2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、以下の各事項において、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期及び当該リスクが顕在化した時に当社グループの経営成績等に与える影響を合理的に予見することが困難な場合には、その可能性の程度や時期・影響についての記載は行っておりません。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当社グループの事業内容について

(電子基板事業)

FPCの製造については、当社グループは特許権・実用新案権等の知的財産権を保有しておらず、従来工法により製造を行っていることから、新規参入企業の出現や画期的な新工法発明により競争が激化する可能性があり、その結果、当社グループの収益力が低下し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。次に、FPC試作のユーザーは、主としてセットメーカーの研究・商品開発部門であり、直接受注する場合とFPCメーカーを経由して受注する場合がありますが、セットメーカーの研究・商品開発部門が海外移転した場合には、当社グループは海外生産拠点を有していないため、短納期への対応について優位性を失い、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。次に、当社グループの顧客であるFPCメーカーが、多品種・少量生産で売上規模が小さいわりに人手がかかる等のために本来なら避けたい手間のかかるFPC試作を、自社生産ラインの手隙感から自社内で行い当社グループへの発注を手控えた場合や、FPC試作を量産受注獲得のために低価格で受注する営業攻勢を強め当社グループと競合した場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。最後に、当社グループの売上高は、FPCに係る売上高の構成比率が高いことから、当該売上高の推移と経営成績等に相関関係があります。加えて、国内のFPC生産額と当該売上高にも相関関係があることから、電子部品業界の動向や技術革新等により、FPCの需給に著しい変調を来した場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。なお、国内の電子基板・FPC生産額の推移及び当社グループの最近5連結会計年度における経営成績等の推移は以下のとおりであります。

 

[電子基板・FPCの生産額の推移]

会計年度

2018年

2019年

2020年

2021年

2022年

電子基板(億円)

6,474.3

6,353.0

6,498.2

7,659.9

8,974.8

対前年比(%)

+5.2

△1.9

+2.3

+17.9

+17.2

FPC(億円)

656.1

459.5

432.7

446.9

496.6

対前年比(%)

△10.9

△30.0

△5.8

+3.3

+11.1

(注)電子基板・FPCの生産額:出所「日本の電子回路産業」(一般社団法人日本電子回路工業会)

 

[当社グループの最近5連結会計年度における経営成績等の推移]

回次

第59期

第60期

第61期

第62期

第63期

決算年月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

売上高

(千円)

3,896,341

3,175,189

3,917,940

3,625,517

3,411,465

うち電子基板関連売上高

(千円)

2,374,371

1,984,175

2,399,198

2,588,466

2,314,191

営業利益又は営業損失(△)

(千円)

△113,769

△425,693

121,249

△27,783

△141,873

親会社株主に帰属する当期純利益

又は親会社株主に帰属する当期純

損失(△)

(千円)

△213,563

△630,016

241,185

39,764

△126,536

(注)「うち電子基板関連売上高(千円)」については、太陽有限責任監査法人の監査を受けておりません。

 

(テストシステム事業)

基板検査には検査方法の標準がなく、採用する検査方法はメーカーの方針によって異なっており、競合他社も様々な検査方法を用いた検査機を市場に投入しております。今後、当社が志向する検査方法と異なる方法の検査機が主流となった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、電子基板メーカーが不良品率の低下等により一部の検査を省略した場合には、検査機市場が縮小に向かい、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。さらに、メーカーによっては検査機を自社で内製しており、今後このようなメーカーが増加した場合にも、検査機市場が縮小に向かい、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(鏡面研磨機事業)

円筒鏡面研磨機は、大手企業が進出していない10億円未満の市場規模であると推定しておりますが、新規参入企業の出現等により競争が激化した場合には、当社グループは当該事業での特許権・実用新案権等の知的財産権を保有していないため、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(産機システム事業)

各種産業機械の製造販売及び仕入販売において、メーカー各社の産業機械及び産業資材に係わる様々なハイエンド製品を顧客仕様にカスタマイズし、若しくは組み合わせた商品を提案する事業を展開することで差別化を図っております。競合他社との価格競争を余儀なくされる場合、メーカーとの協力関係が維持できない場合及び設備投資需要が減少した場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

検査システムは、顧客仕様による受注販売が中心であり、顧客の要求に沿った製品をいち早く開発・製造することにより、競合他社の製品との差別化を図っております。また、競合を優位に進めるためには、顧客との緊密な関係を保つことが重要であり、その結果、顧客の要求に沿った製品をいち早く納入することが可能となります。このような顧客との緊密な関係が維持できない場合や、顧客企業の業績不振、競合他社との価格競争を余儀なくされる場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策)

競争激化等により各事業における当該リスクが顕在化する可能性は相応にあるものと認識しております。当社グループはこれらのリスク低減を図るため、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」のとおり、課題を明確にした上で、市場動向に柔軟に対応できる生産体制の構築、独自技術の開発、販売チャネルの拡大及び生産工程のFA化等に取り組んでおります。

 

(2)人材の確保について

当社グループは、電子基板事業、テストシステム事業を中心とした製品の技術改良・研究開発を常に行っていく必要があり、そのための優秀な人材確保は事業展開上極めて重要であります。しかしながら、当社グループが必要としている技術に精通している人材の獲得、育成及び確保が常に可能であるとは限らず、当社グループが必要とする人材の獲得及び育成ができない可能性、あるいは当社グループの人材が社外に流出する可能性があります。当社グループが必要とする人材の獲得、育成及び確保が計画どおり進捗しない場合には、当社グループの業務運営に支障が生じる可能性があります。

 

(リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策)

当社グループでは、積極的な採用活動を行い、年齢・性別・国籍を問わず専門知識や専門技術に精通した人材を広域から採用し、社内外の研修や福利厚生の充実による社員のモチベーション向上に努めることで人材の確保を行っております。また、各自が目標設定を行う人事考課制度を導入しており、従業員各自の向上心の強化とモチベーションの維持を図るとともに、能力主義に基づいた個別評価は年齢・性別・国籍を問わない評価を行っております。これにより、組織の多様性を促進していることから、当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。

 

(3)知的財産権に関する訴訟、クレームについて

本書提出日現在において、当社グループは、第三者の知的財産権を侵害している事実はありません。しかしながら、当社グループの事業分野においては、多数の特許・実用新案等が出願されており、当社グループが第三者との間に知的財産権に関する法的紛争に巻き込まれた場合には、事業運営が制約を受けることや、信用失墜及び損害賠償請求等が発生し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、第三者が当社グループの知的財産権の侵害や保有技術を応用することで、当社グループの事業運営に支障をきたし、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策)

当社グループは上記のとおり、多数の特許・実用新案等が出願されていること等により、当該リスクが顕在化する可能性は相応にあるものと認識しております。当社グループはこれらのリスク低減を図るため、新規事業の開始や新製品の開発においては、第三者の知的財産権の調査を行う等のプロセスを設け、知的財産権等を侵害することがないよう努めております。また、当社グループの事業分野に関する特許等を出願し、積極的にそれらを取得していく方針であり、新技術の開発、大学等との共同開発についても同様の方針であり、第三者による知的財産権の侵害を防いでおります。

 

(4)情報漏洩について

当社グループは、技術情報等の重要な機密情報や、顧客その他関係者の個人情報を保有しており、不測の事態によりこれらの情報が漏洩した場合には、社会的信用の失墜はもとより、多額の損害賠償費用等の発生に加えて、技術情報の他社への流出による競争力の低下等、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策)

当社グループでは、情報セキュリティシステムの改善を継続的に実施するとともに、社内規程の整備や従業員教育の徹底により、機密情報及び個人情報に関するセキュリティ対策を物理的・人的に実施していることから、当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。

 

(5)自然災害等について

当社グループは、地震等の自然災害により、重大な被害を受ける可能性があります。特に、当社グループの本社工場は、南海トラフ地震防災対策推進地域に指定されていることから、順次地震対策を推進しているものの、実際に大規模な地震が発生した場合には、多額の復旧費用の発生や、営業、生産機能等が著しく低下することが想定され、当社グループの経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策)

当該リスクが顕在化する可能性は相応にあるものと認識しております。当社グループはこれらのリスク低減を図るため、事業継続計画(BCP)を策定し、2022年3月に「レジリエンス認証」を取得しております。自然災害が発生した場合には、代替手段にて業務を継続し、早期に完全復旧を図る緊急対応体制を構築しており、人的被害及び経済的損害を最小限に抑えることを目的に、防災計画に基づく防災訓練の定期的な実施と継続的な改善を行っております。引き続き、有事においても事業活動を継続できる管理体制のさらなる向上に努めてまいります。

 

(6)感染症の蔓延について

新型ウイルス感染症の発生・蔓延の影響により、当社グループや顧客の事業所・工場において事業活動に制限や遅れが生じた場合には、当社グループの生産及び販売活動に影響を及ぼす可能性があります。加えて、当初予定した決算発表及び定時株主総会の開催等にも遅延が生じる可能性があります。また、都市のロックダウン等により世界的に景気が後退した場合には、顧客の開発案件・設備投資が減退し当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策)

当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を想定することは、不確実性が高く困難であります。当社グループはこれらのリスク低減を図るため、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」及びこれに基づく政府の基本的対処方針等に従い、人と人との距離の確保、手指消毒、マスク着用等を徹底し、また、在宅勤務やオンライン会議等を活用する等の新しい生活様式を取り入れることにより、生産及び販売活動の継続と感染拡大の防止に努めております。さらに、市場動向を見据えた経営体制の見直しを随時行い、世界的な景気停滞に柔軟に対処できる体制を整備してまいります。

 

(7)固定資産の減損損失について

当社グループが保有している資産の時価が著しく下落した場合や将来の事業環境の変化により事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により固定資産について減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策)

当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を想定することは、困難であります。当社グループはこれらのリスク軽減を図るため、将来キャッシュ・フロー等による減損損失の認識の判定に当たり基準とした事業計画の実現可能性について慎重に検討を行っております。なお、固定資産の減損損失に当たっての重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(8)繰延税金資産について

当社グループは、将来の課税所得の見積りにより繰延税金資産の回収可能性を判断しております。当社グループの事業計画を基礎として将来の課税所得を見積っておりますが、景気の変動等により、計画どおりに推移せず、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を回収できないと判断した場合や、税制改正、会計基準の改正等が行われた場合には、繰延税金資産の取崩しが必要となり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策)

当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を想定することは、困難であります。当社グループはこれらのリスク軽減を図るため、繰延税金資産の回収可能性の評価に当たり基準とした事業計画の実現可能性について慎重に検討を行っております。なお、繰延税金資産の計上に当たっての重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

配当政策

3【配当政策】

当社グループの事業は、急速な技術革新と最終消費者ニーズにより電子機器の小型軽量化・薄型化がより一層進み、高精細化が求められるため、開発体制の強化や戦略的な投資を行っていく必要があります。当社は一方で、株主に対する利益還元を重要な経営施策のひとつとして位置づけていることから、安定的配当の継続を基本に、内部留保の充実や配当性向等を勘案しつつ、収益状況に応じた利益還元を行うことを基本方針としております。

当事業年度の配当については、1株当たり3円00銭の配当(うち中間配当0円00銭)を実施することを決定いたしました。当事業年度の連結配当性向は、親会社株主に帰属する当期純損失であるため記載を省略しております。

内部留保資金については、新技術・新製品の研究開発投資及び高難度製品の品質安定化を目的とした設備投資等、より一層の経営基盤強化のために効率的な活用を考えております。

当社は、取締役会の決議により毎年6月20日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めており、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当機会を設けることを基本方針としております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2024年3月15日

17,836

3.00

定時株主総会決議