2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。当社グループでは、これらのリスク発生の可能性を認識し、代表取締役社長を議長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、その「サステナビリティ委員会」が、リスクマネジメント推進専管組織として、当社グループのリスクマネジメントの基本方針、リスクマネジメントに関する計画、施策の進捗状況の報告・審議を行い、また、国内事業部門の「品質・環境・CSR推進会議」、およびグループ各社の「CSR推進委員会」が、各社の事業展開に伴い発生するリスクに適切かつ迅速に対応するリスク管理を行い、平素より予防、軽減および発生した場合の対応に努めております。また、主要なリスクをESGマテリアリティの項目に合わせて「1.ものづくり」「2.環境」「3.人」「4.グループの経営基盤」に区分し、それぞれのリスクおよび機会とその対応策を記載しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.ものづくり

(1)品質リスク

①製造品質

●リスク

製造に起因する品質不具合が発生した場合、当社グループの製品の信頼性やブランド価値に悪影響を及ぼす可能性があります。また、代替品との交換等の対応に不具合があった場合、製品の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、各部門において製品の品質確保に留意して万全の体制をとっております。生産部門においては、製品の品質基準の確保および生産性の向上等のため、老朽設備の更新、生産技術の継承、作業環境の改善を進めるとともに、出荷前検査の強化を図っております。またトレーサビリティシステムでのデータ管理により、出荷後における製品不具合等が発生したときの原因究明、対策実施等の対応の仕組みを強化しております。また生産ラインの自動化・ロボットの導入による省人化および生産効率の向上にも取り組んでまいります。

 

②施工品質

●リスク

施工に起因する品質不具合や火災事故等が発生した場合、当社グループの施工品質の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

施工部門においては、施工品質基準の明確化、施工性・安全性の向上等のため、施工技術者への施工研修や技能ランク付け、施工技術者の多能工化、施工技術の研究開発、施工ロボットの導入、火災事故防止のために溶接を使用しない「火無し工法」での施工、安全衛生定例会での安全教育等に取り組んでおります。また工程管理システム、出来高管理システム、工事EDI(電子データ交換)の導入により業務効率化に取り組んでおります。

 

③設計品質

●リスク

設計に起因する品質不具合が発生した場合、当社グループの設計品質の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

設計部門においては、最新の設計システムの導入、営業員が利用できる簡易作図システムや発注連携システム等のデジタルツールの導入により、設計品質の向上や設計員の業務効率化に取り組んでおります。

 

 

 

④営業品質

●リスク

顧客への提案内容、打合せの不備等に起因する顧客からの苦情等が発生した場合、当社グループの営業部門の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

営業部門においては、多種多様な製品を顧客に提案し、製品仕様等の打合せを円滑に行うため、営業員に対する新製品研修・階層別研修および個人別のスキルマップに基づく営業スキルアップ研修等を実施しております。また、顧客満足度の向上のため、営業員に対するビジネスマナー研修を実施し、接客マナーの改善に努めております。

 

⑤点検品質

●リスク

当社グループの製品は、開口部に設置する“動く製品”が殆どであり、その機能を維持するためには保守点検が不可欠であります。保守点検を実施したとしても、その内容が不十分なときは製品の不作動等が発生するリスクがあります。

2016年6月より防火設備の定期検査・報告制度が導入されましたが、全ての防火設備が対象とはなっておらず、防火設備以外の製品の保守点検は法制上強制ではなく任意となっていることもあり、保守点検がなされず、部品の経年劣化等により製品性能が正常に発揮されない潜在的なリスクがあります。

また、2004年10月以降に設置した防火シャッターには安全装置が標準装備されていますが、それ以前の防火シャッターには安全装置の設置が義務化されておらず、安全装置設置がすべての防火シャッターに設置されているわけではありません。このような状況において、万一、製品の経年変化に起因する事故等が発生した場合、当社グループの信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

修理・メンテナンス部門においては、防火設備検査員の資格取得の奨励、保守点検に関する各種研修等を実施し、防火設備の保守点検に対応できる体制を整備するとともに、顧客に引き渡した製品の将来にわたっての安全性を確保すべく保守点検の契約締結の推進および既設製品のデータベース化を進めております。また防火設備定期検査の際に顧客への安全装置設置および必要な修理・製品取替等の提案を行っており、製品の機能維持・安全性の向上に努めております

 

(2)研究開発リスク

●リスク

商品開発が市場や業界等の変化するニーズへの対応が遅れた場合、競争力の低下につながり、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループは、2004年3月に発生した自動回転ドア(当社グループ会社設置)事故の教訓をもとに、製品の安全対策をさらに強化徹底すべく努めております。世界中の人々の安全、安心、快適を実現するために、常に安全面を考慮した研究開発と技術強化、顧客ニーズの掌握、新商品の開発に努めております。また高速シートシャッター等の気候変動対応(緩和・適応)商品、IoT対応商品や感染症対応商品の研究開発に取り組んでおります。さらに風水害・地震等の被害に備える防災・減災商品の研究開発を強化しております。

 

 

 

(3)原材料価格・調達リスク

●リスク

当社グループの主要材料(鋼板・アルミ・ステンレス等)の価格は、経済環境の動向により高騰する可能性があります。また、副資材や物流費等も需給の関係によって上昇する可能性があります。価格競争の厳しい市場下で原材料価格等の上昇分を製品価格の引き上げで完全にカバーできるかは不透明であり、経済環境の悪化等に伴う製品価格の引き下げ圧力の増大等により、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、製品の主要部材・部品の一部を長年の取引関係とそれに基づいた諸条件等から、グループ外の特定供給元に依存しております。主要部材・部品の確保には、定期的に供給元を評価し、製造プロセスと品質管理体制の確認と、改善指導により供給体制の維持には万全を期しておりますが、それでも供給元の状況の変化等や大規模災害の発生等により主要部材・部品の不足が生じない保証は完全ではありません。その場合、生産・販売、また代替品対応等の影響等により当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、原材料価格の高騰に対応するため、コストダウンに努めておりますが、原材料や副資材、物流費等の上昇分の全てを吸収することは困難であるため、製造原価の精査に加えて製品価格への転嫁にも取り組んでおります。

また、主要部材・部品の調達に支障が生じないよう、必要な部材等の早期把握・確保、調達先の経営状況の確認および複数購買体制をはじめとした代替調達方法を整備しており、今後もさらに拡充していきます。

さらに、中核事業会社の三和シヤッター工業では、パートナーシップ構築宣言の内容を遵守し、調達先との適正な協議により取引価格や支払条件の改定を進めております。

 

(4)生産・物流リスク

●リスク

製品搬入の管理システムに不具合等が発生した場合または運転手の時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)によりトラックの確保が困難になった場合、当社グループの製品搬入の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループの製品の殆どは受注生産品であり、納期が一定期間に集中したとしても納期遅延が生じることのないよう、月別の出荷予定分析を行い、生産計画および在庫計画の立案・実施、工場内人材シフトの変更等により、納期に応じた生産体制を構築しております。また、施工現場への製品の搬入が遅延することのないよう、納期管理システム、配車倉庫管理システムおよびトラック管理システムを導入し、納期管理およびトラック運行管理の徹底を図り、適時の製品搬入を実現しています。

 

(5)労働災害リスク

●リスク

工場または施工現場で事故・労働災害が発生した場合、当社グループの安全面の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

工場における事故・労働災害防止のため、製造作業マニュアル等の整備、安全教育の実施、安全装置を備えた機械設備の導入等に取り組んでおります。工場作業場への空気循環装置やエアコン設置・休憩所整備等の作業環境の改善も進めております。また施工現場における事故・労働災害防止のため、施工作業マニュアル等の整備、安全教育・安全衛生定例会議等での安全作業の周知徹底等に取り組んでおります。

 

 

 

2.環境

環境・気候変動リスク

●リスク

2015年12月に気候変動に関する国際連合枠組条約第21回締約国会議(COP21)においていわゆる「パリ協定」が採択され、これを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取組みが世界的に進められています。

当社グループでも、気候変動の重要性を認識しており、気候変動の移行リスク(政策・法規制リスク、技術リスク、市場リスク等)と物理的リスク(急性的、慢性的)は当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

移行リスクのうち、政策・法規制リスクとしては炭素税の賦課や温室効果ガス排出規制等が挙げられます。また、技術リスクとしては環境配慮商品に対する研究開発費コストの増加、市場リスクとしてはエネルギーコストおよび廃棄物処理費用の増加等が挙げられます。

物理的リスクのうち、急性的なリスクとしては、気候変動により近年発生が増加傾向にある局地的な暴風雨、台風の大型化は、生産活動および出荷に悪影響を及ぼし、当社グループの業績および財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。こうした異常気象により生産現場や生産設備、物流インフラが甚大な被害を受けた場合、生産や出荷が長期間にわたり停止する可能性があります。また、慢性的なリスクとしては、夏季の著しい気温上昇にともない、生産現場および施工現場の生産性低下につながるおそれがあります。

さらに、温室効果ガス排出量・水使用量・産業廃棄物の削減等の自主目標を達成できなかった場合、当社グループの信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループは、気候変動への対応が重要な経営課題であると認識していることから、2021年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、TCFDフレームワークに基づく情報開示に取り組んでおります。「三和グループ環境方針」に則して、温室効果ガス排出量・水使用量・産業廃棄物の削減等の目標を設定し、CO2排出量(Scope1+2)については2030年度までに2019年度比30%削減という目標を公表して取り組んでおります。具体例として、太陽光発電設備の導入、事業所・工場の照明のLED化、営業車のエコカー(ハイブリッド車など)への切替え、フォークリフトの電動タイプへの切替え、廃棄物の適切な分別等の対策を進めております。また、気候変動の“緩和”と“適応”に貢献する各種製品を提供することにより、商品・サービスを通じた社会課題の解決に貢献しております。

 

 

3.人

(1)人権リスク

●リスク

人権侵害行為が発生した場合、職場環境の悪化や労使紛争・訴訟の提起による社会的信用の失墜等により、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループは、「三和グループ人権方針」を制定しており、人間尊重の立場に立って多様性を尊重し、性別、年齢、国籍、人種、民族、信条、宗教、障がい、出身地域等に基づく差別を禁止しており、その遵守を教育等により推進しております。また調達先に対しても児童労働や強制労働等の人権侵害をしないよう働きかけ、人権の尊重を図っております。また調達先等のステークホルダーからの相談窓口の設置を含む人権デュー・デリジェンスにも取り組んでおります。

 

 

 

(2)人材リスク

●リスク

必要な人材を継続的に獲得する競争は激化しており、これらの人材獲得や育成が計画どおりに遂行できない可能性があります。人材流出および人材の確保や育成が計画どおりに遂行できない場合、人材不足が生じるリスクがあります。その結果として、業務遂行能力の低下により長期的に当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが事業を展開している各地域・国において労働慣行の相違が存在しており、法環境の変化、経済環境の変化等予期しない事象を起因とした労使関係の悪化、ストライキ、労働争議等のリスクが存在しております。万一そのような問題が発生、長期化した場合は当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループが継続的に発展するために、事業遂行に必要な優秀な人材を採用・確保し、育成計画に基づき人材育成をしております。また、女性社員の積極的な採用・配属職種の拡大・キャリアアップ研修を通じて、女性社員の活躍を推進し、職能等級制度や人事評価制度の見直しによる若手人材の登用にも取り組んでおります。さらに、介護・育児休職制度、テレワーク制度の導入、有給休暇の取得推進、デジタルツール活用による業務効率向上等により、誰もが働きやすく、やりがいのある生産性の高い職場づくりを進めております。

 

(3)人事労務リスク

●リスク

労務関連の法令違反または従業員の業務に起因する健康不全が生じ、行政庁から指導・勧告等を受けた場合、社会的信用の失墜等により、当社グループの業績および財務状態に影響が生じる可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、長時間労働・過重労働の防止のため、勤怠管理システムを導入して従業員の労働時間を管理し、36協定等の法令遵守を徹底しております。また従業員の健康・メンタル不全の予防のため、健康診断での要精密検査者等への受診指導およびメンタルヘルス制度を導入しております。さらに、多様な人材が働きやすい職場環境の整備のため、育児休職制度・定年後の再雇用制度の導入、テレワーク制度の導入、障がい者の雇用の推進を図っております。

 

 

4.グループの経営基盤

(1)経営リスク

①自然災害(感染症)リスク

●リスク

日本では、地震、津波、台風、ゲリラ豪雨等多くの自然災害に見舞われており、海外でも、地震、津波、ハリケーン等の大規模自然災害が発生するおそれがあり、当社グループの事業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。自然災害による被害をゼロにすることはできず、被害の状況により当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、2020年初頭から波及した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、全世界でまん延し、日本国内においても企業活動に多大な影響を及ぼしました。

当社グループでは、日本国内のみならず米国、欧州、アジア各国で事業を展開しており、今後さらなる感染症のまん延により、事業活動が大幅に制約された場合、当社グループの業績および財務状態に重大な影響が生じる可能性があります。

●対応策

当社グループでは、これらの自然災害の発生に備えて事業継続計画(BCP)の策定、社員安否確認システムの構築、耐震対策、防災訓練、BCP訓練の定期的実施と課題のフォローアップ等の対策を講じております。

なお、当社グループでは、災害被害を防ぐもしくは軽減させるための防災商品(防火、防煙、防水、高耐風圧等)の研究開発に取り組んでおり、それらの商品を提供することにより社会に貢献することに注力しております。

 

 

 

②地政学リスク

●リスク

当社グループでは、日本国内のみならず米国、欧州、アジア各国において、多様な政治的・社会的環境のもとで事業を展開しており、それらの環境に大きな変更が生じた場合、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。主な地政学的リスクとして次のようなものが挙げられます。

・製品仕様等に関わる予期しない法律または規制の変更

・海外移転税制等、外国資本に対する不利な政策または経済要因

・テロ、戦争、パンデミック等を含む伝染病、反日暴動等その他の要因による社会的混乱

・エネルギー、労働力不足等による生産工場の操業停止

 

●対応策

当社グループでは、これら地政学リスクへの対応として、海外グループ会社を含む危機管理体制を構築し、有事の際は情報の早期報告・共有により迅速かつ適切に対応できるようにしております。また、平時においても海外の状況を常に的確に把握できるよう海外グループ会社に駐在員を派遣し現地経営者と連携を密にするとともに、事業展開している地域の情報を外務省のホームページ等から入手して、海外グループ会社に必要な指示、注意喚起を行うことにより悪影響を最小限にするよう努めております。さらに、海外生産拠点およびサプライチェーンの複層化により生産体制の整備および部材・部品調達の確保により、海外事業のBCPに取り組んでおります。

 

③経済動向リスク

●リスク

当社グループが展開している各地域の景気が減速・後退する場合は、それぞれ公共事業投資や民間設備投資、新規住宅着工の低下、個人消費の低迷等により、当社グループが提供する製品またはサービスに対する需要が減少する等、当社グループの事業および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このことは、グループ全体としての事業のリスクが分散された反面、純粋に進出地域の経済状況、需要動向による要因のほかに現地特有の新たなリスク顕在化の可能性が生じております。

また、為替、金利の変動が事業活動に影響を及ぼす可能性があります。金利の変動については、当社グループの金融資産、負債(特に長期負債)の評価に影響を与える可能性があり、保有する有価証券価格についても市場価格の下落リスクにさらされており評価損を計上する等のリスクがあります。

さらに、海外各地域における売上、費用、資産および負債を含む現地通貨建ての各項目は、連結財務諸表の作成に当たり円換算しているため、為替レートによって想定範囲を超える影響を及ぼす可能性があります。

予期しない金融危機や業績等の悪化に伴う格付けの低下により、資金調達先から必要な資金調達を得ることができない場合、資金が枯渇するおそれがあります。

●対応策

当社グループは、日本・米国・欧州・アジアの各地域で事業展開することで、事業ポートフォリオによるリスクを分散させるとともに、外部環境の変化に対応し、不採算事業の把握により事業撤退やM&A等に関する経営判断をしております。

また、為替や金利の変動リスクを軽減するため、通貨スワップや為替予約等のヘッジ対応等の施策を講じており、加えて資金調達先および調達期間の適度な分散を行い、また信用リスクを軽減するよう財務体質の維持・強化を図っております。

 

 

 

④財務・会計・投資等関連リスク

●リスク

当社グループでは、予期しない事象による顧客の経営破綻が発生した場合、業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。その際には、債権保全など有効な手続きを行い、リスクを最小限に抑えるよう取り組んでおります。

また、当社グループでは、財務諸表の作成にあたり、会計上の見積りが必要な事項については、合理的な基準に基づき見積りを行っておりますが、不確実な要素を含むため実際の結果と異なる場合があり、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。主な見積りリスクとして次のようなものが挙げられます。

・債権の貸し倒れ

・退職給付に係る負債

・固定資産価値の減少

・投資有価証券・出資金の減損損失

・繰延税金資産の回収可能性

・収益認識および工事損失引当金

さらに、当社グループが事業を展開している各国、地域における税制改正により、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、将来課税所得の見積り変更等により税金費用が増加するリスクがあります。

加えて、当社グループは、保有する経営資源の効率的運用を考慮し、企業価値の最大化を目的として事業買収を実施することがあります。買収後において当社グループが認識していない問題が明らかとなった場合や、市場環境や競合状況の変化または何らかの事由により事業展開が計画どおりに進まない場合、投資価値の減損損失を行う必要が生じる等、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、事業を営むうえで取引をする顧客に関しては、情報収集、与信管理などを徹底しております。また、M&Aなど投資案件に関し、事業および法務デュー・デリジェンスを行い、財務面でも将来得られるキャッシュフローについて慎重に検討した上で機関決定し、投資判断によるリスクを最小限にするよう努めるとともに、投資先の減損リスクについて定期的な見直しをしております。なお、資金調達に際しては、自己資本毀損リスクも踏まえ、財務健全性に配慮した最適資金調達をしております。

 

(2)コーポレート・ガバナンス関連リスク

●リスク

コーポレート・ガバナンス体制が十分に整備されていない場合、事業の持続的成長に支障が生じ、企業価値が毀損し、当社グループの株価の低下、業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、コーポレート・ガバナンス体制の機関設計として「監査等委員会設置会社」を選択し、取締役の職務執行の組織的監査を行っており、定款の定めに基づき、「重要な業務執行の決定」を取締役に委任し、経営判断の迅速化を図っております。取締役会は、取締役会の実効性を担保するために、毎年取締役会へのアンケートを実施し、取締役会で分析・評価し、その結果をもとに具体的な改善策を実施しております。また社外取締役や監査等委員である取締役による監査等委員でない取締役および執行役員等の業務執行を監査することにより、経営の透明性向上や適法な会社運営の確保に努めております。また取締役の報酬は、株式報酬による持続的企業価値向上インセンティブを導入し、また、指名・報酬委員会を設置して、公平性・透明性・客観性を強化し、当社取締役に求められる役割と責任に見合った報酬水準および報酬体系となるよう設計しております。さらに、ボードダイバーシティの取り組みとして、2022年度に女性取締役1名を選任しております。

 

 

 

(3)コンプライアンスリスク

①不正・不祥事・法令違反リスク

●リスク

当社グループは、事業を展開するうえで、法律・制度の制定・改正に伴うリスクや知的財産権を含む権利の侵害に関するリスク、訴訟や規制当局による調査および処分に関するリスクを有しております。万一監督官庁等からの処分、訴訟の提起がなされた場合、社会的信用の失墜等により、当社グループの業績および財務状態に影響が生じる可能性があります。

 

●対応策

当社グループは、法令遵守と倫理に基づいた企業活動を行う旨を宣言し、当社の取締役および従業員が事業遂行にあたって、各種法令や倫理基準並びに社内コンプライアンス行動規範等から逸脱した行為をすることがないよう、コンプライアンス行動規範を具体的な業務事例としてまとめた冊子を全従業員に配布し、その内容の遵守について誓約書の提出を求める等、さまざまな取り組みを通して徹底を図っております。なおコンプライアンス行動規範については、社会的要請であるESGの観点を充実させるため一部改定を行い、それに伴い冊子の改訂版を発行し、コンプライアンス意識定着の再確認を行いました。また、不正行為の防止・早期発見および自浄プロセスの機動性向上を図るべく内部通報制度を導入しております。さらに、事業を展開するすべての国・地域に適用される腐敗・贈収賄禁止法令の遵守を目的として、「贈収賄防止ガイドライン」を策定し、不祥事予防の体制強化を図っております。

コンプライアンス上の問題が発生した場合に備えて、適時に弁護士等の外部専門家に連絡相談可能な体制を構築しております。

 

②交通事故リスク

●リスク

当社グループでは、車両を使用して事業活動を行っておりますが、万一重大な交通事故が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜等により、悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

交通事故をゼロにすることは困難ですが、交通事故の発生抑止のため、安全装置(自動ブレーキ)装備車両の拡充、運転者の運転前後におけるアルコール検知器を使用してのアルコールチェック、安全運転意識向上の取組み、事故惹起者への安全教育等を実施しております。

 

(4)情報セキュリティリスク

●リスク

当社グループでは、情報システムに対して、各種障害やセキュリティへの対策を講じていますが、コンピューターウイルスによる個人情報や重要機密情報の漏えい、不正アクセスによる情報の消失・改ざん、不慮の情報システム停止等で当社グループの業績および財務状態に影響が生じる可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、2019年に情報セキュリティ対策会議を設置し、グループ全体のセキュリティリスクの把握と、それに対する対策の推進を進めております。また、サイバー攻撃を受けた場合の事業の中断を最小限にとどめるため、サイバー攻撃を想定した事業継続計画(IT-BCP)を策定し、それに基づくIT-BCP訓練の実施により対応力を強化しております。さらに、社内イントラネットに情報セキュリティポータルサイトを開設し、情報セキュリティ関連規定、不審メールの見分け方・対応等を掲載して、情報セキュリティ対策の周知徹底を図っております。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は株主に適切な利益還元を行うことを経営における重要課題の一つと認識し、配当については、各期における業績、利益に基づく配当性向および今後の経営施策を勘案のうえ、安定した配当を行うことが株主の要請に応えるものと考えており、具体的には親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向40%を目安として安定的な配当を図ることを目指しています。

 当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は取締役会又は株主総会であります。なお、当社は、2016年6月28日開催の第81期定時株主総会の決議により、「剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議によって定めることができる」旨を定款に定めております。

 当期の期末配当金につきましては、1株につき普通配当49円(中間配当金を含め年78円)としております。

 内部留保につきましては、M&Aなどの戦略的投資と設備投資、有利子負債の圧縮等に活用してまいります。

(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年10月31日

6,411

29.0

取締役会決議

2024年6月26日

10,725

49.0

定時株主総会決議