2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 NECグループでは、NECグループの事業に関連する社内外のリスクを的確に把握し対応するため、リスク・コンプライアンス委員会とCRO(チーフリスクオフィサー)を中心とした全社横断的なリスク管理体制を整備しており、その概要は下図のとおりです。

 リスク・コンプライアンス委員会では、リスク管理に関する活動方針、NECグループとして対策を講ずべき重点対策リスクの選定・対応方針のほか、期中のリスク変動により全社横断対応が必要となったリスクの対応、その他の全社リスク管理に関する重要な事項を審議し、事業戦略会議および取締役会に定期的に報告しています。

 また、NECグループ全体のリスクを俯瞰して一元的・横断的に対応し、損失に繋がる可能性をコントロールするため、CROを設置しています。CROは、日々変化する社会・事業環境の中で多様化・複雑化するリスクを感知・分析し、インパクトを評価するとともに、対応の優先付けをした上で、各リスクを所管するチーフオフィサーと密に連携することで全社横断的なリスク管理を主導します。

 

 NECグループでは、適切なリスク管理によるリターン追求のため、NECグループの事業に関連するリスクをRisk Total Pictureとして類型化し、これに沿って各リスクの責任部門や対応方針を決定しています。インテグリティをすべてのリスク管理活動の基礎とし、リスクをその性質によって3つに分類しています。

 リスクが顕在化した場合、とりわけ会社の存続を脅かす事態(クライシス)への備えとして、各リスクの責任部門を中心とした対応フローを整備しています。

 

 

 CROは、NECグループとして認識しておくべきリスクを網羅的にとりまとめたリスク一覧をもとに、各リスクを所管するチーフオフィサーとの対話やリスクアセスメントを実施し、外部・内部環境変化や各リスク対策の状況を踏まえて影響度・切迫性などの共通基準でリスクの優先順位を可視化したリスクマップを作成しています。リスクマップは、四半期毎にリスク・コンプライアンス委員会での審議を経て更新しており、事業戦略会議および取締役会に定期的に報告しています。

 

 本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、経営者がNECグループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、NECグループが判断したものです。

 

(1) 経済環境や金融市場の動向に関するリスク

① 経済動向による影響

   NECグループの事業は、国内市場に大きく依存しています。NECグループの売上収益のうち国内顧客に対する売上収益の構成比は、当連結会計年度において連結売上収益の74.5%を占めています。今後の日本における経済情勢または国内顧客の業績および財政状態の悪化は、NECグループの業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

   NECグループの事業は、アジア、米国、欧州を含むNECグループが事業を行う国や地域の経済動向によっても影響を受けます。地政学的リスクおよび米中貿易摩擦を含む国際的な経済摩擦は世界経済の不確実性を高めており、また、保護主義的な通商政策の広がりは世界経済の成長の鈍化の一因となる可能性もあります。感染症が流行した場合やロシアによるウクライナ侵攻の状況も、世界経済情勢に悪影響を与える可能性があります。さらに、かかる地政学的リスクや経済摩擦が、NECグループが事業を行う国や地域において顕在化した場合には、NECグループの事業の遂行に悪影響を与える可能性があります。

   また、国内外の政府・政府系機関または地方公共団体が、経済上の理由などにより、政策や予算の方針を変更した場合、NECグループの事業に悪影響を与える可能性があります。

   NECグループの事業計画および業績予想は、NECグループが属する市場における経済活動の予測に基づき作成していますが、上記のような一般的な国内外の経済の不透明さによって市場における経済活動の予測も困難となっており、NECグループの将来の収益および必要経費についても、その予測が困難となっています。計画編成または業績予想を行う際に予測を見誤った場合、NECグループは変化する市場環境に適切に対応できない可能性があります。

 

② 為替相場および金利の変動

   NECグループは、米ドル/円相場やユーロ/円相場を中心に外国為替相場の変動リスクにさらされています。円建てで表示されている当社の連結財務諸表は、外国為替相場変動の影響を受けます。為替変動は、外貨建取引から発生する株式投資、資産および負債の日本円換算額ならびに外貨建てで取引されている製品・サービスの原価および売上収益に影響を与えます。2024年3月31日現在における、NECグループの営業債権、営業債務、為替予約などについてのエクスポージャー純額は米ドル建てで314百万米ドルの債権ポジションであり、同日において円が米ドルに対して1%円安となった場合、税引前利益は476百万円増加します。NECグループは、為替リスクを軽減し、またこれを回避するために外貨建て営業債権債務の相殺や先物為替予約、通貨オプションを利用するなど様々な手段を講じていますが、為替相場の変動はNECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。特定の外国為替の変動は、競合会社に有利に影響する一方で、NECグループには悪影響を与える場合もあります。

   また、NECグループは、金利変動リスクにもさらされており、かかるリスクは、NECグループの事業運営に係る経費全体ならびに資産および負債の額、特に長期借入金に伴う負担に影響を与える可能性があります。NECグループは、このような金利変動リスクを回避するために様々な手段を講じていますが、かかる金利変動リスクは、NECグループの事業運営に係る経費の増加、金融資産の価値の下落または負債の増大を招く可能性があります。

 

③ 市況変動

   NECグループの製品・サービスの需要は、国内外におけるICTやAIの市況変動の影響を受ける可能性があります。市況が低迷した場合の他にも、既存の製品・サービスの陳腐化、過剰在庫、コスト競争力の低下により、NECグループの製品・サービスの需要は悪影響を受ける可能性があります。また、これらの市場は不安定な性質を有しており、回復したとしても将来再び低迷する可能性があり、その結果、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

④ 感染症の流行による悪影響

   感染症の流行は、NECグループ、NECグループの仕入先および顧客が事業を行う地域において、社会、経済、財政および労働環境に悪影響を及ぼす可能性があります。これらがNECグループ、NECグループの仕入先および顧客の事業に与える影響の程度は、感染症の収束時期や各国政府の対応(渡航制限や外出自粛要請などの感染予防および感染拡大対策を含む。)などによるため、極めて不透明であり、予測することが困難です。NECグループの顧客である政府・政府系機関、地方公共団体および企業が感染症の対応に注力した場合、これらの顧客からのNECグループの製品・サービスに対する受注が従前の想定を下回る可能性があります。また、感染症の流行による影響の程度やその収束時期によっては、のれんその他の無形資産や使用権資産などNECグループの保有資産の減損のほか、主要な保有株式の価値の減少が生じ、NECグループの財政状態に悪影響を与える可能性があります。2024年3月31日現在におけるNECグループのその他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品は1,388億円ですが、感染症の影響によりこれらの価値が減少する可能性があります。

   感染症の流行およびその感染予防対策がNECグループの事業、業績および財政状態に与える悪影響について、その全体像を現時点で確実性をもって予測することはできません。

 

(2) NECグループの経営方針に関するリスク

① 中期経営計画

   NECグループは、2021年5月に、2026年3月期を最終事業年度とする「2025中期経営計画」を発表し、企業価値の最大化に向けて、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針として掲げています。

   NECグループは、「2025中期経営計画」の実現に向けて、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題」に記載した取組みを実行しているところですが、それらの取組みを通じて「2025中期経営計画」で掲げた目標を達成できるか否かについては、事業拡大を企図している市場が、NECグループが想定した規模に成長しないリスク、当該市場の成長が想定したスピードを下回るリスク、当該市場においてNECグループが獲得するシェアが想定を下回るリスク、「2025中期経営計画」において計画している戦略的費用の投入によっても期待した効果が発現しないリスクなど様々なリスク要因により影響を受けるため、それらの取組みが計画どおりに進捗せず、「2025中期経営計画」で掲げた目標を全く達成できない可能性があります。

 

② 財務および収益の変動

   NECグループの各四半期または各年度の経営成績は、必ずしも将来において期待される業績の指標とはなりません。NECグループの業績は、新技術・新製品・新サービスの導入や市場での受容、技術・インフラの開発または事業化の遅延・失敗、技術進歩や広く利用されているソフトウェアのサポートサービスの終了および技術投資のサイクル、製品原価の変動とプロダクト・ミックス、顧客からの受注・納入時期に係る季節性、顧客の事業が成功するか否かにより影響を受け、また、製品・サービスごとに異なる顧客の注文の規模や時期、買収した事業や獲得した技術の影響、買収により期待するシナジーを実現する能力、固定費などを含む種々の要因により四半期ごと、年度ごとに変動しており、今後も変動します。

   NECグループの事業、業績および財政状態に影響を与え、業績予想を困難にする、NECグループがコントロールできない動向や外部要因には、次のようなものがあります。

   (a) 提供する製品・サービスを取り巻く事業環境の悪化

   (b) 市場ならびに日本経済および世界経済の全般的な状況の変化

   (c) 競合会社による画期的な技術革新などにより生じる予期しない市場環境の変化

   (d) 財政支出の規模、時期を含む政府のインフラの開発、展開に関する決定

   (e) 顧客による設備・投資の規模や時期

   (f) 顧客の在庫管理方針

   (g) 法令、政府規制、政策などの変更

   (h) 資本市場の状況および顧客や取引先による資金調達力または設備投資能力の悪化

   (i) 顧客や取引先の信用状態の悪化など

 

③ 企業買収・事業撤退など

   NECグループは、事業拡大や競争力強化などを目的として、企業買収、事業統合および事業再編を実施しており、例えば、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスを推進する戦略の一環として、2018年1月に英国のノースゲート・パブリック・サービシズ社(現NECソフトウェア・ソリューションズ・ユーケー社)、2019年2月にデンマークのケーエムディ・ホールディング社、また、2020年12月にスイスのアバロク・グループ社をそれぞれ買収しました。NECグループは、今後も、「2025中期経営計画」で掲げた成長戦略の一環として、適切な企業買収などを検討していきます。しかしながら、NECグループの企業買収などの戦略に合致する適切な対象企業を見つけることができない可能性があり、また、適切な対象企業を見つけることができた場合であっても、次のような要因により、NECグループの事業、業績、財政状態および戦略上の目標達成能力に悪影響を与える可能性があります。

   (a) かかる企業買収、事業統合および事業再編による成長機会の確保、財務体質の改善、投資効果やシナジー効果、期待されるその他の利益が、実現しないこと

   (b) かかる企業買収、事業統合および事業再編に適用される規制・関係法令や契約その他の条件により、計画された企業買収、事業統合および事業再編が予定どおりに実行されないこと

   (c) かかる企業買収、事業統合および事業再編の過程において、海外市場を中心として、人事・情報システム、経営管理システム、顧客向け製品・サービスなどの整理または統合の遅れや、想定外の費用および負担が発生するなど、予想を上回る問題が発生すること

   (d) 買収などの対象企業において、事業の継続・成長に必要な経営陣の確保や中長期的にNECグループとして事業を遂行するための体制の移行に支障が生じること

   (e) 顧客が、費用、リスク管理などのために仕入先の分散を望む場合に、買収、統合または再編後の会社が既存の顧客および戦略的パートナーを維持できないこと

   (f) 買収、統合または再編後の会社がNECグループの追加の財務支援を必要とすること

   (g) 経営陣、主要な従業員などが、企業買収、事業統合または事業再編に必要な業務に割かれることにより、NECグループの既存の主要事業の収益の増加およびコスト削減に注力できないこと

   (h) かかる企業買収や事業再編から発生するのれんおよびその他の無形資産が減損の対象となること

   (i) 買収、統合または再編後の会社への出資について、評価損が発生すること

   (j) その他、かかる企業買収、事業統合および事業再編が予期せぬ負の結果をもたらすこと

   一方で、NECグループは、近年、事業戦略に整合しない事業や低収益事業のうちの一部について撤退・縮小を実施しています。しかしながら、市場環境や買手先候補の意向などにより、NECグループが希望する時期・条件での事業の撤退・縮小が実現できる保証はなく、その事業戦略の実現のために望ましい条件での事業の撤退・縮小が行えない場合、NECグループの事業および業績に悪影響を与える可能性があります。

 

④ 戦略的パートナーとの提携関係

   NECグループは、新技術および新製品の開発ならびに既存製品および新製品の製造に関して、業界の先進企業と長期的な戦略的提携関係を構築しており、戦略的パートナーに財務上その他事業上の問題が発生した場合や、戦略的パートナーが戦略上の目標変更や提携相手の見直しなどを行った場合、NECグループとの提携関係を維持しようとしなくなるか、維持することができなくなる可能性があります。これらの提携関係を維持できない場合には、NECグループの事業活動に支障が生じる可能性があります。また、戦略的提携関係を構築した結果、共同開発の対象となる技術を使用した製品や、NTTグループなどのパートナーとの提携を通じて推進するOpen RANに関する規格など戦略的提携関係による開発対象となる規格の取扱いを戦略的パートナーに依存し、NECグループの製品・サービスの拡大または多様化に関する自由度が制限される可能性があります。

   また、NECグループの競合会社は、NECグループの製品・サービスと競合する分野における競争力強化や新技術の開発を目指して戦略的提携を実施することがあります。例えば、競合会社による戦略的提携により開発された規格が業界の標準規格としての地位を獲得したことにより、NECグループが自らまたは戦略的提携相手と推進する規格が普及しないなど、競合会社による戦略的提携が成功した場合、その影響により、NECグループの事業戦略が奏功しない可能性があります。

   NECグループは、様々なプロジェクトに他の企業とともに参加し、NECグループと他の企業の製品またはサービスを統合して顧客の要求に合致するシステムとして提供することがあります。戦略的パートナーが倒産その他の要因により提携関係における役割を維持できない場合、またはNECグループ以外の企業が提供する製品もしくはサービスのいずれかに起因する当該統合システムの誤作動もしくは顧客の要求事項との相違その他の欠陥や問題が生じた場合、NECグループの評価および事業に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

⑤ 海外事業の拡大

   NECグループは、デジタル・ガバメント、デジタル・ファイナンスやグローバル5Gの推進など海外市場での事業拡大に向けて種々の施策を実行しています。このうち、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスの推進の成否については、特に、ノースゲート・パブリック・サービシズ社(現NECソフトウェア・ソリューションズ・ユーケー社)、ケーエムディ・ホールディング社およびアバロク・グループ社など買収した海外企業の成長やこれらの海外企業とNECグループとの適切な統合を通じた事業シナジーの実現の可否に左右されます。また、NECグループは、海外市場での事業拡大に伴い、特定の地域または市場に固有のリスクにさらされています。企図した製品・サービスの収益化や市場の成長が予想よりも遅い場合、NECグループの新しい製品・サービスが顧客に受け入れられない場合、収益獲得の機会が競争もしくは規制により損なわれる場合、または計画した買収、投資もしくは資本提携が規制当局に承認されない場合には、NECグループの新規市場への進出や新製品・サービスの提供が奏功しない可能性があります。また、現地の商慣行および法令規則の知見や理解が不十分な可能性や、市場によっては適切な事業や提携先を見つけることが困難である可能性もあります。そのほか、海外の潜在的な顧客と現地供給業者との間の長期的な提携関係の存在や国内事業者保護のための規制などの種々の障壁に直面しています。

   海外市場での成長機会を捉えるために、収益の計上が見込まれる時期より相当前から多額の投資を行う必要がNECグループに生じる可能性がありますが、このような投資が、期待される水準の収益成長をもたらす保証はありません。また、このような投資額の増大によって、利益の増加を上回るペースで費用が増加する可能性があります。さらに、海外におけるNECグループの事業および投資は、為替管理、外資による投資または利益もしくは投資資本の本国送金に対する諸規制、現地産業の国有化、5G関連技術を含む輸出入にかかる要件や規制の変更、海外当局からの許認可などの取得といった海外市場における規制、米中貿易摩擦を含む国際的な経済摩擦、税制・税率の変更、さらにはウクライナ情勢などの経済的・社会的・政治的・地政学的リスクなどにより悪影響を受ける可能性があります。

   さらに、海外の金融市場および経済に問題が発生した場合には、当該海外市場の顧客からの需要が悪影響を受ける可能性もあります。

   これらの要因により、NECグループは、海外市場における事業拡大に成功せず、その結果、NECグループの事業成長、業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

(3) NECグループの事業活動に関するリスク

① 技術革新および顧客ニーズへの対応

   NECグループが事業を展開する市場は、急速な技術革新と技術標準の進展、顧客の嗜好の変化および新製品・新サービスの頻繁な導入を特徴としており、これらにより既存の製品・サービスは急速に陳腐化し、または市場性を失う傾向があります。NECグループの将来における競争力の維持・強化には、次のような技術革新への対応能力が必要です。

   (a) AI、IoT、生体認証、サイバーセキュリティ技術、DXを中心とした分野における急速な技術革新に対応して、技術面でのリーダーシップを維持する能力

   (b) 既存の製品・サービスを向上させる能力

   (c) 顧客のニーズを満たす革新的な製品をタイムリーにかつコスト効率よく開発し生産する能力

   (d) 新たな製品・サービスおよび技術を使用し、またはこれらに適応する能力

   (e) 優秀な技術者や理工学分野の人材を採用し雇用する能力

   (f) 開発する新製品・新サービスに対する需要およびこれらの商品性を正確に予測する能力

   (g) 開発した技術を事業化する能力

   (h) 新製品の開発または出荷の遅延を回避する能力

   (i) 高度化する顧客の要求に対応する能力

   (j) 顧客の製品およびシステムにNECグループの製品が組み込まれるようにする能力

   NECグループの上記の対応能力は、特に、研究開発費用を確保した上で行われる技術革新などに対応するための適切な研究開発体制の維持と、かかる研究開発体制に基づき蓄積されてきた研究開発結果に支えられているところ、資金、人材、その他のリソース不足などにより研究開発力の維持が困難となるなどし、上記の対応能力が不足・低下した場合、NECグループは、将来における競争力を失う可能性があります。

   NECグループは、技術革新および顧客嗜好の急速な変化に対応する、製品・サービスの改良や新製品・新サービスの開発を行い、市場投入することができない可能性があります。将来の技術革新および顧客嗜好の変化は、過去に実際に生じた変化とは異なる傾向や時間軸で生じる可能性があり、現時点での予測とも異なる可能性があります。NECグループがこれらの技術革新および顧客嗜好の変化を適切に把握し対応できなかった場合、またはそのような変化の方向性を正確に予測できなかった場合、NECグループの事業、業績および財政状態は著しく損なわれる可能性があります。さらに、NECグループの技術を顧客の期待に沿ったかたちで製品に組み込むことができなかった場合、NECグループの顧客との関係、評価および収益に悪影響を与える可能性があります。

   NECグループは、現在提供している製品・サービスや将来提供しようとしている製品・サービスについて、業界の標準規格となる技術を開発し商業化するために、他の企業との提携およびパートナーシップの形成・強化に努めています。また、NECグループは、かかる技術の開発および商業化に多大な資金、人材その他のリソースを投じています。競合会社の技術が業界の標準規格として採用された場合、かかる規格技術の開発や商業化を行うことができない可能性があります。そのような場合、NECグループの競争上のポジション、評価、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

② 競争の激化

   NECグループは、事業を展開する多くの市場において激しい競争にさらされています。かかる競争状態は、NECグループの利益の維持に対する深刻な圧力となっており、当該圧力は特に市場が低迷した場合に顕著となります。また、競合会社の市場参入に伴い、NECグループの製品・サービスが厳しい価格競争にさらされるリスクが増大しています。主にアジア諸国における競合会社の中には、オペレーションコストの面でNECグループよりも有利であり、顧客に対する販売価格面で競争力を有している会社が存在する可能性があります。また、NECグループよりも強固な財務基盤を有する多国籍企業とも競合していますが、このような多国籍企業は、戦略的な価格設定や研究開発に向けた多額のリソースの投入・大規模な人材登用を実施することがあります。さらに、近年、NECグループが開発した新製品・新サービスの市場投入から競合会社による同様または同種の製品・サービスの市場投入までの間隔が短くなっており、NECグループの製品・サービスが従来より早く激しい競争にさらされる可能性があります。

   NECグループは、大規模な多国籍企業から比較的小規模で急成長中の高度に専門化した企業まで、国内外を問わず多くの会社と競合しています。特定分野に特化している多くの競合会社と比較して、NECグループは多角的に事業を展開しているために、競合会社より多くのリソースを保有していたとしても、それぞれの特定事業分野に関しては、競合会社ほどの資金を投入できない場合があり、また、そのような競合会社と同程度の迅速さや柔軟性をもって変化に対応することや、市場機会を捉えることができない可能性があります。さらに、特定分野において研究開発などのために多大な資金、人材その他のリソースを投入した場合であっても、これによってNECグループの収益性や競争力の向上が達成される保証はなく、かかる資金投入などが結果的にNECグループの事業および業績に悪影響を与える可能性があります。

   競合会社の規模や競争力の差異を生む要因は、業界や市場により異なります。例えば、5G技術の分野では、多額のリソースの活用が可能な大規模な多国籍企業が競合会社に含まれるところ、当該分野において、かかる多国籍企業に対して競争上の優位性を確保できるかは、競合する業界において、NECグループが自らまたは戦略的提携相手と開発・設計し、推進する技術・規格を用いたプラットフォームが支配的な地位を獲得できるかといった事情に左右されます。他方、デジタル・ガバメントやデジタル・ファイナンスの分野では、事業を展開する国や地域によりNECグループの有する市場シェアや競合会社となる企業が異なるため、競争上の優位性を確保するためには各国や地域における状況に応じた対応が必要となります。NECグループが多角的な事業を展開する上でこのような事業分野ごとの特性に応じた効果的な事業戦略の遂行ができない場合には、NECグループの事業および業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

   NECグループは、政府・政府系機関向けプロジェクトやその他の大規模なプロジェクトで発注価格などの条件が厳格に設定されている案件への入札や受注提案プロセスに参加することがあり、その場合、NECグループの収益性がさらに低下する可能性があります。厳格な条件に合致させつつも収益性を維持するために、NECグループは、革新的かつ独自の価値を顧客に提供することによって継続的に収益を増加させ、かつ、開発製造業務の最適化やビジネスプロセスの改善などにより費用削減に努めていますが、これらの取組みをもってしても、収益性を維持できない場合があります。

   NECグループは、現在の競合会社や潜在的な競合会社の一部に対し、製品・サービスを販売することがありますが、かかる競合会社が、競合またはその他の理由により、NECグループのソリューションを利用しないこととした場合、NECグループの事業に悪影響を与える可能性があります。

 

③ 特定の主要顧客への依存

   NECグループは、政府・政府系機関向けの事業およびNTTグループをはじめとする大規模ネットワークインフラ企業向けの事業に依拠していますが、そのような事業の需要が変動した場合や事業を受注できなかった場合には、NECグループの売上収益に重大な悪影響を与える可能性があります。また、政府・政府系機関が予算、政策その他の理由で取引額を削減する可能性があるほか、顧客企業においても、事業上もしくは財務上の問題その他の理由により設備投資額もしくはNECグループとの取引額を削減または投資対象を変更する可能性があります。

   また、NECグループは、政府・政府系機関向け事業の獲得に必要な入札・受注提案プロセスへの参加が規制上の理由により制約される可能性があります。NECグループは、規制違反行為の発生を防ぐため内部統制システムの強化に努めていますが、かかる取組みを徹底しても、規制違反行為が発生する可能性を完全に否定することはできません。また、需要の変動、政策変更または規制により、政府・政府系機関向けの事業が縮小した場合、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

④ 新規事業の展開

   新製品・新サービスを開発する際には、製品の開発・製造に要する期間・費用が非常に長期・多額となる可能性や、実際に製品・サービスの販売・提供による収益が生じる相当以前から多くのリソースの投入が必要となる可能性があるなど、多くのリスクを伴います。また、新製品・新サービスの開発中に、異なる新技術が導入され、または標準規格が変更されることなどにより、NECグループが新たに開発した製品・サービスを市場に投入する前に、当該製品・サービスが陳腐化し競争力を失う可能性があります。新製品・新サービスには想定外の欠陥・エラーが含まれている可能性があり、新製品・新サービスを市場に投入・展開した後にこれらが発見された場合、顧客に生じた損失に対する責任を追及される可能性や、NECグループまたはその製品・サービスの評価が毀損される可能性があります。これらの要因により、NECグループの事業、業績および財政状態は著しく損なわれる可能性があります。

 

⑤ 製品およびサービスの欠陥

   NECグループが提供する製品・サービスの欠陥により顧客や多数のエンドユーザーに深刻な損失をもたらす可能性があります。顧客の基幹業務などの高い信頼性が求められる、いわゆるミッションクリティカルな業務において使用されている製品またはサービスに欠陥や提供の遅延が生じた場合、NECグループは、顧客やエンドユーザーなどに生じた損失に対する責任を追及される可能性があります。また、製品・サービスの欠陥により社会的評価が低下する可能性や、リコール費用を負担する可能性もあります。特に、ICTに関する製品・サービスは、一般的に、技術的障害やコンピュータウイルスなどのリスクにさらされていますが、NECグループは、消防・防災システムなど生命身体の安全を保護する場面で利用される製品・サービスを提供しているため、より重大な責任を追及される可能性があります。さらに、AIや生体認証技術といった革新的な技術を使用した製品・サービスは、人々の生活を豊かにする反面、プライバシー侵害、差別をはじめとした人権課題など予測が困難なリスクにさらされる可能性があります。これらに起因して社会的評価が低下した場合や規制当局により制裁を受けた場合には、NECグループの販売力が損なわれる可能性があります。また、これらは不採算プロジェクトが発生する要因ともなります。

   NECグループでは、製品・サービスの欠陥や不採算プロジェクトの発生を防ぐため、システム開発などのプロジェクトを遂行するにあたっては、システム要件の確定状況や技術的難易度の把握、システムを構成するハードウェアやソフトウェアの品質管理など、商談開始時からプロジェクトのリスク管理を徹底していますが、これらの発生を完全に防ぐことは困難です。NECグループが提供する製品・サービスに欠陥が生じた場合または不採算プロジェクトが発生した場合には、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑥ 部品などの調達

   NECグループの事業活動には、部品、製造装置その他の調達物品がタイムリーに納入されることが必要であり、中にはジャスト・イン・タイムの条件で購入しているものもあります。これらの部品などには、その複雑さや特殊性から仕入先が少数に限定されているものや仕入先または調達物品の切り替えが困難なものがあります。地政学的リスクや米中貿易摩擦を含む国際的な経済摩擦などにより、NECグループの主要顧客が属する業界を含む多くの業界が影響を受け得るところ、今後NECグループにおいても、製品・サービスの納入に遅れが生じるなど、事業に悪影響が及ぶ可能性があります。また、NECグループに対する調達物品の供給に遅延もしくは中断が生じた場合、規制変更や規制動向の変化が生じた場合、業界内の需要が増加した場合または関税などの貿易問題が生じた場合などには、必要な部品が不足し、代替品の調達費用が増加し、NECグループの生産能力、効率および収益性に悪影響を与える可能性があります。さらに、金融市場の混乱によりNECグループの仕入先の資金繰りや支払能力に問題が生じた場合には、NECグループの調達物品の調達元の減少やサプライチェーンの混乱が生じる可能性があります。また、調達した部品、製造装置その他の調達物品がNECグループ製品の信頼性および評価に悪影響を与えるような欠陥を抱えている場合、または調達物品を適時に適切な価格で調達できない場合には、NECグループの事業、業績および財政状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑦ 知的財産権など

   NECグループの事業は、NECグループが独自に開発した技術ならびにNECグループの製品、サービス、事業モデルならびにデザインおよび製造プロセスに必要な特許権その他の知的財産権を取得できるか否かにより大きな影響を受けます。特許権などの登録・維持には、長い時間と多額の費用を要します。これらの特許は、異議申立てを受け、無効とされ、または回避される可能性があります。また、NECグループが数多くの特許権その他の知的財産権を保有していたとしても、これらの権利によりNECグループの競争上の優位性が常に保証されているわけではありません。

   NECグループが事業を展開する領域での技術革新は非常に速いため、知的財産権による保護には陳腐化のリスクがあります。また、NECグループが将来取得する特許権の請求範囲がNECグループの技術を保護するために十分な範囲であるという保証もありません。さらに、国によっては、特許権、著作権、トレードシークレットなどの知的財産権による効果的な保護が与えられず、または制限を受ける場合があります。NECグループの企業秘密は、従業員・元従業員、契約の相手方などによって不正に開示または流用される可能性があります。加えて、NECグループの知的財産権を侵害した模倣品により、NECグループのブランドイメージが損なわれ、NECグループの製品の売上に悪影響を与える可能性もあります。さらに、NECグループが特許権その他の知的財産権を行使するために訴訟を提起する必要がある場合、当該訴訟に多額の費用および多くの経営資源が必要となる可能性があります。

 

⑧ 第三者からのライセンス

   NECグループの製品には、第三者からソフトウェアライセンスやその他の知的財産権のライセンスを受けて製造・販売しているものがあり、今後もNECグループの製品に関連して第三者から必要なライセンスを受け、またはこれを更新する必要があります。NECグループは、経験および業界の一般的な慣行を踏まえ、原則としてこれらのライセンスを商業的に合理的な条件で取得することができると考えています。しかしながら、将来NECグループが必要とするライセンスを、第三者から商業的に合理的な条件で取得できる保証はなく、また、全く取得できない可能性もあります。そのような場合、かかるライセンスを利用する事業活動を制限または停止しなければならず、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑨ 顧客に対する信用リスク

   NECグループは、顧客に対してベンダーファイナンス(NECグループの製品・サービスの購入資金の供与)を提供することがあり、また、支払期間の延長やNECグループの製品・サービスの購入を援助するためその他の方法による財務支援を行うことがあります。NECグループが財務上またはその他の事情により、顧客が受入れ可能な支払条件の設定その他の方法による財務支援ができない場合、または条件にかかわらず財務支援を一切行うことができない場合、NECグループの業績に悪影響を与える可能性があります。さらに、NECグループの顧客の多くは、代金後払いの方法によりNECグループから製品・サービスを購入していますが、顧客に財務上の問題が発生した場合には、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑩ 人材の確保

   NECグループは、社会に受け入れられる製品・サービスおよびソリューションを開発するため、優秀な従業員を獲得し維持する必要があり、また、そのような従業員の獲得に際しては、豊富なリソースを有する多国籍企業と競合する可能性があります。そのため、NECグループの人事部門は、中期経営計画の成長領域をはじめ、NECグループの事業を推進する部門に必要な人材を採用し、その雇用を継続することに努めており、将来の採用コストおよび人件費が増加する可能性があります。また、今後、技術および業界におけるトレンドの変化に伴い、社会感度が高く、様々な価値観、能力、バックグラウンドや従来とは異なる技術を有する多様な人材を採用する必要性が高まる可能性があります。具体的には、デジタル化・自動化の進展に伴い、AI、機械学習、データサイエンス、統計分析などの技術を有する人材の需要が増していることから、これらの人材の獲得に向けた競争は今後より激しくなることが見込まれ、そのような人材の採用は、従来の採用方法だけではなくリファーラル(社員紹介)やスカウトなどの多様な手法を採る必要があります。

   これらの要因により、優秀な従業員が多数離職した場合、優秀な人材を新規に採用することができなかった場合、または人材の多様性が確保できなかった場合には、NECグループの事業目的の達成が困難となり、社会価値創造型企業として社会に受け入れられる製品・サービスおよびソリューションを提供できなくなることがあります。

 

⑪ 資金調達

   NECグループは、営業活動によるキャッシュ・フローや銀行その他の金融機関からの借入金による資金調達に加え、コマーシャル・ペーパーその他の債券の募集などにより資本市場から資金を調達しています。NECグループの信用状態が低下した場合、格付けが低下し、NECグループの金利負担が増加するとともに、NECグループのコマーシャル・ペーパー市場または債券市場における資金調達能力が悪影響を受け、その結果、NECグループの手許流動性、業績および財政状態にも悪影響を与える可能性があります。NECグループは、比較的高い財務レバレッジを維持しているため、負債による資金調達が困難になった場合には、特に事業遂行に影響を与える可能性があります。

   NECグループの資金調達およびその費用は、NECグループの主要な貸手の倒産、NECグループに対する融資停止の決定または資本市場の不安定さにより、悪影響を受ける可能性があります。NECグループが満足できる条件で外部から資金を調達することができない場合もしくは全く資金を調達することができない場合、または営業活動や必要に応じた資産の売却によって十分なキャッシュ・フローを生み出すことができない場合、NECグループは債務を履行することができなくなり、NECグループの事業、業績および財政状態は、重大な悪影響を受ける可能性があります。また、NECグループの事業のために必要な資金を借り入れる場合、NECグループの成長戦略を実行する能力に制約を与えるような財務的その他の制限的義務が課される可能性があります。

   NECグループは、原則として純投資目的以外の目的(いわゆる政策保有目的)で上場会社の株式を保有しないこととしているものの、NECグループとの協業や投資先との事業上の関係などにおいて必要と判断した会社の株式については、例外的に純投資目的以外の株式として保有します。ただし、純投資目的以外の株式を保有することとした場合であっても、個別銘柄ごとに保有の必要性や、得られるリターンを検証するなど資本コストの観点などを総合的に評価したうえで、取締役会において一定の基準に基づき保有の合理性を検証し、保有の合理性が認められないと判断される場合には売却することとしています。当連結会計年度においても保有する純投資目的以外の株式の売却を進めており、当該売却により167億円の資金を獲得しました。かかる売却後もNECグループは、2024年3月31日時点で、純投資目的以外の株式(非上場株式を含む。)を1,388億円保有しているところ、これらの約34%が市場株価のある上場株式であり、国内外の経済情勢や株式市場の需給関係の悪化、保有先企業の経営状態の悪化などにより株価が低下する可能性があります。売却時期についての具体的な目標の設定はありませんが、保有する純投資目的以外の株式の株価が低下した場合、NECグループは、希望する時期に純投資目的以外の株式の売却を進めることができず、売却による資金の獲得ができなくなる可能性があります。

 

(4) 内部統制・法的手続・法的規制などに関するリスク

① 内部統制

   NECグループは、財務報告の正確性を確保するために、業務プロセスの文書化や厳密な内部監査の実施により内部統制システムの強化に努めていますが、その内部統制システムが有効なものであっても、財務諸表の作成およびその適正な表示について合理的な保証を与えることができるにすぎず、従業員の人為的なミスや不正、複数の従業員による共謀などによって機能しなくなる場合があります。また、内部統制システムの構築当時に想定していなかった事業環境の変化や非定型的な取引に対応できず、構築された業務プロセスが十分に機能しない可能性もあり、虚偽の財務報告、横領などの不正および不注意による誤謬が発生する可能性を完全に否定することはできません。このような事態が生じた場合には、財務情報を修正する必要が生じ、NECグループの財政状態および業績に悪影響を与える可能性があります。また、NECグループの内部統制システムに開示すべき重要な不備が発見された場合、金融市場におけるNECグループの評価に悪影響を与え、かかる不備を是正するために多額の追加費用が発生する可能性もあります。さらに、内部統制システムの開示すべき重要な不備に起因して、行政処分または司法処分を受けた場合、NECグループは、事業機会を失う可能性があります。

   NECグループは、業務の適正および効率の観点から業務プロセスの継続的な改善・標準化に努めていますが、様々な国や地域で事業活動を行っており、また業務プロセスも多岐にわたっているため、特にNECグループにとって新しい事業を行う会社や新しい国や地域で事業を行う会社を買収またはNECグループに統合する場合、共通の業務プロセスの設計およびその定着化は必ずしも容易ではなく、結果として業務プロセスの改善・標準化に多くの経営資源・人的資源と長期間にわたる対応の継続を要し、多額の費用が発生する可能性があります。

 

② 法的手続

   NECグループは、特許権その他の知的財産権に係る侵害などの主張に基づく訴訟または法的手続を申し立てられることがあります。NECグループの事業分野には多くの特許権その他の知的財産権が存在し、また、新たな特許権その他の知的財産権が次々と生じているため、ある製品・サービスについて第三者の特許権その他の知的財産権を侵害する可能性の有無を事前に完全に評価することは困難です。特許権その他の知的財産権侵害の主張が正当であるか否かにかかわらず、かかる主張に対してNECグループを防御するためには、多額の費用および多くの経営資源が必要となる可能性があります。特許権その他の知的財産権侵害の主張が認められ、NECグループが侵害したとされる技術またはそれに代わる技術についてのライセンスを取得できなかった場合には、NECグループの事業に悪影響を与える可能性があります。

   NECグループは、日本のみならず、海外の商取引法、競争法、贈収賄防止法、製造物責任法、環境保護法、各種業法などに関する様々な訴訟および法的手続の対象となる可能性があります。

   NECグループが当事者となっているかまたは今後当事者となる可能性のある訴訟および法的手続の結果を予測することは困難ですが、かかる手続においてNECグループにとって不利な結果が生じた場合、NECグループの事業、業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。さらに、NECグループが関係する法的手続に関して必要となる財務資源および経営陣を含む人的資源などの経営資源についても同様に予測することは困難であり、その程度によっては、これらを適時に確保することが困難となり、NECグループの事業遂行に重大な悪影響を与える可能性があります。また、NECグループが法令や規制に違反した場合には、罰金、過料などに処されるおそれがあるほか、政府・政府系機関、地方公共団体、国際機関などからの受注や入札参加資格が停止されるおそれ、各種業法等に基づきNECグループが取得している許認可などの取消しにより当該許認可に関わる事業が遂行できなくなるおそれ、NECグループが法令や規制に違反したことに起因して損害を被った者に対して損害賠償責任を負うこととなるおそれなどがあり、NECグループの社会的信用ならびに事業、業績および財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法的規制

   NECグループは、事業を展開する多くの国や地域において、予想外の規制の変更、法令適用や政府の政策の運用の不確実性およびその法的責任が不透明であることに関連する多様なリスクにさらされています。日本およびその他の国や地域の政府の経済、貿易、租税、労働、国防、財政支出、個人情報保護などに関する政策を含め、NECグループが事業を展開する国や地域における規制環境の重要な変更により、事業内容の変更を余儀なくされるほか、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

   例えば、2024年に、EUにおいて生体認証技術を含むAI技術の分野における新たな規制を導入するための法案が成立しており、今後、EUその他の国や地域において、かかる新規制の導入や関連する法改正が行われた場合、NECグループの事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、各国の規制当局は経済制裁対象国や特定の個人または団体との取引などを制限または禁止しており、それらの規制は短期間のうちに大幅に改正される場合があります。NECグループは、コンプライアンス・プログラムを実施していますが、規制違反を防止する上で十分に機能しない可能性があり、違反が発生した場合などには、NECグループの社会的信用ならびに事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 環境規制

   NECグループの事業は、大気汚染、水質汚濁、有害物質の使用および取り扱い、廃棄物処理、製品含有化学物質、製品リサイクルならびに土壌・地下水汚染の規制や地球温暖化防止などを目的とした様々な環境法令の適用を受けています。また、NECグループは、過去、現在および将来の製造活動に関し、環境責任を負うリスクを抱えています。NECグループが現在および将来の環境規制を遵守できなかった場合やNECグループが責任を負う汚染が発見された場合、罰金、有害物質の除去費用または損害賠償を含む多額の費用や施設および設備を改良する多額の投資を要する可能性があります。また、将来、新たな環境問題が生じた場合や、自社の温室効果ガス排出量に応じて金銭的負担が生じるカーボンプライシングの導入など環境規制がより厳格化する場合など予期せぬ事態が生じた場合、NECグループの社会的評価の悪化、事業活動の制限または製品設計や商品性への影響などによって、NECグループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす著しい環境コストを負担する可能性があります。

   NECグループは、自主管理基準や2050年を見据えた長期視点の気候変動対策指針を設定・策定し、NECグループの環境方針に従って適切な業務遂行や環境監査を実施するなど、法令および政府当局の指針の遵守に努めています。また、2022年9月に、サプライチェーン全体からのCO2排出量を2040年までにゼロとすることをめざすイニシアティブ「The Climate Pledge」(TCP)へ参加し、CO2排出量削減対策を強化しています。しかしながら、これらの措置やイニシアティブへの参加は過去、現在および将来の事業活動に関して生じるおそれのある潜在的な責任を回避する上で必ずしも有効に機能しない可能性があります。また、将来、新たな環境関連法令による規制や、有害物質などを除去する義務に関する費用などが生じる場合やカーボンニュートラルに向けた目標を達成できなかった場合、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性ならびにNECグループの評価およびブランド価値が低下する可能性があります。なお、NECグループの気候変動への対応については「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)戦略並びに指標及び目標のうち重要なもの ②NECグループの気候変動に関する戦略並びに指標及び目標」に記載のとおりです。

 

⑤ 税務

   NECグループの実効税率は、税率の低い国や地域での収益が予想よりも少なく、税率の高い国や地域での収益が予想よりも多い場合や、NECグループの繰延税金資産および繰延税金負債の評価の変更、移転価格の調整、損金算入されない報酬の税効果、またはNECグループが事業を展開する多くの国や地域における租税法令、会計基準もしくはそれらの解釈の変更が行われた場合、悪影響を受ける可能性があります。今後、実効税率が大幅に上昇した場合には、NECグループの将来の利益が減少する可能性があります。現在、NECグループは、繰越欠損金および将来減算一時差異により繰延税金資産を計上していますが、これらはいずれも将来の課税所得を減額する効果があります。繰延税金資産は課税所得によってのみ回収されます。市況やその他の環境の悪化により、繰越期間中のNECグループの事業およびタックス・プランニングによる将来の課税所得が予想よりも低いと見込まれる場合には、回収可能と考えられるNECグループの繰延税金資産の額が減額される可能性があります。また、法人税率の引下げなどの租税法令の改正や会計基準の変更がなされた場合においても、NECグループの繰延税金資産の額が減額される可能性があります。かかる減額は、その調整が行われた期間におけるNECグループの利益に悪影響を与えます。

   また、NECグループは、税務申告について様々な国や地域の税務当局により継続的な監査および調査を受けています。NECグループでは、未払法人所得税等の妥当性を判断するため、これらの監査および調査の結果生じる悪影響の可能性について定期的に評価していますが、これらの監査や調査の結果は、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑥ 情報管理

   NECグループは、通常の事業遂行に関連して、個人番号(マイナンバー)や機微情報(センシティブ情報)を含む多数の個人情報や機密情報の収集、保有、使用、移転その他の処理をしています。近年、企業や機関が保有する情報や記録が流出し、または不正なアクセスやサイバー攻撃を受けるといった事件が多発しています。NECグループが保有する顧客または従業員に関する個人情報や機密情報が流出し、または不正なアクセスやサイバー攻撃を受け、それが不正に使用された場合には、NECグループは法的な責任を負い、規制当局による処分を受け、NECグループの評価およびブランド価値が損なわれる可能性があります。とりわけ、近時のサイバー攻撃の高度化や対象となる事業やインフラの規模の拡大および複雑化に伴い、不正アクセスなどの脅威や、情報管理に関するシステムの脆弱性などの発見および軽減が適時に行えない可能性があります。さらに、これらの不正なアクセスやサイバー攻撃を受けるリスクは、NECグループの製品、サービスおよびシステムだけではなく、顧客、請負業者、仕入業者、ビジネスパートナーその他の第三者の製品、サービスおよびシステムにも存在します。NECグループの顧客には金融機関や医療機関といった高度な規制業種および防衛関連を含む基礎的な社会インフラに関わる政府・政府系機関が含まれており、NECグループの製品、サービスおよびシステムは、これらの顧客にとって極めて重要な場面で利用されることもあるほか、センシティブなデータを取り扱うこともあります。

   NECグループは、個人情報を日本の個人情報保護法や欧州の「EU一般データ保護規則(GDPR)」などの関係法令に従って取り扱わなければなりません。NECグループが、かかる関係法令に違反した場合、これにより生じた経済的・精神的損害に対し、賠償しなければならない可能性や規制当局により多額の制裁金などが科される可能性があります。また、さらなる情報保護対策を実施するために、多額の費用が発生し、または通常業務に支障が生じる可能性があります。さらに、NECグループの製品、サービスおよびシステムを利用している顧客が、かかる情報を保護できなかった場合には、NECグループの評価および事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

   また、NECグループは、生体認証技術、AI技術などを活かしたデジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスの推進により成長を目指しています。これらの先端技術の進展に伴い、新たな人権問題への対応の必要性が議論されており、かかる人権問題の関心の高まりを受けて、データ保護および個人情報保護に係る規制の範囲も拡大し、かつ、その規制内容は国や地域ごとに異なる複雑なものになっています。今後も生体認証技術、AI技術などの先端技術の利用に関する規制強化に向けた動きが継続する可能性は高く、その規制内容次第では、NECグループまたはNECグループがサービスを提供する顧客が、規制当局から調査や制裁を受けるおそれや第三者から訴訟を提起されるなどのおそれがあるほか、国や地域によっては、これらの先端技術の利用そのものが禁止または著しく制限され、かかる先端技術を利用した事業機会を失う可能性があります。

 

⑦ 人権の尊重

   NECグループが事業を展開する国や地域では、人権や労働安全衛生などに係る課題への企業の対応に関心が高まっており、これらに関する法令および規制も変化しています。また、人種差別や政治不安に起因する人権課題が存在する地域もあり、取引先と協働した取り組みが求められています。NECグループでは、「AIなどの新技術と人権」、「地政学的情勢や紛争影響をふまえた人権リスク」、「サプライチェーン上の労働」および「従業員の安全と健康」を顕著な人権課題に特定し、取り組みを進めています。しかしながら、NECグループの事業拠点やサプライチェーンのみならず協業先や顧客などを含む範囲において、これらの課題に適切に対応できなかった場合、行政罰や顧客との取引停止の可能性に加え、地域住民、顧客・消費者、株主・投資家、人権保護団体などの様々なステークホルダーからの批判にさらされることにより、NECグループの評価およびブランド価値の低下など、NECグループの経営および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) その他のリスク

① 自然災害、人災などの外的要因

   国内外を問わず、NECグループが事業を展開する国や地域において、地震、台風、気候変動に起因する異常気象(集中豪雨、洪水、干ばつ、水不足など)などの自然災害や火災、感染症の流行、戦争、テロリストによる攻撃などが発生した場合、NECグループならびにNECグループの仕入先および顧客に損害、混乱などが生じる可能性があります。例えば、首都直下地震が発生した場合、NECグループの本社は、甚大な被害を受け、NECグループの事業は悪影響を受ける可能性があります。また、これらの災害などが国内外の経済活動の停滞、為替変動・金利変動、政治不安・経済不安、治安および世情の悪化を引き起こし、NECグループの事業を阻害する可能性があります。

   NECグループでは、事前の減災対策を行うとともに緊急時の復旧手順や行動要領をまとめた事業継続計画(BCP)を策定し、訓練・教育も実施していますが、自然災害が発生すると被災地域における電気・ガス・水道・通信・交通などの社会インフラが破壊され、人的被害や製造停止、資材調達困難、物流困難、環境・品質リスクの発生など、事業に多大な影響を与える可能性があります。感染症が蔓延すると、人材の確保や労働環境のリスクが高まるほか、蔓延地域における顧客の需要低下、仕入先の操業中断など、事業運営に悪影響を与える可能性があります。

 

② のれんの減損

   NECグループは、ノースゲート・パブリック・サービシズ社(現NECソフトウェア・ソリューションズ・ユーケー社)、デンマークのケーエムディ・ホールディング社、アバロク・グループ社を買収したことなどにより2024年3月31日時点で3,923億円ののれんを計上しており、今後さらに買収を行う場合には追加ののれんを計上する可能性があります。

   NECグループは、国際財務報告基準(IFRS)に準拠して連結財務諸表を作成しており、のれんを配分した資金生成単位については、減損の兆候の有無にかかわらず1年に1回、また、減損の兆候があると認められた場合には随時、当該資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超えるか否かを判断するための減損テストを行う必要があります。回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額に基づいて算定します。また、使用価値は、見積将来キャッシュ・フローを、貨幣の時間的価値および当該資産に固有のリスクを反映した税引前の割引率を用いて現在価値に割り引くことで算定します。減損テストの結果、のれんを含む資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を上回っている場合、減損損失を認識します。減損処理にあたっては、資金生成単位に配分されたのれんの帳簿価額を減額することになり、その結果、NECグループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 確定給付制度債務

   NECグループは、一部の子会社を除いて、2020年10月1日以降の積立分について確定給付年金制度から確定拠出年金制度に移行していますが、2020年9月30日以前の積立分については、今後も制度資産を構成する株式その他の資産の時価の変動または運用利回りの低下などによって、確定給付に係る負債が増加し、NECグループの財政状態および業績に悪影響を与える可能性があります。また、確定給付制度債務の見込額を算定する基礎となる割引率などの数理計算上の仮定に変動が生じた場合、NECグループの業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。例えば、将来、割引率が低下した場合や、制度の変更により過去勤務費用が発生した場合には、確定給付制度債務および確定給付費用が増加する可能性があります。

 

 

配当政策

3【配当政策】

 

 当社は、資本効率を重視した事業運営を行うとともに、充実した財務基盤のもとで成長領域への積極的な投資を実行することが長期的な企業価値の創出につながると考えております。そのうえで、株主還元につきましては、各期の利益状況や資金状況等を踏まえ、安定的増配の実施に努めてまいります。

 当事業年度の配当については、本業の利益である営業利益が期初の計画を達成したことなどから、期初の公表値どおり1株につき120円(中間配当金は1株につき60円)としました。

 また、当社は、機動的な剰余金の配当の実施を可能とするため、取締役会の決議により剰余金の配当を決定できる旨ならびに剰余金の配当を決定する場合の基準日を毎年3月31日および9月30日の年2回とする旨を定款に定めています。

 当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年10月30日

取締役会決議

16,007

60.00

2024年 5月10日

取締役会決議

16,007

60.00