リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業の特性
当社グループは、2024年3月期で鉄道車両関連事業の売上高が連結売上高の98.1%を占める実質的な鉄道車両専業メーカーであり、新製車両の需要の動向に左右されやすい事業構成となっております。経済情勢等の影響により受注競争が激化し、安定的に受注できなかった場合や厳しい条件での受注となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
中長期的な視点でみると、国内市場は、さらなる安全性の向上、バリアフリー化、カーボンニュートラルを目指した省エネルギー化などのための鉄道車両の置き換え需要が見込めるものの、人口減少などによる鉄道車両の需要減少が予想されます。また海外市場は、車両更新需要や新線の建設による新たな受注が期待できますが、受注競争の激化や現地生産化要請に加え為替変動リスクなどを抱えております。
こうした状況にあって、当社グループは、従来からの顧客の信頼に応えるとともに、製造体質の強化を図り、これまでに培ったデザイン力や製造技術力を活かしてそれぞれの国、地域に最適な車両を提案し、新規顧客の案件獲得にも注力してまいります。
・国内事業
国内事業の売上高は、JR各社や公民鉄等の鉄道事業者の発注によるものです。社会の高度化と顧客からの車両品質向上の要求が強まる一方で、メーカー間の競争の激化によりコスト低減要求が強まる傾向にあります。従前より「優れたデザイン力」、「高品質な溶接技術」等の特徴や技術を推し進めておりますが、入札指名や随意契約の指名を受けるために、さらなる利点を追求し、当社グループの望む評価の確保とその向上に努めております。
・海外事業
海外案件で輸出する車両は、欧州主導の世界標準の鉄道技術及び規格等に対応しなければなりません。また、海外においては業界の寡占化、グローバル化が進んでおり、受注に際してはこれらの会社との競合があり、厳しい競争になります。さらに米国案件においては、バイアメリカン条項により70%以上の米国内での調達が必要となっております。また、海外の案件では仕様・規格の制約上、主要機器の多くは欧州のメーカーを選択することになります。
(2) 個別受注管理
当社グループの鉄道車両関連事業は、個別契約に基づき受注するオーダーメイドの案件が多く、受注から納車までの期間が数年に及ぶため、当初想定できなかった著しい景気変動や経済情勢の変動等による原材料の価格高騰や調達部品の納入遅延、あるいは設計変更や工程変更等による想定外の追加費用の発生するおそれがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
そのため受注に際しましては、契約締結前に価格、仕様、納期、収支等について十分な社内検討を行っており、社内常勤役員全員が出席する会議で討議、決定することとしております。また、案件の製造開始後の工程・収支管理につきましても、同様の会議を通じて問題の共有化と対策の早期実施を図っております。
(3) 製品の品質
当社グループは、公共輸送を担う鉄道車両の製造を請け負っており、顧客の要求仕様を十分に満たした上に社内で確立した厳しい基準にて品質確保と信頼性の向上に努めています。しかし、鉄道車両は鉄道システムの一部であり当社単独では予想しえない事故や不具合が発生した場合、また品質に起因する事故あるいはクレームやリコールにより損害賠償や訴訟費用等の多額のコストが発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
そのため当社は、製品の品質確保に向けて、ISO9001(品質マネジメントシステム)の認証を取得して、確かな設計・製造技術、信頼のおける品質管理体制を築いているほか、常に新しい技術開発の推進やRAMS(鉄道システム全体の安全性・信頼性に関する国際規格)の定着にも全社をあげて取り組んでおります。
(4) 人材確保
鉄道車両は、鉄道事業者ごとの仕様に基づく発注であり、車両数も限定的であります。従って、量産体制でなく多品種少量生産となっており、多くの熟練工社員がほぼ手作業で製品を組み立てております。これらの技術力は一朝一夕に伝承されるものではなく、教育・訓練を充実させて技術伝承に努めております。
少子高齢化と団塊の世代の退職が進む中、将来を支える優秀な若年層の人材確保が年々難しくなっており、人材が確保できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、訓練センターを設置し若年層の技量アップを図り、社員が働きやすい環境の整備を進め現有社員の流出を防ぐとともに採用活動を通じて安定した人材確保に努めております。
(5) 資金調達・金利変動
当社グループは、キャッシュ・フローの将来見通しを勘案して低金利の資金調達に努めておりますが、金融市場の動向や調達金利の上昇が当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、メインバンク、準メインバンクより安定的な資金を調達するとともに、他の金融機関からも幅広く資金を調達いたしております。
(6) 為替の変動
当社は外貨建て取引の比率が半分近くになる場合があり、為替の動向によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、為替の動向を考慮しながら適宜為替予約等のリスクヘッジに努めております。
(7) 大規模災害等
地震・台風等の大規模災害や感染症の流行等が起こった場合には、当社グループの業績に直接的又は間接的に影響を及ぼす可能性があります。
地震等の大規模災害に備えて耐震補強工事や定期点検、非常時訓練等を実施しており、台風等による損失につきましては、一定の範囲で損害保険を付しております。また、従業員の安否確認の集計、会社からの指示などの連絡手段としての安否確認システム導入、水や食料の備蓄などを進めております。
感染症の流行等への対策としては、社員の感染や部品調達の停滞等により生産工程に影響が出るおそれがあるため、感染拡大防止のための取り組みを社員・協力会社をあげて実施してまいります。
(8) 新型コロナウイルス感染症
コロナ禍の期間、当社の主たる取引先である鉄道事業者の投資計画見直しにより受注高が減少していたことから、受注から納車までの期間が数年に及ぶ当社グループにとって、第113期は最もコロナ禍の影響を受ける年度になると見込んでおります。旅行需要やインバウンドの増加を踏まえた受注回復が期待されますが、新型コロナウイルス感染症拡大の経験を踏まえたテレワークなどの人々の新しい行動・生活様式への変容の動きが鉄道事業者殿の車両投資に与える影響等も注視し受注活動を行ってまいります。
配当政策
3 【配当政策】
当社では、株主に対する継続的な利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置付けており、剰余金の処分の方針といたしましては、受注産業としての性格上、事業年度毎に受注環境に大きな変動が生じやすいため、業績の状況に左右されない安定配当を行うことを基本方針としております。なお、業績に著しい変化が生じた場合は、配当の見直しを行います。
当社は、剰余金の配当時期として、年に1回、期末に配当を行うことを基本方針としております。また、当社は会社法第459条第1項の規定に基づき取締役会の決議によって剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めております。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。