2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 事業環境について

(リスクの内容)

 当社グループは、壁装材・床材・ファブリック(カーテン・椅子生地)等のインテリア商材の企画・販売及び壁紙の製造等に加え、設計・デザイン提案から内装・建築施工を行う国内インテリアセグメント、門扉・フェンス・テラス等のエクステリア商品の販売及び施工を行う国内エクステリアセグメント、米国での壁紙製造及び北米、中国・香港、東南アジアの環太平洋地域においてインテリア商材の販売を行う海外セグメントにて事業を展開しております。これらの事業は建設需要に左右されるため、国の経済全体の景気動向や政府の住宅に関する政策、税制の変更及び人口減少などに伴う住宅・非住宅の新設着工戸数の減少、景気の後退によるコントラクト市場の減少等により、ビジネス機会を損失するリスクが存在します。

(リスク対策)

 事業基盤である国内市場において、住宅・非住宅分野における新築や改築は、少子高齢化が進むなか、将来的に大きく成長していくことは期待しにくいと予想しており、国内における様々な事業基盤の整備拡充を背景に、シェアの拡大と価格修正による収益改善を中期的戦略とし、長期的戦略としては国内エクステリア事業の拡大と海外事業の収益化・拡大に注力しています。調達面ではメーカーからの安定的な供給と中長期目線での商品開発を行えるよう製造部門へ経営資源を投入することにより、リスクの回避に努めております。また、現在の事業の長期的な展開の可能性を踏まえた上で、さらなる成長の為の事業展開の可能性を検討・実行すべく、2024年4月に事業創造推進室を立ち上げております。

 

(2) 仕入価格の変動について

(リスクの内容)

 当社グループの取扱商品は、石油化学製品、アルミ、ガラス等を原料とするものが多く、原油、鉱産物価格の高騰などにより商品仕入価格に極端な変動がある場合や、海外からの調達において海上輸送に関わるコストが高騰する場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。また、国内においては昨今の人件費・物流費・エネルギー費の上昇による仕入価格への影響も懸念されます。

(リスク対策)

 主要原材料の価格推移を常時観察し、材料調達における複数購買化や生産量の調整を行っていますが、2021年以降塩ビ・可塑剤・ナイロン・ポリエステル等の主要原材料価格が高騰し、壁装材・床材・カーテン用ファブリック・椅子生地・接着剤・縫製費等の仕入価格が大幅に上昇したため、競合他社の動きも注視しつつ、商品の安定供給と物流サービスレベルの維持並びにインテリア業界の健全な発展のため、2021年9月に壁装材、床材、ファブリックそれぞれ13~18%、2022年4月に18~24%、2022年10月に壁装材、床材、椅子生地それぞれ7~12%の値上げを実施しました。

 今後も仕入先だけではなく、原油価格や原材料メーカーの価格変動動向及び人件費や物流費といった社会情勢に起因する内容も注視し、仕入価格の交渉や販売価格の値上げに関する適切な判断を行うための情報収集等の準備を常時実施してまいります。

 

(3) 商品の供給について

(リスクの内容)

 当社グループでは、取扱商品のうち主力商品である壁装材や床材について、商品サンプルを掲載した見本帳を配付することで、営業及び販売活動を行っております。見本帳掲載商品の企画開発は自社で行っておりますが、一部の商品を除き、製造は外部仕入先のメーカーが行い、商品の供給を受けております。見本帳有効期間内は安定供給を維持することが強く求められる業界であるため、生産トラブル、原材料調達等の予期せぬ要因によって商品の供給が中断した場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 なお、当社子会社であるクレアネイト株式会社は、国内最大手の壁紙メーカーであります。今後当社が壁装事業を拡大する上で、競争力強化、量的確保のみならず、製販一貫体制の確立による事業の効率化を通じ、更なる発展が可能になるものと位置付けており、工場の安定稼働と商品の安定供給を維持することはグループ全体で取り組むべき課題と認識しております。また、2022年11月に発表したクレアネイト社による新工場建設により、さらに安定供給力を高めていく計画です。

(リスク対策)

 メーカーから商品を安定的に調達できるよう、仕入の前段階としてメーカーの工場内の実査や適正な製造工程の確認を行い、万が一調達が困難な状況に陥った際のバックアップ体制として、主要商品については十分な在庫の確保、代替となる商品の準備等、有事に備えた環境整備を行っております。

 また、当社からお客様への持続的な商品供給ついては、入荷から受注・出荷に至るまで、あらゆる場面で関連するシステム連携の強化に加え、各地区の在庫拠点であるロジスティクスセンターの安定稼働の阻害が想定されるリスクに対して、対処すべき行動計画の検証を定期的に行い、対応策の有効性の確認と改善を図っております。

 

(4) 設計・施工事業について

(リスクの内容)

 当社グループは、インテリア商材やエクステリア商材の販売のみならず、それら商材をいかした設計・空間デザイン提案を行い、その施工までを事業としております。設計・施工事業においては建築業法を始めとした各法規に則った事業活動が必要であり、違反と判断された際の事業継続とレピュテーションに対するリスクがあります。

(リスク対策)

 専門知見を持つキャリア人材の採用を進め、業務フローの見直しやシステム化の検討及び社内の法務面での監督を徹底すべく、随時改善に取り組んでおります。2024年4月には設計・施工事業を所管する部署としてコンストラクションユニットを立ち上げ、事業拡大のみならずグループ全体の施工機能に関するリスク管理を徹底する体制を整えております。

 

(5) 物流機能について

(リスクの内容)

 当社グループは、商材を在庫し、出荷及び配送する事業を展開しております。日本全国への配送網の維持は事業の継続はもちろん、当社の強みと言える機能ですが、物流2024年問題に起因するドライバーの確保、ひいては配送力の確保は重要な課題と認識しております。

(リスク対策)

 物流機能のさらなるサービス強化、想定される配送力の不足への懸念から、ドライバーの内製化と物流会社とのアライアンス強化を進めており、2022年9月には九州を事業エリアとする物流会社である有限会社クロス企画(2023年4月に株式会社化)を子会社化しました。また積込み・荷下ろしを人力に頼った体制から、効率的な体制へと転換するべく、システム化・省人化に向けた施策を検討しており、2024年度より順次実行してまいります。

 

(6) 知的財産について

(リスクの内容)

 当社グループでは、“Joy of Design”をブランドステートメントとして、さまざまな空間創造を通じた“デザインするよろこび”を提供し得る、デザイン性と機能性に優れた商品開発に努めておりますが、類似した商品が他社に製造されるおそれがあります。

 また、第三者より知的財産権を侵害しているという主張を受け、訴訟が提起された場合には、係争費用や損害賠償等の損失が発生し、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(リスク対策)

 リスクの低減を図るため、下記のような様々な取り組みを行っております。

・当社事業に関連する特許、意匠及び商標の出願・権利取得を行う等、知的財産の創造・保護・活用に努めております。

・競合他社の知財情報を常にモニタリングし、社内に最新の情報(特許、意匠、商標等)を共有しております。

・外部の専門家である弁理士・弁護士等と緊密に連携し、直ちにリスク対策を講じる体制を構築しております。

(7) 法的規制について

(リスクの内容)

 予期せぬ法令等の改正があった場合、事業を展開していく上で、製造物責任、知的財産、環境、労務など様々な法的規制の適用を受けている当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(リスク対策)

 内外の法規制を常時観察して法対応が行えるようにしております。また、コンプライアンスの遵守を企業にとっての最低必要条件と位置付け、管理体制を構築し、社員教育の強化に努めるなどの体制をとっております。

 

(8) 自然災害について

(リスクの内容)

 商品開発、製造、調達、ロジスティクス、販売、サービスに係る当社グループの施設は、国内全域、海外(北米、中国・香港、東南アジア各国)に点在しており、地震・洪水・暴風雨・大雪等の自然災害に伴うインフラの停止、建物・設備の損壊、故障による混乱状態に陥り、当社グループの経営成績や財務状況等に影響を与える可能性があります。

(リスク対策)

 当社グループでは、自然災害による事業活動への影響を最小限にとどめるため、災害発生時の事業継続計画書(BCP)を策定しております。非常時の初期対応、報告方法、対策本部の設置と役割について明記し、災害発生の際に適切な対応が取れる仕組みを構築し、定期的な訓練や設備の点検を行っております。また毎年、災害の状況に合わせて事業継続計画を見直しております。これらの他、商品の安定的な調達と供給を実行するため、仕入先などのサプライチェーンや当社グループの各地の事業拠点の被災時に、代替拠点での商品調達・配送が可能な体制を構築しております。

 

(9) 気候変動について

(リスクの内容)

気候変動リスクへの関心が高まる中、2015年に国連で「パリ協定」が採択され、同年に開催された国連サミットではSDGs(持続可能な開発目標)が採択されるなど、2030年をターゲットにした目標の設定が進展しました。一方、金融機関に関連した動きとして、国連環境計画と国連グローバル・コンパクトのパートナーシップが打ち出した「責任投資原則(PRI)」では投資家に対してサステナビリティ投資が要請され、それに呼応して日本では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名するなど、日本の金融においてもESG投資がメガトレンドとなっています。また、気候変動関連の情報開示については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言において、企業に対して「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目についての財務的な影響を開示するよう求められています。

このように気候変動に関連する環境変化が大きく進展する中、当社では、事業活動におけるGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出量を低減できないリスク、商品・見本帳を低炭素化できないリスクや回収・リサイクルできないリスク、及び急性・慢性的に起こりうる物理的なリスクが想定され、当社グループの経営成績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 例えば、GHG排出量を低減できないことでの炭素税の負担増加による財務影響や評判の低下や、商品・見本帳を低炭素化できないことで市場からのニーズに対応できず、信用の低下及びビジネス機会の損失などに繋がることが考えられます。

(リスク対策)

 当社は、気候変動リスクへの対応として、社長を委員長とする全社リスク管理委員会のもとに気候変動リスク部会を設置し、組織的な管理体制を構築しております。この気候変動リスク部会のもと、気候変動に関する各リスクを、法規制・技術・市場・評判などの移行リスクと、急性・慢性的などの物理リスクといった区分に沿って分析し、スペースプランニング部門、ロジスティクス部門、事業部門及びコーポレート部門が緊密に連携し、具体的な管理指標を設定した上で、リスクの監視と対応を行っております。

 また、当社はSangetsu Group長期ビジョン[DESIGN 2030]において、地球環境を守るサステイナブルな社会の実現を掲げており、2029年度の事業活動(Scope1&2)におけるGHG排出目標を、当社単体ではカーボンニュートラル(排出実質ゼロ)、グループ全体では55%削減(2021年度比)とするなど、気候変動リスクの原因となるGHG排出量の削減に努めてまいります。

 

(10) 情報セキュリティについて

(リスクの内容)

 当社グループは、事業活動を通じ、個人情報を含む様々な機密情報を適切に管理するため、多くの投資を行っております。また、こうしたシステムの運用並びに導入・更新に際しては、システムトラブルや情報の外部漏洩が発生しないよう最大限の対策を講じております。しかしながら、外部からのコンピュータウイルスやハッキングの被害、ホストコンピュータ・ネットワーク機器の障害、ソフトウェアの不備等によるシステム障害、災害によるシステムの一部損壊による業務停止、情報の外部漏洩等の事態が発生するおそれがあり、これらの予期せぬトラブルの発生に伴い、社会的信頼を損なうとともに多額の費用負担が生じ、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(リスク対策)

・サーバー、ネットワーク機器は、適性に応じクラウド及びデータセンターへの移行・利用を推進しております。

・外部からの不正アクセスやマルウェア等の対策として、不正侵入検知・監視サービスやセキュリティ対策ソフトを導入しております。

・ITシステムに影響を及ぼす不正なマルウェア等は導入しているEDR(Endpoint Ditection and Response)にて即時検知、隔離するとともに、SOC(Security Operation Center)と連携して迅速に対処しております。

・情報セキュリティに関する社員の教育(個人情報を含む機密情報保護と情報管理の重要性)や訓練を定期的に実施しております。

・重要なシステム機器については二重化しております。

・サイバーセキュリティ損害保険に加入しております。

・改正個人情報保護法の施行に合わせ、新たに個人情報保護規定を制定しております。

・サイバーセキュリティ統括室を設置し、当社グループ全体のサイバーセキュリティ体制構築を進めております。

 

(11) 与信管理について

(リスクの内容)

 当社グループは、取引先に対して与信供与を行っており、経済情勢悪化の影響や不測の事態を含めた取引先の財政状態悪化により債権の回収が困難となった場合、貸倒れによる損失が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して下記の取り組みを実施し、債権の回収不能による損失発生の予防として与信管理体制強化を図り、貸倒れによる損失回避に努めております。

(リスク対策)

・与信管理規程の適切な運用

・取引先の信用状況を勘案した与信限度額の年次更新

・重要な取引先の業況ヒアリング、財務諸表の定期的な把握

・取引先との今後の展開を見据えた取引条件の見直し

・債権回収状況のタイムリーなモニタリング

・売上債権回転期間の見直し

・与信不安先に対する会計上の貸倒引当金の設定

・与信不安先に対する管理強化や営業施策支援の実施

・取引先の信用状況に応じた担保、保証、取引信用保険付保等の債権保全策の実施

 

(12) 海外事業活動について

(リスクの内容)

 当社グループは、北米、中国・香港、東南アジア各国を中心に事業を展開しており、以下の場合、当社グループの経営成績や財務状況等に影響を及ぼすリスクがあります。

・感染症の蔓延、政情不安、経済動向の不確実性、宗教・文化・商習慣の相違、戦争・内戦、テロ、投資・海外送金・輸出入規制等が発生した場合。

・固定資産の減損に係る会計基準等に従い、定期的に保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し、減損損失の認識・測定を行った結果、固定資産の減損損失を計上する場合。

・製造部門を持つグループ会社の事業において、原油や鉱産物価格の高騰などにより原材料や商品仕入価格に極端な変動がある場合。

・日本からの輸送並びに海外グループ各社が海外から商品を調達する場合の輸送に関わるコストが高騰する場合。

(リスク対策)

・当社グループでは、平時より政治的又は経済的な障害となりうる問題に関する情報の収集や、不測の事態に対するBCPの策定など、グループ内で有事に備えた環境整備を行っております。

・当社グループでは投資後の事業を管理する体制を整備しております。

・原材料等が高騰した場合には、市場や競合の状況を判断しながら適切な値上げを実施します。仕入先だけではなく、原油価格や原材料メーカーの価格変動動向にも注視し、仕入価格の交渉や販売価格の値上げに関する適切な判断を行うための情報収集等の準備を常時実施しております。

・より効率の良い輸送方法の選択と、販売先への輸送運賃の適切な請求を行っております。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]の資本政策に基づき、株主還元は配当を主体とし、1株当たり年間配当金は130円を下限に、安定的な増配を目指すことを基本方針としております。

また、当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

当事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき1株当たり140円の配当(うち中間配当65円)を実施することを決定しました。

当社は、「取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当をすることができる。」旨を定款に定めております。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月10日

3,816

65.00

取締役会決議

2024年6月19日

4,403

75.00

定時株主総会決議