2024年5月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

以下に、経営者が当社グループの事業展開その他に関するリスク要因と認識している主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。

なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に対する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。

また、下記の事項には将来に係るリスク要因が含まれておりますが、これらの事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。

(1) 業界動向について

① 需要動向

 当社グループのIoT関連事業に属する電子部品検査装置事業の主要製品である光源装置に関する需要は、半導体メーカーのCCD及びCMOSイメージセンサに関する設備投資動向に影響を受けます。この設備投資動向はCCD及びCMOSイメージセンサが装着される製品の販売動向及び新製品開発・投入動向、また半導体メーカーの経営方針あるいは経営環境に変化が生じた場合等に変動すると考えられ、その変動が大きい場合、当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。

 これらのリスクに対して当社では、少数精鋭の体制をとっており、人件費等の固定費による負担が少なくなるような体制としております。また、人材派遣等を活用することにより、売上が大きく変動した場合でも柔軟に対処することが可能であります。

 さらに、当社の製造方法は半ファブレス形式であるため大規模な工場設備を有しておらず、一般的な賃貸オフィスビル内にて製造を行っております。そのため、稼働率が低下した場合でも、賃貸スペースを一部解約する等、固定費を柔軟に変動させることで、需要動向に柔軟に対応できる体制を構築しております。

② 競合の状況

当社グループのIoT関連事業セグメントの主要製品である光源装置及び瞳モジュールに関しては、当社を含め数社が供給しております。今後、競合他社が大幅な低価格戦略を展開した場合、あるいは国内外で他社の新規参入があった場合には、当社グループの市場競争力及びマーケットシェアに影響が生じるおそれがあります。

これらのリスクに対して当社では、競合他社との差別化を図るため、検査対象であるイメージセンサの高度化に伴った製品開発を行うことで技術を蓄積しながら、顧客ニーズに応じたカスタマイズ製品の製造販売を行っております。今後も顧客ニーズをいち早く把握し新しい技術を製品化することで、顧客ニーズに応えていくよう努めてまいります。

また、新規事業への取組等、主要製品以外の分野にも注力し、事業の多角化によってリスクの分散が可能な体制の構築を図っております。

③ 技術革新及び新規事業への対応について

当社グループは、電子部品検査装置事業に関し、半導体メーカーやモジュールメーカーにおいて従来のデバイスに加え、3Dセンシング技術用新規デバイスのニーズが強まると考えております。また、CCD及びCMOSイメージセンサに関しては更なる高画素化、高機能化の開発が進められており、光源装置や瞳モジュールにおいても、より高度な製品が求められるものと予測しております。

加えて新規事業においては、まだ世の中で解決できていない問題を解決することをコンセプトとしており、市場が形成されていないため、顧客ニーズや関連市場の動向を踏まえた施策が必要であると認識しております。

しかし、予測や認識に対して、新技術を導入した製品の開発が遅延あるいは失敗した場合等には、当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。

これらのリスクに対して当社グループでは、常に顧客との対話においてニーズのキャッチアップを行うとともに、必要に応じた技術者の育成にも取り組んでおります。

 また、新規事業においては、予測や認識に対する仮説を考察したうえで顧客へのヒアリングを実施することで、仮説が正しいか判断する検証を行っております。仮説が正しいと判断された場合のみ人員の拡充や設備投資を行うことで、新規事業へ挑戦するリスクを最小限に抑える努力を行っております。

(2) 当社グループの事業体制について

① 小規模組織であること

当社グループは2024年5月31日現在で、従業員128名の小規模組織であります。当社グループの市場競争力の核は技術開発力にあり、専門性の高い技術者を中心とした社員構成となっております。そのため専門性の高い技術者を確保し、事業拡大を支えるために、営業、製造、内部管理等の人材も充実させる必要があります。したがって、優秀な人材の確保及び社内人材の育成に努めておりますが、人材の確保及び社内人材の教育が計画通りに進まない場合には、当社グループの業務に支障をきたすおそれがあります。また、業務遂行体制の効率化にも努めていますが、小規模組織であり人的資源に依存する部分が少なくないために、社員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは社員が社外流出した場合には、当社グループの業務に支障をきたすおそれがあります。

 一方、急激な規模拡大は、固定費の増加につながり、当社グループの業績に影響を与えるおそれがあります。

これらのリスクに対して当社グループでは、個人の業務内容について、部署内での可能な範囲で情報共有に努めております。規模の拡大においても、適時適切に対応できるよう、勤務状況や個別面談による情報収集を行う等の対策を行っております。また、社員が社外流出した場合の情報漏洩対策として、入社時に秘密保持契約を交わす等、情報の管理にも努めております。

② 製造及び品質保証体制

 当社グループは、製造に関しては、金属加工及び配線等を除き、基本的に内製を行う方針でありますが、基幹部分を外部委託した場合には、当社グループの技術あるいはノウハウが委託先に流出し、当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。また当社グループは、事業拡大に備えて熊本事業所の建設及び長崎開発センターの設置等、社内外における十分な製造能力の確保を進めてまいりましたが、委託先に急激な経営悪化又は経営方針の変更等が生じた場合、あるいは急速な市況回復により受注が拡大した場合は、製造の遅延等により当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。

また、当社グループは、製品の開発、製造、販売並びに保守を通じて、当社グループ製品の品質及び性能に瑕疵が生じないように努めております。製品の瑕疵責任を問われた場合に備えて、製品保証引当金を引き当てておりますが、引当金が不十分であった場合には、当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。また、製品の瑕疵責任に関連して、当社グループが他社から訴訟を受けた場合には、当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。

これらのリスクに対して当社グループでは、人材派遣等を活用することにより、ある程度の製造能力の増減に対して柔軟な対応が可能な体制を構築しております。また、製造の遅延を防ぐため、常に顧客とのコミュニケーションを図り、精度の高い受注管理を行うことで、状況に応じた部品の先行手配等も実施することで対策を図っております。

加えて、製品の瑕疵責任が極力発生しないよう、顧客とのコミュニケーションを密に行い、徹底した品質管理を行っております。

③ 研究開発体制

当社グループの市場競争力の核は技術開発力にあるため、当社グループは人材の多くをそれぞれの事業の研究開発分野に投入しています。

当社グループは、研究開発体制の充実によって成果を向上させる考えですが、研究開発分野への重点的な資源投入は、研究開発成果が得られるまでの期間において、当社グループの利益を圧迫するおそれがあります。また、研究開発分野への重点的な資源投入は、営業、製造、内部管理等の相対的な資源不足を招き、当社グループの業務に支障をきたすおそれがあります。

これらのリスクに対して当社グループでは、常に業務内容をモニタリングすることにより、資源投入のタイミングを適切に計れるよう努めております。基本的には少数精鋭の体制により、正社員の人件費等の固定費による負担を軽減しつつ、人材派遣等を活用することで、研究開発成果までの期間における利益圧迫の影響をある程度抑えることができると認識しております。

 

(3) 有利子負債について

 当社グループの有利子負債は、2024年5月31日現在で、短期借入金440百万円、1年内を含む長期借入金366百万円、合計806百万円となっております。業務運営に有利子負債を活用しているため、新たに借入れを行うことが困難となった場合、当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。

 これらのリスクに対して当社グループでは、有利子負債残高を適切に管理する事に加え、金融機関とコミットメントライン契約(借入未実行残高5,000百万円)を締結する等、資金調達の多様化を進めることで流動性の確保に努めております。

(4) 原材料の調達について

 当社の製品及びユニットに使用するレンズや電子部品等の特定の原材料について、調達先等からの取引の継続性が不安定となり、製造の遅延が生じ、納期を逸した場合は、当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。

 これらのリスクに対して当社グループでは、先行手配を行うことや、複数の業者から仕入れを行うことで、上記リスクを軽減できる体制を構築しております。

(5) 為替変動の影響

 当社グループの業績及び財務状況は、為替相場の変動に影響を受けております。急激な為替変動は当社グループの外貨建取引から発生する資産及び負債の円換算額に影響を与える可能性があります。また、為替動向は外貨建てで取引されている製品・サービスの価格及び売上高にも影響を与える可能性があります。

 これらのリスクに対して当社グループでは、部品の大部分を国内で調達しており、海外への製品販売についても現時点では大部分を円建での取引としているため、為替変動による影響を受けにくい体制となっております。

(6) 法的規制について

 現時点では、当社グループの事業展開に重要な支障をきたすような法的規制はありません。しかし、国際貿易取引に関して、将来的に、当社グループの製品あるいは当社グループの製品を構成する主要部品の輸出入が何らかの法的規制を受けるような状況が生じた場合、あるいは輸出入にあたって許可が必要になるような状況が生じた場合には、当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。

 また、日本国内においても今後何らかの法的規制を受けた場合には、当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。

 これらのリスクに対して当社グループでは、様々な法的規制について、各主管部門と管理部門が連携し、関連諸法規の情報共有及び遵守に努めております。

(7) 特許について

 当社グループは知的財産としての特許を重視しており、必要な特許の取得を積極的に進める考えであり、技術情報公開により当社のコア技術が類推あるいは模倣されないような技術を中心に、特許取得を進めております。しかし、特許取得により、当社グループの技術情報が公開され、それをもとに他社が関連技術、関連製品の開発あるいは特許取得等を進める可能性があり、その場合には当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。

 当社グループは、製品開発に際して特許侵害のないように注意を払っておりますが、特許侵害の可能性が皆無とはいえません。また、国内外の特許出願状況、認定状況によっては、当社グループ製品及び事業に関連する特許が成立する可能性があるため、当社グループが他社の特許を侵害している、あるいは将来的に侵害する可能性を否定できません。他社から特許侵害の訴訟を受けた場合には、当社グループの業績に影響が生じるおそれがあります。

 これらのリスクに対して当社グループでは、技術特許を申請する前に可能な限りのリスクやメリット・デメリットを審議したうえで、特許取得を進めることが必要であると認識しております。また、特許侵害については、必要に応じて顧問弁護士等と連携して柔軟な対応ができる体制を構築しております。

(8) M&A等による事業拡大

 当社グループは、成長戦略の一環としてM&Aを実施することがあります。M&Aにおける買収価額が常に適正、妥当であるという保証はなく、買収後の収益が、買収時に見込んだ将来の収益予想を大幅に下回った場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対して当社グループでは、対象企業の財務内容や契約関係等についてデューデリジェンスを実施すること等により、各種リスクの低減に努めております。また、専門家のアドバイス等によりデューデリジェンスの精度を上げるとともに、事業計画の策定や将来価値の測定について十分な検討を行う等、投資判断については慎重な姿勢で取り組んでまいります。

(9) ロシア・ウクライナ情勢の影響について

 当社グループでは、ロシア及びウクライナに拠点を置く企業との直接取引はありませんが、両国における経済活動が抑制されることにより、当社グループ企業が属するそれぞれの市場環境が悪化するリスクがあります。

 また、原材料価格やエネルギー価格の高騰により、製品製造原価や輸送コスト等が増加し、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対して当社グループでは、影響を最小限に抑えられるよう、顧客の状況や調達に関する情報収集に努めております。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、企業価値の向上と安定した株主配当が株主の皆様への重要な利益還元と考えております。今後の経営環境並びに長期事業展開に留意し、内部留保を行いつつ、安定的な配当の実現を目指してまいります。

 当社は、期末配当に加え、会社法第454条第5項の規定に基づき、取締役会の決議により毎年11月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定款に規定し、年2回の剰余金の配当を行うことができます。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

第32期の配当につきましては、上記方針に基づくとともに、中間配当金は、2024年1月12日開催の取締役会決議に基づき、1株につき10円(総額110,728千円)、期末配当金は、2024年8月23日開催の定時株主総会決議に基づき、1株につき25円(総額276,820千円)とさせていただきました。

 内部留保資金につきましては、キャッシュ・フローを重視した経営をベースに将来の成長に向けての有効投資と連結業績の反映度を高めながらの将来の安定的な配当の維持への備えに充てていきたいと考えております。