リスク
3 【事業等のリスク】
当社を取り巻く市場環境及び事業の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のとおりであります。なお、以下の各事項は、本書提出日現在において、当社が把握している情報等から判断可能なものについて記載したものであります。
(1) 事業環境に関するリスク
① 市場環境について
当社が参入しているレーザ関連市場は、既存技術の代替や新分野への活用等にて今後の成長、拡大が大きく見込める市場でありますが、今後の更なる技術革新、最先端技術の変化により、レーザに代わる廉価且つ大量生産可能な代替品が市場投入された場合、レーザ関連市場が縮小する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② 景気動向について
当社が参入しているレーザ関連市場は、精密加工装置やバイオ系検査装置等の産業用、医療用機器向けを中心に成長傾向は継続するものと見込んでおりますが、国内外の経済情勢や景気動向、それに伴う設備投資意欲の減退等の理由により、市場の成長が鈍化する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
③ 開発受託業務について
当社が展開している開発受託業務は、当社の先端基盤技術に基づくもので、開発費と利益の獲得、基盤技術の高度化、知財の蓄積、新規発想の具現化、新アプリケーション創造と市場の開拓、受託先の量産展開力の活用等、当社の利益に資する重要なビジネスモデルであり、今後も幅広く展開していく方針ですが、受託先の経営方針の変更や経営状態の悪化等により、受注が減少する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
④ 網膜投影製品の販売について
レーザアイウェア事業における各機器は、眼鏡店や医薬品・医療機器メーカー、専門商社などの販売代理店や、代理店が運営するECサイトを通じてエンドユーザーに販売しております。また、当社から機器やパーツ、モジュールを提供し、販売先企業が製品化あるいはパッケージ化して販売しております。
レーザアイウェア事業の販売計画は、こうした企業の販売目標や締結済みの契約を目安に作成しております。こうした販売目標は市場投入前のマーケティング活動等を踏まえて設定されたものですが、網膜投影機器は市場にとってほとんど前例のない製品であり、当初の目標台数よりも販売できない場合、各社の事業方針に変更等があった場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 眼の健康チェックサービス事業について
当社が展開している眼の健康チェックサービス事業は、眼の健康状態が重要視される運送・運輸業界や国民全体の高齢化等により、市場拡大が見込める事業でありますが、顧客企業の経営方針の変更や経営状態の悪化等により、市場の成長が鈍化する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑥ 為替変動について
当社は、国内だけでなく、海外とも仕入及び販売取引を行っております。為替の変動については、リスクヘッジ策を行っておりますが、今後、想定外の為替変動が発生した場合、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑦ 知的財産権について
当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレーム等の問題が発生した事実はなく、現時点において、当社の事業に関し、他社が保有する特許権等への侵害により、事業に重大な支障をきたす可能性は低いものと認識しております。また、技術調査等を継続的に行い、侵害事件を回避するよう努めております。しかしながら、当社の様な研究開発型企業にとって、知的財産侵害問題の発生を完全に回避することは困難であり、今後第三者との法的紛争に巻き込まれた場合には、弁護士や弁理士と協議の上、個別具体的に対応策を検討してまいります。当社の技術が侵害されるケース及び当社が第三者の技術を侵害していると指摘されるケースのどちらとしても、解決に際しては、時間及び多額の費用を要する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑧ 法的リスクについて
当社の様々な事業活動において、国内外を問わず、当社が関与する技術・製品・サービス等について知的財産権に関する係争や製造物責任問題、薬事、商取引、税務等その他事業に関連する法令、慣行を巡って予期しない問題が提起される可能性があります。特に、当社が扱う網膜走査型レーザアイウェア製品の一部には、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)により定められた医療機器があり、有効性、安全性に問題が生じた場合には、製造販売承認が取り消される可能性があります。非医療機器として販売、提供している製品については、関連法規・ガイドライン等の新たな施行・公表や改正等によって医療機器に該当すると判断され、その対応が必要となる可能性があります。その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑨ 製造委託先の経営悪化、品質事故等
当社ではファブレス製造の方針を採用しておりますので、外部の協力企業に製造を委託しております。それぞれの企業の特性等を考慮し、当社製品の製造能力に応じて、各社への製造委託品目を決めております。
各社に対しては、当社にて品質検査、経営状態の確認等を実施しております。仮に委託先の経営悪化、品質事故等が発生した場合、容易に委託先の変更は可能ではありますが、新たな生産体制が再構築されるまでの期間、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑩ 部品・部材等の調達及び価格変動について
当社は、生産活動や研究開発活動に必要な部品・部材を外部の取引先から調達しております。それらの調達先からの供給が当社の製造に影響が出る様な供給の不安定化、また、価格の高騰、供給部材の品質劣化等が発生した場合、製品の品質や納期を守る事ができなくなる可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑪ 継続的な投資について
当社は継続的な成長のために、新製品又は新技術の開発のための必要な研究開発活動を継続する必要があると考え、これまで積極的に研究開発費に係るコストに投下しており、今後も継続して必要な研究開発活動を行っていく方針であります。
しかしながら、その結果として2024年3月期においても営業損失を計上し、累積損失を抱えており、営業キャッシュ・フローもマイナスとなっております。今後の研究開発活動については、その費用対効果を勘案しながら慎重に行っていく方針ではありますが、研究開発活動の効果が十分に得られない場合や、開発コストの増加等が生じた場合、想定以上の投資に係る費用が発生することが想定され、中期経営計画が達成できない可能性や営業損益等の黒字化に時間を要する可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 製品の品質について
当社では、ISO9001/13485の基準に加えて、外注管理規程、研究開発管理規程及び生産管理規程を設け、当該規程に則り、各種製品の製造、品質の保持向上に努めております。
信頼性には万全の配慮をしてまいりますが、想定していない理由により、製品の欠陥が発生した場合には、その欠陥内容によっては多額のコスト発生や信用の失墜を招き、当社の経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。当社では、引き続き製品の品質向上に努め、特に不具合に対する継続的な改良、不具合の起きにくい製品設計の推進、完成試験の信頼性向上試験の導入を含め、開発時、出荷時の試験を強化し、製品への非常時対策の機能開発の継続、顧客クレーム、故障等の処理プロセス等について強化してまいります。
⑬ 研究開発活動について
当社は最先端のレーザ技術を既存製品に流用し、生活を豊かにする研究開発に取り組んでおりますが、当社が業界と市場の変化を十分に予測できず、また、間違った判断をすることで、顧客や市場からの支持を得られる新製品、新技術を提供できない可能性があります。その場合、将来の成長と収益性を低下させ、当社の事業活動、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 国際情勢について
当社が製造する製品は、国内外に販売しており、2024年3月期における国外販売比率は54%を占めております。また、製品の製造プロセスの一部を海外のパートナーに委託しています。アメリカ、欧州、アジア等特定の地域に偏重せずに各地域にバランスよく展開しておりますが、各国・地域の法的規制、慣習、国際情勢の変化等に起因する事態が発生する場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑮ 訴訟について
当社は、本書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、販売した製品の不具合等、予期せぬトラブルが発生した場合、それに起因した損害賠償の請求、訴訟を提起される可能性があります。その場合、損害賠償の金額、訴訟内容及び結果によっては、当社の事業活動、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
⑯ 情報セキュリティに係るリスク(情報の漏洩、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等)
当社の主な事業は顧客の個人情報を取得する必要のあるものではありませんが、一部取引には個人情報を取得する場合があり、また、顧客と秘密保持契約を締結した上で技術情報や営業情報を取り扱う業務もあり、想定していない理由により、これらの情報の漏洩が発生した場合には当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、会計、販売管理等コンピュータによる業務処理を実施しており、地震・火災等の災害によるハードウェアやネットワークの損傷、外部からのコンピュータウイルス攻撃におけるシステムトラブルやデータ破壊、情報の盗難、漏洩等が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業体制に関するリスク
① 小規模組織であることについて
当社は、従業員43名の小規模組織であり、内部管理体制も現状の組織規模に応じたものとなっております。今後の事業拡大と事務量の増加に備え、従業員の育成、人員の増強及び内部管理体制の一層の充実を図る方針でありますが、人材の増強及び内部管理体制の充実が円滑に進まなかった場合には、適切な組織的対応ができず、当社の業務効率や事業拡大に支障をきたす可能性があります。
② 人材の確保及び人件費の高騰について
現在、日本経済全体として労働人口の減少等による人手不足や人件費の高騰が大きな問題となっております。当社では、当社の欲する人材を採用してきましたが、今後において、人材の供給が当社の要望にかなわずスキルの不一致、賃金の不一致等で安定的に適正な人件費で人材確保ができなくなった場合、当社の業務効率や事業拡大に支障をきたす可能性があります。
③ 退職者による技術・ノウハウ流出について
当社のレーザ関連技術について、特許等によりコアとなる技術は保護されている状態を保っておりますが、退職者によって、当社技術と異なるも近しいレーザ関連技術が他社により開発された場合や、独自性が失われ市場への訴求力が低下するような事態となった場合には、当社の事業活動、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 創業者への依存について
当社の創業者である菅原充は2024年6月まで代表取締役社長として、経営方針や経営戦略の決定をはじめ、当社の主要技術であるレーザ技術に精通しており、事業活動全般において重要な役割を果たしておりました。
当社はノウハウの共有、人材の獲得及び育成等により組織体制の強化を図り、2024年6月28日より菅原に代わって新たに長尾收を社長に選任し、菅原に依存しない経営体制の構築を図りましたが、予測を超えた事態が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑤ レーザデバイス事業部拠点の移転について
当社は2024年4月25日公表のとおり、2026年4月にレーザデバイス事業の拠点を横浜市戸塚区へ移転する予定であります。この移転には当社の技術を支えるMBE装置(分子線エピタキシー法による結晶成長装置)の移設も含まれており、本装置は繊細な管理を必要とするため、移設作業には過去の経験を含めた万全な体制を取る予定ですが、移設後の装置立上げが想定通りに進まなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(3) その他について
① 配当政策について
当社は、創業以来配当を実施しておらず、本書提出日現在においても、会社法の規定上、配当可能な状態にありません。当面は、内部留保による財務体質の強化及び研究開発活動への再投資を優先させる方針であります。一方、株主への利益還元は重要な経営課題の一つととらえており、経営成績及び財政状態を勘案しつつ、配当の実施を検討してまいります。しかしながら、利益計画が予想どおりに進捗せず、今後も安定的な利益計上ができない場合には、配当による株主への利益還元が困難になる可能性があります。
② 資金繰り及び資金調達等に関するリスク
当社は、研究開発活動の進捗に伴い、先行して多額の研究開発費が計上されております。今後も事業の進捗に伴って運転資金、研究開発投資及び設備投資等の資金需要の増加が見込まれます。今後、継続的に財務体質の強化を図ってまいりますが、収益確保または資金調達の状況によっては、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当社の公募による資金調達の使途に関しましては、レーザ網膜投影製品の製造費用やレーザアイウェア事業及び本社の人件費、賃料、知財費等の運転資金に充当する予定でありますが、急激な事業環境の変化等により、当初予定した資金使途以外に利用する場合があり、投資効果が期待どおりにあげられない可能性があります。また、当社の行使価額修正条項付新株予約権による資金調達の使途に関しましては、主にレーザデバイス事業の生産能力増強やM&Aに充当する予定でありますが、急激な事業環境の変化等により、当初予定した資金使途以外に利用する場合があり、投資効果が期待どおりにあげられない可能性があります。
③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社では、取締役、従業員に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主が有する保有株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。2024年5月末現在、これらの新株予約権による潜在株式数は1,996,900株であり、発行済株式総数41,751,303株の4.8%に相当しております。
④ 地震等の自然災害について
当社は製造委託先の製造拠点を国内外に分散しております。また、地震等の災害について事業継続計画に準拠して、非常事態に対応する体制を構築しております。今後も地震等の自然災害が発生した場合、その規模及び地域によって経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、財務体質の強化と事業拡大の為の内部留保の充実等を図ることが重要であると考えており、設立以来配当を実施しておりませんが、株主に対する利益還元も経営の重要課題であると認識しております。
今後の配当政策の基本方針といたしましては、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。また、内部留保資金につきましては、研究開発活動の継続的な実施や生産体制の強化の為に優先的に充当し、事業基盤の確立・強化を図っていく予定であります。
なお、剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を基本方針としており、配当の決定機関は、期末配当及び中間配当のいずれも取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。