2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経済状況の変化について

 欧州、中東における地政学的なリスクの高まりは、当社グループが製品を製造・販売している国や地域の経済情勢の変動を招いているとともに、石油・天然ガスなどの資源価格の高騰や、金融市場にも大きな影響を与えています。加えて、SDGsやTCFDなど、人権や環境に対する社会的な意識の高まりや、自動車業界における、電動車市場の急成長などは、今後の経済動向に大きな変化をもたらすとみられ、当社グループの経営成績、財政状態も影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、SDGsについては、今仙のサスティナビリティ活動施策である「ISP(Imasen Sustainable Plan)2030 ‐地球とIMASENを持続可能にする‐」を策定し、21年度から推進・展開するとともに、気候関連問題も重要な社会課題のひとつとして認識しており、2023年3月にTCFD提言に賛同を表明しております。加えて、電動車市場への対応では、完成車メーカーとの協業体制により、電動駆動ユニットの開発・生産に関する取り組みを行っております。また、欧州、中東における地政学的なリスクについては、そのリスクによって引き起こされる資源価格の高騰、金融市場の混乱、物流の混乱等について、影響度合いを注視しながら、個別に対応を検討してまいります。

 

(2) 為替レートの変動について

 当社グループの主要基盤である自動車部品関連事業については、引き続き海外売上高が一定の比率を占めるものと予想されます。他国の通貨に対する日本円の為替レートの変動は、販売価格面での競争力に影響を及ぼし、延いては経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 また、当社の外貨建取引による外貨換算額及び連結財務諸表作成に用いる海外グループ会社の財務諸表は、決済、換算時の為替レートにより円換算の価値に影響を与えることから、当社グループの経営成績、財政状態が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、為替変動に対しては社内基準に基づき為替予約を実施するとともに、外貨建取引については、その影響を抑えるべく、地産地消に向けた現地調達、現地生産の検討、実施を進めております。

(3) 特定得意先への依存について

 当社グループは自動車部品関連事業を主たる事業とし、グループ総売上高に占める当該事業の売上高の割合は、当連結会計年度において95.5%となっております。自動車部品関連事業の売上高のうち、本田技研工業㈱系列に対する売上高38.1%、㈱SUBARU系列に対する売上高17.9%、マツダ㈱系列に対する売上高15.1%、三菱自動車工業㈱系列に対する売上高7.9%、日産自動車㈱系列に対する売上高6.6%と高い割合になっており、各社の事業方針、経営施策、各社及び各社取引先における品質問題等が発生した場合の販売影響等により当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、2021年度に開示した「中長期経営計画2029 - Trust & Challenge -」において、シート事業の事業基盤の強化を推進し収益重視の事業体質へと転換を図るとともに、電子事業の拡大、新事業の採算事業化に取り組むことにより、シート、電子、新事業の3事業のバランス化を推進し、特定得意先への依存リスクの軽減を図ります。

(4) 製品の不具合が生じた場合の責任について

 自動車部品関連事業において、当社グループが製造・販売した製品に何らかの不具合が生じた場合、得意先自動車メーカーが実施する改修費用のうち、責任割合に対応する負担が発生することとなり、当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、法律上の損害賠償責任が発生した場合に備えて製造物賠償責任保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する補償額を十分カバーできる保証はないことから、世界に通用する品質保証体制を確立し、お客様に満足いただける製品を提供することを目的として、自動車産業における世界共通の品質管理・保証規格であるIATF16949:2016の認証を取得しており、品質管理・品質保証体制を構築して、製品不具合リスクの軽減を図っております。また、品質重視の環境を整備するべく、品質管理体制の強化、見直しなどにより、グローバル全体で製品の品質向上に取り組みます。

(5) コンプライアンス違反について

 近年、モノ造り企業において品質に関連する不適切行為の報告が増加しております。当社グループにおいても、品質管理・保証規格であるIATF16949:2016の認証を取得し、品質保証体制を構築しておりますが、それだけでリスクを消し去るものではなく、ひとたびコンプライアンス違反が発生した場合は、当社グループの経営成績に影響を受けるばかりでなく、社会的信用も失墜する可能性があります。

 当社グループでは、コンプライアンス違反が発生しないよう、倫理綱領、行動規範の周知徹底や、コンプライアンス委員会からの啓発活動や、メールによる目安箱の設置など、風通しの良い企業風土の醸成に取り組んでおります。加えて、定期的な従業員満足度アンケートにより従業員の満足度、エンゲージメント数値を確認して、働きやすい職場を実現していくとともに、「信頼(Trust)と挑戦(Challenge)」を当社グループ経営理念の中心に据えて、当該リスクに対応するとともに、倫理、コンプライアンスを含む緊急事態発生に対するレポートラインを整備し、迅速な対応ができる体制整備に取り組んでおります。

(6) 原材料、部品の供給状況による影響について

 当社グループにて消費する原材料、部品の調達については、市況変化、資源エネルギーの供給不安による価格高騰の影響を受けており、当事業年度においても先行きが不透明にあります。今後、事態がさらに悪化した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、日頃より原価低減活動に取り組むとともに、世界的な供給状況の混乱を受けて、調達先の複数化、在庫日数の延長や需給変動と調達期間のギャップ等、環境や調達先起因によるリスクを分析し、生産変動、供給維持に向けた対応を進めております。

 

(7) 自然災害、感染症等について

 当社グループの国内及び海外の生産拠点において、地震、洪水等の自然災害、感染症等が発生した場合、当社グループの操業に直接的又は間接的に影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、災害、感染症拡大等の有事に備え、被害を最小限に抑え、事業の継続を図るべく、事業継続計画(BCP)を整備しその対応に努めるとともに、緊急事態発生に対するレポートラインを整備し、迅速な対応ができる体制整備に取り組んでおります。

(8) 固定資産の減損損失について

 当社グループが保有する有形固定資産、無形固定資産において、資産の価値が著しく下落した場合や事業の損失が継続するような場合には、固定資産の減損損失の計上により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、減損の兆候を捉えた場合、適時に減損損失額の把握を行い、業績及び財務状況に及ぼす影響を最小限とするよう、対応を行います。

(9) 情報漏洩、サイバー攻撃について

 当社グループが行う生産、販売活動及び各種事業活動は、ITシステム及びシステム間を繋ぐ通信ネットワークを利用しており、通信ネットワークにおける障害や、ランサムウェアに代表されるサイバー攻撃、ハードウェアの故障等のリスクに晒されており、その影響を受けた場合は、事業活動に支障が出る可能性があるとともに、社会的信頼を損ない、多額の費用負担が発生する可能性があります。

 当社グループでは、様々なITリスクへの対応と、変革するデジタル社会に適応するために、「従業員が どこでも 安全に ストレスフリーに仕事ができるIT環境」を目指したロードマップを作成し、ビジネスツール、セキュリティ基盤の整備を推進するとともに、「今仙情報セキュリティハンドブック」を社内WEB上で公開し、従業員のセキュリティ意識向上に活用しております。

(10) 人的資源の流失について

 当社グループの主力事業である自動車部品関連事業では、CASEに代表されるように百年に一度の大変革期を迎えており、業界各社がデジタル人材の獲得に動いています。加えてこれまでの年功序列型賃金は制度疲弊をしており、ジョブ型給与への移行が進むとみられ、ライフスタイルの変化とともに労働力の流動化が加速すると考えられます。今後、魅力的な仕事、ライフスタイルにマッチした賃金、福利厚生制度に対応できなければ、人財が流出し、事業の継続に影響を及ぼす事態になる可能性があります。

 当社グループでは、環境の変化に対応し、会社と従業員の持続的成長に向けた事業変革として、2024年4月より従来の年功序列型賃金から脱却し、どの世代でも高い目標にチャレンジし活躍している社員を評価する新人事制度に移行しました。今後は新人事制度を浸透させることにより、従業員とのエンゲージメントを高めて、当該リスクに対応してまいります。

(11) 国家間協定・条約等の影響について

 世界経済は、グローバル経済から、保護主義的な経済活動に移ってきており、資源エネルギーを取り巻く環境や、半導体製造やEV車などの電池製造などに関わる国家政策は、電機産業、自動車産業に留まらず、全ての経済活動に影響を及ぼしています。その結果がもたらす、各社及び各社取引先の事業方針、経営施策を含め、当社グループの事業計画が影響を受ける可能性があります。

 当社グループでは、国家間協定・条約等の影響を最小限に抑えるべく、各国、各地域の協定・条約の締結動向を注視するとともに、地産地消に向けた現地調達、現地生産の検討、実施を進めております。

 

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、持続的な成長を維持していく中で、財務体質と経営基盤の強化を図りながら、株主の皆様への安定的・継続的な利益還元を行うことを配当政策の基本方針としております。

 当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本方針としております。配当の決定機関は、取締役会であります。

 また、内部留保金につきましては、企業体質の一層の充実及び長期的な事業展開を維持していくための設備投資や研究開発投資に充当し、将来にわたり株主の皆様のご期待に沿うべく努力してまいります。

 自己株式の取得につきましても、株主の皆様に対する有効な利益還元のひとつと考えており、株価の動向や財務状況等を考慮しながら適切に対応してまいります。

 当期末の配当金につきましては、基本方針である安定的な配当と業績のバランスを考慮し、1株当たり6.0円とさせていただきました。

(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月7日

131

6.0

取締役会決議

2024年5月13日

131

6.0

取締役会決議