2024年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

レーザデバイス事業 レーザアイウェア事業
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
レーザデバイス事業 935 74.9 41 -12.4 4.4
レーザアイウェア事業 313 25.1 -376 112.4 -120.1

事業内容

 

3 【事業の内容】

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社、非連結子会社QD Laser Deutschland GmbH(ドイツ)、QD Laser America,Inc.(米国)で構成されております。

当社はレーザ(※)技術を用いた製品の開発・製造・販売を行っており、レーザデバイス事業とレーザアイウェア事業を展開しております。非連結子会社QD Laser Deutschland GmbHはレーザアイウェア事業における欧州での治験結果の維持管理、事業開発、販売を目的としております。非連結子会社QD Laser America,Inc.はレーザアイウェア事業における米国での網膜投影製品の販売を目的としております。

当社のコア技術として、下記6点があります。

● 半導体結晶成長・・・MBE法(Molecular Beam Epitaxy法、分子ビームエピタキシー法)を用いて半導体結晶を半導体基板上に一原子層ずつ成長させる技術です。当社レーザ製品はこの半導体結晶から製造されます。

● レーザ設計・・・用途毎に所望の機能を満たす最適な半導体レーザを設計する技術です。例えば精密加工用半導体レーザでは10psの超高速パルスを実現しています。

● 小型モジュール・・・半導体レーザは半導体レーザチップをパッケージの中に実装しますが、そのパッケージのことをモジュールと言います。当社は波長532nmや561nmレーザを実装した世界最小のモジュールを製品化しました。

● VISIRIUM Technology・・・超小型レーザプロジェクタから、網膜に直接映像を投影する技術です。

● 回折格子・・・半導体レーザ内部に波長を選択するための周期100ナノメートル程度の凹凸を作り込んでおり、これを回折格子と呼んでおります。これによって、レーザ波長の精密制御が可能になり、黄緑(561nm)、橙色(590nm)等の半導体レーザを商用化しました。

● 量子ドットレーザ・・・量子ドットレーザとは、直径約10nm(ウイルスの1/10程度のサイズ)の半導体量子ドットを活性層に用いて、光を増幅、発振する半導体レーザです。この量子ドットレーザは、1)摂氏マイナス40度から120度近辺まで電流無調整で動作する、2)200度以上の超高温でも動作する、3)高信頼で長寿命である、4)シリコンフォトニクスチップに低雑音でレーザ光を導入できる、という優れた特徴を持っています。

 


 

※ レーザ(Laser)とは、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光増幅放射)の頭文字を取ったもので、共振器を用いて電磁波を増幅して得られる人工的な光であり、指向性や収束性に優れ、また波長を一定に保つことができる等の物理的な特長があります。

 

(レーザデバイス事業)

当社のレーザデバイス事業は、結晶成長を自社で実施し、半導体レーザチップ加工及びモジュール実装を、社外協力会社に製造委託する水平分業体制によるファブレス製造を実現し、ハイエンド技術を基にした事業となっております。

当社は半導体レーザの特性を決める活性層成長を担っており、特に量子ドットの結晶成長については他社にはないノウハウを有しております。また、研究機関からの基礎技術の研究開発や、メーカの新規アプリケーションの光源開発を行う開発受託業務も行っています。

 

 

当社の技術が使われている製品は以下のとおりとなっております。

名称

用途等

 

1240-1310nm量子ドットレーザ


 

 

量子ドットレーザは、半導体レーザの活性層(発光部)に量子ドット構造を採用しており、温度安定性に優れ、高温にて動作可能であります。このような温度安定性は、レーザの評価や調整を、従来の量子井戸レーザ(※)に比べて極めて容易に行うことができます。波長1300nm帯でレーザ発振するため、データ通信用の光源として利用されています。

※量子井戸レーザとは、一般に使用される高速長距離光通信用レーザです。

 

 

1300nm高温度動作量子ドットレーザ

 


 

 

量子ドットレーザは、温度依存性が小さいため、従来の量子井戸レーザよりも高温での動作が可能となります。高温度動作量子ドットレーザは、150℃以上での動作に向けた温度耐性のある波長1300nm量子ドットFPレーザであります。このレーザは砂漠や工場、地中資源探査といった過酷な温度環境下でのデータ伝送やセンシング等様々な応用に適しております。

 

シリコンフォトニクス用量子ドットレーザ


 

 

シリコンフォトニクス用量子ドットレーザは、量子ドットレーザを一つのチップ上に並べて、複数の発光点を持つマルチチャネル型です。

この量子ドットレーザをシリコンに融合させて(フリップチップ接合を行っております)、光源とすることでシリコンフォトニクス光源となります。量子ドットレーザは、このシリコンフォトニクス光源として最も優れており、光コネクタ、チップ間インターコネクトやLiDARへの適用・検討が進められております。その理由は1)温度が100℃以上の高温のCPUの近くでも安定して動作する、2)ノイズ(主に反射戻り光によるものです)に強く、部品点数を削減・低コスト化できる、3)高温度で動作させても長寿命である、の3点です。光通信で用いられる通信用インジウムリン系半導体レーザでは、これらに対しては対応不能です。

 

 

1020-1180nm材料加工・センサ用DFBレーザ


 

 

波長1020-1180nmの高出力の単一モードDFBレーザであり、連続動作から短パルス動作まで極めて安定に動作します。

単一モード安定性は、精密加工用、LiDAR用、ウエハ表面検査用ファイバレーザの種光、ガスセンシング等様々な応用に適しております。

 

 

 

640-905nm高出力FPレーザ(モニタPD付き)

 


 

 

波長640,660,785,830及び905nmの高出力ファブリペローレーザで、主に産業用途をターゲットとしており、マシンビジョン、パーティクルカウンター、モーションセンシング、セキュリティ、半導体ウェハ自動搬送機及びレベラー等の様々なアプリケーションに最適であります。

 

532,561,594nm小型可視レーザモジュール

 


 

 

波長532,561及び594nmの小型可視レーザモジュールであります。波長1064-1188nmの半導体DFB(Distributed Feedback)レーザと非線形光学素子PPLN(Periodically Poled LiNbO3)を組み合わせた波長変換技術を使用しております。

GaAsベースの半導体レーザを用いているため、低消費電力を実現しております。DPSS(半導体励起固体)レーザと異なり、100MHzまでのパルス変調動作が可能です。

また半導体レーザをゲインスイッチ動作させることで、ピコ秒での動作も可能であります。顕微鏡、フローサイトメータ、セルソータ、分光及びセンシング等のアプリケーションに利用可能です。

 

高品質エピタキシャルウェハ

 


 

 

様々な光デバイス・電子デバイス用途に、カスタマイズした分子線エピタキシー(MBE)装置を用いたGaAs基板上の高品質エピタキシャルウェハです。量子ドットウェハには、テレコム/データコム用温度安定レーザや、220℃までの高温度環境で動作するレーザで、世界最高水準の量子ドット技術が適用されております。

 

小型マルチカラーレーザ光源


 

小型マルチカラーレーザ光源は、小型可視レーザモジュール(532, 561,594nmから1波長)と405,488,660,785nm等のTO-CAN3つを組合せた小型モジュールで、顕微鏡やフローサイトメータといったバイオメディカル装置の光源として最適です。本モジュールを使用することで、今までお客様で行っていた複数波長のファイバ結合が不要となり、簡単に装置に組み込むことが可能です。

 

 

 

 

上記製品を搭載している主な製品機器の一例として、次のようなものがあります。

1.光通信・シリコンフォトニクス(※1)

名称

用途等

製品特性・概要

 

量子ドットレーザ

 


 

 

量子ドットレーザを搭載したIOCore

 


 

4チャンネル量子ドットレーザ

 


 

 

【シリコンフォトニクス】

シリコンフォトニクスとは、シリコン基板上に光機能素子を集積し、低コストで高性能な光回路を実現する技術のことです。小型化・低消費電力化が可能となるため、データ通信、ボード間・LSIチップ間通信やLiDAR等への応用が進められています。光機能素子のうち、受光素子、光変調器および光導波路はシリコンで作製可能ですが、シリコンは発光しないため、発光素子として半導体レーザチップをシリコン上に実装する必要があります。

 

 

【量子ドットレーザとIOCore】

  量子ドットレーザとは、直径約10nm(ウイルスの1/10程度のサイズ)の半導体量子ドットを活性層に用いて、光を増幅、発振する半導体レーザです。この量子ドットレーザは、1)摂氏マイナス40度から120度近辺まで電流無調整で動作する、2)200度以上の超高温でも動作する、3)高信頼で長寿命である、4)シリコンフォトニクスチップに低雑音でレーザ光を導入できる、という優れた特徴を持っています。

IOCoreは、この量子ドットレーザを光源として搭載した、アイオーコア株式会社製の超小型(5mm角)光配線チップです。高温度となるLSIの光配線に量子ドットレーザを用いることによって、100度を超える高温環境でも、高信頼性、低コストを実現し、超高速(100~500Gb/s)で動作します。

この量子ドットレーザを世界で唯一量産する能力を有するQDレーザは、これまでに450万個の量子ドットレーザチップを光通信市場に供給してきました。さらにこの度、アイオーコア社と共同でシリコンフォトニクスの大容量伝送を可能にする「4チャンネル量子ドットレーザ」の開発に成功し、量産が開始されました。

 

※量子ドットレーザ事業にQDレーザが取り組む背景・理由

 1980年代から大陸間、都市間・内、ビル・家庭内の光通信システムの社会実装が始まり、1995年以降この光通信を基盤とするインターネットの利用が広まりました。2000年代に起こったクラウドコンピューティングや、携帯電話・スマートフォンに代表される移動体通信の普及があいまって、現在、人間と情報世界が融合する時代が到来しています。ビッグデータの活用とAI自然言語処理、画像認識が急速に発達し、メタバースの社会実装が間近に迫る今、情報爆発への対応は全世界の大きな課題です。QDレーザは、シリコンフォトニクス光配線に不可欠な量子ドットレーザの開発と量産によって、コンピュータの情報処理能力の飛躍的向上によりこの課題の解決に貢献し、ひいては人間と情報世界の融合する時代の一翼を担うことを目指します。

 

 

2.バイオ系検査装置

名称

用途等

製品特性・概要

 

フローサイトメータ(※2)

(細菌検査装置)


 

細胞の測定装置で、細胞の浮遊液や懸濁液を細管に通し、細胞数の計測、蛍光や散乱光の測定等を、短時間で多量に行っております。分子生物学、病理学、免疫学、植物生物学、海洋生物学等各種分野にて応用されております。

 

 

世界初、緑・黄緑・橙半導体レーザ(量産中)

1μm帯DFBレーザ技術と波長変換技術を組合せた小型モジュールになります。黄緑・橙色は直接半導体では発光できない波長帯で、独自の技術をもって実現しております。

小型・低消費電力特性を活かし、フローサイトメータ(細胞検査装置)やバイオメディカル用顕微鏡光源として採用されております。

 

蛍光顕微鏡


 

 

蛍光タンパク質や蛍光抗体を標識に用いて、細胞やタンパク質を生きたままで観察できる顕微鏡で、生物学・医学における研究、臨床検査、浸透探傷検査等に使用されております。

 

 

3.精密加工

名称

用途等

製品特性・概要

 

ファイバレーザ(※3)


 

 

固体レーザ(※4)の一種ですが従来の固体レーザに比べ、繰り返し周波数の自由な設定が可能、ビーム品質が高い、小型軽量で電気-光変換効率が高い、長寿命といった特長があり、金属やセラミック、ガラス等のマーキング、微細加工、溶接、切断等に使用されます。

 

1064nm帯短パルスレーザ(量産中)

結晶成長技術、グレーティング設計技術、半導体レーザ設計技術により1064nmDFBレーザのナノ秒、ピコ秒の短パルス動作を実現しております。

ナノ秒・ピコ秒の短パルス特性を活かし、ファイバレーザの種光として、多くのファイバレーザメーカに採用されております。

 

 

4.各種センサ

名称

用途等

製品特性・概要

 

パーティクルカウンター(※5)

 


 


 

 

マシンビジョン(※6)

 


 

 

空気中や液体中にある塵・ホコリ・異物・ダスト等をカウントする計測器で、工業用クリーンルームと医薬品・食品及びバイオテクノロジー分野向けとして、主に空気中の浮遊微粒子や微生物を制御・管理したクリーンルームやクリーンベンチの管理目的で使用されます。

 

640-905nmセンサ用レーザ(量産中)

640,660,785,830及び905nmでレーザ発振する半導体レーザで各種センサ、マシンビジョン、パーティクルカウンター、水準器、血液検査計、距離計、半導体ウェハ自動搬送機等の産業用途にレーザを提供しております。

 

光電センサ


 

 

物体の有無や表面状態の変化等を検出するセンサで、工場等での外観検査、自動搬送器、駅のホームドア等幅広い用途に使用されます。

 

ローティングレーザ

水準器

 


 

 

本体からレーザを回転しながら射出し、レーザを受光するセンサ(レベルセンサ)によって、水平方向の高さ位置を速やかに検出することができるツールで、墨出し等の内装作業や基礎コンクリート打設作業、造成・整地工事での水平、勾配設定作業をはじめ、重機マシンコントロールシステムでの施工高管理工事使用が可能であります。

 

 

 

名称

用途等

製品特性・概要

 

距離計

 


 

 

スマートフォンのイヤホンジャックに挿して電源を入れ、計測ガイド(測定点を表示するガイド)用のレーザを照射させ、部屋の壁面等2点間の距離を測定します。

 

 

 

(レーザアイウェア事業)

レーザアイウェア事業は、レーザ網膜投影技術を使ったメガネ型ディスプレイ(網膜走査型レーザアイウェア)の製品開発・ファブレス製造を行っています。2022年度はレーザ網膜走査技術を使った非メガネ型の新製品3機種の販売を開始しました。

ファブレス製造とは、製品の企画、設計を自社内で行い、部品及び最終製品の製造及び組立てを協力会社に依頼しているものです。当社からは、部品及び最終製品の製造・調整に必要な製品仕様、部品リスト、部品仕様書、回路図、実装図、プリント配線板製造データ、組み立て指示書、検査指示書、ソフトウエアを協力会社に供給し、製品製造・検査を委託しております。

また販売に関しましては、一般顧客向けには販売パートナー(代理店、メガネ店、通販業者)を通じ販売し、法人顧客向けには直販及び代理店経由での販売を行っております。

網膜走査型レーザアイウェアは、超小型レーザプロジェクタから、VISIRIUM Technologyにより網膜に直接画像を投影し、装着者の視力やピント位置に影響を受けることなく(フリーフォーカス)、カメラの撮像画像や外部入力されたデジタル情報を見せることができる製品となっております。2022年度に発売した非メガネ型の網膜投影機器については、フリーフォーカスに加えて網膜への投影範囲を大きく拡大し、その周辺部にまで明るくはっきりとした映像を届けられる新しい製品です。

こうした特長を活かし、全盲ではないものの、視覚に障がいのあるロービジョン(矯正視力が0.3未満(WHO定義)及び0.5未満(米国定義))と一部の社会的失明者(矯正視力が0.05未満(WHO定義))に対する視覚支援機器として、生活の質の向上に資する性質を有しております。なお、ロービジョン人口(日本国内)については、約145万人と推計されております。(2009年日本眼科医会資料「本邦の視覚障害者の数 現況と将来予測」より抜粋)

 

 

 

網膜走査型レーザアイウェアの仕組みは以下のとおりとなります。

 


 

網膜走査型レーザアイウェアは、民生用機器と医療用機器を展開しております。

民生用機器は、「RETISSA Display」を2018年7月に販売を開始しました。(現在は販売終了)。後継機として「RETISSA DisplayⅡ」を2019年12月に販売を開始しております。2021年8月からはRETISSA DisplayⅡ向けの専用のアクセサリカメラ「RD2CAM」の販売を開始し、複数の自治体から、「日常生活用具の給付金(※)対象」として認められました。今後も助成金対象となる自治体が広がっていく見込みです。

(※)厚生労働省の日常生活用具給付等事業によるもので、市町村が行う地域生活支援事業の内、必須事業の一つとして定められています。障害者等の日常生活がより円滑に行われるための用具を給付または貸与すること等により福祉増進に資することを目的としており、障害の度合いによって、日常生活用具の費用の全額または一部を給付されるものです。(根拠:障害者総合支援法 第77条第1項第6号 創設年度 平成18年)

名称

用途等

 

網膜走査型レーザアイウェア「RETISSA DisplayⅡ」

 


 

 「RETISSA Displayシリーズ」のフリーフォーカスの特性は、見ることが次第に困難となってきた高齢者の見え方を助けることができます。さらに、装着者に対して完全な拡張現実(Augmented Reality: AR、現実の視界に情報を重ね合わせて表示すること)を実現できるため、組み立て作業中に手順書を見ることや医師が手術中に画像診断情報を見ること等の作業支援用途や、スポーツ観戦や観劇において、解説情報や多言語対応の情報を見せる等の情報支援用途にも応用が可能となっております。
視力0.8相当の高解像度とレーザディスプレイならではの高い色再現性によって、美しい映像をご覧いただけます。

 

 

医療用機器は「RETISSA メディカル」を2021年3月に日本国内で販売を開始しております。眼鏡フレームの中央にカメラを内蔵した網膜走査型レーザアイウェアで、カメラで撮影した画像をリアルタイムに装着者の網膜に投影します。

日本においては2018年10月に治験を終了し、2020年1月に国内医療機器製造販売承認を取得いたしました。

ヨーロッパでは2018年8月に治験を開始、2019年10月に終了し、2021年6月にフォローアップを含めて完了いたしました。

名称

用途等

 

不正乱視向け視力補正機器

網膜走査型レーザアイウェア

「RETISSA メディカル」

 

 

 


カメラで撮影した画像を網膜に投影することによって、次の3つの効果が期待されます。

①遠くを見る視力の向上

②読書の速度の向上

③読書で文字を読むときの視力の向上

出典:前眼部疾患に起因する低視力患者を対象とした網膜走査型レーザアイウェアの検証的試験 治験総括報告書第1.0版

医療機器承認番号:30200BZX00025000

使用目的:本品は、不正乱視によって視力が障害された患者(既存の眼鏡又はコンタクトレンズを用いても十分な視力が得られない患者)に対し、視力補正をする目的で使用されます。

 

 

2022年度にはレーザ網膜走査の技術を利用した非メガネ型民生用機器「ON HAND」「NEOVIEWER」「MEOCHECK」の3機種が加わりました。

名称

用途等

 

「RETISSA ON HAND」

 


利用シーン:公共空間(図書館、美術館・博物館・劇場等)で来館者が使用する手持ち型機器

 

民生用新製品「ON HAND」はレーザ網膜走査技術を応用・発展させて、公共の場所で、誰もが手軽に本や書類を読んだり、書類に記入や署名できることを目指して開発しました。この「ON HAND」は、網膜投影の効果によって、本の見開き全体を見て、書類全体を素早く把握したり、書きたい文字を書くことができることから、読書バリアフリー法※に沿った有効な機器として各自治体で認知され始めています。図書館、市町村区役所、病院、学校、等の各行政機関で使って頂けるよう、都・県議会、市区町村に働きかけ、行政サービスへの採用検討が進んでいます。
※第198回国会において「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)が成立し、令和元年6月28日に施行されました。本法律に基づき、障害の有無に関わらず、全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に向けて、視覚障害者等の読書環境の整備が総合的かつ計画的に進んでいます。
民生用新製品「ON HAND」は、2023年3月に発売いたしました。代理店を通じて販売中です。2024年3月には米国でも販売を開始しました。

 

 

「RETISSA NEOVIEWER

 


ロービジョン者の行動・見えるの範囲を拡張するデジタルカメラ・ビューファインダー

 

民生用新製品「NEOVIEWER」はレーザ網膜投影の画角をレーザアイウェアの26度から60度まで広げた、デジタルカメラ用ビューファインダです。網膜投影の効果によって画面全体を一度に把握できるため、最適なフレーミングが可能であるだけでなく、老眼や近視等、使用者自身の眼のピント調整機能の影響を受けずに撮影できます。さらに、デジタルカメラの高倍率光学ズームを併用することによって、網膜症を含むロービジョンの方々の最善の視機能支援手段となり得ます。

民生用新製品「NEOVIEWER」は、ソニー株式会社のコンパクトデジタルスチルカメラとのセット"DSC-HX99 RNV kit"としてソニー社より2023年3月に発売され、全国5店舗のソニーストアで販売中です。2023年7月からは米国でも販売しています。

*従前の名称「SUPER CAPTURE」から変更しました。

 

「RETISSA MEOCHECK」


利用シーン:運輸企業、ドラッグチェーン、民間大規模施設、介護施設、検診センター等

 

民生用新製品「MEOCHECK」はレーザ網膜投影を応用した、専門家の立ち合いがなくても周辺視野の反応を含む眼の健康状態をセルフチェックできる小型装置です。体重計や体温計のように家庭や事業所において、日常的に眼の健康状態をチェックでき、その頻度を上げる事で、自身の見え方やその変化を手軽に把握する事ができます。

 民生用新製品「MEOCHECK」は、2023年2月に発売いたしました。代理店を通じて販売中です。

「MEOCHECK」については製品の販売に加え、「眼の健康チェックサービス」を受託実施するサービスビジネスも提供を開始しました。2022年度に複数の自動車運送事業者とともに実証、トライアル導入を行っており、2023年度にはサービス導入が始まっています。引き続き導入拡大を目指してまいります。

 

 

当社の事業構造につきましては、下記のとおりとなっております。

(レーザデバイス事業)

独自技術を駆使した半導体ウェハを作成し、協力会社に当該ウェハを組み込んだ半導体レーザチップの作製及びモジュールの実装を委託し、当社で品質基準への適合性を検査した後、お客様に製品をお届けしております。

 

(レーザアイウェア事業)

網膜走査型レーザアイウェアをはじめとする網膜投影製品を製造しております。一般顧客の場合、販売パートナーを通し、法人顧客からは当社が直接及び代理店経由にて受注しております。製造は協力会社に対して、当社が供給した仕様書に基づき、パーツや最終製品の製造及び組立を委託し、当社にて検査を行った後に販売パートナーまたは直接お客様へ製品をお届けしております。

 

当社の「レーザデバイス事業」及び「レーザアイウェア事業」の事業系統図は以下のとおりとなります。

 


 

本項「3.事業の内容」にて使用しております用語の定義について以下に記します。

 

No

用語

用語定義

 

 

シリコンフォトニクス

 

 

シリコンフォトニクスとは、 LSI(大規模集積回路)やIC(集積回路)に使用されるシリコン基板上に、光集積回路を作製し、様々な光機能をシリコン上に作製する技術です。

 

 

 

フローサイトメータ

 

 

 

フローサイトメトリーと呼ばれる分析手法に用いられる分析装置です。主に細胞を個々に観察する際に用いられます。フローサイトメトリーとは、細胞を含む流体にレーザ光を当てて、その散乱光や蛍光検出により細胞を特定する手法です。

 

 

 

ファイバレーザ

 

 

 

ファイバレーザとは、希土類を添付した光ファイバを増幅媒体とするレーザの一種です。光ファイバ、種光、励起光で構成されております。ビーム品質が高い、小型化可能、長寿命と従来の固体レーザに比べてメリットが多いです。

固体レーザ

固体レーザとはYAG結晶等の絶縁性固体材料を増幅媒質とするレーザです。

 

 

 

 

 

 

 

パーティクルカウンター

 

 

 

 

 

 

 

パーティクルカウンター(Particle Counter)とは、空気中や液体中にある塵・ホコリ・異物・ダスト等をカウントする計測器のことで、日本では微粒子計と呼ばれることもあります。
 パーティクルカウンターは、一般にICR(Industrial Clean Room)と呼ばれる工業用クリーンルームと、BCR(Biological Clean Room)と呼ばれる医薬品・食品及びバイオテクノロジー分野向けとして、主に空気中の浮遊微粒子や微生物を、制御・管理したクリーンルームやクリーンベンチの管理目的で使用されております。

 

 

 

 

 

マシンビジョン

 

 

 

 

 

マシンビジョン(Machine Vision, MV)とは、産業(特に製造業)でのコンピュータビジョンの応用を意味し、自動検査、プロセス制御、ロボットのガイド等に使われます。

コンピュータビジョン(人間の視覚システムをコンピュータが代替する技術)とは、ロボットの目の役割(様々な自動機械が画像認識をする)を果たすものです。

 

 

 

窓形成

 

 

 

半導体レーザの劣化の要因の一つには、端面領域において光を吸収することにより、チップ前後の端面が光により破損してしまうことが挙げられます。それを防ぐために端面領域での光吸収を抑制する構造を導入することを窓形成と呼びます。

 

 

回折格子形成

 

 

半導体レーザにおいて単一波長で発振するレーザを、DFB(Distributed Feedback)レーザといっております。波長を選択するためにレーザ内部に周期的な凹凸を形成しますが、それを回折格子形成と呼びます。

 

 

 

クラッド再成長

 

 

 

半導体レーザ用結晶の成長においては、まず半導体レーザの発光層となる量子ドットや量子井戸を形成します。その後、波長を選択する回折格子を形成します。その上部に光を閉じ込める層であるクラッド層を形成します。この層を形成する工程をクラッド再成長と呼びます。

10

 

 

電極プロセス

 

 

半導体レーザ作製には、クラッド再成長後に光を導波させるためのメサ構造や、電流を注入するための電極形成が必要になります。それらの工程を総称して電極プロセスと呼びます。

11

 

端面コート

 

半導体レーザをレーザ発振させるために、チップ前後に光を反射させる膜を形成する必要があります。この膜形成の工程を端面コートと呼びます。

12

 

チップ選別検査工程

 

協力会社にて作製した半導体レーザチップを、当社において光出力や波長を検査する工程をチップ選別検査工程と呼びます。

13

 

 

 

光学調整

 

 

 

網膜投影製品では、光の三原色であるRGBの半導体レーザの光が精密に設計された光学系によって導かれ、画像を投影します。光学系に関わるパーツでは、投影の品質や安全性が担保できるよう、あらかじめ定められた基準に従った調整を行います。

14

 

光学・外観検査

 

完成した製品は、消費生活用製品安全法やあらかじめ定められた基準に適合していることを確認するために検査されます。

 

業績

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法の位置づけの5類移行に伴う経済活動の正常化や賃金の上昇による個人消費の持ち直しの動き、インバウンド拡大により、景気は緩やかな回復傾向が見られました。一方、ロシアのウクライナ侵攻の長期化に加えてイスラエル・パレスチナの軍事衝突による地政学リスクの高まりや円安の進行及び物価上昇により、引き続き先行きは不透明な状況となっております。

このような状況の中、当社では「人の可能性を照らせ。」のコーポレートスローガンのもと、新波長の小型可視レーザや箱型モジュール・多波長集積光源、半導体検査用超高速DFBレーザ及び次世代アイウェアの開発、既存製品やレーザ網膜投影機器の新製品の販売拡大並びに眼の健康チェックサービス事業の展開を進めてまいりました。
 当社に関連する主な市場の状況について、レーザデバイス事業の分野では売上高は前事業年度から増加しました。製品別ではDFBレーザ、量子ドットレーザ、高出力レーザが前事業年度から増収となりましたが、バイオ検査装置用小型可視レーザが前事業年度から減収となりました。レーザアイウェア事業の分野では、網膜投影式ビューファインダであるRETISSA NEOVIWERの北米販売、また眼の健康チェックツールであるRETISSA MEOCHECKの販売増加や眼の健康チェックサービス販売増加等により前事業年度から増収となりました。
 この結果、当事業年度の売上高は1,247,485千円(前事業年度比7.6%増)、レーザアイウェア事業立ち上げ途上のために依然として販売費及び一般管理費が売上総利益を上回り、営業損失は604,014千円(前事業年度は営業損失556,770千円)、経常損失は600,972千円(前事業年度は経常損失546,884千円)、当期純損失は642,627千円(前事業年度は当期純損失550,379千円)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

a.レーザデバイス事業

当事業年度におきましては、DFBレーザが半導体検査及び医療機器用途向けの販売増加により、量子ドットレーザが量産出荷や開発用途向け販売増加により、高出力レーザが半導体工場等の各種センサ用途需要の増加によりそれぞれ売上高が前事業年度から増加しました。一方、小型可視レーザが、中国における新型コロナウイルス対策の収束によりバイオ検査装置の需要が減退したことに伴い、顧客の生産計画変更と在庫調整が行われた結果、売上高が前事業年度から減少しましたが、全体として売上高は前事業年度から増加しました。
 この結果、当事業年度の売上高は934,668千円(前事業年度比4.9%増)、セグメント利益は棚卸資産の評価損及び人件費を中心とした販管費の増加により41,354千円(前事業年度比36.1%減)となりました。

 

b.レーザアイウェア事業

当事業年度におきましては、網膜投影ビューファインダであるRETISSA NEOVIEWERの北米販売、眼の健康チェックツールであるRETISSA MEOCHECKの販売増加及び眼の健康チェックサービスの販売増加等により売上高が前事業年度から増加しました。一方、網膜投影型拡大読書器であるRETISSA ON HANDは市場の見直しにより売上高が前事業年度から減少しましたが、全体として売上高は前事業年度から増加しました。

この結果、当事業年度の売上高は312,816千円(前事業年度比16.7%増)、セグメント損失はRETISSA ON HANDを中心とした棚卸資産の評価損の増加等により375,604千円(前事業年度338,408千円)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における総資産は前事業年度末から1,227,954千円増加し、6,146,353千円となりました。流動資産は5,762,017千円となり、前事業年度末から1,144,504千円増加しております。これは主に新株予約権行使により現金及び預金が1,255,495千円増加した一方、売上の平準化により売掛金が48,393千円減少したことに加え貸倒引当金29,040千円を計上したこと等によるものであります。固定資産は384,335千円となり、前事業年度末から83,449千円増加しております。これは主に測定装置の取得によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債は前事業年度末から30千円減少し、478,561千円となりました。流動負債は444,557千円となり、前事業年度末から8,183千円増加しております。これは主に固定資産取得により未払金が89,685千円増加した一方、仕入代金決済により買掛金が61,970千円、納税により未払法人税等が27,497千円減少したこと等によるものであります。固定負債は34,004千円となり、前事業年度末から8,213千円減少しております。これは主に長期借入金の返済及び1年内返済予定の長期借入金への振替により7,317千円減少したこと等によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産は前事業年度末から1,227,984千円増加し、5,667,791千円となりました。これは主に新株予約権の行使及び無償減資を行った結果により資本剰余金が496,553千円、利益剰余金が当期純損失の計上及び無償減資を行った結果等により3,949,242千円増加した一方、新株予約権の行使及び無償減資を行った結果により資本金が3,216,655千円減少したこと等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、4,836,530千円(前事業年度末比1,255,495千円の増加)となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における営業活動の結果減少した資金は443,446千円(前事業年度は515,315千円の減少)となりました。主な資金増加要因は減価償却費95,269千円、売上債権の減少48,393千円、棚卸資産の減少58,717千円であり、主な資金減少要因は税引前当期純損失638,682千円、仕入債務の減少61,970千円、その他の流動資産の増加37,158千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における投資活動の結果減少した資金は138,133千円(前事業年度は22,994千円の減少)となりました。主な資金増加要因は短期貸付金の回収による収入71,870千円であり、主な資金減少要因は有形固定資産の取得による支出131,090千円、短期貸付金の貸付けによる支出59,900千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における財務活動の結果増加した資金は1,835,702千円(前事業年度は1,298,732千円の増加)となりました。主な資金増加要因は株式の発行による収入1,843,539千円であり、主な資金減少要因は長期借入金の返済による支出7,337千円であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(a) 生産実績

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

レーザデバイス事業  

579,837

101.03

レーザアイウェア事業

301,034

160.42

合計

880,871

115.66

 

(注) 1.金額は製造原価によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

2.上記の金額には、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載の棚卸資産の評価損が含まれております。

 

(b) 仕入実績

当事業年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

レーザデバイス事業  

433,756

91.91

レーザアイウェア事業

223,677

118.49

合計

657,433

99.50

 

(注) 1.金額は仕入価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

 

(c) 受注実績

当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

レーザデバイス事業  

903,363

92.71

297,127

92.35

レーザアイウェア事業

313,885

114.99

6,242

123.52

合計

1,217,248

97.59

303,369

92.83

 

(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

 

(d) 販売実績

当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

レーザデバイス事業 

934,668

104.86

レーザアイウェア事業

312,816

116.67

合計(千円)

1,247,485

107.59

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

日本電計株式会社

136,426

10.94

Beckman Coulter, Inc.

180,590

15.58

株式会社彩世

118,136

10.19

 

(注)1.前事業年度における日本電計株式会社に対する販売実績、並びに当事業年度におけるBeckman Coulter, Inc.及び株式会社彩世に対する販売実績は、各年度の損益計算書の販売実績の10%未満であるため、記載を省略しております。

   2.当事業年度において、販売実績に著しい変動がありました。これはレーザデバイス事業の小型可視レーザにおきまして顧客において生産計画の変更があったためです。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準等に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」及び「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 経営成績の分析
a.売上高

当事業年度における売上高は1,247,485千円(前事業年度比88,005千円の増加)となりました。これは主に、DFBレーザ、量子ドットレーザ、高出力レーザ、網膜投影式ビューファインダであるRETISSA NEOVIWERの北米販売、また眼の健康チェックツールであるRETISSA MEOCHECKの販売増加や眼の健康チェックサービス販売増加等により前事業年度から増収となりましたが、バイオ検査装置用小型可視レーザが前事業年度から減収したことによるものであります。

b.売上原価、売上総損失

当事業年度における売上原価は928,403千円(前事業年度比119,167千円の増加)となりました。これは主に棚卸資産の評価損が増加したことによるものであります。この結果、売上総利益は319,081千円(前事業年度比31,162千円の減少)、売上総利益率は25.6%(前事業年度は30.2%)となりました。利益率の減少は主に棚卸資産の評価損の増加によるものであります。

c.販売費及び一般管理費、営業損失

当事業年度における販売費及び一般管理費は923,096千円(前事業年度比16,082千円の増加)となりました。これは主に、人件費の増加、貸倒引当金の計上等によるものであります。この結果、営業損失は604,014千円(前事業年度は営業損失556,770千円)となりました。

d.営業外収益、営業外費用、経常損失

当事業年度において助成金収入、為替差益等により営業外収益が32,944千円(前事業年度比2,532千円の増加)、株式交付費用、固定資産の廃棄等により、営業外費用が29,902千円(前事業年度比9,376千円の増加)発生しております。この結果、経常損失は600,972千円(前事業年度は経常損失546,884千円)となりました。

e.特別利益、特別損失、当期純損失

当事業年度において、固定資産の減損により特別損失が37,709千円(前事業年度比37,709千円の増加)発生しております。この結果、当期純損失は642,627千円(前事業年度は当期純損失550,379千円)となりました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社の運転資金需要のうち主なものは、材料仕入、外注費、人件費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要の主なものは半導体レーザウエハ結晶成長装置、小型可視レーザ製造装置、測定装置等の機械及び装置等であります。

運転資金、投資資金ともに自己資金から確保することを基本方針としておりますが、当事業年度においては将来のレーザデバイス事業の生産能力増強等を資金使途とした行使価額修正条項付新株予約権が行使されました。当事業年度末の現金及び現金同等物は4,836,530千円であり、現状の事業運営に必要な運転資金、投資資金は十分であると考えておりますが、1,000,000千円の金融機関のコミットメントライン枠を有しているほか、必要に応じて銀行借入を中心とした調達手段を検討してまいります。

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討

当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は売上高総利益率であり、当事業年度の売上高総利益率は25.6%(前事業年度は30.2%)となりました。これは主に前事業年度においてはレーザデバイス事業、レーザアイウェア事業共に在庫評価損計上が増加したためであります。現時点では今後の売上総利益率について数値目標を定めておりませんが、今後、業界動向及び当社の業績の推移、特にレーザアイウェア事業の立ち上がり等を勘案し、早期に数値目標を決定する予定です。

レーザデバイス事業の指標としましては認定顧客数の20%増加としており、当事業年度末の認定顧客数は77社(前事業年度末は68社)で前事業年度末から11.3%増加となりました。これは主にセンサ用高出力レーザ、精密加工用DFBレーザおよびバイオ検査装置用小型可視レーザにおいて新規認定顧客が増加したためであります。今後もシリコンフォトニクス用レーザを含め、認定顧客を増やしていく方針ではありますが、各アプリケーションにおいて主要なお客様に認定されていることから、今後はお客様内での認定製品の数を増やすことに重点をおき、認定製品数を指標といたします

レーザアイウェア事業の指標としましては累計販売10万台・年間生産5万台と定めており、当事業年度末までの累計販売台数は約1,800台、当事業年度の生産台数は約700台となりました。今後も販売代理店を通した販路の拡充、海外展開を推進し、販売拡大を進める方針でありますが、大規模な量産、販売の立ち上がりにはまだ時間を要する見込みです。このため、ロービジョンエイド分野での国内外の共同プロモーション企業数、次世代レーザアイウェア分野での部品・設計開発・製造に関わるグローバルなエコシステムの参加企業数を増やすことが中長期的に重要との認識でおります。これらに対する数値指標は未定ですが、当面の注力分野であるビジョンヘルスケア分野(眼の健康チェックサービス事業)において、サービス導入社数とチェック実施人数を客観的指標といたします。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社の事業に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。