リスク
3 【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)市場環境
①半導体市場変動による影響
半導体市場は急激な技術革新や半導体を使用するデバイスの爆発的普及等により大幅に成長する反面、需給バランスの悪化から価格が下落し市場規模が一時的に縮小する等、好不況の波にさらされてきました。当社グループでは、当社の有する技術開発力を発揮できる半導体洗浄装置の製造・販売に経営資源を集中させることにより、高い利益率を獲得するとともに、継続的に利益を生み出せるよう、主力の半導体洗浄装置におきましては顧客の投資動向を注視し、既存顧客の投資案件での占有率向上と新規顧客の獲得に努めております。また、半導体市況が悪化した場合でも安定した経営基盤を構築するため、半導体洗浄装置以外の事業に進出する等、構造改革にも積極的に取り組んでおります。
しかしながら、予期せぬ半導体市場の大幅な縮小によって、顧客からの受注済み装置の納期変更による売上計上期の期ずれ、受注取消、在庫増加、顧客の財務状況悪化による貸倒損失、仕入先の経営状態悪化による供給不足等が発生する場合や顧客の事情等によって、装置の出荷や設置時期の集中、遅延等が発生する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②特定顧客への取引集中による影響
当社グループの連結売上高に占めるSamsung Electronics Groupに対する売上高の割合は、ZEUS Co., Ltd.経由を含め2021年12月期33.7%、2022年12月期26.9%、2023年12月期28.3%と高くなっております。同社グループとは、当社が事業を譲り受けたエス・イー・エス株式会社の時代から長年にわたり良好な取引関係を保っており、同社グループから求められる性能や品質、納期を充たした製品やサービスを通じて、継続的かつ安定的な取引関係を構築しております。また、当社と現地法人の営業担当者を顧客別に配置することにより、主要顧客との良好な関係は維持しつつ、他の既存顧客や新規顧客との連携を強化し、さらに幅広いニーズを取り込むことで顧客基盤の拡大に努めております。
しかしながら、同社グループの大規模設備投資実施計画の変更、大口受注に対する値引き要請等によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③研究開発による影響
当社グループは、半導体製造工程における洗浄技術、熱処理技術、乾燥技術等の最先端技術について積極的な研究開発を継続的に取り組んでおります。研究開発により得られた最先端の技術を搭載した新製品を早期に市場投入することにより、半導体洗浄装置において一定の市場シェアと高い利益率を獲得してきました。研究開発の要となる当社の技術開発セクションは、顧客ニーズを聴き取り、開発テーマを決定するセクションとなる「技術企画室」と、決定された開発テーマを具現化するセクションとなる「技術開発部」とに分かれており、タイムリーかつ迅速な研究開発が行える体制を整えております。
しかしながら、研究開発の遅延による新製品投入タイミングの遅れ等の影響によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)コンプライアンス
①安全に関する影響
当社グループは、研究開発・製造・販売・サービス・管理等の各種業務の遂行において、安全や健康に対する配慮を常に念頭において行動するという基本理念のもと、当社グループ製品の安全性の向上や健康への影響排除のために積極的かつ継続的に努力しており、SEMIスタンダード(注)に準拠した製品仕様とすること等により、当社グループ製品の安全性向上に努めております。
しかしながら、当社グループ製品に関連する安全性等の問題により、顧客への損害発生や受注取消等が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(注)SEMI(エレクトロニクス製造サプライチェーンの国際工業会)が定めた「半導体製造装置」の設計に際してのガイドライン。
②品質に関する影響
当社グループは、研究開発により得られた最先端技術を新製品に搭載し、早期に市場に投入することとしております。また、品質保証体制につきましては、品質マネジメントシステムに関する国際規格であるISO9001の認証取得を含めたサービス体制の確立に努めると同時に、当社グループと取引のあるサプライヤーに対して品質監査を実施することにより、品質向上に努めております。
しかしながら、当社グループの製品が最先端技術製品である等の原因によって、未知の分野の開発技術も多く存在し、予期せぬ不具合の発生等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③安全保障貿易管理に関する影響
当社グループでは、海外への製品・部品の輸出や技術の提供を行うため、「外国為替及び外国貿易法」とその関連法令に則った貿易管理業務を行っております。また、当社グループが製造する装置を構成する部品の一部には、兵器の開発に利用できる等軍事的に転用されるおそれのある機微品目が含まれており、当社グループではそれら品目についても迅速な輸出が行えるよう、内部管理体制を整備し「特別一般包括輸出・役務(使用に係るプログラム)取引に関する許可(注)」を取得しております。
しかしながら、法改正や規制強化が実施された場合、より厳格な管理のための工数や費用が増加するほか、当社からの輸出が制約を受ける可能性があります。また、法改正により特別一般包括許可の適用範囲が変更された場合や、世界各国の経済安全保障政策が強化され当社顧客が法規制や制裁の対象となった場合、規制対象となった地域や顧客への輸出制限やリードタイムの長期化、資金決済が滞る等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2023年7月23日施行の「輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令の一部を改正する省令」等の改正により、新たに半導体洗浄装置を含む23品目が輸出管理の対象となりましたが、当社製の半導体洗浄装置は改正輸出貿易管理令に基づき該非判定を実施した結果、輸出管理対象に「非該当」となることを確認しております。
(注)当該輸出許可の輸出許可番号は、HBIT-GL-23-S100005で、その有効期限は、2027年2月5日であります。当該輸出許可を受けた者が法令若しくは許可の条件に違反したとき、申請者若しくは許可の要件を満たさなくなったとき又は国際的な平和及び安全の維持の観点から必要があると認めるときは、経済産業大臣が当該許可を取り消すことがあります。また、許可の条件で規定されている場合の他、国際的な平和及び安全の維持の観点から必要があると認めるときは、経済産業大臣が定める期日から当該許可の全部又は一部の効力を失う旨の通知を行うことがあります。当社は、当該輸出許可の継続に支障を来す要因は発生しておりません。
④知的財産権に関する影響
当社グループは、製品の差別化と競争力強化のために、最先端技術の研究開発に積極的かつ継続的に取り組み、多くの独自技術を創出し、その独自技術を知的財産権として確立しております。また、技術開発に携わる役職者を事務局とした知的財産権委員会を設置し、知的財産権に関するリスク排除に努めております。
しかしながら、当社グループの製品に関する最先端技術は、知的財産に関する権利関係が複雑化しており、意図せず第三者が有する知的財産権を侵害し、訴訟に巻き込まれるリスクがあります。また、第三者が有する知的財産権のため、当社の研究開発に制約等が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)事業継続計画
①生産拠点集中による影響
当社グループは、岡山県浅口郡里庄町の本社工場にて製品の生産を集中しております。行政機関が発行した防災マップにおいては、災害被害が想定されたエリアではありません。また、地域行政への寄附により地域防災に積極的に関与しており、災害発生時の影響を最小限に食い止めるべく努めております。
なお、生産拠点の分散化のため、一部の製品機種において九州地域の協力会社での生産委託の強化を図ると同時に、韓国現地法人での生産を開始しており、係る影響の軽減に努めております。
しかしながら、地震等の自然災害や火災・爆発等の不慮の事故が発生した場合には、生産活動の一時的な停止、さらには修復・生産工場等の代替に伴う費用負担が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②外注先への依存による影響
当社グループは、製品の生産にあたり、外注先に製造業務を委託している工程が多数あり、重要工程の製造業務に係る外注先については、既存の外注先に加えて、異なる地域における新たな外注先を開拓し、マルチベンダー化を図ることで、安定的な製造体制の確立に努めております。
しかしながら、地震等の自然災害や火災・爆発等の不慮の事故により外注先が被災した場合や計画どおりに外注先を確保できない場合、あるいは、既存の外注先との契約を継続できない場合、生産活動が一時的に停止又は遅延し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)資金調達
①借入契約に関する影響
当社の借入金に係る契約のうち一部の契約には、各年度の末日の連結及び個別の純資産の額、及び、連結及び個別の経常損益に関する財務制限条項が付されております。そのため、財務制限条項に抵触し、借入先金融機関からの請求があった場合は、当該借入金について期限の利益を喪失する可能性があり、一括返済の義務を負った場合には、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)親会社との関係
本書提出日現在、ZEUS Co., Ltd.(韓国取引所(KOSDAQ)上場)は、当社の議決権の66.4%を保有する親会社でありますが、当社グループの方針・政策決定及び事業展開については、当社独自の意思決定によって進めております。また、2021年12月期以降、当社グループは売上高・利益ともに親会社グループの過半を占めておりますが、当社グループの業績が半導体市況の好況を受けた結果であり、一時的であると考えております。
親会社グループの中には当社以外に半導体洗浄装置を開発・製造・販売する会社はなく、また親会社が製造・販売する半導体洗浄装置は当社からライセンス供与した一般的な枚葉式洗浄装置に限定しており、当社が開発・製造・販売するバッチ式洗浄装置や特殊枚葉式洗浄装置とは使用されるプロセスが異なることから、当社グループと親会社との間には、事業の棲み分けがなされ、競合関係もありません。また親会社とは、当社の自主性の尊重や当社が東京証券取引所スタンダード市場に上場した後においてはその上場を維持すること、当社の少数株主の利益を不当に害することのないよう、当社の経営方針及びガバナンス体制に関する合意書を締結しております。
なお、資本関係、取引関係及び人的関係については以下のとおりであり、これらについて変動又は問題が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
イ.資本関係について
当社は、自らの経営責任を負って独立した事業経営を行っておりますが、当社の親会社であるZEUS Co., Ltd.は当社の議決権の66.4%(本書提出日現在)を所有しており、当社は同社の連結子会社となっております。当社の経営判断において親会社の承認を必要とする取引や業務は存在しませんが、親会社は当社の株主総会における取締役の任免等を通じて当社の経営判断に影響を及ぼし得る立場にあることから、議決権の行使にあたり、親会社の利益は、当社の他の株主の利益と一致しない可能性があります。また、親会社の経営方針の変更や経営状態の悪化等により、当社グループに対して要求等があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ロ.取引関係について
当社グループと親会社との主な取引については、「取引基本契約書」「取引基本契約書に関する付帯覚書」「業務委託契約書」等に基づき履行されております。
当該契約書等には親会社からの調達品や販売支援等に関する条件が定められております。当社は、親会社との取引を今後も継続する方針でありますが、取引条件の妥当性については、随時、他社との取引条件等を比較しその適正性等を様々な観点から検証を行った上で、検証の結果、当社にとって不利益となる場合は条件の見直しを親会社と交渉する予定であります。また、親会社への委託業務が困難となる場合に備え、韓国現地法人での業務範囲を拡大しております。本書提出日時点において親会社との取引方針や取引条件に変化は生じておりませんが、今後の交渉により取引条件が変更となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2023年12月期における親会社との主な取引内容は、下表のとおりであります。
ハ.人的関係について
本書提出日現在、親会社からの役員の派遣、親会社への出向者及び親会社からの受入出向者等の人的関係はありません。
(6)その他
①為替変動による影響
当社グループは、海外輸出による売上の比率が高いため、為替リスクを避けるため円建て取引を基本としております。2021年より韓国に設立した現地法人にて製品の生産を開始しましたが、韓国で生産した製品を韓国の顧客に販売する場合は、外貨(韓国ウォン)建て取引となります。当社グループでは、為替予約等により急激な為替変動のリスクをヘッジする予定ですが、想定を超える為替変動が起こった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②その他のリスク
当社グループは、韓国、中国、台湾をはじめとした諸外国の顧客を相手にグローバルに事業展開をしております。グローバルに事業展開する他社同様に、世界経済の変動や米中貿易摩擦等の通商問題、ロシアによるウクライナ侵攻等の紛争・戦争・テロの発生、大規模な自然災害や感染症の発生等、不可抗力な事象により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、近年強化されている米国の対中国半導体輸出規制は、中国における先端半導体製造能力の抑制を目的とし、米国原産品や米国製品を一定割合組込んだもの、米国由来の技術を用いて作られたものが、先端半導体製造用途向けや特定企業向けに輸出されることを規制するものです。当社製品は日本又は韓国製であり、また、米国産品の組込比率が25%以下であることから、米国輸出管理規則の規制対象外であります。したがって、現時点では中国顧客向けに当社装置を輸出することは可能であり、当社グループの業績への影響は軽微であります。ただし、今後米国製品の組込比率要件が変更される場合は、中国への製品輸出又は中国での装置立上業務が困難になり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして位置付けておりますが、事業環境の変化に対応できる財務の健全性維持や成長投資に必要な内部留保の充実などを総合的に勘案し、連結ベースで計算した配当性向20%以上を目安に安定的かつ継続的な配当を実施していくことを基本方針としております。
なお、当社は、期末配当のみの年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としておりますが、会社法第454条第5項に規定する中間配当(基準日:毎年6月30日) を行うことができる旨を定款に定めております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。
本方針に基づき2023年12月期の期末配当金につきましては、1株当たり102円とすることといたしました。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
(注) 2023年1月1日付で普通株式1株につき2株の株式分割を行っております。そこで、2022年12月期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、2022年12月期に属する剰余金の配当を算出すると、1株当たり配当額は63.5円に相当いたします。