2023年11月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、輸出比率が高く、米中間の政治・経済対立や欧米経済のインフレ懸念、為替相場の変動などの国際経済の影響に加え、取引相手国の政治状況・経済政策の影響も受けざるを得ない。また、主要市場である中国の景気低迷に加え、部材の長納期化や世界的な物流の混乱なども重大なリスクとなっている。このような状況から、主に次の要因が当社グループの経営成績に影響を及ぼすリスクと考えている。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。

 

①米中間の政治・経済対立

特に繊維機械事業における主力市場の中国では、米国が重要な繊維製品の輸出相手国となっており、米中間での政治的な対立や、米中貿易摩擦・追加関税引き上げにより、繊維製品輸出が減少すると設備投資に影響が及ぶ。一方、こうした環境の中で、中国から隣国等への生産拠点の移動現象も見られ、新たな商機と捉えていく。

 

②欧米経済のインフレ懸念、為替変動や金利上昇リスク

欧米経済のインフレの進展やそれに伴う金利上昇により、世界各国・地域の経済成長が減速し、顧客の設備投資に対する判断が慎重になるなどの影響を受ける懸念がある。当社は輸出にあたっては、為替リスクを回避する手段として、円建て契約を基本としているが、急激な円高は相手側の円調達リスクとなる。また、当社客先とその最終仕向国の間の為替変動による資金調達リスクが、当社顧客の設備投資に影響する。

 

③中国経済の景気低迷リスク

主力市場の中国で、景気の停滞は、客先の設備投資計画に影響を与え、計画の延期等が発生する可能性がある。この場合に当社グループの業績に悪影響を与える可能性がある。

 

④半導体等、基幹部品の長納期化及び価格の高騰リスク

当社製品の主要素材である半導体をはじめとする原材料の供給不足やサプライチェーンの混乱により、生産の減速、納期の遅延が生ずるリスクがある。また、主要素材である金属類、半導体等の価格高騰に加え、災害によるサプライチェーンの寸断や国際的な需給バランスの変動も調達コストの上昇リスクとなる。サプライチェーンの多様化により、リスクの解消を図っている。また、原材料価格の高騰を反映した販売価格を顧客に提案することで、採算性の改善を図っていく。

 

⑤海上輸送運賃やエネルギー価格の高騰リスク

当社は、主に船便によるコンテナ輸送で当社製品を顧客へ引渡しを行っている。コンテナ不足による物流停滞は、海上輸送運賃の高騰を引き起こし、輸出契約時に見込んでいた海上輸送運賃を上回る費用が発生するリスクとなる。原油・電力等のエネルギー価格の高騰は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える。エネルギー価格の高騰等に対し、販売価格への転換をすすめ、採算性の改善を図っていく。

 

⑥継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、令和元年11月期以降継続して営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上することとなった。当期においても、下期には黒字転換を果たしたものの、通期では営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上している状況であること等から、当社グループには、引き続き継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在している。

当社グループは、2021年度から2023年度をターゲットとする「中期経営計画2023」を策定しているが、このような状況を解消し、健全な企業活動を継続するために、特に2023年度においては、以下の点を重点項目として取り組んだ。

 

繊維機械事業の受注・売上拡大

インド市場では、ITMA Milan 2023で高い評価を頂いた新型エアジェットルームの高稼働評価が広く浸透してきており、販売も順調に伸びている。客先の要望の把握に努めるべく、設計者の派遣も継続している。また現地在庫部品の拡充、電装品修理体制の整備などアフターサービスの強化も推進中である。

中国市場では、大手企業を中心にウォータジェットルームやサイジングマシンの販売を伸ばしている。一方でウォータジェットルームからエアジェットルームへの転換の動きも出てきている。その他トルコ、インドネシア等の市場での販促を継続しており、受注につなげている。また産業資材分野においても製品PRを強化し、シェア拡大を図っている。

a. 新型エアジェットルーム ZAX001neoの販売促進

主要市場および織物分野別にモデル工場が本格的に稼働する中で、それぞれの市場で客先に、高生産性・省エネ性能を実感いただいている。6月のITMA Milan 2023に引き続き、11月にはITMA ASIA+CITME2022へ出展し、客先より高い評価をいただいた。その結果、引合いが増え受注に結び付いている。また織物の仕様拡大や機能性向上のための開発も引き続き進めていく。

b. ウォータジェットルームの販売強化と中国内需向けボリュームゾーンの市場確保

中国ではフィラメント織物の主要産地である呉江地区から他地区への新たな投資や、エアジェットルームへの切り替え需要の動きは継続しており、販売員を集中させて販売促進を引き続き実施中である。

また、中国子会社 津田駒機械製造(常熟)有限公司での新型ウォータジェットルームZW8001も既に客先の工場で高稼働しており、中国内需向けのシェア拡大を図っている。

c. 準備機械の販売体制見直しによる販売促進

当社の強みであるサイジングマシン(準備機械)については、11月に中国呉江地区にてセミナーを開催し客先との交流を深めた。客先からの要望を製品に反映し、新たな提案を持って販売拡大を図っている。他国の客先においてはITMA ASIA+CITME2022への来場を機に稼働工場の見学を実施し、受注に結び付けるべく販売促進中である。

d. 産業資材分野への販促

中国において、躍進著しい自動車業界向けにエアバッグ用織機の受注を積み重ねることができ、継続して販促活動中である。その他オーニングやガラスなど、様々な産業資材への取り組みを強化している。

 

繊維機械事業における採算性の改善

原材料や輸送費など、全ての製造コストをタイムリーに把握し、原価管理を徹底させるよう改善を進めている。その上で、詳細な製造コスト、納期の情報を全社的に共有し、組織横断的な原価低減活動に落とし込み、利益改善及び在庫適正化を進めている。また適正な販売価格への改定も進めていく。

 

工作機械関連事業の受注・売上の拡大、採算性向上

工作機械関連事業の取り巻く市場環境は不透明な中、今後成長が見込まれる自動車業界のEV関連や航空宇宙産業、クリーンエネルギー発電や医療業界等の顧客要望に応える製品の投入を進めている。直近ではEV部品加工関連設備向けの販売促進活動に注力し、加えて工作機械メーカ向けOEM製品の受注獲得に向けた営業を展開し、実績も上げている。

a. 自動車業界のEVシフトに対応した製品の販売促進

当社の主要な納入先の自動車業界では、エンジン車の生産は当面継続すると予想されるが、EVへの市場トレンドの移行に伴い、生産設備も両方に対応したスペックでの導入が進んでいる。今後はより汎用性を持たせたマシニングセンターでの加工が主流となるため、汎用NC円テーブルのラインアップを拡充している。また、プラットフォーム手法を活用し、迅速に製品供給ができる効率的な生産管理体制を構築している。

新型NC傾斜円テーブルは、ワンチャッキングで旋削と切削を可能にし、生産性の向上に大きく寄与する。加工物の大型化・軽量化に対応した製品も開発した。昨秋のメカトロテックジャパン MECT2023では、更に付加価値を高めたNC傾斜円テーブルを展示し、来場者の注目を集めた。いずれの機種もEV用部品に対応した機種ではあるが、他産業・他分野向けの加工でも利用ができ、今後販売促進を進めていく。

b.新しい産業分野・加工技術・省人化に対応する新製品の迅速な開発と市場投入

航空宇宙産業やクリーンエネルギー発電などで、当社が得意とする大型NC円テーブルの需要が期待される。客先の要望に沿った大型部品の高精度加工に対応すべく、新機種の開発を行い、需要の取り込みを図る。

また新しい加工技術・省人化に対応し、工程集約、自動化対応のNC傾斜円テーブルや5軸加工用の新型マシンバイスの販売を開始している。

さらに、新しい市場への展開として開発を行った3Dプリンタ後の仕上げ用小型加工機は1号機を出荷している。手動式パレットチェンジャーは既に市場投入している。またNC円テーブルを駆動要素に使用したギアのバリ取り機の開発に着手し、市販化に向けて準備している。既に稼働中のギア加工機の拡販も継続して行っていく。今後も様々な新製品の開発・市場投入を行い、工作機械関連事業の第3の柱にすべく取り組んでいく。

 

キャッシュ・フロー確保に向けた対応策

資金計画については、令和6年度の通期予算を基礎に策定している。通期予算等は、最近の受注高及び受注見込額の推移、過去の売上の推移による趨勢を検討の上、収益予測を行っている。また、コスト・費用面においても通期予算を基に計算しているが、更にコストダウン計画の遂行、経費節減の徹底によって改善を図っていく。なお、資金計画には主要金融機関からの借入更新が含まれている。

取引金融機関とは、定期的に資金計画及び中期経営計画の進捗状況の説明を行うなど、緊密な関係を維持している。

また、売却の意思決定を行った政策保有株式について、相手企業との同意の内容や株式相場を勘案したうえで売却を実施している。

 

以上の対応策に取り組んでいるが、これら対応策の実現可能性は、国際情勢の動向、世界的な原材料価格、エネルギー価格の高騰、半導体等基幹部品の長納期化などの外部要因に影響を受け、業績回復による黒字転換が遅延し、当社グループの資金繰りに影響を及ぼす可能性があることから、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

 

当社の活動分野は、世界的な設備投資の状況に大きく左右され、また、輸出比率も高いため業績の変動は避けられない環境にあります。このような業界におきまして、当社は環境の変化に耐えうる健全な財務体質を維持するとともに、事業拡大のための内部留保を高めながら、株主の皆さまへの安定的な配当を継続できるよう業績の改善に努めてまいります。

なお、当事業年度の配当金につきましては、無配とさせていただきます。

翌事業年度につきましては、非常に不透明な市場環境ではございますが、受注・売上の確保、販売価格の改善、生産効率の改善とコストダウンを喫緊の課題として取り組み、業績の回復に努めてまいります。しかしながら、翌事業年度の業績予想及び配当原資の状況を踏まえ、配当予想につきましては無配とさせていただきます。

内部留保資金の使途につきましては、今後の事業展開への備えと事業拡大のための設備投資等に投入していく所存です。

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会です。また、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当(基準日は毎年5月31日)を行うことができる旨を定款に定めております。