の機能強化に取り組んでまいります。

 

(1)外部環境に起因するリスク

  主に、主業である百貨店業の外部環境を想定しております。

①社会構造の変化による国内人口の減少と地方都市空洞化

<リスクと機会> ・・・影響度=大

リスク

*少子高齢化、地方都市空洞化に伴うマーケットの縮小

*労働人口の減少に伴う必要人材の確保難

機 会

*リスキルによる人材有効活用の促進

 

<対応策>

抗えないこれらの外部環境変化に対応するため、百貨店においてはお客様の興味・関心に即した売場の再編、エシカルな消費行動に対応した独自商品の販売を強化し、魅力ある品揃えの実現に努めてまいります。また多様化するニーズに対応した販売の仕組みづくりや、単なる商品販売に止まらず、金融サービスや介護サービスなどライフタイムバリュー(LTV)全般の向上に寄与する商品提供による来店動機・機会の向上に努めてまいります。更に、実店舗に頼らないECの訴求力向上、百貨店のないエリアへの通販カタログ配布などを通じて商圏の拡大およびお客様との接点の拡大を図ります。

また、街のアンカーとしての機能強化につながる拠点開発や異業種・外部企業とのアライアンスによって非商業分野も取り込んだ新たなコンテンツ開拓、各拠点における複合的な機能・サービス・空間としての魅力訴求による来店頻度の向上も積極的に推進してまいります。

一方、労働人口減少への対策としては、新卒にこだわらない採用活動、専門人材の登用、外国人労働者の受け入れを積極的に推進するほか、品揃え強化に向けたバイイング能力の向上、リスキルなど社内の人材育成にも努めてまいります。

 

②自然災害(地震・台風・洪水等)、戦争・テロ等

<リスクと機会> ・・・影響度=大

リスク

*店舗など営業用資産の損壊によるビジネス機会の逸失

*交通機関や通信網の破綻によるビジネス機会の逸失

*金融市場の混乱による資金調達への悪影響

機 会

*地域の安心・安全に向けた取り組みへの貢献

 

<対応策>

当社は関西・関東隔たりなく拠点を展開しており、大規模かつ広域にわたる甚大な災害が起きた場合でも、関西・関東のいずれかに危機管理対策本部を速やかに設置し、情報連携および指示命令系統を損なわない体制を整えております。また被災店舗への救援体制の整備、重要データ消失を防ぐクラウド化の推進、事業を最低限継続できる各種インフラや備品の整備など、BCP対策の徹底を図っております。

主要都市に拠点を持つ企業として求められる社会的使命を果たす観点から、大規模災害時に帰宅困難者を受け入れるスペースを店舗施設内に予め確保するほか、生活関連物資を中心とした店頭商品の拠出ができるよう、あらかじめ仕入先と取り決めておくなど、直ちに被災者救援活動を行う体制を整えております。

また、戦争・テロ等に関しましては、世界的規模で各種市場が混乱し、適正な価格形成が果たせず、予期せぬ損失が発生する可能性があります。金融市場に及んだ場合には、当社が通常求める条件での資金調達ができないリスクが考えられます。現時点で必要な資金は確保しておりますが、将来におけるリスクシナリオを想定し、多様な資金調達手段により十分な手元流動性を確保してまいります。

 

 

 

 

 

③新たなパンデミックの発生

<リスクと機会> ・・・影響度=特に大

リスク

*店舗の休業・営業時間の短縮によるビジネス機会の逸失

*消費マインドの低下および来店頻度の減少

機 会

*新たな社会環境や消費行動に対応した事業展開

*アセットの多角化、経営資源の有効活用によるグループ事業の成長

 

<対応策>

コロナ禍の経験と反省を踏まえ、このようなパンデミック影響の極小化に向けて事業ポートフォリオを見直し、経営の更なる安定化を図ります。百貨店の事業基盤を一層強化すると共に、商業開発業、金融業などの成長領域事業の積極拡大を進めてまいります。

また、リアル店舗の魅力向上と合わせて、ECなどの無店舗販売チャネルの強化拡大、デジタル技術を活用したリモート接客システムの導入など非接触型販売の仕組みを積極的に導入してまいります。

 

(2)グループ経営におけるリスク

 

①事業活動における人権問題の発生

<リスクと機会> ・・・影響度=特に大

リスク

*接客時や媒体表現における差別的対応(国籍・ジェンダー等)によるレピュ

 テーション低下

*プライバシー保護に関する不備によるレピュテーション低下

*サプライチェーン上における人権問題(不当労働、差別等)に起因するレピ

 ュテーション低下、不買運動などによる損失の発生

機 会

*人権を尊重する経営の実践によるステークホルダーからの信頼獲得と髙島屋

 ファンの増大

 

<対応策>

当社は、1831年の創業以来、商いの行動規範である「店是(てんぜ)」において、「顧客の待遇を平等にし、いやしくも貧富貴賤(ひんぷきせん)に依りて差等を附すべからず」を掲げるなど、人権を尊重する創業の精神を受け継いできました。

この「店是」の精神を起点に、人権の尊重を従業員一人ひとりに浸透、徹底させてまいります。

人権を尊重する経営については社長を委員長とする「髙島屋グループCSR委員会」においてグループ横断的な進捗確認と対応を推進していきます。

また、取引先やビジネスパートナーに対しても、当社の人権尊重に対する考えや姿勢を理解・支持して頂き、事業活動を通じた社会課題に向け、協働して取り組んでいくことを積極的に働きかけていきます。

サプライチェーン上の人権リスクの防止・是正に向けては、国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく人権デューデリジェンスの仕組みを構築してまいります。

 

②ESG経営への取り組みの遅れ

<リスクと機会> ・・・影響度=特に大

リスク

*ステークホルダーからの信用喪失

*グループ収益の根幹となるブランド価値の毀損

*法令違反によるレピュテーションの低下、営業損失

機 会

*当社の社会的評価、存在意義の確立

 

<対応策>

当社のESG戦略においては、環境・社会・ガバナンスそれぞれの面において、ステークホルダーに対して当社ならではの価値を提供することで共感を獲得し、社会課題解決と事業成長を両立しつつ、最終的には全ての人々が21世紀の豊かさを実感できる社会の実現を目指しております。

ESG経営を確実に推進していくために、グループの視点での方針管理、進捗管理を充実するための「グループ環境・社会貢献部会」を設置し、より一体的でかつ実効性が発揮できる体制を整えております。

そのうえで、環境面の主な取り組み内容としては、省エネ対策や再生エネルギー転換などによる脱炭素化推進、「環境負荷軽減とデザイン性・機能性」を両立する商品開発や、多様性を尊重する(インクルーシブ化)商品提案や施設・サービスなど、当社ならではの価値提供を通じて、新たな文化を創造し、次代のトレンドをけん引する主体的な役割を当社が果たしていきます。

社会面におきましては、人権尊重に基づく雇用関係確立、国籍や人種・宗教、LGBTQ+などに係わらない平等な賃金、教育機会、福利厚生の提供など、多様な価値観を受け入れる基本指針の策定と、その浸透に向けた意識の醸成を推進してまいります。

ガバナンス面では、取締役会が果たすべき責務・役割が発揮できているか、機能発揮のための適切な体制整備や取締役会運営ができているかという視点で、年1回、全取締役・監査役対象のアンケートと、その結果に基づく社外取締役・監査役への個別ヒアリングを通して取締役会の実効性評価を行っております。更に、評価結果から得られた改善点に対しては速やかに次年度取締役会に反映するなどPDCAサイクルを徹底し、取締役会の実効性向上に努めてまいります。

また当社では社長を委員長とする「髙島屋グループCSR委員会」を設置し、コンプライアンス経営の徹底に加えて内部統制の状況や新しい社会課題に対するCSR領域への取り組み状況等をグループ横断的に検証し強化する体制を整えております。また、不正行為等の通報を匿名でも受け付ける窓口「髙島屋グループ・コンプライアンス・ホットライン」「ハラスメント・ホットライン」「就労相談窓口」「法務相談窓口」を設置し、通報者に不利益が及ばないことを確保しつつより多くの内部通報を受け付けて自浄作用を高める仕組みを整えております。国内、海外問わず事業拡大に応じて増えつつある子会社・孫会社などグループ全体に行きわたるモニタリングと三線ディフェンスの一層強化に努めてまいります。

 

③デジタルトランスフォーメーションへの対応の遅れ

<リスクと機会> ・・・影響度=大

リスク

*新たなニーズの掘り起こしと新たな顧客層開拓への支障

*グループコスト構造への悪影響

*情報漏洩事故

*ITシステム維持コストの増大

機 会

*着実なデジタルトランスフォーメーションの推進による事業効率の向上

*新たな情報発信手法による顧客ターゲットへの確実な訴求

 

<対応策>

デジタルトランスフォーメーションの着実な推進と効果の最大化に向け、グループ従業員および各組織のITリテラシーの向上を図ってまいります。そのうえで、デジタル技術を活用したオンライン予約システムやリモート接客などお客様の新しいニーズへの対応策を展開してまいります。コスト構造改革の観点からはデジタル技術を活用した販売手続き・業務手続きの簡素化を進めて業務の効率化と要員の最適化を図ってまいります。情報セキュリティーの観点からは、セキュリティーポリシーを随時見直し、それに基づく厳格なシステム運用を行っていきます。また、経営計画と連動し、IT関連の長期投資計画、予算の適正化に努めてITシステム維持コストの抑制に努めてまいります。

 

④成長事業に関するリスク

a.EC事業拡大戦略の遅れ

<リスクと機会> ・・・影響度=大

リスク

*実店舗依存型ビジネスモデルからの脱却の遅れ

*物流費などをはじめとする高コスト構造改善の遅れ

機 会

*新しい生活様式、消費行動に順応した事業展開

 

<対応策>

ECの売上高と強固な収益基盤の確立を早期に達成するため、単なる営業施策としての取り組みではなく、社長直轄の推進プロジェクトを構築、全社・グループ横断的な検討を強力に推進してまいります。このプロジェクトを通じて、EC専業の事業者にはできない、百貨店ならではの魅力ある商品・独自商品の訴求とサービスの提供、実店舗とオンラインの垣根をなくして相乗効果を図るOMO(Online Merges with Offline)による他社との差別化を図ります。

2024年4月の労働基準法改正(自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制)に伴う物流コストの上昇も見据え、EC出荷倉庫を準備し、配送スキームの効率化とコスト削減により収益基盤の確立に努めてまいります。

 

b.金融業拡大戦略の遅れ

<リスクと機会> ・・・影響度=大

リスク

*グループ事業拡大の遅れ

機 会

*新たな顧客層の開拓

 

<対応策>

金融業がグループ全体の盤石な顧客基盤形成に寄与するよう、百貨店売場や外商との連携をより一層緊密化した新たなサービスの開発、コンサルティングの強化、商品メニューの充実により、継続的に顧客満足度の向上に取り組んでまいります。

また、金融事業拡大を加速するため、資産運用事業会社とのアライアンスを通じた投資・アセットマネジメント事業への参入も進めてまいります。

c.海外事業の展開におけるリスク

<リスクと機会> ・・・影響度=大

リスク

*突発的な政治・経済情勢の変化や為替変動に伴う資産価値の変動と
投資回収の遅れ

*現地採用従業員の文化・宗教等の違いからくるガバナンス破綻

機 会

*カントリーリスクを踏まえた展開による盤石な事業基盤の確立と

 海外における事業拡大

 

<対応策>

当社においては、経営における迅速な判断・軌道修正を可能とするため、現地法人を設立して当該法人にイニシアチブを持たせています。その上で、グループ本社とはリモート会議等によるタイムリーな情報共有や、自主点検シートを活用した経営状況のチェックなど、三線ディフェンスの強化によるグローバルガバナンスの徹底を図ってまいります。また、現地従業員との人権尊重に基づく雇用関係確立、国籍や人種・宗教・LGBTQ+などに係わらない平等な賃金・教育機会・福利厚生を提供してまいります。そのうえで、現地従業員の幹部登用も視野に入れた能力開発を積極的に進め、同じ当社の一員としての共通目標、意識の共有を図ってまいります。

 

⑤サプライチェーンの破綻

<リスクと機会> ・・・影響度=大

リスク

*取引先の倒産や事業終了による百貨店の商品調達への支障、品揃えの

 魅力度低下

*テナントの賃料支払能力低下による賃貸収入の減少

*売場レイアウト破綻による売場空間の魅力低下

機 会

*取引先との強固な関係構築による品揃えの魅力度向上と安定的な利益確保

サプライチェーン上における人権問題(不当労働、差別等)に起因するレピュテーション低下、不買運動などによる損失の発生リスクに関しては「(2)-①事業活動における人権問題の発生」において記載しております。

 

<対応策>

当社は、生産・製造・流通過程における一連の取引において、法令順守はもとより、幅広い視点でCSRに基づいた取引を推進し、共存共栄を図るための「髙島屋 取引指針」を策定し運用を続けております。

これまでの指針は、商品の仕入取引先を対象としたものでしたが、2024年1月、様々な取引関係を有するお取引先とのパートナーシップのもと事業活動を推進していくために「髙島屋グループ 取引指針」として改訂を行いました。

新しい「髙島屋グループ 取引指針」は、「人権の尊重」の視点を新たに加え、法令順守、持続可能なサプライチェーンの構築などを事業活動において重視すべき項目に掲げています。この指針に則り、主要なお取引先と目標を共有し協働でそれを達成するための具体策推進、新たなお取引先開拓による品揃えの鮮度維持向上、川上企業との直接取引拡大による商品調達力の向上を図ってまいります。

国内商業開発業・海外商業開発業においては、専門店テナントとの共同販促活動を一層強化推進するほか、経営状態が厳しいテナントに対しては、敷金からの一時的な家賃への充当、当面の家賃支払猶予など資金支援を行い、共存共栄を原則とした取り組みに努めてまいります。

配当政策

3【配当政策】

 当社では、安定的な配当水準を維持することを基本スタンスとしながら、業績や経営環境を総合的に勘案し、株主の皆様への利益還元を図ってまいります。

 当社は、「取締役会の決議によって、毎年8月31日を基準日として中間配当をすることができる。」旨を定款に定めております。

 当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。

 当期の剰余金の配当につきましては、継続的な安定配当の基本方針のもと、1株当たり37円(うち中間配当金17円)としております。

 内部留保資金につきましては、各店舗の改装など営業力の拡充及び財務体質の強化のための原資として活用させていただく所存であります。

(注) 当期を基準日とする剰余金の配当の取締役会又は株主総会の決議年月日は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年10月13日

2,681

17.00

取締役会決議

2024年5月21日

3,154

20.00

定時株主総会決議