2024年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

(単一セグメント)
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 2,481 100.0 414 100.0 16.7

事業内容

 

3 【事業の内容】

当社は、再生医療・細胞治療を目的とした、「さい帯血」や「さい帯」等の周産期組織由来の細胞バンク事業及び、それらの細胞を利用した、新たな治療法、再生医療等製品の開発、そしてこれらの事業基盤をベースにした再生医療・不妊治療・出産・子育て等の領域での事業開発及び投資等の事業展開を行っております。

なお、当社は「細胞バンク事業」の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っていません。

 

(1)さい帯血バンクについて

「さい帯血」は、お母さんと赤ちゃんをつないでいる、へその緒や胎盤の中に含まれている赤ちゃんの血液であります。さい帯血を保管する「さい帯血バンク」には、「公的さい帯血バンク」と「民間さい帯血バンク」があります。公的さい帯血バンクでは、造血幹細胞移植法に基づきお母さん達から「無償」でさい帯血の提供を受け、白血病等の病気で移植治療を必要とする患者さん(第三者)のために保管しております。2024年3月31日現在、厚生労働大臣の許可を受けた公的さい帯血バンクは全国に6ヵ所あります。

民間さい帯血バンクでは、「本人や家族」が、将来何らかの治療(主に脳性麻痺や自閉症等への再生医療)に使うことができるようになる可能性を想定し、「有償」で、さい帯血の保管を行っております。

民間さい帯血バンクは、公的さい帯血バンクと違い許可制ではありませんが、厚生労働省(健康局)へ「臍帯 血取扱事業の届出」の提出を要請されており、同届出を行っている民間さい帯血バンクは、当社を含めて2社であり、当該2社のさい帯血保管総数は78,881件、当社の保管総数は78,077件(厚生労働省健康局「臍帯血の引渡し実績等に関する報告」より(2023年3月31日時点)となっております。

2024年3月31日現在、日本国内において、自己にさい帯血を投与(使用)するためには、対象疾患毎に、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(以下、「再生医療等安全性確保法」という)に基づき、「第2種再生医療等(体性幹細胞など中リスクのもの)」として、再生医療等提供計画を「特定認定再生医療等委員会」(注1)に提出し、審査を受け、適と判断された後、厚生労働大臣へ同提供計画を提出の上、実施する必要があります。

また、2024年3月31日現在、当社における顧客の利用目的(臨床研究における投与も含む)の引渡件数は、累計で、再生医療32件、血液疾患1件、研究目的(モデルマウス等での治療効果の検討等)の引渡件数は101件となっております。

 


(出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/

bunya/kenkou_iryou/kenkou/ishoku/saitaiketsu.html))

 

 

  (2)当社の「細胞バンク事業」について

当社は、顧客(妊婦等)と「さい帯血分離保管委託契約」を締結した上で、国内さい帯血採取協力病院(大学病院、産科クリニック等)において採取されたさい帯血を回収し、自社の細胞処理センター(東京都港区及び横浜市緑区)に搬入、さい帯血に含まれる幹細胞を分離・抽出・調製する作業を行った後、自社の細胞保管センター(横浜市緑区)において、超低温下にて長期保管しております。「さい帯血分離保管委託契約」に基づき、顧客よりさい帯血にかかる分離料、検査料、登録料及び細胞保管料を収受し、将来の使用に備え、保管する事をビジネスモデルとしております。

さい帯血はその採取にあたっては、お母さん、赤ちゃんともに侵襲性(体に傷や痛みを与える程度)が低く、また、通常は出産後に医療廃棄物として廃棄されるものである事から、倫理的にも扱いやすい点がメリットとして上げられます。なお、さい帯血採取により、当社の定めた規定値以上の量を有し、保管基準を満たした場合に、国内さい帯血採取協力病院へ、採取技術料をお支払いしております。

さい帯血には血液を造る「造血幹細胞」や、神経・軟骨・心筋細胞等さまざまな細胞に分化したり、各組織の修復に関与する「間葉系細胞」が含まれており、もともと自分の身体の中にある細胞(体性幹細胞)であるため、がん化のリスクも少なく、安全に使用出来ることから、現在十分な治療法のない小児の中枢神経系疾患(低酸素性虚血性脳症:発症率1~3/1,000人:注2、脳性麻痺:同2~3/1,000人:注3)や自閉症スペクトラム障害(同1/100人:注4)等に対する「再生医療・細胞治療」として、臨床研究が進められております。

さい帯血は、血液疾患等の治療においては、「造血幹細胞移植法」、また、再生医療目的で使用する場合は、「再生医療等安全性確保法」に基づき、適正に使用される必要があります。これらの法律は専門的なものであることから、当社では、治療、検査目的等で当社において保管している細胞(さい帯血)の出庫が必要な場合は、外部有識者を含む専門の委員で組織している、社内倫理委員会において、審議を行いその妥当性を評価の上で実施しております。また、当社はさい帯血保管の品質向上を目的に、2011年よりISO9001の運用を開始しておりますが、グローバル基準への適合を目的に、2019年7月にさい帯血保管に関する国際基準AABBの認証を取得しております。なお、臨床研究実施機関への細胞輸送においても、AABBの品質管理基準を満たした輸送管理体制に基づき、実施しております。

当社は、2016年2月に東京細胞処理センター、2021年3月に横浜細胞処理センターにおいて、再生医療等安全性確保法に基づき、特定細胞加工物製造許可を取得し、同法に基づく細胞提供の体制を整えております。また、当社は、2021年4月より「さい帯(へその緒)組織保管サービス」を開始しております。

再生医療・細胞治療に有望な間葉系細胞は、骨髄や脂肪、さい帯等から得ることができますが、侵襲なく採取可能な点で、さい帯は医療資源として適切と考えられています。間葉系細胞は、炎症を抑制し、かつ拒絶されにくい性質を持つことから、炎症性疾患を対象とした他家利用の臨床開発が数多く行われています。また、間葉系細胞は、炎症抑制作用の他に、他の細胞に分化する性質を持つことから、機能的な細胞・組織に分化させた後に、欠損や障害をきたした組織に代替的に利用する方法の開発も進められています。当社では、自家さい帯を用いた医療開発を積極的に推進し、さい帯の保管意義の向上に努めております。

 

(ご参考)当社におけるさい帯血及びさい帯保管(売上)検体数

期別

さい帯血

さい帯

保管検体数(新規)

保管検体数(累計)

保管検体数(新規)

保管検体数(累計)

2020年3月期

7,232 検体

57,494 検体

2021年3月期

5,695  検体

63,189  検体

2022年3月期

6,907  検体

70,096  検体

1,511  検体

1,511  検体

2023年3月期

7,564  検体

77,660  検体

2,907  検体

4,418  検体

2024年3月期

8,559 検体

86,219  検体

4,047  検体

8,465  検体

 

※ 上表に記載の検体数は、厚生労働省への「臍帯血取扱事業の届出」記載の検体数より、売上に計上していない無料保管分を除いた検体数となっております。

 

 

 (3)さい帯血を用いた国内の臨床研究の状況

さい帯血の臨床研究が進展していくことは、将来さい帯血がより広く利用できることを期待して保管されている当社顧客にとっても有益な情報であり、その動向は当社の業績に影響を与えるものであるとの観点から臨床研究の状況について記載します。

2017年1月に高知大学医学部附属病院で開始された「自家臍帯血を用いた小児脳性麻痺などの脳障害に対する臨床研究(第Ⅰ相)」では、当社の保管細胞が用いられ、2018年4月に予定投与数(6例目の最終投与)を終え、最終投与から約3年かけて患者の経過観察等を行い、その結果が2022年11月に論文が発表されました。自家臍帯血を用いる本臨床研究は、さらなる有効性の評価のための第Ⅱ相臨床研究について、2024年2月に大阪大学第一特定認定再生医療等委員会より実施計画が適切であることを認められており、2024年3月現在、先進医療として進める検討がなされております。

また、2020年10月5日付でjRCT(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)に公表された「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血有核細胞輸血」及び「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血単核球細胞輸血」の臨床研究については、2020年11月11日付の第8回臍帯血による再生医療研究会学術集会において、6例中5例でリハビリテーション単独以上の運動能力改善が認められ、1年以上その状態が維持されていることが報告されております。本臨床研究は、2025年6月終了予定であり、論文が発表される見込みです。

大阪市立大学医学部(大阪府立大学との統合により現在は大阪公立大学医学部)がAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の支援を受け実施した「低酸素性虚血性脳症(HIE)に対する自己臍帯血幹細胞治療(第Ⅰ相)」は、既に終了し論文が発表され第Ⅱ相多施設共同臨床研究が、2020年11月12日付でjRCTに公表され、開始に至っております。この臨床研究の予定症例数15例のうち、10例は当社が細胞加工(さい帯血の細胞分離・輸送)を担うこととなっております。2024年3月現在の症例数は1例となっております。

 

<日本で実施されている臨床研究(当社が細胞の処理・提供を行っているもの)>

対象疾患

実施施設

フェーズ

症例数

ステータス

脳性麻痺等

高知大学医学部附属病院

(自家単核球細胞投与)

Ⅰ(注5)

6例

終了(論文発表済)

Brain Dev 2022

Nov;44(10):681-689.

高知大学医学部附属病院

(同胞間有核細胞投与)

Ⅰ(注5)

5例

被験者募集中

高知大学医学部附属病院

(同胞間単核球細胞投与)

Ⅰ(注5)

3例

募集中断

(被験者不在のため)

低酸素性虚血性脳症

大阪公立大学医学部附属病院他

Ⅰ(注5)

6例

終了(論文発表済)

Sci Rep.2020 Mar

 12;10(1):4603

Ⅱ(注6)

15例

被験者募集中

 

※ 症例数は変更される可能性があります。また、各臨床研究は研究者の方針、診療結果により、延期・中止となる可

  能性があります。

 

 

 (4)細胞処理センターについて

①東京細胞処理センター

再生医療等安全性確保法に基づき、厚生労働省(関東信越厚生局)より特定細胞加工物製造許可を受けた施設(東京都港区)で、さい帯血に含まれる幹細胞の分離・抽出・調製を行っております。またISO9001とAABBの認証を取得し、運営を行っております。

②横浜細胞処理センター

近年のさい帯血保管のニーズの高まりに対応するため、2021年3月に厚生労働省(関東信越厚生局)より特定細胞加工物製造許可を得て、新たな細胞処理センターを横浜市緑区に開設いたしました。これにより、さい帯血処理のキャパシティは約3倍となっております。この新施設は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律において再生医療等製品の製造に求められる基準を満たせるよう設計されており、保管した細胞の培養や製品化に加え、その他の様々な細胞・組織の受け入れにも対応可能な施設となっております。

また、本施設にはさい帯組織を処理する専用のブースを設置しており、これを利用し2021年4月より「さい帯(へその緒)組織保管サービス」を開始いたしております。

 

 (5)細胞保管センターについて

新耐震基準に基づいた設計で耐震性を有している細胞保管施設です。細胞処理センターで分離・抽出・調製した幹細胞は、同施設内にある液体窒素タンクで保管し、その後、細胞保管センターに移送し長期保管用の大型の超低温液体窒素タンクで保管しております。

これまでの細胞保管センターに加え、2021年6月に同施設内に第二の細胞保管センターを開設しております。これにより、保管キャパシティは約2倍(約7万検体から約14万検体)となり、さい帯血保管事業のみならず、2021年4月より開始している「さい帯(へその緒)組織保管サービス」や、今後の各種細胞の保管サービスに対応する中長期のキャパシティを確保いたしております。

これまでに、第一および第二細胞保管センターを開設しており、約14万検体の保管キャパシティ(臍帯血保管ベース)を有しておりますが、2021年4月より開始した「さい帯(へその緒)組織保管サービス」や、凍結卵子保管受託サービスの進展を鑑み、第三細胞保管センターの開設を計画(2024年度竣工予定)しております。これにより、保管キャパシティは23万検体(臍帯血保管ベース)となる見込みです。

 

(注1)再生医療等技術や法律の専門家の有識者からなる合議制の委員会で、特に高度な審査能力、第三者性を有するもので、一定の手続きにより厚生労働大臣の認定を受けたものをいいます。

(注2)「新生児低酸素性虚血性脳症で出生した重症仮死児への自己臍帯血幹細胞治療の研究」(新宅治夫)より。

(注3)公益財団法人日本医療機能評価機構 産科医療補償制度運営委員会の「平成25年 産科医療補償制度 医学的調査専門委員会報告書」より。

(注4)厚生労働省の「e-ヘルスネット」(2021年3月末時点)より。

(注5)第Ⅰ相試験では、少数の被験者が参加し、安全性についての評価が行われております。

(注6)第Ⅱ相試験では、臨床探索的研究として実施される見込みで、さい帯血の処理及び供給体制などを検討し、有効性と実施可能性を検証することを目的として行われる予定であります。

 

 

[事業系統図]

 


 

また、当社は「細胞バンク事業」の単一セグメントでありますが、売上高は「技術料」、「保管料」、「その他」の3つから構成されております。

① 技術料

細胞分離及び細胞処理の際に必要となる分離料、検査料及び登録料を技術料として分類しております。

② 保管料

細胞保管料を保管料として分類しております。保管料は契約時に契約年数に応じた保管料総額を前受金として計上し、保管期間の経過に応じて年間の保管料を毎期収益として計上しております。

③ その他

上記の他、契約更新時の更新手数料等をその他として分類しております。

 

業績

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

株式会社ステムセル研究所は「あたらしい命に、あたらしい医療の選択肢を。」をコーポレートスローガンに、日本全国の産婦人科施設との強固なネットワークを活用し、再生医療・細胞治療を目的とした「さい帯血」や「さい帯」等の周産期組織由来の細胞バンク事業及びそれらの細胞等を利用した新たな治療法、製品の開発を行っております。そしてこの事業基盤をベースとして再生医療やフェムテック領域等での事業開発及び投資等によるサスティナブルな成長と社会への貢献を目指しております。

 

(事業の概況について)

当期は当社主事業である、出産時にのみ採取可能な「さい帯血」や「さい帯」を将来の利用(主に再生医療)に備えて保管する「細胞バンク事業」において、コロナ禍中に制限されていた当社の主要なマーケティングチャネルである、医療機関におけるスピーチやPR等のリアル・マーケティングが大きく回復し、オンライン広告、SNS等のデジタル・マーケティングとの相乗効果を上げました。また昨年6月には細胞の保管意義の更なる向上を目的に「さい帯」を保管されるご家族向けに、組織の再生を促す成長因子や細胞間の情報伝達物質(エクソソーム)等を含む培養上清液を作成するサービスを開始した事により「さい帯血」を保管される方の「さい帯」保管率が直近で約50%まで高まっております。

この結果、「細胞バンク事業」における検体の保管数は過去最高を更新、当社の中期的な目標である国内出生数に対する保管率3%に向け順調に推移しております。

また、当社は約50億円の投資可能資金(株式・長期預金及び金融機関よりの無担保無保証融資枠含む)を有しており、これらをもとに当社独自のネットワークにより得られる情報をベースとした事業投資を行っております。

当期においては、昨年6月に投資先一社が上場、また8月には新たに最先端の3Dプリンティング技術を用いて「赤ちゃんの頭のかたちのゆがみ」を矯正するヘルメット(医療機器)の開発、製造、販売を行っている株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー(東京都中央区、代表取締役CEO 大野秀晃)への投資を実行いたしました。この他にも、国内外で複数の案件に対する投資を検討しており、今後もM&Aも含め積極的に推進して参ります。当社はESG活動にも注力しており、社員の働く環境の改善を目的に昨年5月に本社を東京都港区虎ノ門に移転、横浜細胞処理センター(横浜CPC)に新たにオフィスを開設致しました。そして、昨年9月には持続可能な社会への貢献を目的としたチャリティコンサートを実施しております。

 

(研究開発活動について)

「さい帯血」を用いた再生医療分野につきましては、国内では高知大学医学部附属病院小児科において脳性麻痺児に対する臨床研究が順調に進んでおります。

大阪公立大学大学院医学研究科発達小児医学教室を中心としたグループでは低酸素性虚血性脳症(HIE)児に対する臨床研究も引き続き進められております。また、同グループとは昨年6月に「自閉症スペクトラム障害に対する自家臍帯血有核細胞を用いた治療法の開発」を開始する事を決定し公表、2024年の臨床研究開始に向け準備を進めています。米国においては、FDA認可のもとデューク大学で進められている脳性麻痺児等へのさい帯血投与プログラムへ、当社でさい帯血を保管されている方々が参加されるケースが増加しており、その結果も良好です。

「さい帯」を用いた研究開発につきましては、大阪大学大学院医学系研究科スポーツ医学教室と設立した「運動器スポーツバイオメカニクス学講座」において、新たな半月板治療法の開発を推進しております。また、東京大学医科学研究所セルプロセッシング・輸血部及び東京大学医学部附属病院ティッシュ・エンジニアリング部との小児形態異常等の先天性疾患に対する治療法の開発も、引き続き推進しております。

 

 

これらの活動の結果、当事業年度における売上高は2,481,193千円(前年同期比18.6%増)、営業利益は413,759千円(前年同期比39.1%増)、経常利益417,271千円(前年同期比38.9%増)、当期純利益は310,981千円(前年同期比57.0%増)と、全ての項目で過去最高を更新しております。

 

  総資産は6,543,075千円となり、前事業年度末に比べ731,459千円(同12.6%)増加いたしました。流動資産は4,515,040千円となり、前事業年度末に比べ30,422千円減少いたしました。これは主に、売掛金が447,484千円増加した一方で、長期預金へ500,000千円を振り替えたことにより、現金及び預金が478,480千円減少したことによるものであります。固定資産は2,028,034千円となり、前事業年度末に比べ761,881千円増加いたしました。これは主に長期預金が500,000千円、投資有価証券が269,596千円増加したことによるものであります。

 

  負債は3,850,459千円となり、前事業年度末に比べ337,432千円(同9.6%)増加いたしました。流動負債は3,760,022千円となり、前事業年度末に比べ328,449千円増加いたしました。これは主に、前受金が325,485千円増加したことによるものであります。固定負債は90,437千円となり、前事業年度末に比べ8,983千円増加いたしました。

 

 純資産は、2,692,615千円と前事業年度末と比べ394,026千円(同17.1%)増加しております。これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が310,981千円増加したことによるものであります。

 また、当社は、「細胞バンク事業」の単一セグメントのため、セグメントごとの記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末と比べ478,480千円減少し、2,845,540千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において営業活動の結果得られた資金は、334,625千円(前事業年度は99,672千円)となりました。これは主に、税引前当期純利益を441,327千円計上したこと及び保管検体数の増加に伴い前受金が325,485千円増加した一方、売上債権が447,484千円増加したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において投資活動の結果使用した資金は、811,773千円(前事業年度は285,100千円)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出500,000千円、投資有価証券の取得による支出199,900千円、有形固定資産の取得による支出183,457千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において財務活動の結果使用した資金は、1,333千円(前事業年度は869千円)となりました。これは、リース債務の返済による支出1,333千円によるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績

当社は、生産活動を行っておりませんので該当事項はありません。

 

b 受注実績

当社は、受注生産を行っておりませんので該当事項はありません。

 

c 販売実績

当事業年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社は「細胞バンク事業」の単一セグメントであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

細胞バンク事業

2,481,193

118.6

合計

2,481,193

118.6

 

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しております。

2.販売実績の3つの構成の「技術料」、「保管料」、「その他」別の売上は次のとおりであります。

構成

販売高(千円)

前年同期比(%)

技術料

1,895,233

118.5

保管料

406,897

112.7

その他

179,062

136.8

合計

2,481,193

118.6

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項については、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、これらについては、過去の実績や現在の状況等を勘案し、合理的と考えられる見積り及び判断を行っております。ただし、これらには見積り特有の不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
 なお、当社が財務諸表を作成するにあたり採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。

 

② 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社の目標とする経営指標は、年間保管(売上)検体数と営業利益率であります。

 

 

経営成績の分析

(売上高)

当事業年度の売上高は、前事業年度に比べ389,900千円増加2,481,193千円(前事業年度比18.6%増)となりました。これは主に、コロナ禍中に制限されていた当社の主要なマーケティングチャネルである、医療機関におけるスピーチやPR等のリアル・マーケティングが大きく回復し、オンライン広告、SNS等のデジタル・マーケティングとの相乗効果を上げました。また昨年6月には細胞の保管意義の更なる向上を目的に「さい帯」を保管されるご家族向けに、組織の再生を促す成長因子や細胞間の情報伝達物質(エクソソーム)等を含む培養上清液を作成するサービスを開始した事により「さい帯血」を保管される方の「さい帯」保管率が直近で約50%まで高まっております。影響によるものであります。この結果、今期の売上検体数実績は、さい帯血8,559検体(同13.2%増)、さい帯4,047検体(同39.2%増)となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

当事業年度の売上原価は、前事業年度に比べ149,861千円増加905,311千円(同19.8%増)となりました。これは主に、さい帯血の分離処理検体数が増加したことによるものであります。この結果、当事業年度の売上総利益は、前事業年度に比べ240,039千円増加1,575,882千円(同18.0%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当事業年度の販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ123,839千円増加1,162,122千円(同11.9%増)となりました。これは主に、正社員の新規採用の増加等により人件費が52,691千円増加、取引量増加等により支払手数料が50,243千円増加したことによるものであります。この結果、当事業年度の営業利益は、前事業年度に比べ116,199千円増加413,759千円(同39.1%増)となりました。

 

(営業利益率)

営業利益率は前事業年度と比べ2.4ポイント増加し16.7%となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

当事業年度の営業外収益は、前事業年度に比べ5,350千円増加8,155千円となりました。これは主に、投資有価証券の取得により受取利息が1,659千円増加したこと及び協賛金収入3,342千円が発生したことによるものであります。

また、当事業年度の営業外費用は、前事業年度に比べ4,643千円増加となりました。これは解決金2,117千円及び業務委託費2,526千円が発生したことによるものであります。

この結果、経常利益は、前事業年度に比べ116,906千円増加417,271千円(同38.9%増)となりました。

 

 

(特別利益、特別損失、当期純利益)

当事業年度の特別利益は、投資有価証券売却益の計上等により24,074千円となりました。

当事業年度の特別損失は、固定資産除却損の計上により17千円となりました。また、法人税等を130,346千円計上した結果、当期純利益は310,981千円(同57.0%増)となりました。

 

キャッシュ・フローの分析

当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の資本の財源及び資金の流動性については、営業活動により得られた資金を財源として運営しており、外部からの資金調達はありません。

また、主な運転資金需要は、さい帯血の分離等に使用する材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用の支払いであり、主な設備投資需要は細胞処理及び細胞保管に係る設備投資資金であります。

 

 

財政状態の分析

当事業年度末の総資産は前事業年度末に比べ731,459千円増加6,543,075千円(前事業年度末比12.6%増)、負債は前事業年度末に比べ337,432千円増加3,850,459千円(同9.6%増)、純資産は前事業年度末に比べ394,026千円増加2,692,615千円(同17.1%増となりました。

主な増減要因は、次のとおりであります。

 

(流動資産)

当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べ30,422千円減少4,515,040千円(同0.7%減)となりました。これは主に、売掛金が447,484千円増加した一方で、長期預金へ500,000千円を振り替えたことにより、現金及び預金が478,480千円減少したことによるものであります。

 

(固定資産)

当事業年度末における固定資産は、前事業年度末に比べ761,881千円増加2,028,034千円(同60.2%増)となりました。これは主に長期預金が500,000千円、投資有価証券が269,596千円増加したことによるものであります。

 

(流動負債)

当事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べ328,449千円増加3,760,022千円(同9.6%増)となりました。これは主に、前受金が325,485千円増加したことによるものであります。

 

(固定負債)

当事業年度末における固定負債は、前事業年度末に比べ8,983千円増加90,437千円となりました。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ394,026千円増加2,692,615千円(同17.1%増)となりました。これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が310,981千円増加したことによるものであります。その結果、当事業年度末における当社の経営指標である自己資本比率は、前事業年度末に比べて1.6ポイント増加し、41.15%となりました。

 

③経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

④経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。