リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 装置販売への依存について
当社グループの売上高構成のうち装置(DNA/RNA(核酸)抽出装置・全自動PCR検査装置等)販売への依存度は36.8%(2023年6月期)と高くなっております。そのため、当社グループの業績は、ユーザーの装置への需要の変化、装置の他社製品との競合状況の影響を受けることが予測されます。また、装置販売はOEM販売(相手先ブランドによる販売)を中心に展開しており、その販売力に依存しているため、当社グループにおける経営計画の策定根拠の中に不確実性が相当程度含まれることは否めません。また、同様の理由により、過年度の経営成績だけでは、今後の当社グループ業績の判断材料としては不十分な面があると考えられます。
そこで当社グループは、中期事業計画を策定しバイオ関連業界における遺伝子診断市場のトレンドを捉え、事業領域を研究開発分野から臨床診断分野へ移行するとともに、製品売上構成は装置から試薬・消耗品(専用プラスチックカートリッジ)ビジネス中心への事業転換を掲げています。現状では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の迅速確定検査の世界的な需要や今後の新たな感染症やがん診断等の検査需要に対応するために当社の自動化技術を集積したDNA/RNA(核酸)抽出自動化装置(magLEADシリーズ)専用のDNA/RNA(核酸)抽出試薬及び消耗品、全自動PCR検査装置(geneLEADシリーズ)専用のDNA/RNA(核酸)抽出とPCR試薬及び消耗品の販売拡大対応に努めており、今後は保険適用のPCR試薬検査項目を拡大して、重篤感染症によるパンデミックを防止するため当社自動化システムの普及に鋭意努力し社会貢献を果たしていきます。
しかし、試薬・消耗品群の事業展開が当社グループの期待どおりに進捗しない場合は、装置販売への依存度が高水準で推移することになり、上記に記載した不確実性等が継続することになります。
さらに、今後当社グループが予想しない支出、投資などが発生し、当社グループの事業戦略が変更される又は経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定の海外OEM販売取引先への依存について
当社グループ売上高のうち、エリテックグループ、キアゲングループ、サーモフィッシャーグループ、ナノストリング社向けの売上高48.6%(2023年6月期)を占めております。
当社グループにとって、上記4社は安定的な海外OEM販売取引先であると認識しておりますが、このような関係が今後とも継続するという保証はなく、また、当社グループの事業戦略及び経営成績は、上記4社の経営成績や財政状態、事業戦略により重大な影響を受ける可能性があります。これに対して、近年は国内外において自社販売事業に注力をするだけではなく、新規OEM先獲得にも努めることを同時に進めています。さらには、当社グループは新製品群による事業展開により事業規模の拡大を図り、これに伴い販売先の多様化を図っております。しかし、国内外における自社販売事業や新規OEM契約獲得並びに新製品群の事業展開が当社グループの期待どおりに進捗しない場合は、引続き当該4社への依存度が相当程度を占めることになります。
(3) 大館試薬センターにおける設備投資について
当社グループは、装置の組立て等を外注先に生産委託していることもあり、これまで大規模な生産設備を保有していませんでした。しかし、新製品群による事業展開の一環として試薬の供給体制を拡充する必要性から、2014年6月に大館試薬センターを設立、同年11月より本格的稼働を開始しました。
さらに、コロナ禍後の新たな感染症やがん診断等の検査需要に対応するために新たな自動化設備投資等による量産コストダウン対応が要求されており、事業の成長のための重要な課題となっていますが、2020年7月17日付において、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」に採択されたことにより、この補助金を有効活用して、業界のグローバル大手他社との差別化を図り且つ、全自動化PCR検査装置に、自社開発製造のプレフィルドDNA/RNA(核酸)抽出試薬とOpenなシステム(凍結乾燥や液体に関係なく既存PCR試薬を使える)が機能する「高精度かつ検査ニーズ本位のユーザーフレンドリーなオープンシステム」の提供による独自のポジションを確立するべく主としてプレフィルドDNA/RNA(核酸)抽出試薬カートリッジ製造のための設備投資を、当社大館試薬センター第二工場を中核にして実施したことにより核酸抽出試薬・消耗品キットのサプライチェーンによる量産・コストダウン体制の構築により順次必要な製品供給能力を確保により、日本国内で生産拠点の整備を行う方針です。
当社グループとしましては、販売先の需要動向をヒアリング等をしながら、需要に見合う設備投資として慎重に行っていく方針であります。しかし、試薬・消耗品の販売が当社グループの期待どおりに拡大しなかった場合は、稼働率低下による固定費の負担が増加し、さらには固定資産の減損損失を計上するリスクがあります。
(4) 為替リスクについて
当社グループの海外売上高は3,088百万円となっており、売上高の58.5%(2023年6月期)を占めております。海外売上高の大半は欧米のOEM先向けのものであり、その取引価格はユーロ建、ドル建、円建価格のものが混在しております。価格に対する為替の影響については、概ねその為替差損益について両社で折半し、取引価格に加減算する契約となっておりますが、いずれにせよ為替変動の影響を受けるものとなっております。
当社グループは、為替変動の影響を極力排除する目的から、直近では円建ての海外売上高の構成比は高く、為替動向によっては当社グループの経営成績は影響を受けることが少なくなっています。
(5) 特定の仕入先、外注先への依存について
当社グループは、自社でハードウェア設計を行いますが、上記(3)で記載した大館試薬センターの拡充はしているものの、一部の製品を子会社で製造していることを除き、原則、製造にあたっては外注先を活用しております。外注先に関しては、一部の消耗品に関しては海外現地生産を実施しておりますが、更なる多様化を進めていく方針であります。
なお、これらの外注先の経営状態、生産能力、品質管理能力その他の理由により、適切な時期に装置を製造することができない場合又は当社グループとこれらの外注先との関係に変化が生じた場合、当社グループの事業戦略や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 遺伝子関連業界の将来性について
当社グループは、国内外の遺伝子関連業界(バイオ市場)において、DNA/RNA(核酸)自動抽出装置及び全自動PCR検査装置等を製造販売しております。当社グループは、当社グループが属するこれらのバイオ市場は今後とも拡大していくものと予想しておりますが、これらの市場は未だ黎明期にあり、既に確立されたものではありません。その動向については不明確かつ不確実な部分も極めて多く、客観的な情報が著しく乏しいのが現状であります。従いまして、今後必ずしも当社グループの予測どおりに市場が進展するという保証があるものではありません。
(7) 法的規制について
医療用機器の取扱いに関しては、研究用機器とは異なる多くの規制が存在しますが、国内と海外においてこの取扱いは異なっております。
国内において、当社は医療機器製造販売業許可(第三種)/製造業登録/修理業許可/販売業許可を受けております。当社グループの提供するDNA/RNA(核酸)自動抽出装置等の中には、医療機器として届出したものもございます。また将来はPCR試薬の事業展開を行う方針のため、体外診断用医薬品製造販売業許可/製造業登録を受けています。
海外において、当社グループのDNA/RNA(核酸)自動抽出装置等は、欧州において体外診断用医療機器としてのCE-IVDマーキングを取得しております。また、中国においては、DNA/RNA(核酸)抽出装置を医療機器として届出しました。
当社グループは、今後、DNA/RNA(核酸)抽出から診断までの一貫自動化システムに各種試薬も搭載し、臨床検査分野に進出する方針であるため、必要な許認可の取得を進めて参りましたが、当社グループがこれを維持できるという保証はありません。仮に維持できない場合には、国内/海外の臨床診断マーケットという大市場を逸し、当社グループの事業計画及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループの事業に対して将来新たな法的規制が課された場合、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 研究開発活動について
当社グループの属する遺伝子関連業界は、未だ黎明期にあって技術革新がめまぐるしい業界であります。こういった市場変化にきめ細かく対応するためには、小回りの利く柔軟な組織体を持ち、特許戦略を適確に推進しながら、ターゲットを絞った研究開発テーマに迅速に取り組むことが極めて重要であります。変化が激しく流動的な市場であるからこそ、当社グループのようなベンチャー企業でも並居る大手企業に伍して市場の覇権を握るチャンスが十分にあると考えています。
その実現のために当社グループでは、市場の需要を先読みした完成度の高い製品を先行販売し、それがもたらすデファクト・スタンダード化の実現に重点を置いた研究開発活動を推進すべきと考えております。
現在、当社グループでは、上記を踏まえた研究開発プロジェクトを推進しておりますが、これらをはじめとした研究開発活動には多額の資金と効果的な設備、そして多くの優秀な人財を要するものであります。そのため、当社グループは今後とも、かかる経営資源の一層の充実・確保に務める方針です。しかしながら、かかる経営資源の確保や研究開発活動が当社グループの計画どおりに順調に行われるという保証はなく、また、技術環境等の変化如何によっては、各プロジェクトの目指す開発目標が変更を余儀なくされ、当社グループの企業体力に比べて適正な規模や内容ではなくなる可能性があります。そのような場合、研究開発プロジェクトの遅延につながることとなり、投下資本の回収に遅れを生じたり、過重な有利子負債を抱える可能性があるほか、当社グループが業界の技術革新に乗り遅れる結果として、当社グループの事業戦略や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 国内外の顧客対応及び競合について
遺伝子関連業界において、現時点におけるマーケットの中心は米国、欧州にあります。したがって、当社グループ製品もその需要を海外に求める必要があり、現実に日本からの輸出が先行した事業展開となっております。当社グループとしては、国内外を問わず今後更なる事業展開を図るため、自社販売製品のメンテナンス体制及びOEM量産機種及びプラスチック消耗品の現地生産を重要な課題と認識し、欧米市場向け製品供給体制の強化に取り組んでおります。但し、現地国の国情や法令制度あるいは取引慣行等の諸事情により、国内外への事業展開が当社グループの計画どおり進展しない可能性があり、この場合、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を与える可能性があります。また、このように当社グループの属する市場が国内外を問わないことから、日本国内のみならず世界中の同業他社との競合が発生し激化する可能性があります。かかる国内外での競合が当社グループの事業計画又は経営成績に影響を与えることは十分予測されるところであります。
(10) 知的財産権について
① 当社の特許戦略について
当社グループは、主として遺伝子、免疫、タンパク質等の自動測定システムや試薬の要素技術に関し、国内外で多くの特許出願、意匠出願、商標登録出願を行っております。それらの要素技術の特許を取得し、当社製品のオリジナリティーを確保し、新しい事業と分野を切り開いて行くことは、当社グループ事業基盤にとって極めて重要性が高いものと考えております。
しかしながら、遺伝子関連業界においては、日々新しい技術の開発が進められています。したがって、当社グループが当社グループの技術を特許権等により保全したとしても、例えば当社の主力製品であるDNA/RNA(核酸)抽出に関する新たな概念の技術が発明され、当社グループの特許技術が淘汰されるリスクは常に存在しております。仮に、当社グループの技術を超えるような優れた他の技術が開発された場合、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、産業や事業における特許制度の趣旨やその影響について常に考慮し、他社の特許を侵害しないよう十分な調査を行い、必要な場合は正式にライセンス契約締結を行う等知的財産上の問題を発生させないための努力を行ってまいります。
② 知的財産権に関する訴訟、クレームについて
当連結会計年度末現在において、当社グループの事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はありません。
当社グループでは、知的財産権に関する問題を未然に防止するため、事業展開にあたっては特許事務所を活用して知的財産権の侵害等に関する事前調査を行っておりますが、当社グループのような技術開発型企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。
また、仮に当社グループが第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、個別ケースに応じて法的対応策を考えていく方針でありますが、当該第三者の主張に正当性があるなしにかかわらず、その解決に多大な時間と費用を要する可能性があり、場合によっては当社グループの事業戦略や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(11) 継続企業の前提に関する重要事象等について
コロナ禍の収束傾向を受けた海外販売の減少に加えて、日本国内においても新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置づけが2023年5月8日より5類へ移行した影響を受けたことにより日本国内における自社ブランド製品である全自動PCR検査装置及びそれに付随する専用試薬・消耗品の販売が減少し、当社グループにおいて売上高が著しく減少しました。
一方で、大館試薬センター第二工場に対する投資に伴う減価償却費負担の増加や新製品開発投資に伴う費用負担の増加及びコロナ禍の収束傾向を受けて一部製品の評価損や一部設備の減損損失を計上した結果、重要な営業損失、経常損失、当期純損失を計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
これに対し、当社グループは、当該事象を解消し又は改善させる対応策として、以下の中期事業計画の方針の確実な実行により売上拡大と利益確保を目指してまいります。
①OEM向け新製品上市と自社新技術製品上市対応による販売製品の拡充
②全自動PCR診断装置専用PCR試薬調達の契約締結による検査項目の拡張
③全世界へのOEM向け販売実績を踏まえた自社ブランド製品の国内外販売網拡大
④PSS新宿ラボラトリ―における検査受託事業
⑤PSS大館試薬センター第二工場設立によるDNA/RNA(核酸)抽出試薬カートリッジ量産体制確立
また、当期末現在の現金及び預金残高は2,446百万円を有し、取引先金融機関とも良好な関係を維持しており、資金繰りに対する懸念はありません。なお、2024年6月期中には、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金の入金が見込まれ、これを長期借入金の返済に充当する予定であります。
以上の結果、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、内部留保については、研究開発活動を中心として、企業価値を高める様々な活動に利用していく方針であります。そのため、配当と内部留保のバランスをとりながら株主還元を行ってまいりたいと考えておりますので、当面の間は、連結での配当性向20%をひとつの目安として運用していく方針であります。
なお、期末配当の決定機関は株主総会、中間配当については取締役会であります。
また、当社は「取締役会の決議によって、毎年12月31日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。
当事業年度に係る剰余金の配当はありません。