リスク
3【事業等のリスク】
当社グループは、主たる事業である検体検査分野を中心に、個別化医療や個別化予防、更にはメディカルロボット事業や再生細胞医療等の取り組みを推進し、医療機関に不可欠な製品・サービスを安定的に提供しております。世界190以上の国や地域に製品・サービスを供給しており、当社グループの業績は、国内外で今後発生し得る様々な要因によって影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、グループ内外における様々なリスクを組織的・体系的に管理する取り組みを推進しております。事業の継続と発展のため、適切にリスクを取り企業成長を促進すると共に、経営及びその持続性に影響を与える可能性について、それぞれの重要度に応じて予防及び発生時の対策を講じております。また、それらの対応状況を共有することにより、投資家をはじめとするステークホルダーの皆様に安心いただけるよう取り組んでおります。
<リスク管理の体制及びプロセスについて>
グループ全体のリスクマネジメントを推進する体制として内部統制委員会を設置し、事業部門から独立した社長直轄の組織である内部統制室が事務局を務めております。内部統制委員会は、当社グループの内部統制・リスクマネジメント全般を統括しております。内部統制委員会の委員長は取締役社長が務め、メンバーは取締役会長、担当執行役員及び常勤監査等委員、オブザーバーは社外取締役が務めております。
また、下図のとおり、主要なリスク領域については、コンプライアンス委員会等、関連委員会を設置しております。各委員会はグループ横断的に活動を推進すると共に、部門・関係会社での取り組み状況を定期的にモニタリングし、内部統制委員会へ報告しております。
上述のリスクマネジメント体制において、当社グループは社内外の環境変化を考慮した上、毎年リスクアセスメントを実施しております。リスクの抽出に漏れが生じないよう、主要なリスク領域を担当する委員会や部門、及び関係会社にてリスクを特定し、影響度と発生可能性等の観点からリスクの重要度を分析・評価しております。その後、業務全般にわたるリスクを管轄する内部統制委員会や、戦略の意思決定に係るリスクを管轄するグローバル戦略会議・執行役員会議等において、グループ全体を俯瞰する観点から重点的に管理すべきリスクや具体的な対応計画等について審議・決定し、定期的に進捗をモニタリングしております。以上のプロセスにおける審議及び報告内容はタイムリーに取締役会に報告され、必要に応じて審議されております。
<リスク及びその対応について>
有価証券報告書に記載した事業及び経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある事項は13項目あり、それらを以下のとおりマクロ環境に由来するリスクとミクロ環境に由来するリスクに分類しております。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであると共に全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクにより将来的に予期せぬ影響を受ける可能性があります。
また、当社は、2024年6月4日に、日本市場における血液凝固測定装置および試薬(FDPを測定する試薬およびDダイマーを測定する試薬)の取引に関し、独占禁止法違反(抱き合わせ販売等)の疑いがあるとして、公正取引委員会による立ち入り検査を受けました。当社といたしましては、公正取引委員会の検査に全面的に協力してまいります。
① 地政学に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>地政学的な緊張の高まりによる事業への影響 当社グループは、生産、販売・サービス、研究開発等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しております。国家間の対立や貿易摩擦等、地政学的な緊張の高まりにより、当社グループの活動拠点を有する国や周辺地域において、輸出入規制の厳格化や、更なる自国産業保護の動き等が生じ、販売・調達等の事業活動が制限される可能性があります。 また、国家間紛争に発展した場合は、上述のような事業活動の制限のみならず、従業員等の安全に影響を及ぼす可能性があります。
<機会>製品・サービスの供給継続による信頼性向上 診断薬の現地生産化をグローバルに推進し、安定供給体制を強化することにより、お客様からの信頼性や競争力が向上する可能性があります。更に、活動拠点を各地に有することにより、現地のニーズを的確に把握すると共に、きめ細やかに対応した製品・サービスを提供できる可能性があります。 |
対応 |
当社グループではグローバルなネットワークを活用し、各国・地域の情勢を継続的にモニタリングしております。自国産業保護の動きが見られる国においては、現地での生産や部品・原材料の調達等が必要となる場合があるため、最新情報の把握に努めると共に、主に診断薬において現地への生産移管に向けた取り組みを行っております。 また、国家間紛争等の有事の際においても、人命保護を最優先に、安全保障に関する輸出入規制等を遵守しながら、人道支援・医療に貢献する当社製品の供給が中断することがないよう対策を推進しております。 今後も刻々と変化する世界情勢に対して、当社グループの事業への影響を考慮し、適切に対応してまいります。 |
② 経済動向に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>経済情勢悪化による販売機会低下 当社グループは比較的需要が安定しているヘルスケアを主たる事業としておりますが、世界的な経済情勢の悪化に起因し、各国政府の医療財政ひっ迫や医療機関における予算縮小等が発生した場合、設備投資意欲が低下し、経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 また、急速なインフレ進行やエネルギー価格の高騰等、経済環境の著しい変化により、原材料や輸送等のコストが大幅に増加し、業績へ影響を及ぼす可能性があります。
<機会>経済好況に伴う医療インフラへの投資増加 世界経済が好調に推移した際は、医療インフラへの投資増加等に伴い、当社グループの製品についても販売機会が拡大する可能性があります。 特に、人口増加及び経済成長が期待される新興国においては、医療水準向上のニーズが増加し、更なる市場の拡大が期待できます。 |
対応 |
当社グループは各国・地域の拠点を通じ、市場環境の変化をグローバルにモニタリングしております。また、ロボティクスやAI等を活用した医療機関の収益向上に資するソリューションの提供により、検査の標準化・効率化に取り組んでおります。更に、経済成長及び人口増加に伴い、医療インフラへの投資が大きく期待される新興国において、多種多様な市場ニーズに適した製品の開発・市場導入を進め、医療アクセスや医療の質を向上させることにより、ユニバーサルヘルスカバレッジ※1にも貢献しております。特に、高い潜在成長力を有するインドを重要市場の一つと位置付け、市場シェアの拡大に向けて製品の開発・市場導入を加速させております。今後も、グループ全体で更なる付加価値の創出を進めてまいります。
※1 全ての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられることを意味する。 |
③ 為替の変動に関わるリスクについて
脅威・対応 |
||||||||||||
<脅威>円高による海外売上・資産の減少等、連結業績へのマイナス影響
<機会>円安による海外売上・資産の増加等、連結業績へのプラス影響
当社グループは海外関係会社及び代理店を経由して各国・地域へ販売を行っており、連結売上高に占める海外売上高の比率は、2023年3月期85.4%、2024年3月期86.5%と高い水準で推移しております。海外関係会社の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時に為替レートの変動による影響を受けるため、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼします。為替が円高に推移した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方、円安時には海外関係会社における販管費等が円換算ベースで増加しますが、それを上回る売上増加により連結業績では好影響を受ける可能性があります。 なお、2024年3月期の売上高、営業利益における為替の1円変動の影響は、以下のとおりであります。
|
||||||||||||
対応 |
||||||||||||
外貨建営業債権、関係会社貸付金及び借入金等を含む、外貨建の債権債務について、主に為替予約を行うことによりリスクをヘッジしております。 また、診断薬の生産拠点をグローバルに分散することにより、為替による影響を軽減させる措置を講じております。 |
④ 人権に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>人権対応の不備による社会的信用の低下 企業活動において人権を尊重することは非常に重要な要素の一つであり、各国においても様々な施策が講じられております。当社グループの人権尊重に対する取り組みの不備や遅れにより、人種・性別等による差別や強制労働・児童労働等の人権侵害が発生した場合、取引先や投資家をはじめとするステークホルダーからの信用を低下させる可能性があります。
<機会>適切な人権対応による信頼性向上 多様な人材が働きやすい環境を整備し受容するDE&I※1の推進やサプライチェーンにおける差別の排除等、公正かつ持続可能な企業経営を推進し、人権に対して適切に対応することにより、ステークホルダーからの信頼性の向上、ひいては競争優位性の創出につながる可能性があります。
※1 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン |
対応 |
当社グループでは、人権尊重と差別撤廃をグローバルコンプライアンスコードに掲げ、全てのステークホルダーの人権を尊重した企業経営や職場環境づくりに取り組んでおります。また、人権方針においては、人権デュー・デリジェンスの実施を規定し、自社内にとどまらず、サプライチェーンに関わる外部パートナーを含め、人権への負の影響を防止・緩和する取り組みを進めております。強制労働・児童労働の禁止、男女・障がい者・人種等に対する差別の排除等、事業活動が人権侵害に関与・加担することのないよう、予防的に対処する仕組みを整備しております。 また、国内外に設けた内部通報窓口において、差別・ハラスメントをはじめとする人権相談を受け付けております。更に、ハラスメントの防止や、労働に関する正しい知識の浸透等を目的とする教育を実施し、人権侵害の防止に努めております。 |
⑤ 技術革新に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>技術革新への対応遅延による競争優位性低下 近年の技術革新により、ヘルスケア領域においても新技術が台頭し、ビジネスモデルが大きく変化する可能性があります。このような環境下においては、当社グループの対応が遅れることにより、競争優位性の低下を招く可能性があります。
<機会>イノベーションによる付加価値向上 革新的技術の創出及び積極的な活用により、更なるイノベーションや検査業務をはじめとする医療の効率化を実現した高付加価値な製品・サービスの提供が可能になります。 また、革新的技術の普及に伴うビジネスモデルの変革に対し、いち早く適応することにより、販売機会拡大の可能性があります。 |
対応 |
当社グループは、企業理念「Sysmex Way」に基づき、様々な技術開発を通じたイノベーションを創出し、社会課題の解決に資する製品・サービスの提供に努めております。新たな技術の開発に向け積極的な投資を継続すると共に、大学や研究機関、企業等が持つ技術と当社の技術を融合させ、新たな臨床価値を効果的に生み出すオープンイノベーションに取り組んでおります。世界各地にこれらの活動を促進する研究開発拠点を開設し、従来の検体検査のみならず、個別化医療や予防医療等への貢献に取り組んでおります。 今後も、新たな技術やイノベーションの創出を通じて医療課題の解決に取り組むことにより、人々の健康寿命の延伸へ貢献すると共に、持続的な成長を目指してまいります。 |
⑥ 気候変動等の環境に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>環境対応の不備や自然災害による事業への影響 地球環境の持続可能性が喫緊の課題となっており、欧米をはじめとする各国において環境規制が強化されております。当社グループにおいて、規制等に対する違反や対応の遅延が生じた場合、罰則や入札制限等を招く可能性があります。 また、気候変動に由来する自然災害により、世界各国のお客様への製品安定供給や従業員等の安全へ影響を及ぼす可能性があります。
<機会>環境課題への取り組みによる信頼性・競争優位性向上 各国における環境に関する法規制等の情報を適宜入手し、プロアクティブに対応を実施することにより、ステークホルダーからの信頼性向上並びに販売機会の拡大につながる可能性があります。 また、環境に配慮した製品開発や生産活動等、エコソーシャル面での付加価値提供と、それに伴う競争優位性の確立により、事業成長に貢献する可能性があります。 |
対応 |
当社グループでは、環境マネジメントを推進する組織として環境管理委員会を設置しております。資源循環型社会の実現に取り組んでおり、当社の製品・サービスを通じた社会課題解決と事業成長の両立により、持続的な環境・社会への価値提供を目指しております。 『シスメックス・エコビジョン 2033』を策定し、生産・開発・販売・サービス等のあらゆるバリューチェーンにおいて、濃縮試薬の普及促進や、ドライアイスフリー輸送の導入、脱動物由来の原材料を使用した製品の開発等、CO2削減や生物多様性等に配慮した環境配慮型製品・サービスを通じて環境負荷低減に取り組んでおります。また、TCFD※1の提言に賛同し、そのフレームワークに基づく情報開示の充実に努めております。更に、2040年までのカーボンニュートラル※2及びSBT※3に基づく目標を設定し、環境課題への取り組みを加速しております。
※1 Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース) ※2 カーボンニュートラル:Scope1及びScope2が対象 ※3 Science Based Targets(パリ協定が求める水準と整合した企業の温室効果ガス排出削減目標) |
⑦ 医療制度改革に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>医療制度改革等への対応不備・遅延による販売機会減少 当社グループの機器・診断薬製品の販売には基本的に薬事承認が必要でありますが、各国において承認取得に関する要求事項が複雑・高度化する傾向にあります。このような傾向は、対応コストを増加させる可能性があると共に、対応が遅れた場合は新製品の発売への影響等、市場獲得機会の喪失を招く可能性があります。 また、各国において保険収載に関する制度の見直しや、保険点数等の検査に係る費用引き下げ等が発生した場合は、当社製品の販売機会減少の可能性があります。
<機会>規制やニーズへの迅速な対応による競争優位性向上 ヘルスケア業界での、欧州におけるIVDR※1をはじめとする厳格化する薬事規制への対応は、新規参入企業に対する障壁となり、当社グループの競争優位性が向上する要因となる可能性があります。また、各国での医療財政の改善により医療機関の予算が増加した場合、販売機会の拡大が見込める可能性があります。更に、新興国での医療制度拡充、及び医療インフラへの投資増加等により、需要の拡大が期待できます。
※1 In Vitro Diagnostic Medical Devices Regulation(体外診断用医療機器規則) |
対応 |
薬事規制に対しては各国業界団体への参画等を通じて最新情報の把握に努めると共に、当社グループのグローバルなネットワークを活用した体制により、適時的確な薬事承認の取得・維持に取り組んでおります。各国・地域における様々な環境変化において、多様化・高度化するニーズを正確に捉えた上、個別化医療に資する新たな診断技術の開発を推進しております。また、検体検査機器・診断薬・IT・サービス&サポートをトータルに保有する強みを活かし、今後も医療ワークフローの効率化や疾病の早期発見、更には新興国における医療アクセス向上等の医療課題解決に取り組んでまいります。 |
⑧ 知的財産に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>知的財産権の侵害や被侵害による事業への影響 当社グループは、特許、商標、意匠等をグローバルに出願しておりますが、一部又は全ての国で権利が付与されない可能性があります。更に、当社グループの知的財産権を侵害する模倣品が流通した場合、検査結果の信頼性が確保できず、医療機関及び患者さんへ影響をもたらす可能性があります。 また、当社グループの正当性の有無に関わらず、第三者の知的財産権の侵害に対する訴訟の提起や、ロイヤルティの支払い要求等の知的財産権を巡る紛争が生じる可能性があります。
<機会>知的財産権取得による独自性のある製品・サービスの提供 当社グループが保有する知的財産権の適切な保護により、独自性及び競争力の強化や、ブランドイメージの向上が期待できます。 また、当社グループが保有する知的財産権のみならず、第三者のライセンスを適切に活用することにより、更にイノベーションを加速させる可能性があります。 |
対応 |
当社グループでは、当社及び第三者の知的財産権を尊重し、全ての事業活動で創出された価値のある知的財産を積極的に権利化すると共に、第三者の知的財産権に対して適切に対応することにより、グローバルな競争優位性の確立を目指しております。従業員に対しても社内教育を通じ、当社グループ及び第三者の知的財産権を尊重しながら事業活動を推進することを周知徹底しております。更に、知的財産権獲得に対する従業員のモチベーション向上を目的とした表彰制度を設けております。 また、当社グループの知的財産権侵害への対策として、世界各国において特許を取得すると共に、徹底的に模倣品を排除することにより、お客様に安心して製品をお使いいただけるよう取り組んでおります。重要なブランドについて、新興国や開発途上国を含めグローバルに知的財産権の確保を進め、特にコーポレートブランドについては195の国・地域に商標権を出願しております。これらの結果、全体の知的財産権のうち海外保有比率は85%に達しております。 |
⑨ 安定供給に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>調達や生産の中断・遅延による製品供給への影響 当社グループでは、医療機関が日々の検査を行う上で不可欠な検体検査機器及び診断薬等を世界各国のお客様に対し供給しております。お客様への製品の供給が中断しないよう努めておりますが、急激な市況の変化やサプライヤーの事業停止等により部品・原材料等の調達が困難な場合や、生産工場・倉庫等を含むサプライチェーン拠点における大規模な自然災害や火災等の重大な事故、パンデミック等が発生した場合、あるいは国家間紛争・貿易摩擦による流通ルートの遮断等が発生した場合、製品の安定供給に支障を及ぼす可能性があります。
<機会>製品・サービスの安定供給への取り組みによる安心の提供・信頼性向上 自然災害や重大な事故等、有事の際にも検査に必要な製品を安定的に供給し、医療業務を中断させる事態を回避すると共に、そのような有事に備えた体制の構築により、緊急時の製品の供給継続に対する信頼を獲得し、更なるブランドイメージの向上につながる可能性があります。 |
対応 |
世界中に高品質な製品をお届けすることで、正確な検査結果と確かな安心を提供し、医療を支えるという社会的使命のもと、当社グループはグローバルに製品・サービスの安定供給に取り組んでおります。平時より部品・原材料等における在庫の確保や複数社購買等に取り組むと共に、工場や倉庫での地震・風水害等の大規模災害に対する予防及び復旧対策の充実に取り組んでおります。特に、当社グループ売上高の60.8%(2024年3月期)を占める診断薬に関しては、事業継続のための復旧期間を考慮した在庫確保はもとより、複数拠点での生産を行っており、特に主力事業であるヘマトロジー分野の診断薬については、主要拠点間で相互供給のネットワークを構築し、安定的な供給を継続できる体制を整えております。 また、当社グループ全体で事業継続計画を策定し、日頃から訓練により定着を図ることで、有事の際にも迅速に復旧し、医療機関の検査業務を継続いただけるよう備えております。 今後も、お客様に安心して製品をお使いいただけるよう取り組みを強化してまいります。 |
⑩ 品質に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>製品・サービスの品質不良による信頼性の低下 ヘルスケア業界の製品においては高い品質と安全性が要求されますが、当社製品や仕入商品等に品質不良が発生した場合、医療機関での検査に遅れや誤りが発生し、お客様や患者様へ影響を及ぼす可能性があります。また、製品並びに当社グループ全体に対する信頼性の低下を招く可能性があると同時に、業績へ影響が生じる可能性があります。
<機会>品質向上による信頼性・競争優位性の向上 各国の法令・国際規格等に準拠する品質管理の仕組みの整備・運用を通じて更なる品質の向上を図ることにより、お客様からの信頼の獲得、並びに販売機会拡大の可能性があります。 また、当社グループでは創業以来、確かな品質によりお客様に安心をお届けすることを企業理念「Sysmex Way」に掲げており、これまで築き上げたブランドイメージは、企業価値並びに競争優位性の維持・向上につながる可能性があります。 |
対応 |
当社グループでは、各国の法令・国際規格等に準拠する品質維持のためのマネジメントにグループ全体で取り組んでおります。グループの品質方針を策定し、製品・サービスの品質及び安全性のモニタリングと改善に向けた対策を行っております。また、全ての生産拠点において品質マネジメントシステムに関する国際規格ISO9001又はISO13485の認証を取得しております。更に、製品の信頼性や安全性に関する情報を幅広く国内外から収集・分析し、製品の品質向上に活かしております。 今後も、当社グループの高品質な製品・サービスを通じ、お客様の安心の創出に取り組んでまいります。 |
⑪ 情報システム・セキュリティに関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>サイバー攻撃等によるお客様及び事業への影響 当社グループの製品にはネットワークを活用したサービス機能が搭載されております。万一、医療機関を標的としたサイバー攻撃により当社製品が感染した場合、検査業務の停止や、第三者による個人情報への不正なアクセスが行われる可能性があります。 また、社内においても情報伝達や基幹業務支援、稟議決裁手続等に各種情報システムを導入し、業務効率化を図っており、事業上の情報の多くはネットワークを介して管理・運用されております。これらのシステムやネットワークにおける障害や、サイバー攻撃によりシステムの稼働停止や機密情報の漏えいが発生した場合、又は近年活用を進めている生成AI等の誤った使用により、虚偽情報の提供や第三者の権利侵害等が発生した場合、当社グループの業務の効率性や信頼性の低下を招く可能性があります。
<機会>セキュリティ対応強化による製品・サービスの信頼性向上 製品・サービスにおけるセキュリティ対応を充実させることにより、製品への更なる信頼性向上や、お客様へ安心してご利用いただけるネットワークを活用したサービスの提供が可能になります。 また、セキュリティ強化を含めたDXの推進や適切な生成AIの活用等を通じ、適切な情報管理を行いながらグループ内の情報連携を強化することにより、更なる業務の効率化及び生産性の向上が期待できます。 |
対応 |
当社グループでは、お客様や患者様に確かな安心をお届けするために、製品サイバーセキュリティ委員会を中心として、製品・サービスにおけるサイバーセキュリティ対策を進めております。その一環として、「製品セキュリティポリシー」を定めPSIRT※1を設置し、各地域の製品セキュリティ責任者と連携して、セキュリティポリシーに基づいた製品の設計・生産、及び販売後の脆弱性管理に取り組んでおります。 更に、情報システムやネットワーク回線の障害、あるいはコンピューターウイルスや外部からの情報システムへの侵入等による業務への影響を最小限に抑えるために、不正通信検知やマルウェアの隔離等の仕組みの導入、24時間の監視、CSIRT※2の設置、有事や重大インシデントに対する情報の早期入手のための外部団体加盟等によるセキュリティ対策や、事業継続に関する体制整備等、情報管理の厳格化に取り組んでおります。 また、AI技術全般に関して、従業員に対しセキュリティを考慮した利用ルールを周知すると共に、積極的な活用によりイノベーションを加速させる取り組みを推進しております。
※1 Product Security Incident Response Team(製品セキュリティインシデント対応チーム) ※2 Computer Security Incident Response Team(コンピューターセキュリティインシデント対応チーム) |
⑫ 企業買収等、投資に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>投資効果不足による戦略目標達成の遅延 当社グループは、研究開発や生産等の拠点拡充を図ると共に、ITインフラ及び最新技術等への積極的な投資や企業買収、資本提携等により成長を加速させております。これらの取り組みにおいて、経営環境の変化や事前に予測し得なかったリスクの露呈等により、期待されていた効果が十分に実現できず、戦略目標の達成に影響を及ぼす可能性があります。
<機会>投資効果の最大化によるビジネスの加速 経営戦略に基づき、長期的かつグローバルな視点で積極的な投資を行うことにより、更に高い投資効果を生み出すと共に、戦略実現のスピードを加速させる可能性があります。 |
対応 |
当社グループでは、投資に対する検討・意思決定、及びPMI※1のモニタリングにおける仕組みの強化により、投資効果の最大化を目指しております。投資判断については、事前に十分な調査を行った上、目的・効果・想定されるリスク等について経営会議等で審議し決定しております。意思決定後においても、機動的な変化への対応と柔軟な軌道修正が重要であると捉え、定期的にモニタリングを実施し、投資に対する管理プロセス強化に取り組んでおります。 今後も適切な意思決定のもと、事業成長に必要な投資については積極的なリスクテイクにより、事業の拡大や新たな技術獲得を通じた高付加価値な製品・サービスの提供を継続し、当社グループの成長を加速させてまいります。
※1 Post Merger Integration(合併・買収後の統合プロセス) |
⑬ 人材確保に関わるリスクについて
脅威・機会 |
<脅威>人材獲得競争の激化及び人材流出による競争力低下 グローバルな人材市場における獲得競争は激化しており、事業推進に必要な人材が獲得できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。 また、職場環境の安全衛生の確保が十分でなかった場合、従業員の心身の健康を損ね、士気低下や人材流出等を招く可能性があります。
<機会>魅力ある職場の実現による経営基盤強化 当社グループは企業理念「Sysmex Way」において、多様な人材が安心して能力を発揮できる職場環境について定めており、他社と差別化された魅力ある人事制度や企業風土等を通じた人材の獲得・維持により、従業員のエンゲージメントと付加価値生産性を両立させることで、更なる企業成長が期待できます。 |
対応 |
当社グループでは、人材を持続的な成長のための重要な経営資源の一つと捉えております。企業理念「Sysmex Way」では、従業員に対し「多様性を受け入れ、一人ひとりの人格や個性を大切にすると共に、安心して能力が発揮できる職場環境を整えること、自主性とチャレンジ精神を尊重し、自己実現と成長の機会、成果に応じた公正な処遇を提供すること」を宣言し、それぞれの従業員が描くキャリアに基づいた教育プログラムの提供等、自主的なキャリア実現が可能となる環境を整備しております。 また、自律的なキャリアの実現を支援する基盤として、グループ全体でジョブ型人事制度を採用すると共に、従業員の資産形成にも資する報酬制度としての信託型株式報酬等、魅力ある制度の導入を推進しております。 更には、アジアの製造業で初となる、人的資本に関する情報開示の国際的なガイドラインであるISO30414を取得しております。今後も透明性のある人材関連情報の開示に努めると共に、人材と企業の持続的な成長を可能にする人事制度を充実させてまいります。 |
配当政策
3【配当政策】
当社は、安定的な高成長を持続させるための研究開発や設備投資に充当する内部留保と、収益性の向上に伴う株主に対する利益還元との適正なバランスを確保することを目指しております。株主還元については、継続的な安定配当に留意すると共に、業績に裏付けられた成果の配分を行うという基本方針のもと、連結での配当性向30%を目処に配当を行ってまいります。
当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
当期の配当につきましては、上記の基本方針及び当期の業績を勘案の上、1株につき84円の配当(うち中間配当42円)を実施することを決定いたしました。この結果、当期の配当性向は51.3%(連結では35.4%)となりました。
内部留保資金につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、競争力の高い製品開発やグローバルな事業戦略の展開を図るために有効投資してまいりたいと考えております。
当社は、株主への機動的な利益還元を行うため、会社法第454条第5項の規定により、「取締役会の決議によって毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。
なお、当期に係る剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年11月8日 |
8,790 |
42.00 |
取締役会決議 |
||
2024年6月21日 |
8,792 |
42.00 |
定時株主総会決議 |
(注)1.2024年6月21日定時株主総会決議による配当金の総額には、株式付与ESOP信託が保有する当社株式に対
する配当金63百万円が含まれております。
2.2024年4月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っておりますが、上記は当該株式分割前の実際の配当金の金額を記載しております。