2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

重要リスクを選定するにあたり、グループリスク管理基本規程に定めるリスク項目をベースに現業部門及び管理部門が当社グループにおける個別のリスク項目を抽出し、各リスクについて、発生の可能性と経営への影響度において3段階の点数付けを行いました。その後、点数化したリスク項目を整理して、当社グループにおけるリスクマップを作成し、グループリスク管理委員会にて協議・承認を行いました。

リスクマップに挙げた項目のうち、下図の網掛け部分に該当するリスク項目を当社グループにおける重要リスクと位置付けて、有価証券報告書に記載しています。

なお、文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日(2024年3月25日)現在、入手しうる情報に基づいて当社グループが判断したものです。

 

<当社グループのリスクマップ>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発生の可能性

 

(1) 各セグメントのリスクについて

当社グループは、自動車、環境・プロセス、医用、半導体、科学という5つのセグメントで事業を推進しています。これら5つの事業分野をそれぞれ確立しており、損益を相互に補完し合えるような事業ポートフォリオになっていますが、個々の事業分野には以下のような業績変動要因があります。

 

① 自動車セグメント

自動車セグメントでは、自動車メーカー、自動車部品メーカー及び官公庁が主たるユーザーであり、エンジン排ガス測定装置が主力製品となっています。そのため、排ガス・燃費規制の動向により需要が変動することから、今後の規制動向によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、自動車の電動化や自動運転技術の進展等、自動車産業の構造変化がもたらす自動車関連メーカーの研究開発・設備投資動向が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。加えて、各国補助金を受けた事業者が主たるユーザーとなる水素等の新エネルギーや、カーボンニュートラルといった領域におけるビジネスについては、補助金の打ち切り等、政策動向によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。更に、ECT(自動車開発全般に関するエンジニアリング・試験)事業では事業の性格上、多額の固定資産を所有しています。自動車メーカーの研究開発動向等により、固定資産の稼働率が低下した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、世界的に環境問題への規制強化が進む中、行政機関から発信される最新情報の収集を継続的に行うとともに、規制適合や排ガス低減技術開発に必要なエンジン排ガス測定装置の開発と供給に努めています。また、世界的な電動車両に対する需要の高まりを背景に、市場規模の拡大が見込まれるバッテリーや燃料電池の評価装置の生産能力を増強しています。さらに、コネクテッド・自動運転車(CAV)の設計から実車検証まで包括的なサポートを行う開発エンジニアリング機能を増強し、幅広い需要に応えるため事業基盤の強化に取り組んでいます。

 

② 環境・プロセスセグメント

環境・プロセスセグメントでは、大気・水質汚染分析装置等の環境分野の製品において、官公庁による環境関連の法的規制動向及び一般企業の研究開発・投資動向により需要が増減することから、今後の需要動向によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、グループ間の情報連携を強化し、グローバルでの環境関連規制動向を把握するとともに、環境規制関連以外で使用される製品等、製品ラインナップを拡大することで、リスク低減を図っています。

 

③ 医用セグメント

医用セグメントでは、血球計数装置が主力製品となっています。今後、競争激化や価格競争等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、グループ間の情報連携を強化し、市場要求・競合の動向に合わせて新しい製品・事業の拡大を推進するとともに、現地生産を含むローカライズの推進等により、リスクの低減に努めています。

 

④ 半導体セグメント

半導体セグメントでは、半導体製造装置用の流量制御機器や、半導体メーカーにおける品質管理や研究開発サポート機器が主力製品となっています。当社グループでは、半導体市況の変動による影響を低減するため、受注から納品までのリードタイムの短縮や顧客ニーズに迅速に対応する体制作りに取り組んでいますが、半導体及び半導体製造に関わる技術変化や半導体の急激な需要変動による半導体製造装置及び半導体メーカー等の設備投資動向は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、顧客と地理的に近い場所に拠点を置き、顧客の設備投資情報をはじめとする最新情報を収集し、市場ニーズを迅速に取り込んだ開発を強化する体制を構築しています。生産体制においても需要の増減に合わせ、調達を含めた柔軟な対応ができる体制をとることでリスクの低減に努めています。

 

⑤ 科学セグメント

科学セグメントでは、研究開発や品質管理等で使用される理化学用分析装置が主力であることから、官公庁の研究開発予算並びに民間企業の研究開発や生産向けの設備投資の動向で需要が増減し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、グループ間の情報連携を強化し、医薬品製造や半導体製造プロセスといった成長が見込める産業へ、科学セグメントが有する様々な分析・計測技術の投入を強化することでリスクの低減に努めています。

 

(2) 全社に関するリスク

① 気候変動に関するリスク

気候変動は世界共通の解決すべき社会課題と考えられており、多くの国や地域で脱炭素やカーボンニュートラルをめざす政策や規制の導入が進むとともに、社会からの要求が増大しています。当社グループはこのような変化を事業機会と捉え、環境変化に対する取り組みを進めていますが、対応が極めて困難な事象が発生する場合や、各国補助金を受けた事業者が主たるユーザーとなる水素等の新エネルギー及びカーボンニュートラルといった領域におけるビジネスについては、補助金の打ち切り等、政策動向によっては事業活動の大幅な見直しや費用の増加等、当社グループの財政状況及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、当社グループが展開する国や地域の情勢や規制動向等を適切に見極め、経営への影響が最小限になるように取り組んでいます。

当社グループが提供する分析・計測ソリューションは、それを活用するお客様が提供するサービスにおいてCO2削減を実現しています。環境汚染の低減や関連規制への対応に貢献する分析・計測技術の発展に取り組み続けており、気候変動に対しても、エネルギー社会の変革という視点を中心に当社独自の技術を展開し、課題解決に向けて積極的に取り組んでまいります。

 

② ビジネスと人権に関するリスク

事業活動を推進する上で、人権への配慮がこれまで以上に求められており、社会からの要求も増大しています。当社グループはもとより人権擁護を支持していますが、予期せぬ事態により人権問題が発生した場合、当社グループの財政状況及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、当社グループは、グローバルでの規範となる「Code of Ethics」を制定しており、その制定にあたり「人権」を重要事項と捉えて、差別の排除・労働の自主性・労働基本権の尊重・救済と再発防止の措置を明示し、社内浸透を図っています。また、国連グローバル・コンパクトへの支持も表明しており、ここで謳われている人権方針と国際的な人権規範も尊重しています。サプライチェーンにおける人権の取り組みについても、人権尊重の指針を示し、人権侵害の未然防止を図っています。

 

③ 情報セキュリティに関するリスク

業務上の人為的ミスや内部不正による情報漏洩、サイバー攻撃による情報の改ざん・破壊・漏洩、各国で整備・強化が進む個人情報保護の法規制に関するリスク等が考えられ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、個人情報保護方針及びセキュリティポリシーを制定し、教育により従業員のセキュリティ意識の向上に努めています。また、情報セキュリティアセスメントを通じて、個人情報・営業情報・技術情報等の機密情報に対してリスクに応じたグローバルな組織的・技術的な安全管理措置を講じています。

 

④ 為替変動に関するリスク

当社グループは世界各国で事業活動を行っていますが、為替相場の変動は連結決算における円貨換算額に影響を与えるため、当社グループの予想の範囲を超えて為替相場が大きく変動した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、進出国の政治経済情勢や金融市場動向等の情報収集に努めています。また、適地調達・適地生産の推進、社内規程に基づく輸出入取引金額の範囲内の為替予約取引等を行っています。

 

⑤ 国際情勢に関するリスク

当社グループは世界各国で事業活動を行っていますが、ロシア・ウクライナ、イスラエル・パレスチナの情勢、米中関係の複雑化等、当社グループの事業を取り巻く国際情勢は大きく変化しています。特に海外市場においては、対象市場の経済状況及び製品需給の急激な変動、法律・規制・税制の変更、テロ・戦争等の社会的混乱等のリスクが伴い、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、進出国の政治経済情勢、市場動向、税制、法規制動向等の情報収集、モニタリングに努めています。

 

⑥ 自然災害による設備の破損とそれに伴う納期遅延等のリスク

 地震等の自然災害により、製造拠点の設備修復等に多額の費用の発生、営業・生産等の事業活動の停止を余儀

なくされることで、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策とし

て、当社グループでは、ISO22301の認証を取得し、有事の際の事業の中断・阻害に対して、購買先の複数化、在

庫の適正化、また生産拠点間での生産の多重化に取り組み、事業継続計画(BCP)の運用が経営と確実に密接に

結びついた形で実施され、効果的・効率的・継続的に運用するための体制を整備しています。

 

⑦ 買収や提携に伴う業績や財政状態の変化のリスク

当社グループは、自社の成長や事業の拡大を目的に、企業買収や業務提携を積極的に行っています。しかしながら、それらの買収・提携による事業展開が当初の計画通りに進まなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、買収・提携前のデューデリジェンスを通じてリスクの洗い出しを行っています。また、買収後・提携後には定期的に事業計画と実績との比較・解析を行い事業環境の変化に対応できる仕組み作りを行うと同時に、既存事業との統合等、業務効率の向上に努めています。

 

⑧ 固定資産の減損損失リスク

当社グループが保有する土地・建物等について、時価が著しく下落した場合及び事業の損失が継続するような場合並びに事業の収益性が低下し帳簿価額の全部又は一部を回収できないと判断した場合には固定資産の減損損失の計上により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、投資判断を行う際、その収益性・投資回収予定時期を社内で厳格に精査することに加え、設備投資後は、業績進捗について毎期モニタリングを実施するとともに、業績評価を行っています。また、採算性の悪化が見込まれ、キャッシュ・フローの獲得が期待できない場合には、戦略を立案し、実行することで減損損失の計上リスクの低減を図っています。

 

⑨ パンデミックに関するリスク

感染症拡大によるパンデミックは、営業・生産等の事業活動の停止を余儀なくされることで、当社グループの経営成績に影響を及ぼす恐れがあります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、これまでに経験してきた感染症の対策をもとに、WHOや厚生労働省が発出するパンデミック基準の各フェーズにおける社内や従業員の家庭における対応、内容をまとめ、リモートワーク制度の充実等を進めています。

 

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、2024年2月14日開催の取締役会において、株主還元の方針を、「株主総還元性向(配当と自社株買いの合計)を、連結純利益の30%を目処とする」から「配当性向を、連結純利益の30%を目処としつつ、投資機会と資金状況等を総合的に勘案し、特別配当や自己株式の取得を機動的に実施する」に変更することを決議しました。

新たな中長期経営計画「MLMAP2028」の中では、成長のための投資(人財、技術、設備、M&A、サステナビリティ等)を積極的に行うことを宣言しています。これらの投資と健全な財務体質の維持に内部留保を活用しつつ、資本政策の一環として、必要性を検討したうえで特別配当や自己株式の取得を実施する計画です。

 

当事業年度の配当については変更前の配当方針である「配当金と自社株買いを合わせた株主総還元額を連結純利益の30%を目処とする」に基づき、中間配当を1株につき80円、期末配当を1株につき210円、あわせて290円の配当を実施しています。

なお、当社は、「剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によって定める」旨を定款に定めています。

 

当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年8月9日

3,381

80

取締役会決議

2024年2月14日

8,876

210

取締役会決議