2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。ただし、全てのリスクを網羅したものではなく記載した事項以外の予見し難いリスクも存在します。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経済環境に関するリスク

為替レートの変動

当社グループは、全世界で製品を販売し海外での売上割合は7割を超えていますが、そのほとんどを現地通貨で取引しています。また、当社は多額の外貨建資産も保有しており、円建資産に転換する場合だけでなく財務諸表作成のための換算においても為替レートの変動の影響を強く受けます。そのため、為替レートが大幅に変動した場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、為替レートの変動による影響を軽減するために外貨建の仕入を継続しています。

 

(2) 事業活動に関するリスク

市場環境の変化や他社との競争

当社グループの事業は、幅広い娯楽の中の一分野であり、他の様々な娯楽の趨勢による影響を受けます。他の娯楽へのお客様の志向が強くなると、ゲーム市場が縮小する可能性があります。また、技術の進歩や革新で新たな競争相手が出現した場合、大きな影響を受ける可能性があります。ゲーム業界は、多額の研究開発費や広告宣伝費等が必要とされる一方で、巨大な同業他社や他のエンターテインメント業界との競合等の可能性もあり、これまで以上に利益を確保し難い状況になる可能性があります。また、急激な構造変化などに対応できない場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、娯楽を通じて人々を笑顔にする会社として、どなたにでも直感的に楽しんでいただける「任天堂独自の遊び」を提供することを目指しています。そして、この独自の娯楽体験を実現するために、ハード・ソフト一体型のゲーム専用機ビジネスを経営の中核に置き、世界中のすべての人々に向けた、独創的な商品やサービスの提案に取り組んでいます。また、この中核ビジネスを持続的に活性化させるために、「任天堂IPに触れる人口の拡大」を基本戦略として掲げ、ゲーム専用機以外の分野においてもお客様と任天堂IPとの接点を広げることによって、より多くのお客様にゲーム体験にも興味を持っていただくきっかけを作ります。さらに、それらの取り組みを繋ぐものとして、ニンテンドーアカウントを通じて、お客様一人ひとりと長期的な関係を保ち続けることに取り組んでいきます。

 

新製品等の開発

ゲーム専用機ソフトウェア、スマートデバイス向けアプリケーション及び映像コンテンツの企画・開発には、かなりの時間と費用を必要とする一方で、お客様の嗜好は常に変化しており、全ての新製品や新サービスがお客様に受け入れられる保証はありません。ハードウェアの開発には長い期間を必要とする一方で、技術は絶えず進歩しており、娯楽に必要な技術を装備出来ない可能性があります。さらに、発売が遅れた場合、市場シェアの確保が難しくなる可能性があります。

また、当社製品及びサービスは、その特性から予定の期間内での開発が困難になるケースがあり、計画どおりの販売や提供開始ができないことがあります。さらに開発を中断または中止することもあり、計画から大きく乖離する可能性があります。

エンターテインメントの分野において、これらの開発プロセスは複雑かつ不確実なものであるため、上記のリスクに対応できない場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、継続して斬新で魅力ある新製品の開発に努めています。

 

製品の評価、適正在庫の確保

ゲーム業界における一般的な製品は、ライフサイクルが比較的短く、嗜好性や季節性が強いものであるため、過剰な在庫を抱えることや保有する棚卸資産が陳腐化することにより、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。

正確な販売予測は困難なため、市場に必要な量を供給できず、商機を逃す可能性がありますが、当社グループでは、需要に見合った供給を確保するために、見込生産の実施や、ダウンロードソフトの販売推進を行っています。

 

外部企業への製造依存

当社グループは、主要な部品の製造や製品への組立てをグループ外企業に委託しており、グループ外企業の倒産等により重要部品の調達及び製造に支障が生じる可能性があります。また、部品の製造業者が当社グループの必要とする数量を予定どおりに供給出来ない可能性もあります。重要部品が不足すると、部品の価格高騰による利益率の低下にとどまらず、製品の供給不足や品質管理等で問題が発生し、お客様との関係悪化をも引き起こす可能性があります。さらに、製造委託先の生産拠点が海外に多く、現地で治安の悪化や自然災害、感染症の拡大等が起これば、生産が妨げられ業績に悪影響を及ぼします。

当社グループでは、生産面において、ほとんどの部材調達先及び生産外注先を複数社としており、リスクヘッジを行っています。また、重要な部品については、全てのプロセス・生産場所・担当責任者などを把握し、予想し得ない事故の場合にも可能な限り迅速な罹災状況の把握と代替対応ができるように管理体制を整えています。

 

業績の季節的変動

当社製品の需要の多くは、年末商戦期や正月時期等に集中するため、季節によって変動します。この時期に魅力的な新製品を投入出来なかった場合や、製品の供給が間に合わなかった場合等においては、業績に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、発売後も長い期間にわたり手に取っていただけるゲームの開発や継続的に楽しんでいただけるデジタルビジネスにおける有償サービスの提供などにより、年間を通して安定した業績となるよう努めています。

 

システムのトラブル

当社グループは、情報発信だけではなく、ゲームのオンラインプレイやソフトウェアのダウンロード販売、インターネットを介した様々なサービスを提供しています。しかし、万一これらの運営システムに対し、サイバー攻撃が行われる、自然災害や事故が発生するなどして、システムの停止や破壊、データの流出や不正利用等が起きた場合には、将来の経営成績、株価及び財務状況等に悪影響が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、当社の事業におけるネットワーク機能の重要性が高まっていることを考慮し、割り当てる社内リソースの増強、必要な人材の採用、社外専門業者との連携等により、対応力の強化に努めています。

 

事業活動に影響を及ぼす諸事情

当社グループは、グローバルにビジネスを展開しています。国内外での事業活動においては、不利な政治または経済要因の発生、多国間税制度における不統一性及び税法解釈の相違における不利な取扱い、人材の採用と確保の困難、ストライキ等の労働争議、テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等のリスクが存在します。製品やサービスの企画・開発・製造・物流・販売等に支障をきたす場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、継続的に必要な措置を講じていきます。

 

(3) 法的規制・訴訟に関するリスク

製造物責任

当社グループの製品は、世界各地域で認められている安全・品質管理基準に従って開発・製造していますが、世界各地域で販売されていることから、万一欠陥等が見つかった場合、大規模な返品要求が発生する可能性があります。また、製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、追加のコストの発生や当社グループの評価に影響を与え、将来の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、製品に対する責任を充分認識しており、設計、製造、付帯サービスの面から製品の品質管理、品質保証に引き続き積極的に取り組んでいきます。

 

知的財産保護の限界

当社グループは、他社製品と差別化出来る様々な知的財産を蓄積してきましたが、インターネットを使った違法なアップロードや、不正品への効果的な対処が困難な地域があり、将来の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、継続的に必要な措置を講じていきます。

 

 

システムへの不正アクセス・機密情報の流出

当社グループは、お客様等に関する情報や開発・営業機密情報を保有しています。万一、システムへの不正なアクセス等により、これらの情報が流出、漏洩または第三者に不正利用された場合、将来の経営成績、株価及び財務状況等に悪影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、継続的に必要な措置を講じていきます。

 

法律・規則等の変更

当社グループが予期しない法律や規則の施行または変更、会計基準や税制の新たな導入・変更等により、業績及び財務状況等に影響が及ぶ可能性があります。また、税務申告における税務当局との見解の相違により、追加の税負担が生じる可能性があります。

当社グループでは、行政機関などの外部機関からウェブサイトなどを通じて発せられる情報のフォローに加え、外部機関が主催するセミナーへの参加や専門書の定期購読などによる情報収集を行うとともに、実施に向けて様々な検討を進めています。

 

訴訟等

当社グループは、国内及び海外における事業活動等に関し、訴訟、紛争またはその他の法的手続等の対象とされることで、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、訴訟リスクを軽減するよう様々な措置を講じています。

 

(4) その他

上記のほか、売上債権の回収不能、金融機関の破綻、環境に関する規制、あるいは、不測の事態によるコーポレートブランドの毀損、政情の変化、急激な気候変動、自然災害や感染症の拡大等により業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、継続的に必要な措置を講じていきます。

 

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、会社の成長に必要な研究開発や設備投資等を内部留保資金でまかなうことを原則とし、将来の経営環境の変化への対応や、厳しい競争に勝ち抜くため、財務面での健全性を維持しつつ、株主の皆様への直接的な利益還元については、各期の利益水準を勘案した配当により実施することを基本方針としています。

剰余金の配当は、中間配当と期末配当の年2回行うことを基本方針としています。当社は会社法第454条第5項に規定する「取締役会の決議によって中間配当を行うことができる」旨を定款に定めており、配当の決定機関は、中間配当については取締役会、期末配当については株主総会です。

具体的な配当の算出については、連結営業利益の33%を配当金総額の基準とし、期末時点で保有する自己株式数を差し引いた発行済株式数で除した金額の1円未満を切り上げた金額か、もしくは連結配当性向50%を基準として1円未満を切り上げた金額の、いずれか高い方を、1株当たり年間配当金として決定します。

また、中間配当については、第2四半期累計期間の連結営業利益の33%を中間期末の配当金総額の基準とし、この時点で保有する自己株式数を差し引いた発行済株式数で除した金額の1円未満を切り上げた金額を1株当たり中間配当金とすることにしています。

上記方針によりますと、当事業年度の配当金は、1株当たり中間配当金80円及び1株当たり期末配当金131円となりました。

なお、内部留保した資金は、斬新で魅力ある製品を継続して提供するための必要資金として、また、新技術の研究や新企画の商品及びサービスの開発、生産体制の拡充及び原材料の確保、広告宣伝を含めた販売力及びネットワークインフラの強化のほか、必要に応じた自己株式の買入れ等にも、有効に活用していきます。

(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月7日

取締役会決議

93,139

80

2024年6月27日

定時株主総会決議

152,515

131