2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済状況について

 当社グループの全世界における営業収入のうち、主要な部分を占める大判インクジェットプリンタ及びプロッタの需要は、当社グループが製品を販売している国または地域の経済状況の影響を受けます。また、当社の主力顧客であっても、設備投資の抑制などにより期待どおり受注できない可能性があります。従いまして、日本、北米、欧州、アジアを含む当社グループの主要市場における景気後退、及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクヘの対応策として、引き続き各市場や顧客のニーズの把握に努め、製品市場予測による中・長期的な研究開発や投資を行い、既存製品から新製品への迅速かつ円滑な移行に取り組むとともに、新たな市場の開拓にも積極的に取り組んでまいります。

 

(2)為替レートの変動について

 当社グループの事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれております。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されております。換算時の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高(特に当社グループの売上の重要部分を占める米ドル及びユーロに対する円高)は当社グループの事業に悪影響を及ぼし、円安は当社グループの事業に好影響をもたらします。

 他方、当社グループが生産を行う地域の通貨価値の上昇は、それらの地域における製造と調達のコストを押し上げる可能性があります。コストの増加は、当社グループの利益率と価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクヘの対応策として、適宜為替予約を行い、米ドル、ユーロ、豪ドル及び円を含む主要通貨間の為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしております。

 

(3)価格競争について

 大判インクジェットプリンタ及びプロッタの業界における競争はたいへん厳しいものとなっております。当社グループは、当社グループが属している各製品市場と地域市場において、競争の激化に直面すると予想されます。競合先にはメーカーと販売業者があり、その一部は当社グループよりも多くの研究、開発や製造、販売の資源を有している場合があります。

 当該リスクヘの対応策として、当社グループを、技術的に他社より優れ、高品質で高付加価値の製品を送り出す世界的なリーディングメーカーの一社であると考える一方で、当社グループが将来においても有効な競争力と成長を持続するため、業務プロセス改革、構造改革、ITシステム改革を実施し、収益力向上に取り組んでおります。

 

(4)原材料や部品の調達について

 部品の供給不足や原材料価格・輸送費の高騰に伴う調達コストの高騰に伴い、製造原価の上昇や顧客への納期遅延など製造・販売活動に支障がある場合には、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクヘの対応策として、このような状況下でも徹底したコスト削減を図り、生産効率の向上を進めるとともに、製品別に調達先の状況を確認し、リードタイムと在庫状況を踏まえた適正在庫の手配と確保により、安定的かつ効率的な調達活動を展開し、当社グループの業績及び財政状況への影響の最小化に努めております。

 

(5)製品の欠陥について

 当社グループは世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しております。しかし、将来において、すべての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引き続き当社グループがこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストがかかり、当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上が低下し、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクヘの対応策として、品質管理体制をより一層強化し、重大な製品の欠陥が発生しない様に最大限の努力をしております。

 

(6)知的財産保護の限界について

 当社グループは他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してまいりましたが、当社グループ独自の技術とノウハウの一部は、特定の地域では法的制限のため知的財産権による完全な保護が不可能、または限定的にしか保護されない状況にあります。そのため、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造するのを効果的に防止できない可能性があります。また、他社による、当社グループより優れている技術の開発、当社グループの特許や企業秘密の模倣を防止できない可能性があります。さらに、当社グループの将来の製品または技術は、将来的に他社の知的財産権を侵害しているとされる場合が生じる可能性があります。

 当該リスクヘの対応策として、当社の知的財産権が他者により流用されるリスク、他者の知的財産権を当社が侵害するリスクを最小限にするため、現地販売会社と綿密に連携し情報収集に努めております。

 

(7)国際的活動及び海外進出に潜在するリスクについて

 当社グループの販売活動は、欧州や北米、中南米ならびにアジア・オセアニア・中近東市場等の日本国外でも行われております。これらの海外市場の事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しております。

①予期しない法律または規制の変更

②不利な政治的または経済的要因

③グローバル人材の採用と確保の難しさ

④未整備の技術インフラが、当社グループの活動に悪影響を及ぼす、または当社グループの製品やサービスに対する顧客の支持を低下させる可能性

⑤不利な税制の影響

⑥テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱

 従いまして、これらの事象は業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)外部環境に関するリスクについて

 当社グループの販売活動の多くの部分は日本国外で行われており、サプライチェーンもグローバルに展開しております。各国・各地域の物流上の問題が当社グループのグローバルサプライチェーン全体に波及し、供給遅延や輸送費高騰に伴う原価の上昇により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、新型コロナウイルスの影響による各国・各港でのコンテナ船のスペース不足、輸送コンテナ不足は解消されてきているものの、中東での紛争の影響により、スエズ運河の利用が制限され、喜望峰ルートでの運行となり、輸送期間の長期化及び輸送費の増加が発生しております。今後世界各地でさらなる紛争の発生等がある場合には、さらなる供給遅延や輸送費の増加が見込まれます。

 当該リスクヘの対応策として、物流ルートを柔軟に変更するとともに、フォワーダーの見直しを適宜行うなど、輸送期間の短縮、輸送費の削減に努めてまいります。

 

(9)自然災害について

 当社グループは、東京都世田谷区に本社、長野県諏訪に生産拠点である工場、また、国内外に販売拠点を有しておりますが、これらの地域において、地震、洪水、台風、火災など大規模な自然災害が発生した場合には、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、自然災害が発生した場合も被害を最小限にとどめ、速やかな事業再開を可能にするため、BCP(事業継続計画)策定に努めてまいります。

 

(10)感染症に関連するリスクについて

 感染症により当社グループに特に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、主に以下に掲げる事項があると認識しております。当社グループでは、グループー丸となって感染症に対するリスク管理対応を行っております。

①役員、従業員の感染症の罹患

 当社グループの役員、従業員が感染症に罹患し、社内にクラスターが発生した場合、当該事業所の活動が遅延または停止することにより、当社グループの業績及び財政状況に大きな影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、役員及び従業員並びにその家族の健康と安全の確保と、感染症の拡大防止のため、在宅勤務や時差出勤、事業所内消毒等を継続的に実施しております。

②販売対象国、地域での景気後退、需要の縮小

 当社グループの販売対象国、地域において感染が拡大した場合、当社製品の売上高が減少し、業績及び財政状況に大きな影響を与える可能性があります。加えて、感染症の影響により当社グループの取引先の信用状況が悪化した場合、当社グループの売掛債権回収の停滞や貸倒等により、当社グループの業績及び財政状況に大きな影響を与える可能性があります。

 当該リスクヘの対応策として、業績及び財政状況への影響を最小化するため、事業活動の正常化に向けた対応を迅速かつ的確に図るとともに、需要変動への適切な対応を推し進める一方、信用調査を強化し、与信限度、回収条件の見直しを検討しております。

 

(11)人材の確保について

 人的資本に関する戦略に基づき、優秀な人材の確保に努めておりますが、人材の獲得競争が激化する中、採用または雇用継続ができず、人材が不足する場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクヘの対応策として、日本国内におけるモノづくりを継続しグローバル企業として成長するため、優れた製品開発を行う人材およびグローバルに活躍できる人材の持続的な確保・育成に努めております。また、中堅層を強化するため、多様な人材がその能力を発揮できる風土づくりや働きやすい環境づくりを推進し、優秀な人材の確保に努めております。

 

(12)公的規制について

 当社グループは、事業を展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税をはじめとするその他の輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けております。また、通商、独占禁止、特許、消費者、租税、為替管制、環境・リサイクル関連の法規制の適用も受けております。これらの規制を遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限される可能性があります。また、規制を遵守できなかった場合には、裁判所を含む公的機関によりペナルティーを受け、コストの増加につながる可能性があります。従いまして、当社グループは、規制の厳格遵守に努めております。

 

(13)重要な訴訟について

 当社グループは、情報画像関連機器等の開発・製造・販売を行っており、知的財産権、製造物責任、独占禁止法、不正競争防止法、個人情報保護法等に関連して訴訟が提起される場合や、法的手続きが開始される可能性があります。そのような事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状況または事業計画等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクヘの対応策として、専門部署である法務部が主導して弁護士等を交え、迅速かつ円滑な解決に向けて取り組んでまいります。

 

(14)情報セキュリティについて

 当社グループは、グローバルな事業活動を通して、顧客の個人情報をはじめ機密情報を扱っております。会社内部からの機密情報漏洩やサイバー攻撃等の外部からの不正アクセス、社内システム障害が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当該リスクへの対応策として、機密情報管理規程の制定や全従業員に対する半期毎の情報セキュリティ教育の実施、ならびに専門部署である情報システムグループの主導によるセキュリティの強化などを講じております。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の最重要課題のひとつと考え、財務構造や将来の事業展開を勘案しつつ内部留保の充実を図り、かつ、業績に応じた配当を継続的に実施することを基本方針としております。

当社は、期末配当の年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

 剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

 当事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき、1株当たり65円(うち中間配当金25円)の配当を実施することを決定いたしました。

 内部留保資金につきましては、グループ全体の効率的経営、成長機会の確保および事業価値の向上・拡大のため有効投資してまいりたいと考えております。

 当社は、「取締役会の決議によって毎年9月30日を基準日として、中間配当をすることができる。」旨を定款に定めております。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月14日

114

25.00

取締役会決議

2024年6月26日

182

40.00

定時株主総会決議