リスク
3【事業等のリスク】
当社の経営成績及び財務状況に影響を与える可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。なお、当社の事業に関する全てのリスクを網羅したものではありません。また、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 国内内航船業界偏重による主機関受注減少リスク
現在の内航海運業界ではここ数年の稼働隻数は5,200隻前後で推移しておりますが、1隻当たりの平均総トン数が10年前に比べ約3割増加し船が大型化する結果、従来の小型船の隻数が減少するとともに、船員の高齢化や若手船員の減少等による内航船員の慢性的な不足により、トータルとしての緩やかな隻数の減少傾向が継続しております。一方、内航船を建造できる造船所はおよそ32社で、そのすべての建造能力を合わせても建造可能隻数は年間100隻に満たないとされています。その市場に対して国内の舶用4サイクルエンジンメーカー5社が存在し受注競争が一層激化しております。このようななかで、当社は新しい技術に裏打ちされた付加価値によりお客様に満足を提供し、国内内航船業界のシェアの拡大を図るとともに、海外、特に東南アジアを中心としたマーケットの開拓に注力してまいります。
(2) 低速4サイクルディーゼルエンジン偏重による主機関受注減少リスク
当社の主力商品は、低速4サイクルディーゼルエンジンであり、その特長はロングストローク化と機関回転数を低くすることにより燃焼を確実に行うことができる結果としての、中速エンジンに比べた高い熱効率であります。また低回転が必要なプロペラと複雑な減速機を介さず直接に結合できることと、機関回転数が低いことが相まって高いシステム信頼性を有しており、その結果メンテナンスコストを含めた生涯コストが低くなっています。この特長が内航海運用途で評価され高いシェアを誇っております。しかし、この特長による中速機関への優位性が認められにくくなる、又は環境対応としてディーゼルエンジンそのものに対する風当たりが強くなれば、受注減少のリスクがあります。まずは、その優位性を確保するため現有ディーゼルエンジンの継続的な性能改善を進めております。また、付加価値の向上として、高度船舶安全管理システムや機関モニタリングシステム「HANASYS 5」等ソフト面でのサポート機能の充実も図っております。加えて、メタノール燃料エンジンも完成しており、今後のGHG削減に対して脱炭素を視野に入れ研究開発を進めてまいります。
(3) IMO規制(国際海事機関により採択された地球環境保全に対する規制)への未対応リスク
当社に関連のある規制としましては、NOx3次規制、SOx規制、EEDI規制及びEEXI規制(CO2規制)、船内騒音規制等があります。現時点で、将来直接的に対応が必要と考えられる規制はNOx3次規制であり、規制に適合できるエンジン又は技術が開発できない場合は当社の経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。対策のひとつとして規制に適合できるガスエンジンの開発をいたしました。SOx規制は燃料油に、EEDI規制、EEXI規制及び船内騒音規制は船舶全般に関わる規制となりますので、それらに対する関係各社の対策技術が開発されない場合、新船建造に歯止めがかかり当社の主機関受注に大きな影響を及ぼす可能性があります。お客様のご要望に対する可能な限りの各種技術データの提供等にて、最大限の協力をさせていただいております。地球環境保全に対する積極的な貢献が当社の使命でもあり、ビジネスチャンスを掴み取る機会でもありますので、主機関を含めた推進システムの総合メーカーとして課題解決に向けて技術的可能性を追求してまいります。
(4) 新卒人材採用の困難継続リスク
日本の少子高齢化に伴い新卒の人材採用が困難になってきております。現時点では採用計画をほぼ充足させる新卒者数の応募があるのみとなっており、状況がさらに厳しくなり計画数に満たない状況が継続すれば、技術やノウハウの社内伝承が進まず事業機会を失うことにより、当社の経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。対策としましては、大学との個別コンタクトや積極的な会社説明会への参加、通年採用や経験者採用のオープン化、初任給のアップ、マイナビやラッピングバス、自社ウェブサイトの活用(当社の魅力発信等)を行っております。加えて、経験者人材の採用を進めるため、リファラル採用や転職サイトの有効活用をしております。
(5) 感染症パンデミックの影響による損失拡大リスク
社内で感染者が多発した場合、操業停止等により経営成績や財政状態へ大きな影響を受ける可能性があります。新型コロナウイルス感染症について、現状は収束しましたが、今後、同感染症の再流行や新たな感染症が流行した際には、今般得た経験を生かし、対策本部の設置による情報の一元化、時差出勤・テレワークの活用など迅速に対応してまいります。
(6) SDGs対応に貢献できなかった場合のリスク
SDGsへの貢献は、既に一般企業、一般社会人の果たすべき当然の義務という位置づけです。その義務を果たさなければ、ビジネス社会の責任ある一員と捉えてもらえない大きなリスクがあります。今回の新中期経営計画においても引き続きSDGsへの貢献を基軸に据え、中期目標にてSDGsに貢献できる具体的な目標を設定しております。これからも地球と人を大切にする企業活動に邁進してまいります。
(7) ロシアのウクライナ侵攻による地政学的リスク
ロシア向けの主機及び部品の販売につきましては、2022年3月の経済産業省の輸出貿易管理令の一部改正以降、一切の販売を取りやめております。元々ロシアへの主機販売の実績はなく、部品販売も少額であったため部品の売上高に対する影響は極めて軽微なものとなっております。ただし、エネルギーや原材料等の資源高騰のリスクがあり、金属材料や部品の二次的な高騰につながり利益を圧迫する可能性があります。いずれにせよリスク状況をよく見極め、可能な限りの対策を実施していく所存であります。
(8) ランサムウエア攻撃による損失リスク
当社基幹システムがランサムウエアによる攻撃を受けた場合、システム障害による操業停止に陥り、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。現在、侵入防止のため、社内のセキュリティを可視化して内部からの不正を監視するソフト、業務上閲覧することが不適切なウェブサイトを閲覧制限するソフト、インターネットと企業内LANの間に設置して外部からの不正アクセスを防ぐシステム・パソコンを様々なサイバー攻撃から守るソフトを導入していますが、実際に暗号化され、攻撃が発覚するまでの期間が長期化し、暗号化被害が拡大するリスクがあります。対策としてサイバーリスク保険に加入する一方、進化するサイバー攻撃に対して防御するシステム導入を進めております。
(9) 重要な会計上の見積りによるリスク
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されておりますが、財務諸表の作成にあたり、当事業年度末時点の状況を基に行った見積りと当該見積りに用いた仮定のうち、製品保証引当金及び受注損失引当金の見積りには一定の不確実性が含まれております。製品保証引当金については、不具合の予測発生台数及び過去の費用実績を基に見積っておりますが、本質的に将来の不具合発生の予測は不確実なため、見積費用が変動することがあります。受注損失引当金については、契約ごとの仕様及び販売基準価格表から算出した総費用等を基に見積っておりますが、契約仕様は顧客の要求に基づくものであり個別性が強く、また作業工程の遅れ等、当初予定していない事象により見積費用が変動する場合があります。これらの状況変化に伴い結果として、翌事業年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、利益配分につきましては、経営の重要課題として位置付け、企業体質強化並びに新規事業活動のための内部留保とのバランスを保ちながら、株主の皆様への適正な利益還元を行うことを基本方針としております。
会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会決議により、法令に別段の定めのある場合を除き、剰余金の配当をすることができる旨を定款に定めております。また、9月30日を基準日として、中間配当をすることができる旨、定款に定めております。なお、配当の回数につきましては、期末での年1回配当を基本としております。
当期の期末配当金につきましては、上記の方針並びに当期の業績結果を総合的に勘案し、2024年5月13日開催の取締役会の決議により、1株につき60円とさせていただきました。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (千円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年5月13日 |
194,103 |
60.00 |
取締役会決議 |