リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 事業の特徴について
当社は、幅広い層の顧客に対して製造業の切削加工で使用される消耗工具の製造・販売及び研磨を行っております。事業の対象が切削加工で使用される消耗工具であるため、顧客企業の機械稼働率の多寡により当社の受注も変動します。将来の業績も景気の状態や機械業界の動向などによっては同様な影響を受ける可能性があります。
当社の事業の方針は、①多品種少量生産向きで ②確実に需要が見込まれ ③既存のメーカーが顧客ニーズに充分対応できていない機械工具に対象を絞り、入念な参入準備のもと「高品質、短納期」を実現し、顧客からの信頼、リピートオーダーの獲得を重視し、業界での高シェアの確保を目指すというものであります。当社の扱う機械工具は消耗品であるため、リピートオーダーによる継続的な受注が可能となります。受注に関してコレットチャック部門、自動旋盤用カム部門は、完全な受注生産となっており積極的な受注活動は行っておりません。営業部門は、顧客からの注文を電話、FAX、メール等で受け付け、受注内容を製造部門へ伝達することを主要業務としております。そのため当社の業績は、機械業界の受注動向をあらわす実質機械受注(内閣府発表:電力・船舶を除く)にほぼ連動しております。
切削工具部門では、市場規模が大きく他部門に比べて市場開拓率が低いため市場浸透度を高めるべく営業活動を行っております。
① コレットチャック部門について
当社の主力製品のスプリングコレットチャックは、小型自動旋盤による金属旋削・切削加工の大半の局面で使用される消耗工具であり、通常の景気循環の中では比較的安定した受注が見込まれます。顧客層が広範な業種に亘り顧客数が多いため、一定の受注量は確保しておりましたが、ここ数年の景気変動局面ではその影響を大きく受けてきました。今後も景気が大きく変動する場合、その影響を受ける可能性があります。
また、当社の関連するスプリングコレットチャックの市場は大きく拡大するものではなく、当部門の売上高も一定の範囲内で推移する可能性があります。標準品の他に近年、需要が高まってきている小型自動旋盤用セミオーダーのコレットチャック、専用機で使用するコレットチャックのオーダー品は、顧客の要求に的確に対応し、短納期を実現することが重要であり、現状は着実に受注確保できていますが、この対応がうまくできない場合は、受注が確保できない可能性があります。
また将来、技術革新等により旋削加工工程が必要でなくなった場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。
② 切削工具部門について
当社は切削工具部門において市販切削工具の再研磨及び特殊切削工具製造・再研磨を行っております。市販切削工具の再研磨は、金属加工の高度化、複雑化に伴い超硬工具の普及が加速し、自社研磨から外部の専業研磨会社へ外注するケースが増加しております。この流れを捉え当社は1999年8月に事業展開を開始いたしました。事業開始から年数を経過し、一定の顧客基盤を確保しましたが、この間、競合企業も増加して価格競争が激化してきました。今後、さらに価格競争が進む場合は、当社の受注に影響を及ぼす可能性があります。また、切削加工の変化により使用する工具が変わり、再研磨自体が減少する可能性があります。
切削工具部門においては、特殊切削工具の製造・販売・再研磨も行っております。製造業における部品の複雑化、材料の難削化、加工難易度の上昇により、市販切削工具で対応できない切削加工が増加しており、加工に応じたオーダーの特殊切削工具の需要が伸びてきております。特殊切削工具の製造は、一品一様であり、短納期対応が求められることが多く、大手メーカーでは対応が難しく、中小メーカーでは製造設備の調達、加工人員の熟練、人員の確保などでうまく対応できないことがあり、当社の競争力が発揮できる分野ということで事業展開しています。特殊切削工具の製造は、設計と製造方法・工程の良否によって、その性能が大きく左右されます。
当社が的確に顧客ニーズに対応できない、業界において知名度が高まらないなどの場合、受注に影響を及ぼす可能性があります。
なお、加工に応じたオーダーの特殊切削工具の需要に対応するため機械装置他の設備投資を行った場合には事業部門の損益及び将来キャッシュ・フローに影響を及ぼすことがあり、減損損失計上の要件に該当した場合には固定資産の減損損失を計上することにより当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。当事業年度においては同部門の営業活動から生み出す割引前将来キャッシュ・フローの総額が資産グループの帳簿価額を上回ると見積もっており、減損損失を認識していません。
③ 自動旋盤用カム部門について
当社の自動旋盤用カムが使われるカム式自動旋盤自体が生産されておらず、国内外で現存するカム式自動旋盤を使用する顧客からの注文のみとなっています。生産される部品もロットの多い量産部品が中心で、一度カムを取り付けると当面は補充が必要なくなります。当社のカムの受注は年々減少してきており、特に直近一年は大きく減少しています。売上が増加しないかぎり部門損益は赤字の傾向が継続します。
(2) 海外市場依存度について
当社の最近5期における輸出販売高比率は、下表のとおりであります。当社からの販売についてはすべて円建てで行っております。当社の輸出地域であるアジアの経済情勢、市場動向及び為替変動等によっては、輸出販売高に影響を与える可能性があります。製造業においては、世界的に分散した部品加工が、地政学リスク、貿易関税引上げ問題や輸出入の制限・禁止措置などにより、流通が滞る場合、当社の受注も影響を受けます。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして認識し、経営基盤強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定的な配当を行うことを基本方針としております。
当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、株主総会であります。当社は現状で自己資本比率が高く、財務基盤は安定した状態で推移しております。一方、事業環境は常に変動し、当社の業績もその影響を受けております。自己資本に対して一定の割合で株式配当を行うことで安定した株主還元を実行し、株主の皆様への利益還元を重要な経営方針のひとつとして位置づけ、純資産額の3%以上を目安に安定配当することを方針といたします。
また、内部留保資金につきましては、中長期的な視点にたち、将来の成長、発展のために必要な設備投資等に充当し、企業価値の向上を図ると共に、安定した株主還元の原資としていく方針であります。
なお、当社は取締役会の決議により中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。