2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    32,443名(単体) 194,993名(連結)
  • 平均年齢
    44.7歳(単体)
  • 平均勤続年数
    21.9年(単体)
  • 平均年収
    8,311,000円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2024年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

二輪事業

47,980

(10,201)

四輪事業

135,829

(10,897)

金融サービス事業

2,409

(    55)

パワープロダクツ事業及びその他の事業

8,775

( 1,516)

合計

194,993

(22,669)

 

(注) 従業員数は就業人員です。また、( )内に臨時従業員の平均人数を外数で記載しています。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

2024年3月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

32,443

( 2,549)

44.7

21.9

8,311

 

 

セグメントの名称

従業員数(名)

二輪事業

5,331

(   834)

四輪事業

26,260

( 1,678)

パワープロダクツ事業及びその他の事業

852

(    37)

合計

32,443

( 2,549)

 

 (注)  1 従業員数は就業人員です。また、( )内に臨時従業員の平均人数を外数で記載しています。

2 平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。

 

(3) 労働組合の状況

提出会社、連結子会社ともに、労使関係は安定しており特記すべき事項はありません。

 

提出会社の状況

労働組合名
 

本田技研労働組合
(全日本自動車産業労働組合総連合会に加盟)

組合員数

28,769

 

 

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

当事業年度

補足説明

管理職に

占める

女性労働者

の割合(%)

(注2)

男性労働者の

育児休業

取得率(%)

(注3)

労働者の男女の

賃金の差異(%)(注2)

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

2.4

88.9

68.8

72.5

96.9

(注4)

 

 (注)  1 管理職に占める女性労働者の割合については、当事業年度末日を基準日としています。また、男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、当事業年度を対象期間としています。

2 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年(平成27年)法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年(平成3年)法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年(平成3年)労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等および育児目的休暇の取得割合を算出したものです。

4 当社の労働協約適用会社である㈱本田技術研究所、㈱ホンダ・レーシング、学校法人ホンダ学園、㈱ホンダアクセスを含んでいます。

 

② 主要な連結子会社

当事業年度

補足説明

名称

管理職に

占める

女性労働者

の割合(%)

(注2)

男性労働者の

育児休業取得率(%)

(注3)

労働者の男女の

賃金の差異(%)(注2)

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

㈱ホンダファイナンス

6.0

68.5

70.2

89.3

 

 (注)  1 管理職に占める女性労働者の割合については、当事業年度末日を基準日としています。また、男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、当事業年度を対象期間としています。

2 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年(平成27年)法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年(平成3年)法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年(平成3年)労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等および育児目的休暇の取得割合を算出したものです。

4 連結子会社のうち主要な連結子会社以外のものについては、「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報 (2) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しています。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。詳細は「3 事業等のリスク」を参照ください。

 

(1) ガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス

当社グループは、「基本理念」、「社是」および「運営方針」の3つから構成されている「Hondaフィロソフィー」に根ざした企業活動を推進しています。

当社グループでは、長期経営方針や中期経営計画は経営会議(議長:取締役 代表執行役社長 最高経営責任者)や取締役会で承認・決議しています。気候変動問題への対応を含む最終的な監督機関は取締役会であり、経営会議では取締役会の決議事項等について事前審議を行うとともに、取締役会から委譲された権限の範囲内で、経営の重要事項について審議しています。

また、事業活動に伴う様々なリスクへ対応し、社会と当社グループの永続的な発展に向けた事業運営の監督を行う必要性から、気候変動問題への対応を含む「ESG・サステナビリティ」を必要スキルの一つとして定め、取締役を選任しています。

各本部・統括部や各子会社では、全社の長期経営方針や中期経営計画に基づき、実行計画・施策を企画・推進し、重要事項については経営会議で適宜、報告・承認されています。「環境」「安全」「人材」「人権」「労働安全衛生」「品質」「サプライチェーン(購買・物流)」などの各領域では、会議体を設け、情報共有や議論などを通じてグローバルマネジメントを推進しています。また、気候変動問題への対応など、部門をまたぐ重要課題については経営メンバーが直接指揮を執る「部門横断タスクフォース」を組成し、実行計画・施策の検討提案を適宜行い、重要事項については経営会議で報告・承認されています。また、各領域に関するコンプライアンスやリスク管理については、当社の内部統制システム整備の基本方針に基づいて運用されています。

これまでは、内外環境認識を踏まえた全社の方向性と、コーポレートとして取り組むべき重要課題を合意することを目的として設定された「コーポレート統合戦略会議」にて、サステナビリティ課題への方針や取り組みの議論・検討を行ってきました。また、環境安全領域の推進強化として、「世界環境安全戦略会議」を設定していました。

2023年度には、全社目標であるKGI(監督側指標)およびKPI(執行側指標)を明確にし、スピーディに提供価値へと結び付けることのできる企業運営をめざして、経営オペレーションの高度化を行いました。各本部・統括部、各子会社および「部門横断タスクフォース」にて、実行計画・施策の検討提案を適宜行い、重要事項については経営会議で報告・承認する体制としました。これに伴い、年1回を基本に開催していた「コーポレート統合戦略会議」および「世界環境安全戦略会議」は発展的解消をしました。

取締役会が監督責任を有するKGIや経営会議が執行責任を有するKPIは、取締役会や経営会議が進捗を定期的にモニタリングすることで、経営ガバナンスの強化をはかっています。財務指標および非財務指標に連動した役員報酬制度については「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」を参照ください。

 


 

 

② リスク管理

Hondaグローバルリスクマネジメント規程」を制定し、リスクを能動的にコントロールすることで、「持続的成長」や「経営の安定化」につながる活動を行っています。

リスクマネジメントオフィサー監視、監督のもと、当社グループの有形・無形の資産、企業活動、ステークホルダーに重大な被害・損失を与え、企業経営に影響をもたらす可能性があるものと定義したリスクを分類・管理・対応しています。各組織でリスクの特定・評価を実施し、その評価結果をもとに各本部のリスクマネジメントオフィサーが「本部重点リスク」を特定しています。

また、社内のリスク認識に加え社外のリスクトレンドも反映し、コーポレートとして重要なリスクを「全社重点リスク」として特定し、対応状況の確認・議論を行っています。リスクマネジメントに関する重要事項については、リスクマネジメント委員会で審議しており、実施内容については経営会議で適宜報告されています。

 

(2) 重要な戦略並びに指標及び目標

① 戦略

当社グループは、我々のめざす未来のモビリティや魅力的なモビリティ社会を、「環境・安全」という社会的価値を携えて実現することで、企業としての新たな成長軌道を描いていきたいと考えています。

 

<環境戦略>

当社グループは、環境負荷ゼロ社会の実現をめざします。「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション」、この3つを1つのコンセプトにまとめた「Triple Action to ZERO」を中心にして、取り組みます。また、この3つは密接に関連しており、単独で推進するのではなくそれぞれの連鎖を考慮しシナジー効果の最大化をめざしています。

 

カーボンニュートラル(二酸化炭素排出量実質ゼロ)

「気候変動問題」への対応として、産業革命以前と比較した地球の平均気温上昇を1.5℃に抑えるため、企業活動および製品ライフサイクルから排出されるCO2の排出量実質ゼロをめざします。

企業活動のCO2排出総量削減に向けて、生産効率向上、省エネルギー施策の導入、低炭素エネルギーへの転換、再生可能エネルギーの活用を推進していきます。製品領域のCO2排出量削減に向けては、電動化をはじめとするカーボンニュートラルに向けた環境革新技術の投入やエネルギーの多様化対応、トータルエネルギーマネジメントの取り組みを推進していきます。

 

クリーンエネルギー(カーボンフリーエネルギー活用率 100%)

「エネルギー問題」への対応として、企業活動および製品使用において使用されるエネルギーをすべてクリーンなエネルギーにすることをめざします。

四輪車の主要生産拠点である埼玉製作所完成車工場では、CO2削減技術の構築と、再生可能エネルギー等を活用したクリーンエネルギー化を実施し、2025年度にカーボンニュートラル工場の実現をめざしています。またこれらをグローバルに展開するにあたり、事業所間、地域間での情報共有を促進する仕組みを構築しています。

 

リソースサーキュレーション(サステナブルマテリアル使用率 100%)

「資源の効率利用」への対応として、環境負荷のない持続可能な資源(サステナブルマテリアル)を使用した製品開発や仕組みづくりに挑戦します。企業活動領域においては、2050年に工業用取水と工業系廃棄物ゼロをめざします。

積極的にリサイクル資源を活用しながら、重要鉱物などを含む材料調達の安定化をはかるとともに、先進リサイクル技術の研究や循環バリューチェーン構築の働きかけを通じて、CO2の削減とエネルギー消費の抑制にも貢献し、循環型経済につながるような取り組みを続けていきます。

 

 

<安全戦略>

当社グループは、交通事故死者ゼロの実現に向けて、人の能力(啓発活動)、モビリティの性能(技術開発)、交通エコシステム(他者との協働やシステム/サービス開発)の3つの要素を個別に進化させるとともにそれぞれを組み合わせることで、様々な要因により引き起こされる事故に対応します。

今後、2030年に向けた大きな課題は、新興国で二輪車が関与する死亡事故です。当社グループは、幅広い方々を対象とした啓発活動とともに二輪車へ「ABS」(注1)「CBS」(注2)などの先進ブレーキ、視認性および被視認性の高い灯火器などの装備を搭載しています。また四輪車については、新興国、先進国での事故低減に有効な先進運転支援システム(ADAS)の機能進化と普及を積極的に推し進めています。

そして、その先にある2050年に向けた大きな課題は、全世界における、歩行者や自転車に乗る人、ライダーなどの交通弱者の死亡事故です。この課題対応にあたっては、すべての交通参加者である人とモビリティが通信でつながることで、事故が起きる手前でリスクの予兆・回避をサポートする「安全・安心ネットワーク技術」の研究開発などを推し進め、当社グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざします。

 

(注) 1 アンチロックブレーキシステム

2 コンバインドブレーキシステム

 

 

② 指標及び目標

 <環境戦略>

当社グループは、「環境負荷ゼロ」社会の実現に向けて、「Triple Action to ZERO」を実行していきます。指標目標については、以下のとおりです。

 

2030年目標

2050年めざす姿

企業活動CO2排出総量削減率 (2019年度比)

46%

CO2排出実質ゼロ

電動製品販売比率

二輪車

15%

四輪車

30%

パワープロダクツ

36%

製品CO2排出原単位削減率 (2019年度比)

二輪車

34.0%

四輪車

27.2%

パワープロダクツ

28.2%

企業活動 廃棄物等総量削減率 (BAU(注)比)

14.5%

工業系廃棄物ゼロ

企業活動 取水総量削減率

(BAU(注)比)

14.5%

工業用取水ゼロ

 

(注) 2030年生産計画を基に、削減に向けた対策・施策を行なわないと仮定した場合の推計値(Business as Usual)

 

<安全戦略>

当社グループは、2050年に全世界で、当社グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざします。また、そのマイルストーンとして2030年に全世界で当社グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者の半減(注1)をめざします。これらは新車だけでなく市場に現存するすべての二輪車、四輪車が対象となります。

2030年のマイルストーンの実現に向けて、四輪車の先進運転支援システム(ADAS)の機能進化と普及が重要となります。事故の回避、または被害軽減をさらに拡大する全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360」は、2030年までに先進国の全機種展開をめざします。二輪車の交通事故死者削減に向けては、四輪車の二輪検知機能を備えた「Honda SENSING」、二輪車の先進ブレーキ(ABS/CBS)を新興国含め順次展開を進めています。

 

2030年目標

先進安全装備適用率

先進国 四輪車(注2) 

Honda SENSING 360

100%

新興国 四輪車(注3)

Honda SENSING

100%

新興国 二輪車(注4)

先進ブレーキ(ABS/CBS)

100%

 

 

(注) 1 2020年比で2030年に全世界で当社グループの二輪車、四輪車が関与する1万台当たりの交通事故死者数を半減。

2 日本、米国、中国、欧州

3 代表測定国:インド、インドネシア、マレーシア、タイ、ブラジル

4 代表測定国:インド、インドネシア、ベトナム、タイ、ブラジル

 

 

(3) 人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標

① 戦略

<当社グループの人的資本経営をストーリーで定義>

当社グループの人的資本経営の取り組みとして、事業戦略と人材戦略の連動をはかるため、人領域において集中的に取り組むべき課題を「人材マテリアリティ」として定義しています。人材マテリアリティの定義にあたっては、全社重要テーマである「人的資本経営の進化」において中長期的に取り組むべき観点と、事業戦略に資するための短中期的観点の両面で、集中的に取り組むべき方向性を全社での議論を経て定めています。

そして、人材マテリアリティが達成された状態を測る指標として経営管理指標(KGI)とその目標値を定め、この目標値を達成するための人材戦略・施策・施策KPIを一連のストーリーとして定義しています。経営管理指標(KGI)および関連する施策KPIは経営管理の枠組みで定期的にモニタリングされ、必要に応じて指標・目標値の見直しや施策の修正・追加などを行い、PDCAサイクルを実行していきます。

 


 

<当社グループの人材戦略>

「人的資本の最大有効活用による企業競争力向上と事業構造改革」をめざした人材戦略を展開しています。

 

1.(中長期的観点)従業員の内発的動機の喚起と多様な個の融合

企業競争力の根源となる当社グループの価値観を大切にしながら、プロ人材育成・実践を促す場・仕組みの整備、キャリア・働き方の多様化を実施します。そして、「夢」へ挑戦するヒト・組織を強化していきます。

 

2.(短中期的観点)事業上の重点領域の人材の量的・質的充足

事業の構造改革を人の領域から推進するために、特に重点領域における量的・質的な充足を目標とした人材獲得・リソースシフトに向けた取り組みを進めていきます。さらにリソースシフト実現のため、重点領域へのリスキル・アドスキルを目的とした積極的な人材投資を実行していきます。

 

 

② 指標及び目標

<人材戦略達成のための経営管理指標(KGI)および目標の設定>

1.(中長期的観点)従業員の内発的動機の喚起と多様な個の融合

(高い意欲・目標(夢への挑戦)をもって臨み、上位者が挑戦を支援する)

「当社グループで働く一人ひとりの夢」を原動力としてお客様に価値を提供するために、共通思想としてのグローバルブランドスローガンを深く認知、理解し、行動として実践することを改めて重要取り組みとして徹底していきます。高い意欲・夢への挑戦の実践度を測るために、エンゲージメントサーベイの設問を新設し、エンゲージメントスコアの算出についても、達成したい状況をより明確に表せる方法に変更しています。あわせて、一人ひとりの夢への挑戦には、組織の上位者が積極的に支援することが不可欠だと考え、エンゲージメントサーベイの設問に反映しています。

 

(多様な知の融合によるシナジーの発揮)

多様性の取り組みにおける最終ゴールは多様性を活かし新たなビジネスを生み出すことだと考えています。特に女性活躍の推進は待ったなしの課題であると認識し、ビジネス環境の変化の時こそ女性活躍の場が広がるチャンスだと捉え、継続したアプローチを行っていきます。グローバルで俯瞰すると女性の活躍機会に課題があるのは日本と捉えています。課題と捉えている日本の女性管理職比率を指標としています。また、グローバルでのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組みもあわせて展開していきます。

 


(注) 実績としては目標へ向けて推進中

   対象範囲は国内労働協約適用会社

 

2.(短中期的観点)事業上の重点領域の人材の量的・質的充足

(重点領域の人材充足を実現する人材獲得・リソースシフト)

事業の成功に資するため、事業ポートフォリオと連動した量的・質的な人材充足を推進し、事業計画の見直しを含めた充足提案を行います。

 

(重点領域への積極的な人材投資)

重点領域であるソフトウェアのスキル獲得のために、これまで以上に人材投資を推し進めていきます。全社共通のリスキルプログラムに加えて、本領域での新価値を生み出すため、専門能力を強化するプログラムを大幅に拡大します。

 


(注) 対象範囲は国内労働協約適用会社

 

 

(4) 気候変動対応 (TCFDに基づく気候関連財務情報開示)

当社グループは「気候変動・エネルギー問題への対応」を環境分野における最重要課題の一つと考え、2021年4月に「2050年に、当社グループの関わるすべての製品と企業活動を通じ、カーボンニュートラルをめざすこと」を表明しました。当社グループは金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)により設置されたTCFD(Task Force on Climaterelated Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同しており、TCFDが提言する情報開示フレームワークに沿った開示を行っています。

 

① ガバナンス

当社グループは、ライフサイクルでの「環境負荷ゼロ社会の実現」に向けた取り組みをグループ全体で推進しています。

当社グループは、長期経営方針や中期経営計画は経営会議(議長:取締役 代表執行役社長 最高経営責任者)や取締役会で承認・決議しています。気候変動問題への対応を含む最終的な監督機関は取締役会であり、経営会議では取締役会の決議事項等について事前審議を行うとともに、取締役会から委譲された権限の範囲内で、経営の重要事項について審議しています。

また、事業活動に伴う様々なリスクへ対応し、社会と当社グループの永続的な発展に向けた事業運営の監督を行う必要性から、気候変動問題への対応を含む「ESG・サステナビリティ」を必要スキルの一つとして定め、取締役を選任しています。

各本部・統括部や各子会社は、全社の長期経営方針や中期経営計画に基づき、実行計画・施策を企画・推進し、重要事項については経営会議で適宜、報告・承認されています。各事業本部や各地域本部では、「グローバル環境事務局会合(事務局:コーポレート戦略本部)」で共有される情報をもとに、グローバルの中長期環境方針を踏まえ、実行計画を策定し、施策を推進しています。各地域本部では、「地域環境会議」を開催し、地域本部内でのPDCAを推進しています。各事業本部では、地域の進捗状況をモニタリングし、事業本部内でのPDCAを推進しています。コーポレート戦略本部では各事業本部や各地域本部での進捗状況をモニタリングし、必要に応じて中長期環境方針や目標の見直しを検討します。なお、重要事項は経営会議にて報告・承認され、取締役会にて報告・決議されています。また、気候変動問題への対応など、部門をまたぐ重要課題については「部門横断タスクフォース」を組成し、実行計画・施策の検討提案を適宜行い、重要事項については経営会議で報告・承認されています。

気候変動を含む環境に関するコンプライアンスやリスク管理については、当社の内部統制システム整備の基本方針に基づいて運用されています。

当社グループでは「環境負荷ゼロ社会の実現」に向けて、取締役会が監督責任を有するKGIや経営会議が執行責任を有するKPIは、取締役会や経営会議が進捗を定期的にモニタリングすることで、経営ガバナンスの強化をはかっています。財務指標および非財務指標に連動した役員報酬制度については「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」を参照ください。

 


 

② リスク管理

当社グループでは、「リスクマネジメント委員会」において事業運営上重要なリスクを「全社重点リスク」として特定し、対応状況の確認・議論などを行っています。

気候変動関連リスクである、気候変動に起因する環境規制に関わるリスクや自然災害等リスクについてもこの管理・監視項目の中で把握し、組織特性を踏まえたより効果的なリスクマネジメント活動の展開をはかっています。

コーポレート戦略本部では、全社重点リスク等の社内のリスク認識に加え、社外のリスクトレンドも反映のうえ、TCFD提言に基づいたシナリオ分析を行い、気候変動関連リスクを評価・特定しています。気候変動関連リスクに関するシナリオ分析の結果は、リスクマネジメント委員会へ共有しています。

気候変動関連リスクへの対応は、コーポレート戦略本部、事業本部、地域本部を中心に、各本部・統括部、各子会社および「部門横断タスクフォース」で推進しています。

気候変動関連リスクへの対応を含むリスクマネジメントに関する重要事項については、リスクマネジメント委員会で審議しており、実施内容については経営会議で適宜報告されています。

リスクマネジメント活動におけるリスク評価・管理プロセスについては「(1) ガバナンス及びリスク管理」を参照ください。

 

③ 戦略

当社グループでは、より持続可能な企業経営実現のために、気候変動に対するリスク・機会を特定し、当社グループの全社戦略へ反映するとともに、技術・製品・サービスの進化により、新たな事業機会を創出することができるよう対応することで、企業としてのレジリエンスを高める取り組みを進めていきます。

 

<シナリオ分析の概要>

当社グループでは、気候変動が事業に与える影響を評価・考察するにあたり、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行の影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)および環境規制が強化されず物理リスクが高まるシナリオ(4℃シナリオ)を含む複数のシナリオを設定し、TCFD提言にも推奨されるシナリオ分析を実施しています。

シナリオ分析では、TCFD提言の分類に沿って、気候変動関連リスクと機会を検討し、シナリオ下における2030年時点の財務影響度を可能な限り定量化し、評価・考察しました。なお、シナリオ分析は二輪・四輪・パワープロダクツ事業を対象としています。

 

 

TCFD提言に基づくシナリオ分析では、以下のシナリオを主に使用し、想定する世界観を整理しました。

 

(1.5℃シナリオ)

1.5℃シナリオでは、IEA(国際エネルギー機関)のNZE(Net Zero Emmissions Scenario)、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のAR6SSP11.9の報告内容を参考にしました。

1.5℃シナリオでは、世界全体で2050年カーボンニュートラルに向けた施策が推進され、新技術の開発や利用の促進により脱炭素製品が広く普及することや、再生可能エネルギーの利用が拡大することが想定されます。また、循環型経済への移行が加速することが想定されます。

自動車業界では、燃費・ZEV規制がさらに強化され、先進国を中心にEV(電気自動車)やFCEV(燃料電池自動車)の需要が増加する見込みです。さらに、二輪・四輪・パワープロダクツ事業において、脱炭素製品やサービスを好むお客様が増加するなど顧客価値観の変化が想定されます。

 

(4℃シナリオ)

4℃シナリオはIPCCのAR6SSP37.0を参考にしました。4℃シナリオでは不可逆的な環境の変化が想定され、自然災害が頻発化・激甚化することが想定されます。

 

<主なリスクと機会およびその対応(注)>

分類/シナリオ

リスク

機会

対応

移行

リスク

1.5℃

政策・法規制

・燃費規制未達による罰金支払い

 

・燃費規制強化によるICE(内燃機関)新車販売台数減

 

・炭素税・排出権取引(ETS)の導入による費用負担増

・電動化製品やサービスの販売拡大

 

・省エネルギー施策の導入や再生可能エネルギーの活用による事業運営コスト削減

・電動化をはじめとするカーボンニュートラルに向けた環境革新技術の投入やエネルギーの多様化対応、トータルエネルギーマネジメントの取り組みの推進

 

・生産効率向上、省エネルギー施策の導入、低炭素エネルギーへの転換、再生可能エネルギーの活用の推進

市場の変化

・市場のエネルギークリーン化に伴うエネルギー購入価格の上昇

物理

リスク

4℃

急性・慢性

・自然災害による資産損害

 

・営業停止またはサプライチェーン寸断による生産停止の発生

・災害時に非常用電源へ転用が可能な、電動化製品の需要増

・事業継続計画(BCP)の策定、見直しおよび訓練実施による対策の実施

 

・サプライチェーンの見直しおよび強化

 

 

(注) 記載されているリスクと機会ならびに対応は、すべてを網羅するものではありません。

 

④ 指標及び目標

当社グループは、2050年にすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルをめざしています。

2050年CO2排出実質ゼロにむけた指標目標については「(2) 重要な戦略並びに指標及び目標」を参照ください。