リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①水産資源の減少による漁獲規制及び国際価格の上昇に関するリスク
世界的に水産資源が減少し、タコ・マグロ・カニ・ウナギ等の漁獲規制が年々厳しくなっております。また、欧米での健康志向の高まりやアジア地域での所得の上昇によって魚食需要が増大してきており、それに伴う水産物の国際価額上昇による、いわゆる日本企業の「買い負け」現象が強まり、また、漁獲規制が今後も続くと、卸売市場への入荷量の減少により売上高が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資源アクセスの強化を事業戦略の基軸に据え、資源の有効活用と環境の保全、消費者の嗜好の変化や消費動向を見据えつつ、漁獲動向や市況の精緻な情報収集、仕入先の多様化等の取組みを進めております。
②市場外流通に関するリスク
当社グループの国内の会社のうち、一部を除く会社は卸売市場において水産物の卸売業務を行っておりますが、年々、卸売市場を経由する取扱数量が減少しており、大型量販店等への市場外流通の取引が増加しております。この傾向が今後も続くと、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資源アクセスの強化を事業戦略の基軸に据え、資源の有効活用と環境の保全、消費者の嗜好の変化や消費動向を見据えつつ、出荷者との緊密な連携、強化すべき商品カテゴリーの見極めや高付加価値商品の深耕、新たな販売先の開拓等の取組みを進めております。
③市場間競争に関するリスク
水産物卸売市場における取扱高が年々減少しておりますが、それに対応して市場数は減少していないため年々市場間の競合が厳しくなっております。今後この傾向が続きますと当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資源アクセスの強化を事業戦略の基軸に据え、資源の有効活用と環境の保全、消費者の嗜好の変化や消費動向を見据えつつ、出荷者との緊密な連携、強化すべき商品カテゴリーの見極めや高付加価値商品の深耕、新たな販売先の開拓等の取組みを進めております。
④市場法の改正に関するリスク
当社グループの会社のうち、国内で水産物卸売事業を営む会社は卸売市場法の適用を受けております。2020年6月に改正卸売市場法が施行され、同法改正により取引ルールの緩和や開設者・卸売業者の許認可見直しが行われ、流通の効率化や民間資本の参入拡大が進み、市場内はもとより市場外の業者も含め、さらなる競争の激化が予想されております。これらにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資源アクセスの強化を事業戦略の基軸に据え、資源の有効活用と環境の保全、消費者の嗜好の変化や消費動向を見据えつつ、強化すべき商品カテゴリーの見極めや高付加価値商品の深耕、新たな販売先の開拓等の取組みを進めております。
⑤水産食料品の安全・安心に関するリスク
食料品に係る安全・安心について消費者の意識が年々高まってきております。当社グループも食料品の流通を担う卸売業者として最重要項目であることと認識し、最善の注意をもって取り組んでおりますが、水産食料品に係る品質・表示問題が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、東都水産グループサステナビリティ基本方針の中で「安全・安心な水産物・サービスを提供し、消費者の皆様の豊かな食生活に貢献する。」と定めるとともに、お客様・お取引先様に安心・安全な商品をお届けするため、「食品安全方針」を策定し、豊洲市場における当社すべての売場において、食品安全のリスクを低減し、安全なフードサプライチェーンの展開を実現するための食品安全マネジメントシステムに関する国際規格であるISO22000を取得しております。
⑥得意先に対する不良債権に関するリスク
当社グループの得意先に対する売掛債権の信用リスクが年々高まっており、今後より一層債権管理体制の整備・充実を図り債権の回収と保全に努めてまいります。回収不能見込額に対しては必要十分な貸倒引当金を計上しておりますが、その変動によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、得意先に対する不良債権に関するリスクへの対応策として、日常業務の中で得意先ごとの入金状況・債権残高の徹底した管理を行うとともに、定期的に売掛債権に関する遅延対策会議を開催する等の取組みを進めております。
⑦冷蔵倉庫業界に関するリスク
当社グループの冷蔵倉庫部門は、同業他社との価格競争、また、想定を上回る電気料金の高騰など予断を許さない状況が継続しております。当社グループとしても諸経費を圧縮し、合理化に努めておりますが、老朽化に伴う維持費の増加、冷凍機の更新が完了していない一部冷蔵倉庫において、モントリオール議定書に端を発し、2020年にHCFCフロン生産が全廃となったことに伴うフロン価格の高騰及び冷媒転換に伴う設備更新負担等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの冷蔵倉庫部門では、逐次冷凍機の更新を行っており、脱フロン化・省電力化冷凍機への切り替えに取り組んでいる状況です。冷凍冷蔵設備の老朽化に伴う維持費の増加については、冷凍機入替に伴う電力使用料の削減で相殺される部分もありますが、今後のグループ全体の事業戦略の方向性を見極めながら、冷蔵倉庫そのものの建て替えを含めた検討を進めていきます。
⑧在庫品に関するリスク
当社グループは、市況を勘案して商品を買い付けておりますが、一定期間保有するため市場価格の変動に伴うリスクを有しております。将来の需給の状況や市場価格を予測して在庫管理を行っておりますが、将来の需給バランスによっては価格の変動により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、在庫品に関するリスクへの対応策として、市況動向等に細心の注意を払った商品の買付け、定期的な在庫会議の開催等の取組みを進めております。
⑨大規模災害による影響に関するリスク
当社グループの仕入先並びに在庫品の保管冷蔵・冷凍倉庫は沿岸地域に集中しており、当該地域で大地震や大津波が発生した場合には、当該地域からの集荷が著しく困難になり、また、当該地域に立地する冷蔵・冷凍倉庫内の在庫品が毀損又は滅失する恐れがあります。被害の状況によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、大規模災害による影響に関するリスクへの対応策として、仕入先の多様化や在庫品の保管先分散化等の取組みを進めております。
⑩人材確保・育成に関するリスク
当社グループの卸売事業は深夜業であり、食料安定供給のため市場開場日が多いことから所定休日が一般的な企業に比して少なく、人口動態の変化により若年労働人口が減少する中で、新卒・既卒とも就業希望者が減少する傾向にあり、その確保に苦慮していることから、必要とする人材の確保ができない恐れがあります。また、当社営業業務が古くからの人と人との直接的つながりを重視するビジネスモデルに立脚していることから、スマホ世代の直接的なコミュニケーションを比較的苦手とする若年層の育成が難しく、営業スタイルの継承に支障をきたす恐れがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、働きやすい職場環境の実現のため、残業時間の低減や有給休暇の取得推奨に積極的に取り組み、法定を超える産前休暇制度の導入、定年後再雇用制度の導入等、多様な人材がやりがいをもって働き続けられるよう職場環境の整備を進め、また、健康経営への取り組みとして、人間ドック受診費用やインフルエンザ予防接種費用に対する補助、法定の健康診断に際しては、受診項目の追加を行っています。人材育成への取り組みとして、新卒新入社員に対しては、配属前にビジネスマナーや社内規則、現場営業社員等から業務に関する基礎知識を習得するための研修を実施しています。既存社員の人材育成は職場におけるOJTをベースとし、海外子会社への派遣や専門知識のスキルアップのための外部研修の受講を推奨しております。
⑪ITシステムに関するリスク
当社グループは、本社に設置しておりますサーバー内の情報システムにより、水産物卸売に関する業務及び会計処理等を行っております。経済産業省、独立行政法人情報処理推進機構作成のサイバーセキュリティ経営ガイドラインの方針に基づき、サイバーセキュリティリスクの軽減に努めておりますが、自然災害、事故、コンピュータ・ウイルス、不正アクセス、電力供給の制約や大規模停電、故障や不具合等によりシステムあるいは通信ネットワークに重大な障害が発生した場合、当社グループの業務に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、東都水産株式会社及びグループ企業の情報セキュリティ基本方針(セキュリティポリシー)と、ITセキュリティ規程を策定し、経済産業省、独立行政法人情報処理推進機構作成のサイバーセキュリティ経営ガイドラインの方針に基づき、サイバーセキュリティリスクを軽減するため、外部接続のネットワークに対してはファイアウォール、Webフィルター、侵入防御、アンチウイルスを、社内の情報機器のサーバー、パソコンにはアンチウイルスソフトを導入しウイルスの脅威に対応しています。また事業の継続のため、情報システムBCP対策、重要データの保存、データアクセス管理を行い、データの保全とデータ漏洩、改ざん防止等の対策を行っています。今後もそれら対策が有効に機能しているかを定期的に確認するとともに、情報セキュリティの更なる確保へ向けた継続的な改善に努めていきます。
⑫感染症拡大に関するリスク
新型コロナウイルス等をはじめとする重大で強毒性の感染症が発生・蔓延した場合には、水産物卸売事業はもとより、付随する水産加工品の製造販売や冷蔵倉庫業等のグループ全事業部門において需要減退リスクが生じます。仮に食料品を取り扱う当社グループの事業拠点で当該感染症が発生した場合には、風評等により取引が激減し、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。また、当該感染症が蔓延し、社員や取引先・物流業者等で大量の感染者が発生すると、事業継続そのものに影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、感染症拡大に関するリスクへの対応策として、感染予防に関する注意喚起、必要に応じたテレワークの導入、通常業務の中での衛生管理の徹底、罹患者が発生した場合の対策等、現時点で考えられる出来得る限りの措置を講じており、今後においても状況に応じた改善に努めていきます。
⑬気候変動に関するリスク
水産業界においては、近年特に、温暖化が原因とされる海水温の上昇による漁獲水域の変化や、これまで見られなかったような極端な不漁に見舞われる魚種が現れてきています。また、台風等の悪天候による時化の増加により、出漁日数が減少し、その影響で漁獲量の減少が顕著になってきています。当社グループの主要な事業である水産物卸売事業においては、天然の水産物を扱っているという性質上、かかる状況がさらに増大するようなことがあれば、卸売市場への入荷量の減少により売上高が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資源アクセスの強化を事業戦略の基軸に据え、資源の有効活用と環境の保全、消費者の嗜好の変化や消費動向を見据えつつ、漁獲動向や市況の精緻な情報収集、仕入先の多様化等の取組みを進めております。
⑭国際紛争をはじめとする地政学に関するリスク
当社グループでは、世界各地で漁獲された水産物を扱うとともに、輸出を通じ海外市場への展開を図っております。加えて、グループ内に在外子会社が存在しています。それらに関連する諸国において、地政学的問題、予期せぬ法令の変更、労働環境や習慣等に起因する予測不可能な事態の発生、治安の悪化、国家間の経済制裁、テロ・戦争・感染症の発生、その他の要因による社会的または政治的混乱等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対し、当社グループでは、展開を図る海外市場や在外子会社が所在する各国の情勢を定期的にモニタリングし、経営サポート等を図るとともに、多様な地域、多様な魚種の取扱いが可能となるよう資源アクセスの強化を進めております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、創業以来一貫して株主への利益還元を最重要な課題の一つと認識し事業の経営にあたっており、業績に対応した配当を行うことを基本とし、且つ経営基盤の強化と今後の事業展開に備えるための内部留保の充実などを勘案し、出来得る限り安定配当に努めます。
当社は、期末配当の年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、配当の決定機関は、株主総会であります。
内部留保資金につきましては、今後予想される市場環境の変化に対応すべく経営基盤の一層の強化と事業展開に備えるために役立ててまいりたいと考えております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年6月26日 |
596 |
150 |
定時株主総会決議 |
(注)配当金の総額には、従業員インセンティブ・プラン「株式給付信託(J-ESOP)」及び業績連動型株式報酬制度「株式給付信託(BBT)」の信託財産として、株式会社日本カストディ銀行(信託E口)が所有する当社株式に対する配当金8百万円が含まれております。