2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 本項に記載した将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであるため、不確実性を内在しており、実際の結果と異なる可能性を含んでおります。

(1) 自動車メーカーの生産動向の影響について

 当社グループは、自動車用伝導装置(MT及びAT)の製造販売を主な事業としており、自動車用伝導装置事業の外部顧客への売上高の連結売上収益に占める割合は、2024年3月期で88.7%と高い割合となっております。

 従って、自動車の電動化の進展や主要な顧客である自動車メーカー全般の生産動向及び販売動向の影響を受け、特に自動変速装置関連事業(AT)は縮小する蓋然性が高い状況にあります。

 また、当社は技術動向、市場の変化を注視し、環境変化に適応した製品開発を進めておりますが、市場ニーズを捉えた電動化への対応が遅れる場合、売上高が減少する等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 海外展開について

 当社グループは、自動車メーカーの世界最適調達方針に応じ、現地生産への対応を進めております。2024年3月期における所在地別の概況は次のとおりであります。

 

日本

米州

アジア・

オセアニア

その他

消去又

は全社

連結

売上収益(百万円)

125,581

59,301

112,186

11,270

308,338

構成比(%)

40.7

19.2

36.4

3.7

100.0

営業利益(損失)(百万円)

△6,418

△4,232

△5,297

518

△10

△15,438

 

 当社グループの海外展開において、アジア・オセアニアは、自動車生産台数が大きく伸びる可能性のある有望なマーケットであり、今後、積極的に事業展開を行う方針ではありますが、それらの地域の政治動向及び金融情勢の変化に伴うマーケットの変動が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 為替リスクについて

当社グループは、全世界において製品の生産と販売を行っております。海外各国における収益、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成時に円換算されていますが、換算時の為替レートにより、現地通貨における価値に変動がなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

また、当社グループが日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、当社製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループの業績及び財政状態は、為替変動による影響を受け変動する可能性を含んでおります。

 

(4) 原材料・部品の調達リスク

 当社グループの製品は、原材料の大部分と一部の部品をグループ外部より調達しております。調達先と安定的な取引が行えるよう努めておりますが、価格高騰や需給逼迫、調達先の不慮の事故等により、原材料・部品不足が生じ、結果として当社グループの業績に悪影響を与えるリスクが存在します。

 

(5)新製品開発

当社グループは、高い環境性能を有したコスト競争力のある製品を開発するよう努めております。今後も、魅力的な製品の開発を進めてまいりますが、当社の開発した製品が顧客や市場のニーズに合致しない、或いはタイムリーな開発と市場への投入ができない場合、特に自動車業界の電動化の流れに対応した新製品開発が出来ない場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与えるリスクが存在します。

これに対応するため、営業本部のビジネス開発部において新規ビジネスの企画をおこない、開発効率向上のために開発本部を再編するなど、新規ビジネスの創出、オープンイノベーションを通じ、脱炭素社会へ向けた商品開発を行っております。

 

(6) 製品の品質不具合

当社グループは、品質維持が事業を支える最重要項目と位置づけ、世界中の工場で製造される各種の製品に対して品質管理を行っております。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が発生した場合、多額の対応コストや当社グループの品質管理に対する評価の低下による取引の減少等が、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与えるリスクが存在します。

(7)新規事業を含む事業投資リスク

 当社グループでは、電動化の進展に伴い既存事業の一部が減少する蓋然性が高いとの認識の元、中長期的な企業価値の向上に向け、脱炭素社会づくりをはじめ、環境負荷の最小化に貢献すると共にお客様に新たな価値を創造し提供する製品を創造するため、既存事業の枠組みに捉われない新規ビジネスの創出に取り組んでおります。

 これらの活動の中では、新たな技術の獲得や、新規事業における開発スピード向上のために、M&Aやスタートアップ企業への出資を伴う共同開発なども行っております。

 投資先企業の事業活動が想定通りに推移しない場合、また投資先企業に想定しなかった問題点が発見された場合などには、減損損失の発生などによって当社の業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループは新規事業立ち上げのため積極的な投資を行っていることから当該リスクが顕在化する可能性を常に認識しておく必要があります。

 当社グループは当該リスクを軽減するため、ステージゲート法による新規ビジネスへの投資継続可否の検証をおこなっております。

 また、当社グループの中長期の方向性及びグループを含めた意思決定については、取締役会にて審議・決議するとともに経営会議やサステナビリティ会議等でKPIのモニタリングを実施しております。

 

(8)固定資産に関する減損のリスク

 当社グループが使用する固定資産は、事業環境の変化を背景とした収益性の低下が生じた場合に減損損失を計上する潜在的なリスクにさらされています。

 今後、想定以上に電動化が急激に進展する等の経営環境の著しい悪化等により収益性が低下し減損損失が発生した場合には、連結財務諸表に対して影響を生じさせる可能性があります。

 

(9)同業他社との間で生じ得る需要獲得のための価格競争リスク

 当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業における価格競争は大変厳しいものとなっています。

 当社グループでは「最高品質なものづくり」・「技術開発力」・「顧客ネットワーク」という、3つの強みを構築し、世界中のお客様に喜んで頂ける最高品質製品の提供に努めており、クラッチ及びトルクコンバータ製品において、世界トップレベルのシェアを有しております。

 しかしながら、将来において、価格競争力や当社の優位性を維持できない場合、顧客離れや製品価格の低下を通じて、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)取引先への依存リスク

 当社グループは資本関係の有無にかかわらず、世界の主要自動車メーカーグループに対して製品を供給しており、特定顧客に対する依存度が集中していることはありませんが、多数の顧客において、内燃機関のみを搭載した車両の生産及び販売が当社の想定を超えた速度で減少し電動化が進展した場合、その影響を受けて業績が変動する可能性があります。

 

(11)災害や停電等による影響

 当社グループは、生産設備に対し定期的な修繕及び点検を行うことで、故障等による製造ラインの中断ロスを最小限に抑制するように努めております。しかし、当社グループの生産施設で発生する災害、電力供給等のインフラの中断による影響を完全に防止又は軽減できる保証はなく、その結果、生産・納入活動が停止するリスクが存在します。

 特に、日本における風水害リスクに対し、設備のかさ上げや工場移転等の対策実施してまいります。

 

(12)環境規制に関するリスク

 当社グループが事業を展開する多くの国又は地域において、製品の安全性、燃費、排ガス規制、工場からの汚染物質排出制限等の広範囲な環境規制及びその他の法規制を受けています。これらの規制は今後厳しくなることが想定されます。

 当社グループは、「脱炭素社会づくりをはじめ、環境負荷の最小化に貢献する」を長期ビジョンとして掲げ、脱炭素に貢献する製品を拡充すると共にカーボンニュートラル及び環境負荷の最小化を実現する生産体制を構築するための活動を推進しています。

 しかしながら、当社グループが事業を展開する国又は地域における環境規制の厳格化があった場合には、規制に適合するための開発費用や設備投資などにより相当の費用が増加するほか、当社グループがこれらの規制を遵守できない場合には当該市場での製品販売ができなくなるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(13)気候変動による影響

 当社グループは気候変動への対応を重要な課題の一つととらえ、シナリオ分析(2℃、4℃シナリオ)を通じた気候変動リスクを特定し、対策を実施しておりますが、対応の不足や遅れにより以下のリスクが顕在化する可能性があります。

① 気候変動によるリスク

(移行リスク)脱炭素社会への急速な移行による、炭素規制等の導入による操業コスト増加や、内燃機関車の販売停止や電気自動車への移行の加速に伴う当社の既存製品への需要の変化に対応できず、企業価値の低下を招くリスクが存在します。

 

(物理リスク)異常気象による工場操業停止や、サプライチェーンの寸断による製品サービスの供給停止が起こるリスクが存在します。

② リスクへの対策

(移行リスク)脱炭素社会への移行に対処すべく、代表取締役社長を委員長とする、環境・気候変動に関する基本方針や重要事項についての審議推進委員会を設置し、変化する国際情勢を常に確認し、リスクの未然防止・迅速な対処に努める体制を整備しております。

また、製品需要の変化に対応するため、社内にプロジェクトチームを設置し、未来商品の創出、オープンイノベーションを通じ、脱炭素社会へ向けた商品開発を行っております。

(物理リスク)サプライヤーも含めたBCP(事業継続計画)を策定、ハザードマップを活用した事業所ごとのリスク評価などを行い、ハード・ソフトの両面での対応や、有事を想定した訓練などを実施し事業継続能力向上に取り組んでおります。

 

(14)知的財産権に関するリスク

 当社グループは、事業活動を展開する上で、製品、製品のデザイン、製造方法などに関連する特許や商標などの知的財産権を、海外を含め多数取得しておりますが、出願したものすべてが権利として登録されるわけではなく、特許庁で拒絶されたり、第三者からのクレームにより無効となったりする可能性があります。

 第三者が当社グループの特許を回避して競合製品を市場に投入する可能性もあります。また、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、第三者の知的財産権に関する訴訟の当事者となる可能性があります。

 

(15)人財確保に関するリスク

 当社グループでは長期ビジョンに「ときめきと情熱を感じられる魅力的な会社になる」を掲げ、従業員の成長を促す挑戦や提案を活発にできる環境を整備し、多様な従業員が安心して働ける制度を拡充することを通じ、働いてよかったと思える会社を実現させ、企業の長期的な価値創造に繋げていきます。

 また、新規ビジネス創出に向け、キャリア採用も積極的に行ってまいります。

 しかしながら労働市場のひっ迫、異業種も含めた人財獲得競争の激化等により人財の育成・確保ができない場合、中・長期経営計画の戦略を実行しその目標を達成することが困難になる可能性があります。

 

(16)情報セキュリティリスク

 当社は、サイバー攻撃などの脅威から、機密情報や個人情報を適切に保護するため、情報セキュリティに関する方針および規程類を整備・展開し、定期的に社員の教育を行うなど情報セキュリティの強化を図り、情報漏洩の防止に努めています。

 しかしながら、サイバー攻撃等の不正行為は脅威を増しており、想定を大幅に超えるサイバー攻撃等を受けた場合、情報システムに障害が生じる可能性、機密情報及び個人情報が外部に流出する可能性、サプライチェーンを含む事業活動が一時的に中断する可能性等があります。このような事象が発生した場合、当社グループの事業活動の停滞やレピュテーション低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)世界的な感染症の流行による影響

 新たな種類の感染症が世界規模で流行した場合、生産・納入活動が停止する可能性があり当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与えるリスクが存在します。

 

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、配当の決定にあたって、株主に対して適正な利益還元を行うと同時に、社業の永続的発展を図るために不可欠な内部留保を確保することを基本方針としております。
 当社は、中間配当と期末配当の年2回、剰余金の配当を行う制度をとっております。
 これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

 当事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき当期は1株当たり 120円の配当(うち中間配当 60円)を実施することを決定しました。

 内部留保は、財務体質の強化、新規ビジネス開発のための研究開発投資や資産取得、新製品開発、自動車環境対策に伴う燃費向上技術・振動・騒音対策技術の開発、海外拠点の充実等の資金需要に充当させていただきます。

 当社は、取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年10月30日

2,823

60.0

取締役会決議

2024年6月24日

2,823

60.0

定時株主総会決議