2024年2月期有価証券報告書より
  • 社員数
    3,826名(単体) 6,733名(連結)
  • 平均年齢
    49.1歳(単体)
  • 平均勤続年数
    25.4年(単体)
  • 平均年収
    7,385,000円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2024年2月29日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

百貨店業

5,229

(6,400)

商業開発業

427

(84)

金融業

295

(174)

建装業

268

(87)

報告セグメント計

6,219

(6,745)

その他

514

(331)

合計

6,733

(7,076)

(注)1 従業員数は、就業人員であります。

2 「従業員数」欄の(外書)は、臨時従業員の年間平均雇用人員であります。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

2024年2月29日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

3,826

(3,239)

49.1

25.4

7,385

 

セグメントの名称

従業員数(名)

百貨店業

3,771

(3,188)

その他

55

(51)

合計

3,826

(3,239)

(注)1 従業員数は、就業人員であります。

2 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3 「従業員数」欄の(外書)は、臨時従業員の年間平均雇用人員であります。

 

(3)労働組合の状況

 ㈱髙島屋、㈱アール・ティー・コーポレーション、髙島屋ファイナンシャル・パートナーズ㈱、髙島屋スペースクリエイツ㈱、㈱グッドリブ及び㈱髙島屋ファシリティーズの各労働組合は、全髙島屋労働組合連合会を組織しており、UAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)に加盟しております。また、ハノイ レジデンシャル アンド コマーシャル センター ― HRCC.LTD.の労働組合は、DISTRICT 1 Labor Confederationに加盟しております。

 なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。

 

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

会社名

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注2)

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注3、4)

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注5、6)

全労働者

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

㈱髙島屋

34.0

304.0

56.7

59.2

55.0

㈱岡山髙島屋

48.0

71.3

51.2

75.8

㈱岐阜髙島屋

27.8

51.9

51.3

54.2

㈱高崎髙島屋

12.0

150.0

54.2

50.5

78.4

㈱アール・ティー・コーポレーション

14.9

33.3

58.9

83.1

90.3

東神開発㈱

33.3

100.0

68.3

80.3

64.2

髙島屋ファイナンシャル・

パートナーズ㈱

52.0

48.1

64.9

78.7

髙島屋スペースクリエイツ㈱

14.7

100.0

73.9

68.9

62.6

㈱エー・ティ・エー

9.5

76.8

73.6

82.9

㈱センチュリーアンドカンパニー

64.7

81.7

88.5

81.6

(注)1 表のうち、該当者がいない場合は「-」で表記しております。

2 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。

4 当事業年度に出産した従業員数及び配偶者が出産した従業員数に対して、当事業年度に育児休業を取得した従業員数の割合を算出しております。なお、過年度に出産した従業員又は配偶者が出産した従業員が、当事業年度に育児休業を取得することがあるため、取得率が100%を超えることがあります。

5 賃金差異の計算におけるパート・有期雇用労働者には、当該期間中に給与支払いが生じた再雇用社員、契約社員、パートタイマー、アルバイト等を対象に算出しております。

6 賃金は支給総額を支給対象人数で割って算出しており、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)当社のESG経営

 当社のグループ経営理念「いつも、人から。」は、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」社会の実現と強く結び付くものです。2006年には、経営理念をもとにCSR活動領域を策定し、現在もそれに即した経営の推進や情報の開示を行っています。活動領域には、事業活動を通じて得た利益をさまざまな人々に還元する「経済的役割」や「コンプライアンス(法令遵守)」といった基本的な活動に加え、「企業倫理」に基づく行動や新しい価値の創造、社会問題の解決など「社会的役割」の実現といった活動があります。

 

 こうした従来のCSR経営にSDGsの概念を融合し推進しているのが、「グループのESG経営」です。「環境に優しいより豊かな生活・文化の提案」・「多様な価値観への対応、多様な人材の活用」・「お客様視点に立った経営」など、当社ならではの価値提供を通じ、ステークホルダーの皆様からの共感を獲得することで、「すべての人々が21世紀の豊かさを実感できる社会の実現」に貢献していくことを目指しています。

 

 当社は、ESG経営重点課題として、「脱炭素化推進RE100」や「ダイバーシティ推進」をはじめとする10の項目を設定しています。脱炭素化推進では、LED化による電力使用量の削減、再生可能エネルギー由来電力への転換を進めています。また、ダイバーシティ推進では、女性の活躍・ジェンダー平等に向けた取り組みや、外国人の労働者としての受け入れと生活者としての支援など、多様な価値観や能力を尊重し、あらゆる人材がその能力を最大限発揮でき、やりがいを感じられるダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けた環境整備や意識啓発に取り組んでいます。

 

 グループESG経営を推進することで、従来型のビジネスモデルから脱却し、時代や社会の要請に合わせて変革していくことが重要であり、結果として社会課題の解決はもちろんのこと、事業成長の好機にもつながるものと考えます。

 

 当社がグループ総合戦略として位置づける「まちづくり」(以下、まちづくり戦略)も、コミュニティやサステナビリティの観点からESG経営と密接な関係にあります。「街の賑わいを創出し、地域との共生を図る」「商品や環境、サービスを通じて新しい価値を提案・提供する」ことは、さまざまな社会問題の解決に応用・発展させていくことができます。さらに当社は百貨店を中核に国内外で各グループ事業を展開しており、また優良な顧客基盤や店舗の立地、お取引先とのネットワークを有していることから、地球上のさまざまな問題にアプローチできる強みやポテンシャルを持ち合わせています。まちづくり戦略を推進する中で、短期的・中長期的両方の視点で社会課題の解決に取り組むことで、グループのさらなる成長を目指すと共に、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

●グループESG経営概念図

 

 

 

  なお、ESG経営については、「1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」 (3)

  経営環境及び対処すべき課題 □ESG経営の推進」にも記載しています。

 

 

 

① ガバナンス

a.取締役会がサステナビリティ関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる

  頻度、監視対象

 

 当社では、グループESG経営の推進を通じ、社会課題解決と企業価値の向上・持続的成長を図り、お客様や株主・投資家をはじめとしたステークホルダーの皆様からのご期待に応えるため、コーポレート・ガバナンスの強化及び内部統制システムの整備に取り組んでいます。内部統制システムに関わる主な会議としては、社長を委員長とする「髙島屋グループCSR委員会」および「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」を設置しており、サステナビリティに関する重要事項について議論・確認を行い、取締役会に報告を行っております。

 

 「髙島屋グループCSR委員会」は、半期に一度開催し、コンプライアンス経営の徹底に加えて内部統制の状況や、ESG重点課題の進捗状況及び新しい社会課題に対する取り組み状況をグループ横断的に検証し、強化する体制を整えています。議論された内容については取締役会に報告し、取締役会による監督体制のもと、取り組みに対するガバナンスの強化に努めています。

 

 「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」は、必要に応じ都度開催し、主管部門が各部門と連携し、案件ごとにラインを通じて内部統制の強化を図っています。コンプライアンスリスク・自然災害リスク等の予防、極小化に向けグループ横断的に統制を図っています。また、新たなビジネスへのチャレンジ等、事業戦略上発生するリスクに対しては、リターンとのバランスを考慮しながら的確にコントロールし、グループ全体のリスクマネジメント体制の確立に取り組んでおり、協議された内容については、取締役会へ報告を行っています。

 

 さらに、ESG経営を組織内に浸透させ、設定した重点課題に対する取り組みを確実に推進していくため、グループ視点での方針管理、進捗管理を充実させる「グループ環境・社会貢献部会」を四半期毎に開催し、より一体的でかつ実効性が発揮できる体制を整えています。

 

 

b.経営者のサステナビリティ関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス(委員会等)、モニ

  タリング方法

 

 取締役会は、当社の業務執行がグループ全体として適正かつ健全に行われるために、取締役の職務執行状況を適切に監督するとともに、実効性あるグループ全体の内部統制システムの基本方針に基づく運用状況や課題について定期的に確認しています。

 

 社長が委員長を務める「髙島屋グループCSR委員会」は、ESG重点課題の進捗状況を報告し、改善点に対しては速やかに次年度の活動へ反映するなどPDCAサイクルを徹底し、毎年度モニタリングを行っています。その内容については取締役会に報告し、取締役会による監督体制のもと、サステナビリティ課題の取り組みに対するガバナンスの強化に努めています。

 

 また、社長が委員長を務める「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」は、当社の業務執行に伴うさまざまなリスクを抽出し、リスク発生時の損失極小化に向けた対応等、協議された内容については、取締役会へ報告を行っています。

 

●内部統制システム体制図

 

●ESG重点課題 推進体制図

 

② 戦略

 当社は、事業活動を通じ、SDGsの達成に強く寄与できる取り組みを環境・社会2領域に落とし込み、領域ごとに10項目の重点課題(マテリアリティ)を策定し、取り組みを推進しています。

 

 また、ESGの考え方を経営の中心に据え、広範囲かつビジネスに直結する取り組みとするためには、より多くのステークホルダーの支持・共感を獲得することが重要です。当社が、生活・文化・地域社会を支えるプラットフォームとしての役割を一層発揮し、お客様・お取引先・地域社会と共に、チャネル全体でESG経営を推進することで、持続可能でこころ豊かな生活の実現に貢献していきます。

 

 その一環として、2023年度よりお客様・お取引先との共創による当社のサステナブル活動

「TSUNAGU ACTION」を拡大展開。「環境負荷軽減とデザイン性・機能性」を両立する商品開発や、多様性を尊重する(インクルーシブ化)商品提案や施設・サービスなど、当社ならではの価値提供を通じて、サステナブルなライフスタイルを提案しています。また、企業の持続的成長や価値向上に直結する「人的資本」への投資は、社会のサステナビリティと企業の利益創出を両立する上で不可欠な戦略投資です。当社は、専門性や多様な価値観を持つすべての人の価値を最大限引き出し、お取引先からの派遣スタッフを含めた従業員が、主体的に生き生きと成果発揮できる企業を目指し、人的資本経営を推進していきます。

 

●重点課題とアクションプラン

 

 

 

③ リスク管理とリスクに対する取り組み

a.サステナビリティ関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法

 当社は、サステナビリティ課題を含む事業へのリスクについて、社長を委員長とする「髙島屋グループCSR委員会」及び「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」にて、当社の業務執行に関わる様々なリスクを抽出・評価を実施し、リスクの未然防止及びリスク発生時の損失極小化に向けた対応等、協議を行っています。なお、リスク特定・評価に関する議論内容は最終的に取締役会へ報告しています。

 

b.サステナビリティ関連リスクの管理プロセスの詳細、優先順位付けの方法

 サステナビリティ関連のリスクと機会は、当社の事業活動に大きな影響を及ぼすため、「髙島屋グループ環境・社会貢献部会」や「髙島屋グループCSR委員会」において、グループESG経営重点課題で掲げた環境課題に対し、年度計画に基づく取り組み内容や進捗状況を確認し、取締役会へ報告しています。

 「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」で特定したサステナビリティ関連リスクは、「発生頻度・可能性」・「事業への影響度」を評価基準にリスクマップを策定し、その重要性を評価しました。

 当社は、リスク管理体制を含む内部統制システムの整備に取り組み、リスクの予防・極小化に向け、グループ横断的に統制を図るとともに、新たなビジネスへのチャレンジ等、事業戦略上発生するリスクに対しては、リターンとのバランスを考慮しながら的確にコントロールするなど、グループ全体のリスクマネジメント体制の確立に取り組んでいます。

 

c.全社リスク管理への仕組みの統合状況

 サステナビリティ関連リスクは、当社の事業活動に甚大な影響を及ぼす可能性があり、当社は、「髙島屋グループCSR委員会」及び「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」を通じ、リスク発生時の対応やリスク管理体制の強化に努めています。リスクに対する取り組みとして、脱炭素社会の実現に向けた「RE100」や「EV100」の推進、廃棄プラスチックや食品ロスの削減、循環型ビジネスの構築等に取り組むとともに、自然災害の激甚化に伴う営業機会損失を最小限に抑制するため、店舗や施設のレジリエンスを高める設備投資や、サプライチェーン上の人権リスクの未然防止・軽減に向けた人権デューデリジェンスの体制整備等に取り組んでいます。

 

 リスク管理の詳細は、「3事業等のリスク」に記載しています。

気候変動に関するリスク(シナリオ分析に基づくリスク・機会及び財務影響等)については、

(2)サステナビリティに関する個別課題 <気候変動への対応>」に記載しています。

 

 

④ 指標と目標

 ESG重点課題に関するKPIを設定し、取り組みの実践とモニタリングを行っています。

気候変動に関する指標と目標については、「(2)サステナビリティに関する個別課題 <気候変動への対応>」にも記載しています。

 

●重要課題とKPI

 

(2)サステナビリティに関する個別課題

 

 <気候変動への対応>

 当社は、グループ経営理念体系の「5つの指針」のひとつに「地球環境を守るためのたゆまぬ努力」を掲げています。また「髙島屋グループ環境方針」においても、地球温暖化の防止やCO2排出量の削減に重点を置くなど、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

 

 このグループ環境方針は、ESG経営で掲げる環境課題を解決につなげる基本的姿勢でもあります。お客様やお取引先、地域社会など、多くの人々との直接的な接点をもつという事業特性を生かしながら、環境方針に基づくさまざまな活動に取り組んでいます。

 

 しかし一方で、近年は気候変動や資源の枯渇、生物多様性の減少といった環境問題がより深刻化しており、環境問題への取り組みの重要性や緊急性が高まっています。特に中核事業である百貨店事業では、化石燃料などの地下資源による電力の大量消費や、プラスチックや食品ごみの大量廃棄、衣料品の過剰在庫など、現行のビジネスモデルが環境負荷を前提としていることをリスクと捉えています。

 

 そこで当社は、従来型のビジネスモデルから、地球資源を再生・修復するビジネスモデルへと変革し、環境課題解決と事業成長の両立に取り組みます。また、TCFD提言に賛同し、TCFD提言が推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理とリスクに対する取り組み」「指標と目標」の4つの開示項目に基づき情報開示のさらなる拡充を図ってまいります。

 

 

{TCFD提言が推奨する開示項目に沿った情報開示}

 TCFD提言が推奨する4つの開示項目<ガバナンス><戦略><リスク管理><指標と目標>と、項目毎の具体的な開示内容に基づき、当社は、気候関連情報を開示しています。

 

① ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれています。体制図を含む詳細については、「(1)当社のESG経営 ① ガバナンス」に記載しています。

 

 

② 戦略(気候関連シナリオ分析)

a.短期・中期・長期のリスク・機会の詳細

 当社は、将来の気候変動が事業活動に与えるリスクと機会、財務影響を把握するため、従業員選抜型ワークショップを開催し、TCFDが提唱するフレームワークに則り、シナリオ分析の手法を用いて、2050年時点における外部環境変化を予測し、分析を実施しました。気候変動に伴う自然環境の変化や資源の枯渇等は、長期間にわたり当社の事業活動に大きな影響を与えるため、百貨店のみならずグループ事業全体において、従来型のビジネスから、地球資源を再生・修復するビジネスへと変革していくことが必要であると認識しています。当社が目指す将来社会を見据え、環境・社会領域におけるESG重点課題10項目は、2030年時点の達成目標(中長期)や、年度毎の数値目標(ロードマップ)を設定し、PDCAサイクルにて進捗管理を行っています。

 

b.リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度

 TCFDが推奨する気候変動関連リスクを移行リスク・物理的リスクの2つのカテゴリーに分類し、当社の事業活動に甚大な影響を及ぼす可能性がある主要なリスク項目を特定しました。また、「2℃以下シナリオを含む、様々な気候変動関連シナリオに基づく検討」を行うため、当社は、IPCCやIEA等のシナリオを参考に、事業活動や財務に及ぼす影響を分析し、持続可能な成長に向け、その対応策を検討・推進しています。当社のシナリオ分析は、パリ協定の目標である「2℃未満」と、CO2排出量削減が不十分な「4℃」の2つのシナリオを想定し、TCFDが推奨する典型的な気候関連リスクと機会を参考に分析を行いました。

 

 

 

想定シナリオ

 

2℃未満

シナリオ

気候変動対応の厳しい法規制施行による事業運営コストの増加

エネルギーコストや商品価格の高騰に伴う、商品調達リスクの拡大

消費者の環境意識の高まりによる新たなマーケット獲得

4℃

シナリオ

自然災害の多発・激甚化に伴う店舗被災、サプライチェーンの断絶など、営業機会の損失

エネルギー価格の高騰や資源不足に伴う商品調達リスクの拡大

環境負荷を前提としたビジネスモデルから脱却できない企業に対する市場からの淘汰

 

●髙島屋グループのリスク・機会の概要と事業及び財務への影響

リスク・機会

の分類

髙島屋グループ 気候変動関連リスク・機会の概要

事業及び
財務への影響

+2℃未満

+4℃

市場と

技術

* 再生可能エネルギーへの転換に伴う調達コスト増加

* 環境マーケット需要の獲得遅れに伴う競争力低下

大きい

大きくなる

評判

* 環境課題への対応遅れに伴うステークホルダーからの

  信用失墜、ブランド価値の毀損、組織会員離反

非常に

大きい

非常に

大きくなる

政策と

* 炭素税の導入、プラスチック循環促進法への対応など、

  規制強化に伴う事業運営コストの増加

軽微

物理的

リスク

* 大規模自然災害の発生に伴う店舗閉鎖や、サプライ

  チェーン断絶に伴う営業機会損失

エネルギー源

* 省エネ推進に伴う電力使用コスト削減

* 災害に備えた事業活動のレジリエンス確保

市場

* ESG経営の推進によるステークホルダーからの共

  感獲得、企業価値向上

* 高まる環境意識に対応した商品・サービスの提供による

  マーケット獲得

 

c.シナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス

 2030年時点を想定した2つのシナリオにおける事業及び財務への影響に関し、規制強化に伴う炭素税の導入や、再生可能エネルギー由来の電力調達コストが財務に影響を及ぼすものと考え、2℃未満シナリオにおける財務影響を試算しています。

 

●髙島屋グループへの財務影響

2030年時点を想定した財務影響

炭素税導入

約25億円

コスト増

・IEA(※)の2℃未満シナリオにおける2030年の先進国

 国際炭素税価格(約11千円/t-CO2)を基準に、当社

 2019年時点のCO2排出量(約230,516t)より算出

再エネ由来の

電力調達

約16億円

コスト増

・現状の調達電気との料金格差(約4円/KWh)に、当社

 2019年時点の電力使用量(約392,824MWh)より算出

 

IEA(国際エネルギー機関)発行「世界エネルギー展望 World Energy
 Outlook2019」
参照

 

 当社は、気候変動関連リスクに対する事業活動や財務に与える影響などを踏まえ、持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、社会課題解決と事業成長の両立を図る「グループESG経営」を推進しています。その一環として、2019年、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力で調達することを目指す国際的イニシアチブ「RE100」に参加し、「2050年までに事業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギーに転換すること」を目標とし、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しています。また、店舗ごとに設備を省エネ効率の高い機器へと順次更新すると共に、既存照明をLED照明へ変更することにより、使用電力及びCO2の削減に努めており、国内百貨店では2011年~2021年までに約22,500MWhの電力使用量を削減し、約10,000t-CO2のCO2排出量削減を実現しています。2022年度についても約5.2億円のLED化投資により、CO2排出量を△2,500t-CO2削減しました。

 さらに当社は、まちづくり戦略を通じ、「街のアンカーとして役割発揮」「館の魅力最大化」に取り組むとともに、「TSUNAGU ACTION」などを通じ、環境に配慮した商品やサービス、店舗施設の提供など、新しい価値を提案する次世代商業施設づくりを推進し、新たなマーケット獲得に取り組んでいます。グループ経営においても、これまで百貨店に集中していた経営資源をグループ内で有効活用し、既存事業の収益強化と将来の成長に向け事業規模の拡大や新規事業の開発を進めるなど、気候変動関連リスクの抑制に努めると共に、マーケット変化に積極的に対応し、新たなビジネス機会獲得に取り組んで参ります。

 

③ リスク管理とリスクに対する取り組み

 気候変動に関するリスク管理及びリスクに対する取り組みは、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれています。詳細については、「(1)当社のESG経営 ③ リスク管理とリスクに対する取り組み」に記載しています。

 

④ 指標と目標

a.気候関連リスク・機会の管理に用いる指標

 当社は、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3温室効果ガス排出量、及び事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率を指標として定めています。

 

b.温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)

 百貨店事業を中核に位置付ける当社は、環境負荷を前提とした現行のビジネスモデルをリスクと捉え、環境課題の解決に向けて取り組んでいます。2019年、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力で調達することを目指す国際的イニシアチブ「RE100」に参加し、脱炭素化推進に取り組んでいます。当社の2022年度Scope1・2温室効果ガス排出量は、約199.2千t-CO2、国内百貨店におけるScope3温室効果ガス排出量は、約4,264.2千t-CO2排出しています。

 

●温室効果ガス排出量

 

 

範囲

2019

2020

2021

2022

温室効果ガス排出量

CO2

連結

Scope1

(t)

24,953

21,055

20,197

19,910

Scope2

(t)※1

205,563

178,090

183,301

179,377

Scope1・2合計

(t)

230,516

179,145

203,497

199,286

国内

百貨店

Scope3

(t)

3,382,417

2,495,547

2,772,244

4,264,236

フロン類

※2

連結

(海外除く)

t-CO2

1,552

1,609

1,580

967

 ※1 CO2排出量Scope2はマーケット基準で算出しています。

 ※2 店内で使用している冷凍・冷蔵庫のフロン漏えい量を、フロン排出抑制法に基づき、CO2換算した数値

    です。

 

c.気候関連リスク・機会の管理に用いる目標及び実績

 当社は、2019年「RE100」に参加いたしました。「2030年度にScope1・2温室効果ガス排出量30%以上削減」、「2050年度までにScope1・2温室効果ガス排出量ゼロ」を目標として設定し、毎年度の数値目標を設定したロードマップに基づき、脱炭素社会の実現に向け、取り組んでいます。当社は、2019年度Scope1・2温室効果ガス排出量を基準に、中長期の温室効果ガス排出量削減目標とRE達成目標を設定し、脱炭素化を推進しています。

 2020年度より施設電力の再生可能エネルギー由来電力転換を実施して以来、近年は2022年度流山おおたかの森S・C ANNEX2、こもれびテラスなど5施設に再生可能エネルギー由来の電力を導入、2023年度は横浜店の電力使用量の一部にコーポレートPPAによる再生可能エネルギー由来電力を導入するなど、再エネ転換を推進しています。

 

Scope1・2

単位

2019年度

2025年度

2030年度

2050年度

温室効果ガス排出量

t-CO2

230,516

208,961

161,361

0

削減量(19年度比)

△21,555

△69,155

△230,516

温室効果ガス削減目標

△9.4%

△30%以上

△100%

RE達成率

0%

8.6%

30%以上

100%

 

 

<人的資本・多様性>

 百貨店を中核事業とする当社において、企業の競争優位性の源泉や、価値向上の大きな推進力となる「ヒト」や「ノウハウ」など、無形資産である「人的資本」への投資は、企業成長や価値向上に直結する重要な戦略投資であり、社会のサステナビリティと企業の利益創出を両立する上でも必須となります。

 時代の変化がますます加速していく中、百貨店の営業力強化やグループ会社の業界競争力獲得・事業領域拡大を果たしていくためには、確立された事業ノウハウと変化対応力の両方をあわせ持つことが必要であり、これを実現する上では人的資本への投資による専門性の育成・多様性の確保が不可欠です。

 当社においては、創業200周年である2031年に向けてあるべき姿として策定した「グランドデザイン」の中でも「企業と個人が共感し成長していくことで、働きたい・働き続けたいと思える企業文化・風土を実現」を目標の1つに掲げています。

 具体的には、経営理念やビジョンの共有、従業員の労働条件向上や各種制度の拡充に加え、人材育成やキャリアサポートの拡充、従業員エンゲージメントの可視化・向上、ダイバーシティやワークライフバランスの推進など、人材の価値や意欲を引き出し、企業価値向上につなげる「人的資本経営」を推進しています。

 また、お取引先従業員も当社にとって重要な存在であることから、当社従業員だけでなく、お取引先従業員からの声も収集し、当社で働きたい・働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。具体的には、各店舗や施設で働く従業員が利用する社員食堂の魅力化、後方施設の改善や煩雑な販売手続きの簡素化、百貨店店舗の労働改善に向けた営業時間短縮・休業日の設定など、一人ひとりの事情や状況に合わせた働き方で「個」を活用し、それぞれの価値を最大限に引き出す活動を推進しています。

 人的資本経営の推進を通じ、当社が目指す将来像の実現に向け、グループ会社やお取引先からの派遣従業員を含め、一人ひとりが主体的に生き生きと働き、取得した専門性・能力を発揮して成果を最大化できる「場」を確立していきます。また、多様な価値観・働き方を認め合い、相互にコミュニケーションを図ることによりイノベーションを生み出す「場」への好循環を確立することで、持続的成長が実現できる体制を構築していきます。

 

① 戦略

 当社は、「営業力強化」「組織力の向上」「働きがいの向上」に向け、人材育成の基本方針を定め、社内外や時代を見据えた人材育成に取り組んでいます。

 

a.人材育成方針

●社会環境が急激に変化する中、企業の持続的成長には、未来を見据えた事業のトランスフォームが不可欠となります。そのために、多様な人材が主体的に能力開発に取り組み、自律的にキャリアを形成していくことを大切にしています。

 

●当社の人材育成の根幹は「OJT」です。「OJT」により、業務現場でしか得られない仕事の進め方や知識・技能を習得し、実務能力や問題解決力を高めます。また、多様な「Off・JT」により、業務現場以外の急変する環境に即した教育を有機的に組み合わせることで、クリエイティブ・イノベーティブな発想力・構想力を養っていきます。

 

 

 

●能力開発体系

 

 

b.キャリアサポート(アセスメント制度、オープンエントリー・FA制度)

 当社の人事に関する制度運営は、「個人の自主性の尊重」を基本的な考え方とし、一人ひとりの個性と意欲を尊重した人材育成を目指しています。国内百貨店においては、キャリア実現に向けたサポートの一環として、職務別の「職務基準書」を整備し、求められる「業務内容・職務経験・資格(講座)・資質・人材要件定義」などを明示し、自律的にキャリアルートを描く人事管理体制を整えています。「職務基準書」に明記された「人材要件定義」を核とし、自らの現状と現職に求められる能力との差や、自ら目指すキャリアに必要な能力との差を、本人と上長間で可視化し、計画的な能力開発の実現を目指しています。また、一人ひとりが自らのキャリア開発のための意向を伝える仕組みとして、以下の制度を整備しています。

 

●アセスメント制度

 年に一度、「能力評価アセスメント(各職務に求められる「能力・スキル」などと現在の自分との差異を明確化し、今後の能力開発計画に反映)」、「自己申告(進路・キャリアプランなどの意思表明)」について確認し、ジョブローテーションの参考にしています。

 

●オープンエントリー・FA制度

 自らのキャリアを自らの意思で実現していくため、本人の具体的職務への強い希望を、ジョブローテーションに活用する制度です。自らが希望する職務に自ら手を上げ、その意欲を配置で実現する仕組みにより、一人ひとりが専門能力を持ったプロとして自立できることをサポートしています。

 

c.従業員エンゲージメントの可視化・向上

 人的資本経営推進の大きな柱として、従業員エンゲージメントの可視化・向上の取り組みを推進しています。

 まず、健康経営の推進に向け、全従業員を対象に実施している「ストレスチェック」調査項目に、エンゲージメント関連項目を新たに追加しました。メンタルヘルス(ストレス)とエンゲージメントを同時に測定し、より高い生産性実現のための組織づくりを進めています。

 従業員エンゲージメントの向上においては、職場環境や組織風土の改善、各種制度の拡充や納得性のある人事制度運営などに加え、各社・各部・各店・各職場の調査結果を踏まえ、課題把握と改善策を職場単位で検討・実施し、PDCAサイクルに基づき、進捗状況を検証・確認していきます。

 加えて、百貨店の店頭で販売の最前線を担うお取引先従業員(百貨店におけるローズスタッフ)も当社において非常に重要な存在であり、さらなる営業力強化を図るためには、働きやすい職場環境を整備し、満足度や一体感を高めていくことが不可欠です。そのために、ローズスタッフを対象としたアンケート調査を定期的に実施、「満足度」や「悩み・不満」を可視化し、改善に向けたアクションを適時行うことで満足度の向上を図っていきます。こうした取り組みを通じ、働きがいの創出や生産性の向上、人材の定着化や一体感の醸成につなげ、持続的成長が可能な体制構築を目指していきます。

 

d.ダイバーシティ推進

 SDGsが目指している「誰一人取り残さない」社会の実現には、すべての人の人権や個性、価値観を尊重するとともに、文化や慣習などの違いを相互に受容することで、人種や国籍、年齢や性別、性的指向・性自認や障がいの有無などに関係なく、すべての人々が活躍できる社会の構築が不可欠です。

 当社は、多様な価値観や生活背景を有する人材の能力が最大限に発揮できる環境を整備し、「人と企業の双方の成長」を実現するための取り組みを行っています。2020年に策定した「ダイバーシティ推進方針」に基づき、多様な価値観や能力を尊重し、企業の成長に結びつける取り組みを推進しており、今後も、あらゆる人材がその能力を最大限発揮でき、やりがいを感じられるダイバーシティ&インクルージョンの実現を目指していきます。

 

 女性の活躍推進・ジェンダー平等に向けては、固定的な性別役割分担意識を払拭し、男女問わず育児と仕事の両立を実現することが不可欠です。㈱髙島屋は、「男性育休100%宣言」に賛同するとともに、女性活躍に関する数値目標の設定や課題抽出を行い「女性活躍推進行動計画」を策定するなど、性別に関係なく働きやすい職場づくりに取り組んでいます。

 その一環として、管理監督者を対象に、女性活躍・ジェンダー平等をはじめとする「ダイバーシティ教育」を実施しています。具体的には、ダイバーシティ&インクルージョンが組織に与える影響や、具体的事例の共有など、従業員の意識や行動の気づきにつなげることを目的とした、アンコンシャス・バイアス(無意識バイアス)研修等を実施しています。

 また、「多様な部下育成研修」において、育児介護など、さまざまな制約や事情を抱えた部下とのコミュニケーションや、潤滑な職場運営について学ぶ機会を設定しています。管理監督者向けダイバーシティ教育の実施により、コミュニケーションの活性化や、多様な人々が活躍できる風通しの良い職場風土の醸成につなげています。

e.ワークライフバランス推進

 当社は、生活文化を提案していく企業です。豊かな生活提案のためには、従業員がゆとりある生活者であることが必要です。

 それぞれが「キャリアビジョン」と「ライフスタイル」をしっかりと設計し、実現するためにサポートの仕組みや制度を都度整備し、働く「人」とその家族が「豊かでゆとりある生活者」として生活を築き上げる努力を支援する制度を、広く整えていきます。

 2015年、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けている企業のうち、より高水準の取り組みを行った企業として㈱髙島屋、㈱岡山高島屋は「プラチナくるみん」の認定を受けました。

 2017年には、役員・管理職への女性登用に関する方針、取り組みおよび実績並びにそれらの情報開示において、顕著な功績があったと認められ、女性が輝く先進企業「内閣総理大臣表彰」を受賞しました。(㈱髙島屋として受賞)

 また、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む法人として、経済産業省「健康経営優良法人2023」大規模法人部門に認定されました。(㈱髙島屋として認定) 従業員の健康保持・増進やワークライフバランスのさらなる実現のために、時間外労働の削減や安全衛生に向けた取り組みを行っています。

 

② 指標と目標

 当社は、人的資本経営を推進する指標としてESG重点課題で掲げた「ダイバーシティ推進」や「働き方改革推進」に関する指標と下記数値目標を設定し、全社的に取り組みを推進しています。

 

指標

実績

目標

2023年度

2025年度

2026年度

2030年度

女性管理職比率 ※1

28.6%

35.4%

36.4%

40.0%以上

有給休暇取得率 ※2

75.9%

80.0%

82.0%

100.0%

人当生産性 ※3

(営業利益/従業員)

6.8百万円

4.7百万円

5.0百万円

6.6百万円

※1 女性活躍推進法の管理職の定義に基づき算定しております。対象は、提出会社、国内連結子会社および非連

   結子会社のタカシマヤトランスコスモスインターナショナルコマースジャパン㈱の数値であります。

   (3月1日時点)

 

※2 労働基準法に基づく年次有給休暇の付与日数を分母、取得日数を分子として算定しております。対象は、提

   出会社、国内連結子会社および非連結子会社のタカシマヤトランスコスモスインターナショナルコマースジ

   ャパン㈱の数値であります。

 

※3 当該年度末の海外子会社を含む連結従業員数を分母とし、年度連結営業利益を分子に算出しております。