2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)リスクマネジメントの基本的な考え方

 当社は、企業経営に重大な影響を及ぼす可能性がある様々なリスクをコントロールするため、当社及びグループ各社においてリスクマネジメントに取り組んでいます。

 また、グループ共通の「リスクマネジメント基本方針」を策定し、リスクマネジメントの目的及びその実現のための行動指針を明確にすると共に、その内容を当社ホームページで公開しています。

 

https://www.kitz.co.jp/cms/wp-content/themes/kitz/images/sustainability/governance/risk-management/risk_management.pdf

 

(2)リスクマネジメント体制

 当社は、2024年3月28日をもって、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社に移行し、経営の監督機能と執行機能を明確に分離し、リスクマネジメントの監督を取締役会の担うべき重要な役割と位置付けています。そのうえで、監督側では、取締役会によるリスクマネジメントの監督を補助し、経営戦略と一体のものとして、その高度化に資するため、委員長及びその委員の過半数を社外取締役とする任意の機関である「リスク委員会」を設置しました。

 また、執行側では、取締役会の監督のもと、リスクマネジメント基本方針に基づき、代表執行役社長を委員長とする「C&C管理委員会」(コンプライアンス・危機管理・リスクマネジメントを主管する専門委員会)の指揮下で、同委員会の委員を兼務するリスクマネジメント担当役員が、当社及びグループ各社のリスクマネジメントを推進しています。

 その他、当社グループの業務執行における重要事項の意思決定の適正性を確保するため、代表執行役社長の指揮下にサステナビリティ推進、内部統制、投融資審査その他各種機能別専門委員会を設置し、リスク管理・評価及び提言などを行っています。

 

(3)リスクの分析評価

 当社グループでは、当社のC&C管理委員会が策定したリスク評価に関する基本方針及び評価基準に基づき、グループ各社において事業活動に係る想定リスク(全128項目)について「リスクの発生頻度」と「経営に与える影響度」の2軸からリスクの重要性を定量的に判定し、主要リスク及び重要リスクの特定を行っています。具体的には、リスクの「発生頻度の判定基準」及び「影響度の判定基準」(人的損害、物的損害、賠償責任、利益損害、信用失墜及び環境被害の項目で構成)の評価項目ごとに点数評価し、4象限のリスクマップにおいて、「高損害・高頻度」、「低損害・高頻度」、「高損害・低頻度」及び「低損害・低頻度」のいずれかのゾーンの判定を行います。

 

(4)リスクマネジメントの実施フロー

 当社グループでは、各社・各組織単位で実施するリスク評価の結果を踏まえ、経営会議において「主要リスク」及び主要リスクの中でも特に経営に重大な影響を与える可能性が高い「重要リスク」を特定し、各リスクの重要度から回避、移転、低減または保有のいずれかの対応方針を選択し、当社の各役員及びグループ会社社長を責任者として、必要な対策を立案し実施しています。

 特定された主要リスク及び重要リスク並びに立案された対策については、内部監査室長に共有され、内部監査室が業務監査等において対策の進捗及び結果を確認するなど、独立した立場から、その構築・運用状況の評価を行っています。

 また、取締役会は、経営会議において特定された重要リスク及び立案された対策並びに内部監査室における評価結果などの報告を踏まえ、必要な審議を行うとともに対策実施の最終的結果を確認するなど、グループにおけるリスクマネジメントについての最終的な決定及び監督を行っています。

 

(5)当社グループにおける事業リスク

①重要リスク(4項目)

イ.自然災害・戦争テロ・感染症拡大等に係るリスク

 日本国または他国において、大規模地震、大雨、洪水、落雷及び強風等の自然災害あるいは火災の発生、新型コロナウイルス等の感染症の蔓延・拡大、または戦争、テロ、暴動などにより、当社グループの事業所(生産現場・事務所など)や製品・部品供給元企業の事業所閉鎖、あるいは物流に関連したインフラストラクチャー(道路、鉄道、港、空港など)や生産・情報システム設備が甚大な被害を受けた場合、長期間にわたり生産停止やサプライチェーンの停滞あるいは交通網遮断による物流機能マヒなどの事態が生じ、経営成績及び財政状態に著しい影響を与える可能性があります。

 自然災害については、当社グループの国内における主要な製造拠点が山梨県北西部から隣接する長野県中・南部の地域に集中しており、今後40年以内にマグニチュード8から9クラスの規模で発生する確率が90%程度とされている「南海トラフ巨大地震」が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、こうしたリスクに対応するため、従来から事業継続計画(BCP)の体制構築をはじめ、防災マニュアルの整備、社員安否確認システムの整備、耐震対策及び防災訓練などの対策を進めています。また、当該リスクの移転対策として、地震保険の付保内容を強化しています。

 戦争・テロ・暴動については、グローバルに事業活動を展開している当社グループにおいては不可避に内在しているリスクであり、これらのリスクが現実化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、こうしたリスクに対応するため、従来から事業継続計画の体制構築を進めています。また、当連結会計年度も、一部の地域及び国家間における戦争、紛争及び緊張状態などの「地政学リスク」が増大または顕在化していることによるエネルギー資源や原材料価格の高騰、輸出入規制の厳格化など状況に鑑みて、グローバルな視点での材料・部品等の調達に係るサプライチェーンリスクへの対策強化に向けた取り組みを推し進めました。

 新型コロナウイルス等の感染症拡大については、当社グループが感染症拡大の対象国に生産拠点を有する場合、従業員等関係者の感染または当局の政策等により、工場の全部または一部の稼働停止、材料・部品等の調達の困難、あるいは物流の停滞などが考えられ、その場合、製品供給が正常に機能しない状況となる可能性があります。

 

 また、当社グループが感染症拡大の対象国に販売拠点を有する場合、同様の理由により、事業所の全部または一部の使用停止、物流の停滞、あるいは代理店等の顧客が同様の状況に陥ることなどが考えられ、その場合、販売金額及び数量が低下する可能性があります。

 その他、感染拡大に起因した経済活動の減退による市況悪化、企業による設備投資の抑制などが考えられ、その場合、販売金額及び数量が低下する可能性があります。

 当社グループは、こうしたリスクに対応するため、全社的にIoTを活用した新しい働き方を推し進めるなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。

 なお、経営成績等に与える影響については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営環境」に記載しておりますが、当該リスクの発生により、2024年度の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

ロ.情報セキュリティ・個人情報保護に係るリスク

 当社グループの事業活動は、情報システムに依拠して行われています。しかし、高度情報化への対応の遅れや予期せぬ自然災害のほか、悪意者によるウイルス感染等のサイバー攻撃などにより情報システムや通信回線システムの停止、重要な経営情報の破損、消去、改ざん、窃取及び漏洩等の重大な障害が発生した場合には、業務効率及び社会的信用の著しい低下が避けられず、システム・データの復旧に時間と費用を要する可能性があります。

 また、内部者や業務従事者の不正により、顧客情報及び個人情報等を含む社内情報が漏洩し、社会的信用の低下に至る可能性があります。

 このようなリスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 そのため、当社グループは、サイバー攻撃及び内部者等による情報漏洩や操業停止等の事業継続に支障をきたすリスク並びに顧客・取引先への影響を最小化すべく、情報セキュリティガバナンスを重要な経営課題の一つに位置付け、情報活用による価値創造とリスクマネジメントの両面から対策に取り組んでいます。

 キッツグループ情報セキュリティ・個人情報保護ポリシーを定め、社長が任命した執行理事を委員長とする委員会を設置し、情報セキュリティと個人情報保護に関する方針決定や各種施策への取り組みを推進しています。

 具体的な施策としては、情報システムの管理体制強化及び社員に対する情報リテラシー向上を図る教育を実施するなど、ハード・ソフトの両面からの適切なセキュリティ対策を講じています。

 重要セキュリティ診断を実施し、その結果に基づき、機器の定期更新及び保守サポート体制構築、OA/FAネットワーク網制御、データセンター(クラウド)化によるデータ保全、データバックアップの実施、リモート通信環境の構築、外部Webセキュリティ診断の実施、情報セキュリティ規程の整備・更新などに取り組んでいます。

 また、ITリテラシー教育として、毎年実施するeラーニングによる情報管理教育、入社時及び管理職への昇格時の階層別教育、実践的なサイバー攻撃対応訓練などの教育を行っています。

 

ハ.製品の品質(欠陥、瑕疵等)に関するリスク

 当社グループは、社内外の厳格な品質基準のもとに多様な製品を製造しています。

 しかし、製品の設計・調達・製造に係る欠陥・不具合が発生し、顧客の使用時点でその不具合が発見される可能性があります。また、万一、製品の欠陥、瑕疵等の品質問題が発生し、リコールや製造物責任が問われた場合、回収費用が発生するだけでなく、顧客の信頼を著しく損ない、場合によっては損害賠償請求を受ける可能性があります。

 このため、当社グループは、過去に発生した問題やクレームなどの実事例をベースにして、製品の設計・調達・製造のプロセスにおける問題点を洗い出し、新製品の開発工程やその工程変更、業務標準及び量産品の取扱説明書やカタログ等の記載事項等について、今後の被害を最小限に留めるための改善を行う取り組みを行っています。また、当該リスクが発現した場合の損失を補填するため、適切な内容の保険見直しを継続的に行っています。

 

ニ.データ・表示類の正確性に係るリスク

 官公庁への提出書類、検査員認証・資格の表示、実験・検査データ及び各種文書・記録に改ざんまたは虚偽の記載が発覚した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下による経営成績及び財政状態に影響を及ぼすとともに、投資家の投資判断に著しい影響を与える可能性があります。

 このため、当社グループでは、実験・検査データ、書類作成プロセス、各種ルールの管理方法の見直しなどの取り組みを継続的に行っています。

 

②主要なリスク(14項目)

 当社は、上記の4項目に加えて、以下の14項目を当社グループにおける主要なリスクと考えます。

 

イ.経営環境に関するリスク

a.経済状況の変動

 当社グループの製品・サービスに対する需要は、それらの販売を行っている国内及び海外の各地域の経済状況の影響を受けるため、景気変動等により影響を受ける可能性があります。

 主要製品であるバルブは、建築設備、機械、工場、プラントなどの向け先に幅広く販売されており、その需要は国内外の建設動向、石油、石油化学関連等の製造業の設備投資動向に影響を受ける傾向にあります。

 また、半導体製造装置向けの製品については、半導体市況の影響が大きく、短期間のうちに市場環境が大きく変動する場合があるため、売上・利益に対する不安定要因となります。

 伸銅品事業については、主要製品である黄銅棒は、水栓金具、ガス機器、家電製品、自動車部品等の素材として幅広く使用され、主に国内市場で販売されており、国内の住宅関連投資動向に影響を受ける可能性があります。また、販売価格は原材料である銅相場に連動するため、市況の影響を大きく受けます。

 その他では、ホテル事業については、新型コロナウイルス等の感染症の拡大に伴う行動制限や入国制限措置が行われた場合、近隣での大規模な催事が中止された場合など、団体旅行による宿泊客及び宴会並びに海外からの団体旅行による観光客の減少による影響を受ける可能性があります。

 なお、当社グループの報告セグメントにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」をご参照願います。

 

b.為替相場の変動

 当社グループは、日本、アジア、欧州及び南米にて生産活動を行うとともに、世界市場における販売活動を行っています。このため、生産拠点と販売拠点の取引通貨が異なり、常に為替レート変動の影響を受けています。

 当社グループでは、国内にて生産し輸出する金額と海外子会社で生産し国内販売向けに輸出する金額は概ね均衡しており、為替の急激な変動に耐え得る経営構造になっておりますが、米ドルに対して円高が進むと、営業利益には若干の有利なインパクトとなります。

 また、輸出入のバランスの変化や、大きなプロジェクト案件等で売上代金の回収に時間を要する場合など一部の外貨建の取引については、為替リスクを回避するため、必要に応じて為替予約を行っています。グループ会社間の借入については、基本的に決算上の機能通貨と同じ通貨で行っていますが、機能通貨と異なる通貨の場合には為替予約によりヘッジを行っています。

 なお、当社グループの海外事業への投資については、現地通貨安が進行すると為替換算調整勘定を通じて自己資本が減少するリスクがあります。

 

c.資金調達環境

 当社グループは、金融機関等からの借入、社債発行による資金調達を行っていますが、金融市場の環境に変化があった場合、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、借入金利については、原則固定化しており、借入期間中の金利変動リスクは僅少です。

 資金調達環境の影響を受けないよう直接金融と間接金融のバランスをとり資金調達を実行するほか、総額135億円のコミットメントライン契約を当社グループの取引銀行と締結し、有事の際の短期資金需要の発生に備えていますが、営業利益、経常利益及び純資産に関する財務制限条項があります。

 

ロ.事業活動に関するリスク

a.市場構造の変化及び競合他社との競争

 当社グループは、広範多岐にわたる製品・サービスの開発、生産及び販売を行っており、国内外の大企業から小規模で専門性に優れた企業まで、様々な企業と競合しています。当社グループは、今後も競争力の維持・強化に向けた様々な取り組みを進める方針ですが、競合他社が当社グループよりも優れた技術力、財務力その他の推進力を有している可能性があり、将来にわたって優位に事業を展開できなくなる可能性があります。

 バルブ事業について、バルブの原材料は、大きく金属と非金属(樹脂等)に分かれ、市場、用途別にすみ分けられています。現在、非金属製バルブは使用される市場、分野が限定されていますが、技術の変化、顧客ニーズの変化等により、非金属への置き換えが進み、金属製バルブ市場規模が縮小する可能性があります。

 また、バルブは建築設備市場における空調関連設備に最も多く使用されていますが、空調方式は大きくセントラル空調方式と個別空調方式に分かれ、バルブはセントラル空調方式において多数使用されます。空調方式は、主に建築設備の規模(延床面積)により決定されていますが、技術的進歩や顧客ニーズの変化により個別空調方式への置き換えが急速に進んだ場合、バルブの需要が大きく減少する可能性があります。

 伸銅品事業について、主力製品である黄銅棒は多種多様の用途に用いられていますが、予期し得ない代替製品の出現により、需要が大きく減少する可能性があります。

 ホテル事業について、子会社である「ホテル紅や」のブランドで一般消費者向けの事業を展開していますが、食中毒や火災等のブランドイメージを毀損する事案が発生した場合には、風評被害によりレピュテーションが低下する可能性があります。

 

b.販売代理店等

 当社グループのバルブ事業の製品販売は、一部製品についてエンジニアリング会社等のユーザー顧客との直接取引を行うことがありますが、主として販売代理店等を通じて行っており、長年にわたる販売代理店等との協力関係により、当社グループは国内外において強固な販売・サービス網を構築しています。

 当社グループは、今後も販売代理店等と友好的な関係を維持できるものと認識していますが、販売代理店等との関係悪化や取引方針の変更あるいは販売代理店等の信用力の低下等により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループの債権回収については、営業部門の責任のもとに確実な回収を徹底するとともに、経理部門において販売代理店等に対する売掛金の回収状況の把握、信用情報の収集などを行っています。また、販売代理店等ごとの与信管理を徹底し、国内取引では商社を経由した販売を行うほか、グループ一体となった取引信用保険の付保を行うなど、債権保全を行っています。

 また、海外輸出・仲介取引では、前金、LC決済によりリスク軽減を図っています。

 

c.製品価格の下落

 当社グループは、国内外の市場において激しい競争に晒されております。こうした状況に対応するため、高付加価値製品の開発、コストダウン活動等に鋭意取り組んでいますが、これらの企業努力を上回る価格下落圧力が生じた場合、当社グループの利益の維持・確保に深刻な影響を与える可能性があり、その影響は特に製品の需要が低迷した状況において顕著となります。

 なお、国内バルブ市場においては、当社グループのシェアが高く、比較的価格は安定していますが、海外バルブ市場においては、多数の競合他社が存在しており、特に近年アジアのバルブメーカーの競争力向上により、価格競争が激化しています。

 伸銅品事業については、黄銅棒の売価及び原材料の購入単価は、銅相場に連動して決定されますが、仕入から販売までのリードタイムが数か月であるため、相場が下降する局面においては損益が悪化する可能性があります。

 

d.海外事業活動・カントリーリスク

 当社グループのバルブ事業の海外生産比率は約47%であり、主要な拠点は、タイ、台湾及び中国です。また、バルブ事業の海外売上高比率は約41%であり、主要な販売地域はアジア(アセアン、中国、韓国)、米州(北中南米)です。これらの地域の経済、政治、法・税制の変更、自然災害あるいは新型コロナウイルスなどの疫病の蔓延または国家間の外交、安全保障貿易等の情勢により、製品・部品供給等の事業活動及び経営成績が大きな影響を受ける可能性があります。

 また、グループ会社間の国際的な取引価格については、当社グループの移転価格方針に基づき適用される日本国及び相手国の移転価格税制を遵守していますが、税務当局から取引価格が不適切であるとの指摘を受ける可能性や協議が不調となった場合に二重課税あるいは追徴課税を受ける可能性があります。

 

e.固定資産の減損

 当社グループは、事業用の資産や企業買収の際に生じるのれんなど様々な有形・無形の固定資産を計上しています。それらについて、減損会計基準を適用し、定期的に減損テストを実施していますが、事業環境の変化に伴い、将来キャッシュ・フローの低下が見込まれた場合には、減損損失を認識する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当連結会計年度末におけるのれんの未償却残高は僅少です。

 また、不採算事業からの撤退や関係会社の整理等の事業再編を行った場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

f.購買調達

 当社グループの製品の主要な原材料は、銅、ステンレス、アルミニウム、鉄、亜鉛等の金属材料であり、こうした原材料及び部品等を安定的かつタイムリーに調達することが当社グループの生産活動にとって不可欠です。なお、金属材料は、市況によって価格が急激に変動する可能性があり、特に銅市況の変動は経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、バルブ事業、伸銅品事業ともに原材料価格上昇分をすべて販売価格に転嫁できる保証はありません。

 当社グループは、複数のサプライヤーの中から信頼のおけるパートナーを選定し、原材料、部品等を調達する方針をとっていますが、調達品目によっては、仕入先の代替が難しいものがあり、それらのサプライヤーに不測の事態が生じ供給が中断した場合、当社グループの生産体制に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、特定のサプライヤーが人権、労働、環境、腐敗行為等の観点で、社会から容認されないような対応を行っていたことが判明した場合、当該サプライヤーとの取引停止により部品等の調達が困難となる可能性があるほか、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下により投資家の投資判断に著しい影響を与える可能性があります。

 このため、当社グループでは「サプライヤー・ガイドライン」を策定し、サプライヤーに対し、品質管理のほか、人権、労働、環境、腐敗行為を含む事項についての遵守・尊重を求めています。また「グリーン調達基準」を定め、サプライヤーに対して環境負荷を考慮した生産活動を求めるなど、グリーン調達を推進しています。さらには、主要サプライヤーに対し、人権、労働、環境、腐敗行為を含む事項に関するデューデリジェンスを実施し、その遵守状況を確認しています。

 

g.知的財産

 当社グループは、有効な特許権、その他の知的財産権を取得して強固な知的財産ポートフォリオを構築する方針のもとに、製品開発の過程で発明あるいはノウハウに係る多くの知的財産権の取得に努めています。また、これを強力に推進するため、経営戦略、研究開発戦略及び営業戦略にリンクした知的財産権創出、新規性や競合他社の技術を意識した権利範囲の取得及び出願の複合化による権利の強化、あるいはライセンスの積極的許諾活動など経営資源としての知的財産権の活用などに重点を置いた知的財産戦略を推進しています。

 しかし、当社グループが保有する知的財産権に対して異議申立や無効審判などが申し立てられ、あるいは商標権の不使用取消審判などが申し立てられ、その結果、商標権を含む当該知的財産権が無効とされる可能性があります。

 また、第三者との間で合併または企業買収などが行われた結果、それまで当社グループがライセンスしていない第三者がライセンスを保有するなど、当社グループの知的財産権の優位性が失われる可能性があるほか、今までになかった新たな制約が課せられる可能性があります。

 さらに、第三者による当社グループの知的財産権の侵害による紛争・訴訟に至った場合、期待する賠償金を得られない上に、解決するために多額な費用を支出する可能性があります。

 当社グループの事前の入念な他社の権利調査にもかかわらず当社グループの製品が他社の知的財産権を侵害し紛争・訴訟に至り、当社グループが敗訴した場合、多額の賠償金を負担するとともに、解決するために多額な費用を支出する可能性があります。

 また、海外の製造会社において、当社の知的財産を当社の許諾を得ることなく使用して類似品・模倣品を製造・販売することを防止できない可能性があります。

 図らずも、これらの可能性が現実化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

h.退職給付年金債務

 当社グループの従業員退職金制度は、会社が年金運用リスクを負わない確定拠出年金制度、前払退職金及び会社が外部に年金資金を積み立てその運用リスクを負って退職金の額を保証する確定給付年金制度で構成しています。

 なお、このうち、確定給付年金制度の割合は小さいものの、定期的にモニタリングを行い、継続的な安定性ある運用となっているか否かを検証しています。また、年金資産構成割合及びその変更は、年金資産運用検討委員会において慎重に検討し決定しています。さらに、年金資産運用に係る方法等については運用委託先の判断に委ねており、利益相反の防止を図っています。

 確定給付年金の資産残高は、年金債務に見合う水準にあり、年金資産は最低運用利率の保証された一般勘定を中心にリスクを抑えた運用を行っています。

 確定給付年金債務及び確定給付年金費用は、長期期待運用収益率、割引率等の数理計算上の前提条件を基に見積ります。確定給付年金債務は、年金資産の価値の減少、割引率の低下、その他年金数理計算の前提となる比率の変動による予測給付債務の増加に伴う退職給付年金債務の増加をもたらし経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの採用している退職給付年金制度につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)」をご参照ください。

 

ハ.法的規制・訴訟・コンプライアンスに関するリスク

a.訴訟・法的処分

 当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、その過程において第三者との間で訴訟が発生し、あるいは規制当局による法的処分を受ける可能性があります。その場合、結果によっては多額の損害賠償金や罰金その他諸費用を負担する可能性があります。

 また、事案によっては、当社グループの信用力やブランド力の低下などのレピュテーションリスクが生じる可能性があります。

 一方、当社グループが第三者に対して訴訟を提起した場合、結果によっては多額の訴訟費用を費やしながら敗訴し、または勝訴しても当該訴訟費用以上の回収が見込めないこととなる可能性があります。

 

b.環境規制

 当社グループは、事業活動を行っているすべての国の様々な環境関連規制の遵守のために必要な経営資源を投入していますが、特に下記のリスク項目について、現在及び過去の生産活動に関わる環境責任に伴う費用負担や賠償責任が発生した場合、社会的信用が著しく失墜する可能性があります。また、環境関連規制が将来さらに厳格化した場合には、追加的義務及び費用が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループは、こうしたリスクに対応するため、環境安全担当役員を委員長とする環境安全衛生委員会を設置し、環境データの収集から目標・実績管理、改善施策の立案・実行、効果の把握までPDCAサイクルを運用する環境マネジメント体制を構築し、推進しています。

 また、気候変動が事業活動に与える財務上の影響についての情報開示を段階的に進化させていくため、2021年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しました。これにより、今後、データに基づいた分析を段階的に進め、気候変動に関するリスクと機会の把握を行うとともに、TCFD提言に沿った情報開示の質と量の充実を図ります。なお、その具体的な取組みにつきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動」をご参照ください。

ⅰ.原材料となる金属や化学物質に係るリスク

 当社グループの製品の原材料である金属や化学物質が、RoHS指令(電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についてのEUによる指令)やREACH規則(EUにおける化学品の登録、評価、認可、制限に関する内容について定められた規則)等の環境規制に適合できなくなった場合には、製品を市場に供給することができず、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

 

ⅱ.地球温暖化に伴う温室効果ガスの排出量に係るリスク

 気候変動抑制のため、世界的規模でのエネルギー使用の合理化や温室効果ガスの排出量などに関する法令等の規制が強まっています。

 当社グループは、バルブの製造過程で電力や燃料といったエネルギーを大量に消費しているため、エネルギー消費量の現状把握を行い、生産工程や発生源の改善活動を進めています。また、生産性の向上や不良率の低減はもちろんのこと、太陽光パネル等の省エネ機器の導入やCO2フリー電力の採用、また社員への啓発活動を通じて温室効果ガス排出量の削減を進めています。

 当社グループは、温室効果ガスの排出量削減に係る効率的な環境経営を推進するため、グループ環境管理体制を構築しています。具体的には、環境安全衛生委員会において温室効果ガスの排出量削減についての基本方針を策定し、経営会議において計画目標を達成する施策について議論しています。また、取締役会は、活動状況及びその効果についての報告を受け、環境リスクへの対応や環境投資の意思決定を行っています。

 しかし、このような取り組みにもかかわらず、今後、地球温暖化対策などの法令等の規制がさらに強化された場合、新たな税負担、事業活動における諸資材・燃料の変更あるいは設備の変更等の対応費用を負担することで、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

c.コンプライアンス

 当社グループは、事業活動を行う国や地域における会社法、税法、独占禁止法、贈収賄関連諸法、貿易関連諸法、環境関連諸法、各種業法など、多岐にわたる法令や規制に従う必要があります。

 当社グループでは、当社及びグループ各社のC&C管理委員会がコンプライアンス課題に対する解決・改善やコンプライアンス・リスクの低減のための教育・研修の実施・監督を行っています。当社及び国内グループ会社の全従業員を対象とするコンプライアンス・アンケート結果を踏まえて特定した各グループ会社や各部門固有の課題の解決・改善に取り組んでいます。

 しかし、このような施策を講じても、コンプライアンス上のリスクは完全には回避できない可能性があり、万が一、当該リスクが発現した場合に、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、事案によっては、当社グループの信用力やブランド力の低下などのレピュテーションリスクが発生する可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、配当金を株主の皆様への利益還元として経営上の重要課題と位置付けております。当面の業績動向に加え、今後の事業拡大のための設備投資、開発投資、M&A、借入金返済及び社債償還のための資金ニーズにも対応すべく内部留保の充実を図りつつ、配当の継続性、安定性にも十分留意し実施したいと考えております。

 上記趣旨を勘案し、連結配当性向については、親会社株主に帰属する当期純利益の35%前後を望ましい水準といたします。

 配当時期につきましては、中間及び期末の年2回を基本としております。なお、株主の皆様への剰余金の配当等を機動的に実施するため、剰余金の配当の決定機関は取締役会としています。

 また、資本効率の向上及び機動的な資本政策の実施などを目的として、中長期の成長のための必要な投資額等を考慮したうえで、株式市場及び当社株価の動向、手元資金の状況等を勘案し、自己株式の取得を適宜実施していきます。

 当事業年度の期末配当につきましては、上記方針等を勘案し1株当たり23円とさせていただきました。これにより、当事業年度の年間配当金は、中間配当(1株当たり18円)を含め、41円となり、連結配当性向は34.7%となります。

 なお、翌事業年度の配当金につきましては、連結業績予想による親会社株主に帰属する当期純利益の場合、1株当たり年間41円を見込んでおります。

 

当事業年度に係る剰余金の配当は以下の通りであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年8月7日

1,622

18

取締役会

2024年2月27日

2,072

23

取締役会決議