2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。

①経済状況

当社グループにおける全体の売上高のうち、重要な部分を占めるゲーミング市場向けの紙幣識別機ユニットの需要は、販売先の国や地域の経済状況の影響を受けます。また、カジノに代表されるゲーミング業界は遊興のための施設であり、ゲーミング市場自体の景況感は、各国の経済状況の他、紛争・テロなどの世界情勢、大規模な地震・風水害・伝染病・事故など、個人の消費マインドを低下させる事象が発生した場合にも当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

②為替の変動

当社グループの販売先は世界各国に及んでおり、全売上高に占める海外向けの依存度は高くなっております。当社グループ内の海外商流の最適化を図り、為替レートの影響を極力低減するとともに、必要な範囲内で為替予約取引を利用することで、将来の為替レートの変動リスクを回避するように努めております。一方で、為替レートの変動による外貨建資産の期末差額が営業外損益に計上されることも含め、当社グループの業績は為替変動の影響を受けます。

③特定の製・商品への依存度

紙幣識別機ユニットは、当社グループの全売上高のうち多くを占める主力製品であるとともに、ゲーミング市場向けに占める割合が高くなっております。当社グループは、北米を筆頭に各国のゲーミング市場で高いシェアを確保しておりますが、同業他社との競合により、そのシェアは変動いたします。技術開発競争や価格競争の激化が進んだ場合、将来的に現在のシェアを維持できる保証はなく、適正な販売価格の維持が困難となる可能性があります。また、近時、世界的にキャッシュレス化(電子取引化)が急速に進んでおり、この影響を受けて将来的に当社製品の需要が大幅に変動した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ゲーミングに関する法律に基づく規制

カジノ等のゲーミング業界では、犯罪組織とは関係ない者が、真正なゲーム機によって、偽りなく運営することを確保するため、カジノの運営、ゲーム機の製造販売に関して厳しい法規制が実施されております。これらの法規制により、紙幣識別機ユニットをゲーム機に搭載して販売することについても当局の許可が必要となるとともに、米国の一部の州(又は自治区)では、紙幣識別機ユニットもゲーム機の一部と見なされ、ゲーム機と同様に販売に際しての許可が必要となります。このため、世界各国、州等において、紙幣識別機ユニットの販売に許可が必要な場合はもちろん、紙幣識別機ユニットの販売に対して規制がない場合であっても、スロットマシン等のゲーム機に対する法規制が変更される場合においては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは、これらの許認可を取得するにあたり、会社はもちろんのこと、役員個人についても厳しい審査を受けております。万一、当社や関連会社及び役員個人に刑事犯罪などの法令違反行為があった場合は、許認可を取り消され、製品の販売ができなくなることによって、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤風営法に基づく規制

当社グループの遊技場向機器製品の主な販売先であるパチンコホールは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」)の適用を受けております。近年においては、遊技客の射幸心を抑える目的で、新しい法律に基づいた新基準機の導入が義務付けられた結果、業界全体の売上高が縮小し、当社グループの同市場向けの売上高も大幅に減少いたしました。将来的にも遊技機の基準が変更されるなど関連する風営法の改正によって、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑥研究開発投資に関するリスク

当社グループでは、時代の変化に伴い多様化するニーズに適応するため、積極的な研究開発投資を継続して行っております。新製品の研究開発にはリスクが伴っているため、開発テーマによっては開発期間の長期化により開発費用が高額となる可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑦海外事業の展開に関するリスク

当社グループにおける海外での事業展開は、政治情勢や通商問題、事業の許認可や輸出入規制など各種法令の改廃及び新設、各国通貨の切り上げなどといったカントリーリスクの影響を受けます。各国でのカントリーリスクの影響が急激に深刻化した場合には、生産、販売活動等に大きな問題が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑧部材調達に関するリスク

当社グループの製品は、主に電子部品、樹脂成型部品、金属加工部品を組み立てることで構成されております。電子部品については、半導体市場の動向によって需要が大きく変化し、またその変化のスピードが速いことが特徴であります。このことに対応するため、複数の入手経路を確保しておりますが、半導体の市場動向により、原材料の調達等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが購入する部品は、原油や素材価格の高騰により原価が上昇する可能性があります。さらに、当社グループでは海外での生産比率が高く、各国の経済発展に伴う人件費の上昇によっても原価が上昇する可能性があります。

⑨棚卸資産に関するリスク

当社グループは、市場ニーズに合致した製品をタイムリーに供給するため、一定量の棚卸資産を確保しております。市場の需給バランスを予測し、必要最小限の在庫量を維持する取組みを行っておりますが、想定を超えた受注量の増加があった場合においては、あらかじめ確保しておいた在庫品が不足することによる販売機会の逸失等、受注量の減少があった場合においては、過剰在庫の発生にともなう、在庫品の評価損、廃棄損の計上等、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑩資金調達に関するリスク

当社グループは、金融機関等からの借入、社債発行による資金調達を行っておりますが、金融市場の環境変化によっては、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

⑪情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、事業活動を通じて取引先及び自社の営業情報や個人情報等の機密情報を保有しております。外部からのサイバー攻撃や不正アクセス等により、パソコン・サーバー等から、機密情報が流出し、あるいは消失した場合、事業活動の停止が発生するほか、社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑫売上債権の貸倒リスク

遊技場(パチンコ)業界では、これまでの商慣習などから、他業種に比べ売上債権の回収期間が長期化する傾向があります。当社グループでは、売上債権に対する与信管理を社内規程に基づき徹底するとともに、一定のルールに基づき貸倒引当金を計上し、貸倒損失が業績に大きな変動を与えないように対処しております。

一方、顧客であるパチンコホールでは、遊技人口の減退とそれに伴うホール数の減少が続いております。このような状況下で、当社グループでは、販売後も顧客の経営状況などを注視し、回収事故が発生しないように努めておりますが、今後の業界の動向によっては、貸倒リスクが高まる可能性があります。

⑬国際税務に関するリスク

移転価格税制に関しては、関係各国の税務当局間であらかじめ当社グループ内における取引価格の設定などについて、事前に承認を受けるAPA(事前確認制度)を申請するなどにより、二重課税などの税務リスクの回避に取り組んでおります。しかしながら、各国の税制の変化並びに各国間の租税条約の締結状況によっては、国際税務に対するリスクが高まる可能性があります。

⑭知的財産権に関するリスク

当社グループが保有する知的財産権については、その保護を積極的に進めております。また、第三者の知的財産権を侵害しないように十分に調査を行ったうえで、製品開発を行っております。しかしながら、各国の法制度の違いなどにより、損害賠償の支払いや製品の販売差止めを求める特許侵害訴訟を受け、又は第三者が当社グループの知的財産権を違法に使用する等により、販売に関する機会損失や賠償金の支払責任が生じる結果として、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑮環境等法規制に関するリスク

当社は、各国や地域の環境法規制を遵守した製品作りを行っております。当社グループは、環境への配慮をさらに高める努力を継続しておりますが、環境を含む各種法規制は国や地域によって様々であるとともに、紛争鉱物の問題などその規制対象は拡大する傾向にあります。また、環境対策や法規制に伴う経済的負担は大きくなっており、当社グループ製品が各種法規制を遵守できなかった場合には、一部の地域で製品の販売ができなくなるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑯各国紙幣の真偽鑑別に関するリスク

当社グループの紙幣識別機ユニットは、世界140カ国以上の貨幣に対応しております。各国の貨幣は、日本の貨幣に比べ改刷の頻度が多く、偽造が多いことや紙幣識別機ユニットに対する不正が多いことが特徴として挙げられます。当社グループでは、ソフトウェアを迅速に改版し、納入後の製品をサポートしております。しかしながら、近年では偽造紙幣や機器への不正は、より巧妙かつスピーディになっております。それゆえ、それらに対処するための費用の増加や顧客への補償費用等が発生することにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑰キャッシュレス決済化の急速な進展に関するリスク

当社グループは、貨幣処理機器事業を主要な事業としているため、世界各国において多様化する代金決済手段について短期間に急速なキャッシュレス決済化が進展した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑱退職給付債務に関するリスク

当社グループの退職給付債務等は、数理計算上設定した退職給付債務の割引率及び年金資産の期待運用収益率といった前提条件に基づいて算出しております。しかし、実際の結果が前提条件と異なる場合には、将来にわたって当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑲M&A及び業務・資本提携に関するリスク

当社グループは、M&Aや業務・資本提携を成長戦略のひとつと位置付け、積極的に検討・推進いたしております。これらの施策の実施に当たり、対象企業の財務内容や事業活動等について、デューデリジェンスを行い、事業の将来性やリスク等を把握の上、意思決定を行っておりますが、施策実施後に、事業環境の変化や予期せぬ偶発債務の発生などにより対象企業の業績が悪化し、当初想定した成果が得られない場合には、株式評価額又はのれんの減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑳新型コロナウイルス等の感染拡大に関するリスク

当社グループの役員・従業員に新型コロナウイルス、インフルエンザ、ノロウイルス等の感染が拡大した場合、一時的に事業活動を停止することとなり、それによって当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、上記以外にも様々なリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。

配当政策

3【配当政策】

 当社グループでは、利益配分に関する基本方針として、成長戦略の実現による利益の拡大を通じた配当額の増加と、株主の皆様への利益還元である配当の安定的な実施という両面を勘案し、連結配当性向30%以上を基本に、純資産配当率にも配慮して決定することとしております。

 当期の利益還元につきましては、上記方針に基づく利益配当に加え、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行するため、総額1,966百万円の自己株式の取得を行いました。

 また、利益配当金の決定に当たっては、為替差損益等の一過性の利益変動要因については除外し、かつ、自己株式取得等の他の株主還元策の状況を総合的に勘案して決定することといたしました。

 以上により当期の期末配当金につきましては、従前の予想どおり1株につき19円とし、中間配当金と合わせて年間

26円といたしました。

 次期の年間配当金につきましては、利益配分に関する基本方針に基づき1株につき年間28円(連結配当性向30.3%)を予想しております。

 内部留保資金につきましては、今後の多様な事業環境の変化に対応するための戦略的投資及び新規市場開拓に伴う人材や研究開発投資等に加えて、不測な事態にも速やかに対応するための資金として有効に活用してまいります。

 当社は、「会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる。」旨定款に定めております。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月8日

205,497

7.0

取締役会決議

2024年5月21日

534,597

19.0

取締役会決議