リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループでは、「内部統制システム構築の基本方針」に規定する「損失の危機の管理」に基づき、リスクの未然防止及び発生時の影響の最小化に向けて「リスク管理規則」等の必要な規則及び体制を整備しています。リスク管理規則では、「リスクを特定・分析し、対策を講じる」プロセスを毎年実行し、持続的、かつ円滑な事業運営を図ることを目的としたリスク管理の運用ルールを定め、サステナビリティ推進部が主管部門となって運用を行っています。
具体的には、リスク管理フローに基づき、担当各部門が、想定されるリスクの発生可能性(頻度)と起こった場合の影響度(売上・利益への影響等)を評価し、重要度の高いリスクを優先に回避策・軽減(低減)策・移転策を検討・立案・実行しています。これらの対策については、サステナビリティ推進部が、担当各部門に対してヒアリング等を通じた実施状況の確認及び有効性の評価を行っています。年度毎のリスク評価結果は、マネジメントレビューを経て、取締役会に報告されるとともに、全社員に展開されます。また、事業計画や中期事業計画等の策定においては、その策定プロセスの中でリスクを分析し、対策も併せて計画に織り込んでいます。
当社グループでは、事業のリスクを以下のとおり「事業活動リスク」「財務リスク」「経済リスク」「自然・事故災害リスク」「法務・コンプライアンスリスク」「労務リスク」「社会リスク」「政治リスク」の8つに分類しています。
なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 事業活動リスク
① 市場動向・競争環境の変動
当社グループが製造・販売するディスプレイ製品は、それを搭載する完成品市場の変動、及び競争環境の変動の影響を受けます。景気の変動、消費者嗜好の変化、季節性等により完成品市場が大きく変動した場合、売上高の減少、過剰在庫に伴うコスト増や評価損の発生、又は工場稼働率低下による機会損失が生じる可能性があります。また、競合他社との競争激化により、売上高の減少や販売価格の低下が生じる可能性があります。このため、当社グループは、顧客の需要動向を注視し、適切な在庫管理や生産管理に努めるとともに、製品ポートフォリオの変革を通じた売上高の維持・拡大、及び販売価格の維持・向上を目指しておりますが、これらの取組みが十分に成果を上げない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 技術・研究開発
当社グループは、高度な技術を必要とするディスプレイの製造・販売を行っているため、技術の優位性の確保は、当社グループの競争力にとって極めて重要です。当社グループは、長いディスプレイ事業で培った技術力を基礎に、次世代OLED「eLEAP」等の新たな「世界初、世界一」の独自技術を開発するなど、高い技術優位性を有していると認識しており、この維持・向上のために弛まぬ研究開発活動を継続しております。かかる研究開発において、当社グループでは、他社競合の開発・製品化状況の把握や顧客動向を鑑みた明確な開発方針のもと、研究開発対象の厳選、開発段階での進捗レビュー及び継続是非の判断を実施しています。しかしながら、当社グループの技術が顧客に採用されない場合や、他社の技術開発により当社グループの技術優位性が相対的に低下した場合は、売上高の減少により当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 生産活動
ディスプレイ事業は、大規模な生産設備及び多くの従業員の雇用を要する、固定費比率が比較的高い事業です。当社グループは、生産性が低い国内外工場の生産停止や売却を行い、固定費率低減に取り組んでおりますが、新技術への対応等により設備投資負担が増加することがあります。設備投資を行う際には、将来のキャッシュ・フローの見積りに基づく残存価額の回収可能性を評価して投資決定を行っていますが、需要減や競合状況等の変化による事業収益性の低下により、投資回収に遅延が生じる可能性があるほか、当該資産が十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合には、減損の認識が必要となり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、生産性の低い工場の閉鎖や研究開発の中止により、設備の減損や従業員への割増退職金の支払が生じた場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが生産する製品は、精緻な生産技術と成熟したスキルを要するカスタム品が大半であり、製品ごとに部材や製造装置の設定が変更となることが多く、特にノウハウの蓄積が少ない新技術を採用した製品の生産においては、製品の歩留り向上に時間を要することや、品質トラブルが生じることがあります。加えて、顧客との契約に基づく供給義務の履行のため、歩留りが低い状況においても製品の製造を継続する必要が生じる場合もあります。そのような問題の極小化のため、開発、設計、プロセス、製造、品質保証の各分野の綿密な摺合せ、問題発生時の早期解決に向けた体制構築、生産ライン従事者向け教育プログラム完備等を図っておりますが、そうした対策をもってしても、歩留りの悪化や品質トラブルが生じた場合には、当社グループの製品の評価に影響を及ぼす可能性、又は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 調達活動
当社グループは、原材料・部品等を複数のサプライヤーから購入しており、それら原材料・部品等の供給遅延、供給不足又は価格高騰等が生じた場合は、当社グループにおける生産の遅延、代替調達による費用増、調達コストの上昇が生じる可能性があります。加えて、調達した原材料・部品等に欠陥・瑕疵、仕様の不備が存在した場合には、顧客への製品供給の遅延、顧客からの返品や評価減の発生、当社グループ製品の品質及び評価への影響が生じる可能性、又は当社グループやその顧客に対するクレームや訴訟に発展する可能性があります。当社グループは、仕入品の品質管理やサプライヤーの多様化によるこれらリスクの低減に努めておりますが、原材料・部品等の一部については、その特殊性からサプライヤーが限定されているものやサプライヤーの切替えが困難なものもあり、これら調達品に係るリスクが顕在化した場合は、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 他社との協業・提携
当社グループは、競争力強化や収益性向上、長期的な供給体制の維持、及び新技術・新製品の開発のため、部材サプライヤー、装置メーカー、顧客を含む外部企業との協業を行っており、今後も更なる競争力強化のため、外部企業との新たな協業を推進するほか、戦略的提携や出資・買収等を実施する可能性があります。これらの協業、戦略的提携及び出資・買収等が、資金の制約、戦略上の目標変更、技術管理又は製品開発等における問題の発生、若しくは関係当局からの許認可等の規制、市場の変動等により、維持又は実施できなくなった場合、又は実施後に十分な成果が得られない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 特定のアプリケーション及び顧客への依存
当社グループの売上高は、特定のアプリケーション又は製品、及び特定の顧客への販売に相当程度依存しています。当社グループは、新技術・新商品・新事業の立ち上げにより、アプリケーションや製品、顧客の分散化に取り組んでおりますが、依存度の高い市場における製品需要の減退や顧客のブランド力の低下、又はそれら市場における当社グループ製品の顧客要求への不適応や競争力低下等が生じた場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
⑦ 気候変動リスク
当社グループは、2022年度からTCFDの枠組みに基づくシナリオ分析を実施し、気候変動に伴うリスクと機会を明確化しております。今後脱炭素化(カーボンニュートラル)への取組みを強化してまいりますが、かかる取組みに伴う費用負担の増加、取組みが顧客からの要求水準に満たないことによる顧客との取引の減少、将来的なカーボンプライシングの導入、更に、慢性的な気温上昇に伴う自然災害の頻発化・甚大化によるサプライチェーンの混乱や生産性の低下、BCP対応コストの増加が、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 特定人物への依存
当社代表執行役会長CEO兼取締役であるスコット キャロンは、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしております。また、同氏は、当社の筆頭株主であるいちごトラストとの間の投資一任契約に基づき、いちごトラストから投資運用に関する権限を受託しているいちごアセットマネジメント・インターナショナル・ピーティーイー・リミテッドへの投資助言を行う、いちごアセットマネジメント株式会社の代表取締役社長を兼任しております。当社グループは、同氏に過度に依存しない体制を構築するために、取締役会等における役員相互の情報共有や経営組織の強化を図っておりますが、現状において、何らかの理由により、同氏が当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 財務リスク
① 資金調達・資金繰り
当社は、当連結会計年度において、運転資金の調達を目的として、いちごトラストとの間で(1)2023年5月30日、(2)同年6月28日、(3)同年7月28日、(4)同年8月17日、(5)同年10月30日、(6)2024年1月30日及び(7)同年2月28日にShort-Term Loan Agreementを締結し、これらに基づきそれぞれ(1)40億円、(2)80億円、(3)40億円、(4)40億円、(5)40億円、(6)50億円及び(7)45億円の元本総額335億円を調達しました。世界的なインフレ高進やサプライチェーンにおけるリスクの継続に備えた手許資金確保の重要性に鑑み、今後も資金需要に応じた機動的な借入実施、いちごトラストによる第13回新株予約権の行使要請(調達総額最大約1,734億円)のほか、低効率資産の売却及び営業債権等の流動化も含め、引き続き適時適切な資金調達策を講じてまいります。
しかしながら、いちごトラストにより当該新株予約権の行使がなされない場合、若しくは行使が一部に留まり十分な資金が確保できない場合、かつ、いちごトラストや金融機関等からの調達、その他の手段による調達が十分に実行できない場合には、手許資金が当社の事業遂行上必要な水準を下回る可能性があります。なお、第13回新株予約権の半数の行使期間は2023年6月1日から2028年5月31日、残り半数の行使期間は2023年12月1日から2028年11月30日となっております。
② 筆頭株主との関係
いちごトラストは、2024年3月31日現在、当社の議決権数の78.2%を保有する支配株主であり、当社の株主総会の特別決議を要する事項(他社との合併等の組織再編、重要な資産や事業等の売却、定款の変更等)及び普通決議を要する事項(取締役の選解任、剰余金の処分や配当の決定等)について、拒否権を含む重大な影響力を有しております。また、いちごトラストとの間の投資一任契約に基づき、いちごトラストから投資運用に関する権限を受託しているいちごアセットマネジメント・インターナショナル・ピーティーイー・リミテッドへの投資助言を行う、いちごアセットマネジメント株式会社の代表取締役社長であるスコット キャロンは、当社の代表執行役会長CEO兼取締役です。
この状況に対し、当社は、2021年3月期に指名委員会等設置会社に移行しており、社外取締役が過半数を占める監査委員会、指名委員会及び報酬委員会を設けることで独立性の担保を図っています。また、当社によるいちごトラスト及びその関係会社との取引において利益相反の懸念を回避する観点から、スコット キャロンは、かかる取引に関する取締役会の審議及び決議には参加いたしません。
また、いちごトラストは、当社の企業価値向上を支援するスポンサーとして、長期的視点から株式を保有する意向を当社に対して示しておりますが、一方で、当社は「(2)財務リスク ④上場維持基準への不適合」に記載のとおり、東京証券取引所プライム市場における上場維持基準の適合に向けて、いちごトラストの持株比率低下を図る必要があります。今後、当該上場維持基準への適合のため、又はその他の理由により、いちごトラストが当社株式の一部又は全てを売却した場合、その売却の方式、タイミング、規模等によっては、当社株式の需給関係及び市場価格に影響を与える可能性があります。
なお、当社第2位の株主である株式会社INCJは、2024年3月31日現在、当社の議決権数の2.8%を保有しております。同社は、産業競争力強化法等の一部を改正する法律(平成30年法律第26号)による改正前の産業競争力強化法に基づく経済産業大臣の認可を得た上で行われた、旧株式会社産業革新機構(現株式会社産業革新投資機構)からの新設分割により設立された会社であるところ、当該認可に係る告示(20180913経第4号)における「認可条件」として、産業競争力強化法(設立時の名称は「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(産活法)」)に基づき設立されておりますが、同法により2025年3月までに保有する全ての株式等を処分する必要があります。
③ 株式の希薄化
当社の2024年3月31日現在の発行済株式数は、普通株式3,880,388,022株、及びいちごトラストが保有する普通株式の取得請求権を有し議決権のないE種優先株式5,540株です。また、いちごトラストに対し、普通株式を目的とする第13回新株予約権を発行しております。E種優先株式の全てが普通株式に転換された場合に交付される株式数2,308,329,640株(議決権数23,083,296個)に、第13回新株予約権が全て行使された場合に交付される株式数3,852,444,400株(議決権数38,524,444個)を合算した総数は6,160,774,040株(議決権数61,607,740個)であり、2024年3月31日現在の普通株式の発行済株式総数3,880,388,022(議決権数38,803,443個)を分母とする希薄化率は158.77%(議決権ベースの希薄化率は158.77%)に相当します。
上記のE種優先株式の普通株式への転換請求権、又は第13回新株予約権が行使された場合、株式の希薄化を生じ、株価に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は、今後も新株式、新株予約権又は新株予約権付社債等を発行する可能性があり、これらの発行及び行使により、株式の希薄化、株価への影響を生じる可能性があります。
④ 上場維持基準への不適合
2024年3月31日現在、当社の「流通株式比率」は17.3%であり、東京証券取引所プライム市場の上場維持基準である35%以上を満たしておりません。当社は、事業再生支援目的でいちごトラストと資本提携定契約を締結し出資を受けていることから、2028年3月末までを適合に向けた計画期間とする特例適用が認められており、同計画期間内の基準充足に向けて取り組んでおります。
適合のためには、2024年3月31日現在で78.2%の当社普通株式を保有するいちごトラストの持株比率低下が必要となります。また、いちごトラストが保有する当社のE種優先株式の普通株式を対価とする取得請求権の行使や第13回新株予約権の行使がなされた場合、一時的に流通株式比率が一層低下する可能性があります。このため、当社は、いちごトラストと適合に向けた協議を継続するとともに、成長戦略「METAGROWTH 2026」に沿って、早期の業績等改善を図り、広く投資家への訴求も続けてまいります。
しかしながら、こうした取組みをもってしても、2028年3月末までの計画期間内に上場維持基準に適合しない場合は上場廃止となります。
⑤ 継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループは、当連結会計年度において7期連続で営業損失及び重要な減損損失を、10期連続で親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことにより、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当該状況を解消するため、当社グループは、全社的な事業構造改革として、設備利用効率の改善、資産規模の適正化による生産性向上、及びサプライチェーンの見直し等によるコストの更なる削減に取り組んでおります。この戦略的取組みの一環として、2023年3月に生産を終了した東浦工場の建物の譲渡契約を、同月末にソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社との間で締結し、2024年4月1日付で譲渡を完了いたしました。また、2023年8月2日開催の取締役会において、LTPS技術と比較してディスプレイの高性能化への対応が限定的であるa-Si技術を採用する鳥取工場について、2025年3月までに生産終了することを決議いたしました。
上記施策に加え、技術基盤を価値創造の源泉とし、脱過当競争・脱コモディティ化により収益性の抜本的な改善を図るための成長戦略「METAGROWTH 2026」を2022年5月13日付で発表し、引き続き事業モデルの変革を推進しております。本成長戦略における主な事業戦略として、同年3月30日に発表した高移動度酸化物半導体バックプレーン技術「HMO」、同年5月13日に発表した次世代OLED「eLEAP」のほか、車載及びVR製品、並びにそれらに関連する知的財産権の積極活用等を中心に製品・事業ポートフォリオを再編し、早期の黒字体質の安定化と事業成長を図っていく方針であります。
上記「METAGROWTH 2026」の拡大と加速化への寄与を目的とし、2023年5月31日、株式会社JOLEDの事業の一部であるOLEDディスプレイに関する技術開発ビジネス関連事業を当社子会社JDI Design and Development合同会社が承継する事業譲渡契約を、当社を含む3社間で締結し、同年7月18日付で実施を完了いたしました。
さらに、中国安徽省蕪湖市の蕪湖経済技術開発区と2023年9月にeLEAPの事業立ち上げに関する覚書を締結し、現在は2024年10月末までの関係当局からの許認可取得と蕪湖経済技術開発区との最終契約締結に向けて協力して取り組んでおります。
以上のように、今後も事業モデルの改革を進め、収益性の更なる向上に向けた経営資源の最適化に引き続き取り組んでまいります。
財務面では、世界的なインフレ高進やサプライチェーンにおけるリスクの継続に備えた手許資金確保の重要性に鑑み、当社はいちごトラストより、当連結会計年度において新規借入(2023年5月から2024年2月まで計7回、元本総額335億円)を実施したほか、本有価証券報告書提出日までに、当該新規借入に係る弁済期日を延長(2023年7月28日付元本総額40億円及び同年10月30日付元本総額40億円並びに2024年1月30日付元本総額50億円につき2024年7月31日まで、2023年5月31日付元本総額40億円及び同年8月17日付元本総額40億円並びに2024年2月28日付元本総額45億円につき2024年8月30日まで、2023年6月29日付元本総額80億円につき2024年9月30日まで)することについて、いちごトラストとの間で合意いたしました。今後も資金需要に応じた機動的な借入実施、いちごトラストによる第13回新株予約権の行使要請(調達総額最大約1,734億円)のほか、低効率資産の売却及び営業債権等の流動化も含め、引き続き適時適切な資金調達策を講じてまいります。
一方で、昨今の世界的な原材料費の高騰、エネルギー費高止まりによる動力費や輸送費の負担増加、及び世界的高金利の影響等により早期の業績回復による黒字転換が遅延し、当社グループ資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性を勘案すると、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。
(3) 経済リスク
① 為替相場の変動
当社グループの顧客や取引先には、欧米や中国等の海外企業が多く含まれ、為替相場の変動により外貨建で取引されている製品・サービス等の売価や費用が影響を受け、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。加えて、海外子会社の現地通貨建の資産・負債は、連結財務諸表作成の際には円換算されるため、当社グループの財政状態は為替相場の変動による影響を受けます。
(4) 自然・事故災害リスク
① 災害・その他の要因による影響
当社グループは、製造拠点を日本及びフィリピンに、販売拠点を日本、米国、ドイツ、中国、韓国、台湾に展開しています。また、中国及び台湾のEMS(電子機器受託製造)企業と提携し、後工程生産を委託しています。これらの各拠点が、地震、津波、豪雨、洪水、落雷等による自然災害、コンピュータウィルスの感染、部品調達先等の罹災によるサプライチェーン上の混乱、疫病の発生や蔓延、戦争、テロ行為、暴動あるいは労働争議等により被災した場合には、生産・出荷や販売活動が停止する恐れがあります。また、災害により電力供給量の低下や物流ルートの遮断等、社会インフラが不安定化した場合には、生産能力の低下、原材料の調達難、製品供給の遅延等、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
かかる災害による損害の発生に備え、当社グループは、建物、構築物、装置、在庫及び運搬中の貨物の代替コスト及び、事業の中断、製造物責任等に対して適切と判断するレベルの補償範囲をカバーする各種保険に加入しておりますが、当該保険には免責金額が設定されているものがあるなど、全ての損害額がカバーされるものではありません。
② 環境に係わる法規制への対応
当社グループの事業は、国内外の様々な法令、規則等による制約を受けています。また、世界各地域において、大気汚染、土壌汚染、水質汚濁、有害物質、廃棄物処理、製品リサイクル、地球温暖化防止、エネルギー等に関する様々な環境関連法令の適用を受けています。当社グループは、これらの規制に細心の注意を払いつつ事業を行っておりますが、製品の製造販売活動や設備投資が制約を受けるなど、事業展開に支障が生じる可能性があるほか、各種の法規制が制定又は変更された場合には、その遵守対応のための費用が増加する可能性があります。また、当社グループにおいてこうした法規制の違反が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性や社会的評価に影響を与える可能性があります。
(5) 法務・コンプライアンスリスク
① 重要な訴訟の発生
当社の過年度決算における不適切な会計処理により損害を被ったとして、2020年7月16日付で、当社の株主1名及び当該株主が代表取締役を務めていた国内法人株主2名から、当社並びに当社の元取締役10名に対し、連帯して約3,858百万円の損害賠償を請求する訴訟が提起されております。当社は、原告の主張を踏まえて適切に対応してまいります。
② 知的財産権
当社グループは、当社技術の保護に向け、適切な国・地域での知的財産権の取得に努めていますが、一部の国・地域によっては固有の事由により知的財産権による保護が十分にされていない可能性があります。また、当社グループは、第三者からの使用許諾を受けて第三者の知的財産権を使用する場合がありますが、今後、必要な使用許諾を第三者から受けられなくなる可能性や、当社グループにとって不利な条件での使用許諾しか受けられなくなる可能性、競合他社が当社グループより有利な条件で第三者から使用許諾を受け当社グループの競争力が相対的に低くなる可能性があります。
③ 訴訟その他法的手続
当社グループが製造・販売する製品のうち、特に先端技術を用いた製品は、欠陥や瑕疵が出荷時までに発見されにくいことがあり、製品の出荷後に品質問題が認識された場合には、製品の回収及び修理、デザインの変更等に多大な費用や人的資源を要する可能性、顧客との関係及び当社グループへの信用に影響を及ぼす可能性、欠陥や瑕疵を理由に当社グループ又はその顧客に対する訴訟が提起される可能性があります。
また、当社グループは、競争法に抵触する恐れのある行為を行わないよう教育を実施しておりますが、国内外において、競争法違反に関する調査の開始又は訴訟の提起がされる可能性があります。これらの調査や訴訟の結果、当社グループに対して、複数の国・法域において課徴金や損害賠償の支払が命じられる可能性があります。かかる規制当局による処分や訴訟について、その結果を予測することは困難ですが、その解決には相当の時間及び費用を要する可能性があるとともに、その結果によっては、当社グループの事業、業績、財政状態、及び社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。
④ 内部統制
当社グループは、コンプライアンス遵守、財務報告の適正性確保を達成するために内部統制システムを整備し、運用してまいりましたが、2020年3月期に、過年度決算において架空在庫計上や費用先送り等による不適切な会計処理を継続的に行っていたことが判明し、財務報告に係る内部統制に重要な不備があったことが判明しております。当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を十分認識しており、不備を是正するため、2020年4月にガバナンス向上委員会を設置の上、同委員会が検討・策定した内部統制機能の強化を含む再発防止策について、具体的な詳細を定め、全社一丸となって実行いたしました。
その結果、2021年3月期末日においては、開示すべき重要な不備が解消しており、2021年以降、内部統制は有効である旨を記載した内部統制報告書を提出しております。当社は、再発防止に向けて、財務報告に係る内部統制の整備及び運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて関係会社の管理体制等の点検・改善等に取り組んでおりますが、将来にわたって常に有効な内部統制システムを整備及び運用できる保証はなく、また、内部統制に本質的に内在する固有の限界があるため、今後、上記の対応が有効に機能しなかった場合や、財務報告に係る内部統制の不備又は開示すべき重要な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。
(6) 労務リスク
① 人材確保
当社グループは、優秀な人材の採用と育成を重要課題と認識しておりますが、優秀な人材の確保激化により、そのような人材を確保できない場合や、人材の育成が計画通りに進捗しない場合などには、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、専門性の高い優秀な人材が競合他社に移籍した場合には、その者が有する知識やノウハウの流出により、当社グループの競争力が相対的に低くなるおそれがあり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 社会リスク
① 情報セキュリティ
当社グループは、当社グループ・顧客・取引先の技術、研究開発、製造、販売及び営業活動に関する機密情報、並びにステークホルダーの個人情報を様々な形態で保持しており、これらの機密情報を保護するために適切な管理を行っていますが、かかる管理が将来にわたって常に有効である保証はありません。サイバー攻撃等により当社グループが保持・管理する情報が流出し、第三者がこれを不正に取得又は使用するような事態が生じた場合には、当社グループに対する損害賠償訴訟の提起などにより、当社グループの事業、業績、財政状態、及び社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。
② 感染症の拡大
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大時に、従業員に対する在宅勤務や時差出勤の推奨、作業スペースの隔離、不要不急な出張の禁止やウェブ会議システムの活用推進等の対策を実施し、社員やその家族の安全を優先しつつ、生産体制の維持を図りました。また、サプライヤーとの連携により、最大限の部材確保に努め、生産への影響の最小化を図りました。
新型コロナウイルスは感染症法上5類に位置付けられましたが、今後感染が再拡大した場合又は他の感染症が流行した場合は、当社グループ又は調達、生産、物流等の取引先における原材料・部材等の調達、生産の遅れ、又は販売先からの受注減少等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ サプライチェーンにおける人権に関わるリスク
2020年にオーストラリアのシンクタンクが、当社を含む複数の企業がウイグル人の強制労働によって製造されたとされる部品を調達しているとの報告書を出しました。これについて、当社は、強制労働を行っていたとされた、サプライヤーの下請企業2社について事実関係の調査を行いましたが、強制労働があったことを示す事実は確認されませんでした。強制労働があったことを示す事実は確認されなかったものの、その後、上記サプライヤーからは、当該下請企業2社との取引を停止し、それぞれ他のサプライヤーへの切り替えを完了したと報告を受けており、当社も当該事実を確認しております。
当社グループは、全てのサプライヤーに対して「JDIサプライチェーンサステナビリティ推進ガイドブック」を配布し、強制労働や児童労働をはじめとするいかなる人権侵害にも加担しないことを要請するとともに、「サプイヤーサステナビリティ自己監査票」による調査の実施、及び定期的なモニタリングを実行しておりますが、常にこれら施策が有効である保証はなく、サプライヤーにおいて人権侵害が起きた場合、当社グループの事業活動に必要な部材の調達が困難となることや、顧客、その他の取引先との取引が停止されることにより、当社グループの業績、財務状況、社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。
また、米国で2022年6月に「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」に基づく輸入禁止措置が施行され、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品は、強制労働により生産されたとみなされ輸入が原則禁止されています。UFLPAに基づく輸出管理規制により、サプライヤーとの取引関係悪化や、国レベルでの制裁措置による貿易制限が生じた場合、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 政治リスク
① 地政学的リスク
当社グループは、日本とフィリピンに製造拠点を有し、中国と台湾に後工程の製造委託をしています。また、グローバルに販売拠点を有し、海外顧客への売上高が当社グループ全体の売上高の大きな割合を占めております。海外事業の展開にあたっては、地政学的リスク要因として、外国における経済情勢や政治情勢の不安定化、新興国でのインフレ等による賃金の上昇、現地従業員との関係悪化、外国為替管理の強化、予期しない法規制の新設又は変更、税制、法制度及び事業環境の差異及びその変更による不利益、課税等の行政上の措置、戦争及びテロ等の軍事的影響、反日感情による非買運動等があり、これらの要因が当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社グループは、株主への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しております。しかしながら、当期(2024年3月期)は配当原資となる剰余金はプラスを維持しているものの、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、未だ収益力回復及び各段階損益の黒字安定化の途上にあることから、誠に遺憾ながら既に開示のとおり無配とさせていただきます。また、E種優先株式につきましても、無配といたします。
2025年3月期につきましては、業績及び財務状況の改善に向けた取組みを継続してまいりますが、今後の成長に向けた設備投資資金の確保も必要であることから、引き続き無配とさせていただきます。
当社は「毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めておりますが、年間の配当回数は決定しておりません。剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。