2024年5月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

(単一セグメント)
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 4,422 100.0 663 100.0 15.0

事業内容

3【事業の内容】

 当社は「Advance with you 世界を前進させよう」をミッションに掲げ、「システムインキュベーション事業」を展開しております。
 

 当社のシステムインキュベーション事業とは、主にAI(注1)やビジュアライゼーション(注2)、その他ビッグデータ(注3)を取扱う市場における研究者や開発者のシステム環境上の課題に対して、最先端テクノロジーを用いたサーバー機等のハードウエアの提供といった当社オリジナルソリューションを提供することにより、今までとは違ったアプローチで研究や開発のスピードアップを支援するサービスとなります。

 具体的には、当社が認定とトレーニングを受けているグローバルコンピューティングカンパニー(注4)の最新のテクノロジーと、提携しているグローバルベンダー(注5)の製品を顧客の課題に合わせて適宜組み合わせ、ハードウエア等の企画・設計から構築・運用支援までのサービスをワンストップで提供いたします。企画・設計のフェーズでは顧客の課題をヒアリングし、最新のテクノロジーを組み合わせたオリジナルモデルの設計と提案を行い、そして構築のフェーズでは提案したハードウエアの提供に加えて、ハードウエアを効果的かつ効率的に動作させる環境の構築を行っています。更に運用支援フェーズでは、ハードウエアの保守・メンテナンスに加えて、継続的な開発環境のアップデートサービスを提供しシステムの性能向上を図ります。

 また、顧客の課題を解決する際に生み出された解決方法(ハードウエアやソフトウエア、その組み合わせ)をセミオーダー化して他の同様の課題を持っている顧客へソリューションサービスとして提供しております。

 

当社のソリューション提供のフロー

 

(1)当社のサービスの特徴について

 当社の事業は「システムインキュベーション事業」の単一セグメントでありますが、「DXサービス」及び「Service & Support」の2つのサービスを提供しております。

 「DXサービス」はソリューション提供のフローのヒアリングから環境設定までを対象としており、主なサービス内容としては顧客の課題解決に適したハードウエア及びソフトウエアの提供と、ハードウエアを効果的かつ効率的に動作させる環境の構築であります。ハードウエアの提供形態についてはオンプレミス(注6)のみならずクラウドやレンタルといった形態で提供するサブスクリプション(注7)サービスを提供しており、多様な顧客ニーズに柔軟に対応することが可能であります。

 「Service & Support」は提供したソリューションの運用支援を対象としており、当社の「DXサービス」を提供した顧客に対して、常に最新で安定したシステムをご利用頂くためにハードウエアの保守と、継続的な開発環境のアップデートを組み合わせた運用支援を提供しております。当社の顧客は研究開発を行っている顧客が多く、その後の安定稼働は重要な顧客ニーズとなっており、そのニーズに沿ったソリューションとして、この「Service&Support」を提供しております。

 

サービス区分

主なサービス内容

① DXサービス

AI・ビジュアライズソリューションサービス

その他DXソリューションサービス

サブスクリプションサービス

② Service & Support

ハードウエアの保守

継続的な開発環境のアップデート

 

① DXサービス

 DXサービスとして「a.AI・ビジュアライズソリューションサービス」と、「b.その他DXソリューションサービス」を提供しております。加えて、ソリューションの提供方法もクラウドやレンタルでの導入を可能にする「c.サブスクリプションサービス」も提供しております。

 

a.AI・ビジュアライズソリューションサービス

 AIサービスを開発・運用するための製品やサービスの提供である「AIソリューションサービス」と、映像や画像を用いるコンピュータ処理を行うための製品やサービスである「ビジュアライズソリューションサービス」の2つで構成されています。

 

AIソリューションサービス

 AIソリューションサービスは、AIサービスを開発・運用する顧客を対象としています。

 AIの開発では現在Deeplearning(注8)という手法が一般的に用いられており、当社ではDeeplearningを用いたAIの開発や運用に適した仕様のハードウエアと、Deeplearningで使用するソフトウエア(フレームワーク)、そのフレームワークを使いやすく設定したオリジナルのツールを組み合わせたターンキーシステム(電源を入れたらすぐに使えるシステム)を開発・組立・販売しています。

 AIソリューションサービスの主なモデルは以下のとおりです。

分類

モデル名

概要

当社オリジナル製品

DeeplearningBOXシリーズ

主にAI(Deeplearning)の学習(注9)を行うためのワークステーション(注10)

当社オリジナル製品

InferenceBOX

主にAI(Deeplearning)の推論(注11)を行うためのエッジ端末(注12)

NVIDIA社製品

DGXシリーズ

主に大規模なAI(Deeplearning)の学習を行うためのアプライアンスサーバー(注13)

 

ビジュアライズソリューションサービス

 ビジュアライズソリューションサービスは、映像や画像を用いるコンピュータ処理を行う顧客を対象としています。CAD(注14)やCAE(注15)、コンピューターグラフィックスの制作やデジタルサイネージ(注16)で利用するグラフィックワークステーションの組立・販売や、当該事業を行っている顧客に対して、仮想空間上で作業を行い、結果を共有できるNVIDIA社のサービスOmniverse(注17)の環境構築とライセンス提供を行っています。

 ビジュアライズソリューションサービスの主なモデルは以下のとおりです。

分類

モデル名

概要

当社オリジナル製品

GWSシリーズ

CAD、CAE、CGに利用可能なグラフィックワークステーション

BOXX Technology社製品

ワークステーション

CAD、CAE、CGに利用可能なグラフィックワークステーション

NVIDIA社製品

Omniverse

仮想空間で作業と結果を共有できるサービスライセンスの提供とその環境構築

 

b.その他DXソリューションサービス

 その他DXソリューションサービスは、データを大量に保管しておくための記憶装置(高速大容量ストレージ(注18))の組立・販売や、高速にデータを送受信するための広帯域ネットワーク(注19)機器の販売・設定、ハードウエアの利便性を高めるためのソフトウエアの販売・設定、及びそれらを組み合わせたシステムの設計や構築となります。

 

c.サブスクリプションサービス

 当社のソリューションサービスはユーザーが資産として購入し、自社内で利用するオンプレミスによる提供の他に、レンタルやクラウドなどの「サブスクリプションサービス」として提供しております。

 当社のクラウドサービスの特徴は仮想化(注20)しないベアメタルクラウド(注21)であるという点です。従来の仮想化を基盤としたハイパーバイザー(注22)型のクラウドサービスは、低コストやスケーラビリティ(注23)などのメリットがある反面、物理環境の性能劣化が避けられません。一方当社のベアメタルクラウドは、その利用用途がAI、ビジュアライゼーション、HPC(注24)などの分野であることを想定し、従来のクラウドサービスにおける予算内でのフレキシブルな利用などのメリットをある程度享受しつつ、1ユーザー占有のベアメタルを仮想化されていない状態で提供することで、物理環境の性能劣化がなく、オンプレミスと同等の性能を実現することを主眼としています。更に、ベアメタルクラウドでは1ユーザーが1台の機器を占有することができるためセキュリティ面でも大きなメリットがあります。

 また、顧客のご要望に応じてクラウドではなく、レンタル形式で物理サーバーを提供するサービスも行っています。半導体の技術革新は猛烈なスピードで進化しており、18カ月から24カ月で新しいアーキテクチャ(注25)に置き換わります。当社の顧客は先端の研究開発を行っているユーザーが多く、常に最新の開発環境を利用して研究開発のスピードをあげることが重要なニーズとなっており、これに対応するため定額及び定期で当社の扱う先進的な技術を用いたソリューションを利用できるサブスクリプションサービスを提供しております。

 

② Service&Support

 Service&Supportは、当社が提供する全てのソリューション(ハードウエア、ソフトウエア、構築ノウハウ)に対してハードウエアの保守だけではなく継続的な環境のアップデートを通して、常に最新で安定したシステムとして利用頂くためのオプショナル運用支援サービスです。

 具体的には、ハードウエアの保証の他、サポート問い合わせ、メンテナンスパーツストック、オンサイト保守(出張保守)、パフォーマンスベンチマーク(注26)、利用環境アップデート、プライベートレクチャーの提供を行っております。これにより顧客はシステム環境の保守・運用に顧客自身のリソースを割くこと無く、常に最新で安定した状態で稼働できるシステムを利用可能であり、本来の業務に専念して頂くことが可能となります。

 当社の顧客は研究開発を行っている顧客が多く、システムの安定稼働とダウンタイム(注27)の短縮は重要な顧客ニーズとなっています。これらのニーズに沿ったソリューションとして、この「Service&Support」を提供しております。

 

(2)当社のビジネスモデルについて

 当社の「①DXサービス」のうち、「a.AI・ビジュアライズソリューションサービス」及び「b.その他DXソリューションサービス」はフロービジネスであり、「①DXサービス」のうち「c.サブスクリプションサービス」及び「②Service&Support」はストックビジネスであります。

 「a.AI・ビジュアライズソリューションサービス」及び「b.その他DXソリューションサービス」を提供している顧客に対して、「②Service&Support」を併せて提供することにより、フロー売上に加えてストック型の売上を計上しております。

 

(3)当社の事業の特徴について

① パートナーシップ

 当社は半導体のグローバルコンピューティングカンパニーであるNVIDIA社、Intel社、AMD社からパートナー認定を受けております。

 パートナー認定を受けることにより、以下のメリットがあります。

・各グローバルコンピューティングカンパニーが主催するトレーニングを受講することができるため、最新の技術情報をいち早く取得することが可能となり、それに基づいた企画・設計のご提案を行うことができるようになります。

・各グローバルコンピューティングカンパニーとの共同プロモーションやそれに伴う販促支援金、セールスリベートを受けることができます。

・認定パートナーのみに適用される特価で仕入を行うことができます。

・各グローバルコンピューティングカンパニーから顧客の紹介を受けることができます。

・各グローバルコンピューティングカンパニーのホームページ等に認定パートナーとして当社社名が掲載されることで、集客等の効果を得ることができます。

 なお、商材については各グローバルコンピューティングカンパニーの国内代理店から購入するスキームとなっております。

 

② ストックビジネス化による正のスパイラル創出

 導入支援のみならず、「Service&Support」を通じた運用支援を行うことにより、当社のサービスを顧客に享受頂き、それが満足度の向上となり、次のフロービジネス(DXサービス)の案件創出へとつながります。そして更に新たな「Service&Support」へつながるという、“正のスパイラル”が当社の価値となっております。

 2024年5月期における売上高に占めるService&Support売上高の比率は8.1%となっております。

 

 

用語解説

 本項「3 事業の内容」等において使用しております用語の定義について以下に記します。

用語

用語の定義

(注1)

AI

Artificial Intelligenceの略で、学習・推論・認識・判断などの人間の知能的な振る舞いを行うコンピューターシステムのこと

(注2)

ビジュアライゼーション/ビジュアライズ

XRやメタバースも含め視覚化・可視化のための技術の総称のこと

(注3)

ビッグデータ

従来のデータベース管理ツールやデータ処理アプリケーションでは記録や保管、解析が困難な大規模かつ複雑なデータの集合のこと

(注4)

グローバルコンピューティングカンパニー

NVDIA社、Intel社、AMD社などの、グローバルに展開している大手の半導体のカンパニーのこと

(注5)

グローバルベンダー

世界各国のハードウエア・ソフトウエアベンダーのこと

(注6)

オンプレミス

コンピューターシステムを利用者側で保有・運用すること

(注7)

サブスクリプション

一定期間利用できるサービスに対して、定期的な対価を支払う仕組みのこと

(注8)

Deeplearning

深層学習とも呼ばれる、人間の脳神経系のニューロンを数理モデル化したAIの手法のひとつ

(注9)

学習

沢山のデータを与え法則性を見出しAIモデルを構築する作業のこと

(注10)

ワークステーション

計算用や描画用など利用用途に特化した性能を持つ一般的なパソコンよりも高性能なコンピュータ

(注11)

推論

AI学習で構築したAIモデルを利用し予測や推理を行う作業のこと

 (注12)

エッジ端末

IoTで使用される末端の機器のこと

IoTとは、あらゆるものをインターネットに接続して互いに連動しあうシステムのこと

(注13)

アプライアンスサーバー

特定の用途・役割を担うことに特化したサーバーのこと

(注14)

CAD

Computer Aided Design コンピュータを用いて設計や製図を行うこと

(注15)

CAE

Computer Aided Engineering コンピュータを用いて工業製品の設計やデザインを行うこと

(注16)

デジタルサイネージ

大型の液晶パネルなど電子表示装置を使った広告や広告装置のこと

(注17)

Omniverse

Omniverseはビジネスメタバースとも呼ばれているサービスで、設計や計算、そしてデザインなどのクリエイティブな仕事を仮想空間上に複数の人が集まり同時に作業行い、結果を共有できるサービスであり、2022年から提供が開始され現在様々な利用用途について概念実証作業が始まっている段階です。

(注18)

高速大容量ストレージ

解析、高速計算、シミュレーションなど高いマシンスペックが要求される作業に利用されるストレージのこと

(注19)

広帯域ネットワーク

通信回線が高速なサービスのこと

(注20)

仮想化

ハードウエアの物理資源を擬似的に分割する技術のこと

(注21)

ベアメタルクラウド

仮想化せずに物理サーバーをクラウド上で使用する仕組みのこと

 (注22)

 ハイパーバイザー

1台の物理コンピュータを論理的に分割し複数のコンピュータとして稼働させるための基本ソフトウエアのこと

(注23)

スケーラビリティ

システムの規模の変化に柔軟に対応できる度合いのこと

(注24)

HPC

High Performance Computer 又は High Performance Computing の略で、一般にスーパーコンピュータ又はスパコンと呼ばれる超高速演算用コンピュータによる計算処理環境(計算処理技術)のこと

(注25)

アーキテクチャ

コンピューターシステムの設計方法、設計思想、構築されたシステムの構造などのこと

(注26)

パフォーマンスベンチマーク

コンピュータやシステムの性能がどのくらいかを測る作業のこと

(注27)

ダウンタイム

機器やサービスが止まっている時間のこと

 

本項「3 事業の内容」等において記載しているグローバルコンピューティングカンパニー別のパートナーシップ制度の内容としては、以下のとおりであります。

 

NVIDIA社

 事業内容であるパートナータイプと製品を取扱える能力であるコンピテンシーの組み合わせとなり、その組み合わせに対して「Elite」「Preferred」「Registered」の3つのパートナーレベルが設定されています。

パートナーレベルの認定条件は販売実績やトレーニングの受講単位に応じて認定され、当社は1つの組み合わせで「Elite」、2つの組み合わせで「Preferred」の認定を受けております。

 

Intel社

 Intel Partner Alliance Programに参加登録した企業を対象に、販売実績やトレーニングの受講単位に応じて「チタン」「ゴールド」「メンバー」の3つのパートナーレベルが設定されています。当社は「ゴールド」の認定を受けております。

 

AMD社

 AMDパートナープログラム参加の企業を対象に、販売実績や活動状況に応じて「ExecutiveElite」「Elite」「Select」の3つのパートナーレベルが設定されています。当社は「Elite」の認定を受けております。

 

2024年5月現在の当社及びLLPがNVIDIA社から認定を受けているパートナー種別及びそのパートナーランク(「Registered」を除く)並びに当社と同等以上の認定を受けている社数(国内)は以下のとおりであります。

当社

LLP

グローバルコンピューティングカンパニー

パートナー種別

パートナーランク

当社と同条件以上の認定を受けている社数(当社含む)

当社

NVIDIA社

Solution Provider

NVIDIA Omnivers

Preferred

5社

当社

NVIDIA社

Solution Provider

Visualization

Elite

2社

当社

NVIDIA社

Cloud Partner

DGX AI Compute Systems

Preferred

4社

LLP

NVIDIA社

Solution Provider

DGX AI Compute Systems

Elite

5社

LLP

NVIDIA社

Solution Provider

DGX Cloud

Preferred

2社

LLP

NVIDIA社

Solutions Integration Partner

Compute

Elite

3社

LLP

NVIDIA社

Solution Provider

NVIDIA AI

Preferred

5社

LLP

NVIDIA社

Solution Provider

Networking

Preferred

14社

 

[事業系統図]

 以上述べた内容を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

 

※1 日本GPUコンピューティング有限責任事業組合を指します。当組合はNVIDIA社からパートナー認定を受けており、NVIDIA社からリベートを受け取り、各組合員に配賦しております。

※2 当社は、主にグローバルコンピューティングカンパニーからパートナー認定を受けた国内代理店から、商材の一部の仕入を行っております。

※3 組立作業の一部について外注を使用しております。

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産合計は4,219,436千円となり、前事業年度末に比べて1,555,620千円増加いたしました。これは主として東京証券取引所スタンダード市場への上場に伴う公募などにより現金及び預金が1,126,414千円、売掛金が284,202千円、商品が143,114千円増加したことによるものです。

 また、固定資産合計は115,293千円となり、前事業年度末に比べて48,418千円増加いたしました。これは主として繰延税金資産が25,460千円減少したものの、東京事務所を移転したことに伴い、有形固定資産の取得及び敷金の差入れが発生したことなどにより、建物が20,268千円、工具、器具及び備品が44,428千円、投資その他の資産「その他」が11,702千円増加したことによるものです。

 その結果、資産合計は4,334,730千円となり、前事業年度末に比べて1,604,038千円増加いたしました。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債合計は1,271,131千円となり、前事業年度末に比べて597,337千円増加いたしました。これは主として支払いなどにより未払金が35,470千円、未払法人税等が9,342千円、流動負債「その他」が12,590千円減少したものの、今後の需要に備えるための仕入が増加したことにより買掛金が217,538千円、前受金が435,339千円増加したことによるものです。

 また、固定負債合計は673,005千円となり、前事業年度末に比べて138,820千円増加いたしました。これは長期前受金が138,820千円増加したことによるものです。

 その結果、負債合計は1,944,137千円となり、前事業年度末に比べて736,157千円増加いたしました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は2,390,592千円となり、前事業年度末に比べて867,881千円増加いたしました。これは剰余金の配当により74,400千円減少したものの、東京証券取引所スタンダード市場への上場にあたり、有償一般募集(ブックビルディング方式による募集)による新株式120,000株の発行及び新株予約権の行使による新株式18,400株の発行により、資本金及び資本準備金がそれぞれ255,125千円増加したこと及び当期純利益432,301千円を計上したことによるものです。

 

② 経営成績の状況

 当事業年度における我が国経済は、経済活動の正常化が進み、企業や消費者の動きが活発となるとともに、インバウンド需要も回復してきております。一方で、世界経済においては、地政学リスクの顕在化による資源価格の高騰、中国経済の先行き懸念、為替相場の急激な変動、といったさまざまな下振れリスクが残っており、景気の先行きについては依然として不透明な状況が続いております。

 このような経営環境の中、AIを含む国内IT市場においては、業種を問わず各企業へデジタル化の波が押し寄せている背景を受け、さまざまな分野においてユーザーの戦略的IT活用の重要性が高まっており、IoT、AIを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)関連投資は継続して行われております。特に生成AIについては特定の業界を問わず幅広い業界から関心が高く、一部の業務のデジタル化に留まらず、全社横断的なDX投資が加速し、引き続き高い成長性が見込まれています。今後はクラウドサービスの需要増に伴う市場規模の拡大が見込まれ、国内AI市場は堅調に成長していくものと見込まれます。一方で、ITエンジニアを含むデジタル人材の不足は深刻化しており、優秀な人材の獲得競争が激化しております。

 このような状況下で、当社はミッションである「Advance with you 世界を前進させよう」のもと、収益拡大に取り組んでまいりました。

 当事業年度においては、生成AI関連の設備投資需要、クラウドビジネス向けの設備投資需要などが堅調であったことから、売上高4,421,640千円(前期比17.0%増)、営業利益662,852千円(同19.0%増)、経常利益652,499千円(同14.7%増)、当期純利益432,301千円(同14.3%増)となりました。

 なお、当社はシステムインキュベーション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は3,006,128千円となり、前事業年度末と比べ1,126,414千円の増加となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は757,572千円となりました(前事業年度は581,665千円の獲得)。これは主として、為替差益の計上27,755千円、売上債権の増加額284,202千円、棚卸資産の増加額155,997千円、法人税等の支払額217,311千円といった支出要因があった一方で、税引前当期純利益652,499千円及び減価償却費26,604千円並びに敷金償却費5,963千円の計上、仕入債務の増加額218,718千円、その他負債の増加額540,223千円といった収入要因があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は94,493千円となりました(前事業年度は6,974千円の使用)。これは主として、東京事務所移転に伴う有形固定資産の取得による支出75,144千円及び敷金の差入による支出21,379千円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は435,580千円となりました(前事業年度は56,634千円の使用)。これは主として、配当金の支払額74,400千円があった一方で、東京証券取引所スタンダード市場への上場に伴う新株式の発行などによる株式の発行による収入510,250千円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績は次のとおりであります。なお、当社はシステムインキュベーション事業の単一セグメントとしておりますが、受注実績をサービス区分ごとに示すと次のとおりであります。なお「DXサービス」のうちサブスクリプションサービス及び「Service&Support」は受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

サービス区分の名称

当事業年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

DXサービス

5,508,676

153.4

2,106,840

344.7

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社はシステムインキュベーション事業の単一セグメントとしておりますが、販売実績をサービス区分ごとに示すと次のとおりであります。

サービス区分の名称

当事業年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

DXサービス

4,062,235

117.5

Service&Suppport

359,405

111.9

合計

4,421,640

117.0

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態及びキャッシュ・フローの分析

「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況及び③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

b.経営成績の状況の分析

(売上高)

 売上高は4,421,640千円となり、前事業年度と比べて642,815千円増加(前期比17.0%増)いたしました。

 サービス別としては、「DXサービス」が4,062,235千円(同17.5%増)、「Service&Suppport」が359,405千円(同11.9%増)となりました。

 「DXサービス」はAI関連の設備投資の需要が堅調であることを背景に増収、「Service&Suppport」は件数を着実に伸長していることから増収といった結果となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

 売上原価は、売上の増加に伴い3,391,520千円となり、前事業年度と比べて514,421千円増加(前期比17.9%増)いたしました。また原価率は76.7%となり、前事業年度と比べて0.6ポイント上昇しております。

 この結果、売上総利益は1,030,120千円となり、前事業年度と比べて128,394千円増加(前期比14.2%増)いたしました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 販売費及び一般管理費は367,268千円となり、前事業年度と比べて22,418千円増加(前期比6.5%増)いたしました。これは主として外形標準課税の適用や東京事務所移転に伴う関連費用の発生によるものであります。この結果、営業利益は662,852千円となり、前事業年度と比べて105,976円増加(前期比19.0%増)いたしました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

 営業外収益は為替差益等により9,733千円、営業外費用はIPO関連費用の発生により20,086千円となり、この結果、経常利益は652,499千円(前期比14.7%増)となりました。

 

(特別利益、特別損失、当期純利益)

 特別利益及び特別損失の計上はありません。この結果、税引前当期純利益は652,499千円(前期比14.7%増)となりました。また、法人税等を220,198千円計上した結果、当期純利益は432,301千円(前期比14.3%増)となりました。

 

③ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は安定的な成長を図るために付加価値の創出が経営上必要であると認識しており、営業利益率を重要な指標とし、目標として営業利益率10%を掲げております。2024年5月期においては営業利益率の実績が15.0%となり、目標を達成しております。

指標

2024年5月期(計画)

2024年5月期(実績)

営業利益率

15.1%

15.0%

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社の運転資金需要のうち主なものは、売上原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。事業上必要な流動性については、自己資金で確保できていると考えておりますが、一時的な資金需要に対応するため、取引先の金融機関3社と当座貸越契約を締結しております。当座貸越枠の合計は2,300,000千円であり、当事業年度末における本契約に基づく当座貸越枠の残高は2,300,000千円となっております。